「Zらしさ」の本質にせまるシリーズ第3回は、プロレーシングドライバーの松田次生が語ります。日産のドライバーとしてSUPER GTのGT500クラスに参戦する松田は、フェアレディZプロトタイプのインストルメントパネルの開発に携わりました。
松田は、2002年に全日本GT選手権で2位を獲得したのを機に、日本のモータースポーツ界で一躍その名を知られるようになりました。
2006年には、日産チームからスーパーGTに参戦、同年のオートポリスで優勝。続いて2007、2008年にはフォーミュラ・ニッポンシリーズ2連覇、さらに2014、2015年にはスーパーGT・GT500クラスでシリーズチャンピオンに輝きました。現在、松田はスーパーGTシリーズで最多の22勝を挙げており、2021年シーズンには23勝目を目指します。
Q:どのような経緯で「Z」の開発プロジェクトに参加することになったのですか?
松田:「Z」のチーフ・プロダクト・スペシャリストを務める田村宏志さんから連絡を受けたのがきっかけです。そこで、次期型「Z」にはレーシングカーのテイストを取り入れたいと考えていると聞かされました。そして、GTレースやサーキットでの走行テストで、私が重要視するポイントは何かを具体的に教えてほしいと頼まれたのです。私は計器類によって、シフトアップのタイミングに大きな差が生まれますよと伝えました。
Q:具体的に、どんなアドバイスをしたのですか?
松田:レーシングカーにはシフトアップをするために、エンジンが最大回転数に達したタイミングを教えてくれるシフトアップインジケーター(シフトライト)がついています。通常、シフトライトは、緑から黄色、赤と順に色が変わっていき、ドライバーは赤になるとギアを一段上げます。新型「Z」にも、これがほしいと伝えました。
それから、エンジンが最大回転数に達したとき、タコメーターの針が一番上(12時の位置)に来るようにしてほしいということも伝えました。そうすると、シフトライトが赤になると同時に、タコメーターの針が最大回転数を指すのです。ドライビングに集中していると、タコメーターの下の方は目に入りません。でも、シフトライトのそばにマックスのゲージがあると、ここぞという場面で針を簡単に確認できます。回転数が限界を超えるのも防げます。オーバーレブになると、ラップタイムが落ちますし、エンジンにもダメージを与えかねません。
Q:なぜシフトライトが必要なのですか。タコメーターの針を見ればいいのでは?
松田:レースで高速走行していると、視野が狭くなることがあるのです。車内のあちこちに視線を向けようとすると、混乱したり集中が途切れたりすることもあります。シフトライトとタコメーターが視界に収まっていれば、路面から目を離さずにシフトアップのタイミングをつかめます。
Q:松田さんとZの思い出を教えてください。
松田:「Z33」は、日産ドライバーとして参戦したGT500で、一番初めに運転したマシンでした。 当時の愛車も、フェアレディZバージョンNISMOタイプ380RSでした。300台限定発売のモデルです。あのクルマでよくドライブに出かけましたし、サーキットでの練習セッションでも走りました。貸与されたクルマでしたが、とても気に入っていたので返したくなかったんですよ!5年間、日本中を走りまわったので、最終的に走行距離は8万キロくらいになりましたね。
私は現在、S30型フェアレディZを所有しています。ある日の午後ゆったりとドライブをしたり、日本の美しい風景をバックにキビキビと走る。どんな走りも楽しめるチューニングをしています。一つ言えることは、S30からZ33 GTレーシングカーに至るまで、どの「Z」にも確固とした「Zらしさ」があるということです。仕事でもプライベートでも、「Z」は私の人生の一部です。フェアレディZプロトタイプの開発に携わることができ、脈々と継承されている「Z」の伝説に貢献できたことを嬉しく思います。