毎年3月22日は「世界水の日」。水資源の貴重さ、きれいで安全な水を使えるようにすることの重要性などについて、各国でともに考えるための日です。
日産は、サステナブルな企業であるためには水資源への依存を減らすことが必要であると考えています。日産の推進する中期環境行動計画「ニッサン・グリーンプログラム 2022(NGP2022)」では、2022年までにグローバルの生産工場における取水量を2010年比で台当り21%削減することを目標に、水質の管理や水使⽤量の削減に取り組んでいます。
今回の日産ストーリーズでは、世界の水事情について今知っておきたい4つのことと、日産の工場で行っている水資源を守るための取り組みを紹介します。
1:水の惑星・地球で人が利用できる水は、わずか約0.01%
2:2025年までに世界人口の3分の2が水不足に直面する可能性がある
3:国によっては、自動車産業で使える水の量に規制も
4:廃水として捨てられている水は何%?
1:水の惑星・地球で人が利用できる水は、わずか約0.01%。
宇宙から見ると、地球は青く美しい惑星です。実際に地球の表面の約3分の2は水で覆われており、そのほとんどが海です。しかし、海水は人間の生活には利用できません。利用できるのは淡水のみで、さらに利用が難しい氷河などの氷や地下水などを除くと、実は地球上の水のわずか0.01%しか利用できないと言われています。78億人を超える世界中の人々が、その貴重な水を共有しながら生きているのです。
2:2025年までに世界人口の3分の2が水不足に直面する可能性がある
WWFによると、世界では、約11億人が水を入手することができず、27億人が1年のうち少なくとも1カ月は水不足に悩まされています。人口増加と気候変動は状況をさらに悪化させ、2025年には世界の人口の約3分の2が水不足に直面する可能性があると言われています。 世界資源研究所(WRI)は、世界各地の高い水リスク(水需要がひっ迫している状態)を示す「アキダクト世界水リスク地図(Aqueduct Water Risk Atlas)」を発表しています。日産ではこうした情報をもとに、世界各地に広がっている生産拠点の水リスクを独自の方法で評価し、インドのチェンナイ工場、メキシコのアグアスカリエンテス工場などを水リスクの高い生産工場として、対策を強化しています。
「アキダクト世界水リスク地図」を元に作成
3.国によっては自動車産業で使える水の量に規制も
こうした世界的な水資源の危機をうけて、産業用の水の使用を規制する国もあります。例えば、メキシコでは農業が水使用量の約60%を占め、次いで市民の生活用水が37%、そして産業用に使用できる水は全体の約3%までと法律で定められています。そのため、多くの企業が雨水を貯蔵するための広大な施設や、下水や排水をリサイクルするシステムを設置し、活用しています。
写真は、日産のメキシコ アグアスカリエンテス工場の雨水貯留槽です。ここには、計19,000m³もの水を貯水できます。そして、なんと工場で使用する水の40%は雨水を利用しており、地下水からの取水は最小限に留めています。これまでに節水できた地下水の量は53,300m³にも上ります。この雨水貯留槽で蓄えた水は、フィルターにかけて砂などを除去した後、工場内の各製造工程で使用されます。ちなみに最も水の使用量が多いのは、塗装工程です。工場で使用される水の約50%を占め、塗装ブース内の塗装ミストや空気中の塵などをキャッチするために、常に各装置の下で水が流れています。
4.廃水として捨てられている水の量は何%?
国や企業は水資源の再利用に努めていますが、依然として世界中で使用された約80%の水が、適切に処理されずに廃水として捨てられているといいます。
そんな中で、日産のチェンナイ工場をはじめ、アグアスカリエンテス工場や中国の花都工場などでは、なんと敷地外への「排水ゼロ」を実現しているのです。日産は全ての生産工場で、現地の規制よりも厳しい基準値で廃水の水質を管理していますが、特に前述の工場では世界でもトップレベルの処理システムを持っています。
こちらの図はチェンナイ工場の水処理プロセスです。製造工程で使われた廃水のうち、台所やトイレで使用された水は、下水処理設備でリサイクルされます。下水は、浄化水と沈殿物にろ過され、浄化水は敷地内の植木などに散水されます。さらに、UF膜というろ過膜を通したのち、トイレの洗浄水としても利用しています。また、それ以外の排水も同様にろ過処理を行い、浄化水は植木へ散水したり、製造工程に戻すなどして再利用されています。こうした取り組みが評価され、2017年にチェンナイ工場は、インド工業連盟から優れた水資源管理事例として表彰されました。
世界各地での日産の水利用の取り組み
日産ではチェンナイ工場やアグアスカリエンテス工場以外にも、世界各地の生産拠点で水資源に関する取り組みを行っています。取り組みは大きく以下の3つに分類されます。
① Reduce: 水の取水量、使用量削減(効率的な利用、雨水利用など)
② Reuse: 水の再利用(工程内での多段階利用)
③ Recycle: 水のリサイクル(廃水処理設備の導入)
水を取り巻く環境は地域によって異なるため、それぞれの環境に合わせた設備の開発やノウハウの構築を進めています。その一方で、月に1度、各国の工場間でベストプラクティスを共有する場を設けたり、新型コロナウイルスの感染拡大前にはお互いの工場を訪問するなど、密な連携を行い、日産全体で一丸となって水資源のマネジメントに取り組んでいます。例えば、アメリカ スマーナ工場では、これまで捨てられていた「濃縮水」という、ろ過水の生成時に発生する廃水を再利用するというアイデアが生まれました。これにより、水使用量を約半分まで削減することができます。この方法は、グローバルの全工場にベストプラクティスとして共有され、今では様々な工場に導入されています。
こうした取り組みの結果、日産は3年連続でCDPの「ウォーターセキュリティー」部門において、最高評価である「Aリスト」企業に認定されました。
今回は、水資源についての4つのファクトを中心に、日産の取り組みをご紹介しました。大切な水資源を守るため、水の利用の仕方について、ぜひ、一緒に考えていきましょう。