望月 浩彦さんは、クルマの写真を30年間撮り続けているプロの写真家です。日本全国のさまざまな撮影スタジオやロケ地において、あらゆる天候の中、クルマの撮影を行っています。年間150件もの撮影をこなす望月さん曰く、これまでのキャリアにおいて撮影した自動車関連の写真は数千枚にのぼるそうです。
望月さんの自動車写真への情熱は、なにがきっかけだったのでしょう。
「そもそもクルマにも写真にもあまり興味がありませんでしたが、学生時代にたまたま自動車関連の出版社でアルバイトをしていました」と望月さんは話します。
「そこで小川 義文さんと出会い、自動車写真の魅力を知ることになったのです。」
師である小川さんは、雑誌、広告などの自動車撮影を数多く手がける第一人者であり、クルマへの造詣の深さ、鋭い感性、撮影時の気迫にとても刺激を受けたと言います。それらは今、望月さん自身にも引き継がれています。
現在はスマートフォンのカメラ性能も飛躍的に向上し、日常的に写真を撮る方も多いはず。そして「ちょっとした工夫でもっと素敵な写真に仕上げることができます」という望月さん。
今回は誰でも真似できるクルマ撮影のコツを聞いてみました。
1) ポジショニング
- クルマの美しい曲線を捉えるために、撮影場所は周囲に何もない開放的な場所を選びましょう。一般的には、サイドとフロントが7:3の構図がベストと言われています。
- スポーツカーは車高が少し低いので、フロントライトの高さから撮影すると良いショットが撮れることが多いです。
- 低い角度から撮影すると、迫力のある写真が撮れます。車体側面のキャラクターラインが写り込むようなアングルと光の加減を見つけることができれば、そのクルマの個性が伝わる写真が撮れます。
2) 色味
- 暗い色、特に黒を写すのはとても難しいです。黒いクルマは鏡のような働きをし、近くのものを映してしまいます。赤いクルマも反射率が高いですね。そういう意味でも、周りに何もないようなところの方が本来のクルマの綺麗なラインが撮れます。
- 最近のクルマは、色が濃かったりメタリックだったりすることが多いので、撮影が難しい場合があります。特にメタリックなクルマは光を当てないとただ暗いままで、本来の色が伝わらないことがあります。なるべく明るく強い光を当て、それでも暗い部分は出てしまいますが、明暗差がなるべく少ない角度を見つけて撮るようにしましょう。
- シルバーは、明るい環境でも比較的簡単に撮影することができます。
3) 光の調整
- 意外に思われるかもしれませんが、実は曇りの天気が一番撮影しやすく、失敗が少ないです。昼間の明るい光の中で撮影すると、コントラストが強く出過ぎてしまう場合があります。
- 光と陰の部分のコントラストが強すぎると、陰の部分が真っ黒になってしまうので、避けたほうが良いでしょう。
- 太陽が昇る朝、または太陽が沈む夕方のやわらかな光を使うと、とても美しい写真が撮れます。
4) レンズ
- 最近のスマートフォンには、広角、標準、望遠の3つのレンズが搭載されているものもあります。広角レンズを使うとクルマが歪んで見えますが、標準からやや望遠のレンズならクルマの形を美しく写すことができます。
- 一眼レフカメラ等を使用する場合、望遠レンズの焦点距離が長すぎると圧縮されてしまい、臨場感が損なわれることがあります。標準から中程度の望遠レンズで撮影すると、臨場感を保ち、クルマを綺麗に撮ることができます。
- 走っているクルマのダイナミックな撮影は非常に難しいので、それなりの経験と技術が必要です。まず、スマートフォンだとタイヤや背景が止まって映ってしまったりするので、走っている感じを出すのは難しいです。シャッタースピードなどを自分で設定できるミラーレスやレンズ交換式のカメラを使用するのが良いでしょう。
おわりに
クルマの写真を撮るため、これまで世界各国を飛び回ってきた望月さん。特に好きな場所をお聞きすると、 「都会でも大自然の中でも、日本には美しい場所がたくさんありますが、特に北海道は『光の質』が他の場所とは違うと思います」
そして、クルマの写真を撮るなら、一番のお気に入りは「NISSAN GT-R」とのこと。 「2007年の初代から現行のモデルまで、さまざまな条件下で、何度も撮影しています。あのクルマには、深い思い入れがありますね。」
最後に、写真上達のためにはとにかく練習と試行錯誤が不可欠だと、望月さんは言います。
「写真は撮れば撮るほど、上達します。いろいろな角度から撮ったり、光の種類を変えてみたりと、さまざまなことを試してみてください。それが、より良い写真を撮るための第一歩です。」
みなさんも、ぜひお気に入りのクルマでお気に入りの1枚を。