副変速機付エクストロニックCVT
2010年 | 日産マーチから採用開始 |
---|---|
2010年 | 先進技術説明会で発表 |
効率化とコンパクト化を進めた、小型車用のCVT
CVT(Continuously Variable Transmission)は、スムーズで滑らかな変速を行う無段変速システムです。日産自動車は“低燃費” “伸びやかな加速感”といったCVTのメリットに早くから注目し、開発・採用を進めてきました。
副変速機付エクストロニックCVTは小型車用の新型CVTです。燃費性能のさらなる向上と、レスポンスのいい走行性能を実現しました。
技術の働き
CVTは、無段変速機とも呼ばれます。MT(マニュアルトランスミッション)やAT(オートマチックトランスミッション)とは異なり、何段かの変速比を選択するのではなく、無段階に最適な変速比を自動的に選択することができます。CVTを搭載した車両は、ほとんどの日常的な速度域において、最も効率のいい(最も燃費の良い)エンジン回転数で走ることができます。加速時や減速時にも、シフトチェンジの段差のない、スムーズな走行を実現します。
また、副変速比を採用することで、小型車に搭載可能なコンパクトなサイズとしながら、ローギアからハイギアまでの変速比の幅を大きく拡大しました。同時に、走り方に応じた変速比制御をおこなうことで、発進や低速時のレスポンス向上と、高速走行時のエンジンの低回転化を両立させています。
技術の仕組み
CVTは、2つのプーリー(滑車)の溝幅を変化させ、プーリー間に掛けられたスチールベルトの円弧半径を変えることで変速比をコントロールします。
上図のイラストのローギアの状態では、エンジン軸側プーリーのベルトの円弧半径直径が小さくなっています。これは、MT車やAT車のギアが低い状態(たとえば1速や2速)で、ゆっくりとしたスピードで走るのに適しています。
一方、ハイギアの状態ではエンジン軸側プーリーのベルトの円弧半径が大きくなっています。これはギアが高い状態(たとえば5速や6速)で、高速走行に適しています。
2つのプーリーの橋渡しをして直径を変える役目をはたすのが、スチールベルトです。
ここで、ローギア状態でのギア比をもっと低くすれば、加速がよくなります。2速でスタートするより1速のほうが力強いのと同じです。発進時のほか、低速でのレスポンスが向上します。
逆に、ハイギア状態でのギア比をもっと高くすれば、ハイスピードで走ってもエンジン回転数が下がるので燃費、静粛性がよくなります。高速道路を走る時、4速よりも5速のほうがエンジン回転数が下がるのと同じ理屈です。
したがって、ローギアとハイギアのギア比の幅(変速比幅と呼びます)を大きくすることで、加速性能に加えて燃費、静粛性も向上します。
従来のCVT では、変速比幅を拡大するには、プーリーの大型化が必要なため、レイアウトの制約から小型車では実現が困難でした。
副変速機付きエクストロニックCVT では、プーリーとベルトを用いた変速機能に加え、副変速機(2段変速)を採用することで、プーリーを小型化しながらも、大幅に変速比の幅を拡大しました。
また、トルクコンバーターのロックアップ領域の拡大、高効率オイルポンプの採用、変速部のオイル攪拌抵抗の低減などで、フリクションを30%低減。燃費性能の向上に貢献しています。
エクストロニックCVTの主な特長
変速比幅 | 7.3( 従来同型 6.0) |
---|---|
燃費 | +10%*( 目標値) |
フリクション低減 | -30%* |
軽量化 | -13%* |
コンパクト化 | -10%* |
- 当社同クラス従来型 CVTとの単体比較(当社調べ)