電気自動車のバッテリーがおくる有意義なセカンドライフ

フォーアールエナジーとともに進める、使用済みEVバッテリーの再利用、再製品化、再販売、リサイクル。環境とコストの両面におけるメリット。

2021/01/27
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電気自動車(以下、EV)のバッテリーには、セカンドライフがあることをご存知ですか?

以前に日産ストーリーズでは、「日産リーフ」が動く蓄電池として活躍していることを紹介しました。今回は、「日産リーフ」がクルマとしての寿命を終えたあとも、車載バッテリーを取り出して再利用する取り組みを紹介します。

リサイクル

クルマが寿命を迎えても、EVの車載バッテリーは、同時に寿命を迎えるわけではありません。EVの車載バッテリーは、クルマが寿命を迎えるまで動力源として活用された後でも、新品時の60~80%の電力を貯蔵する能力があり、エネルギー貯蔵ソリューションとして再利用することができるのです。

そこで、日産のパートナーであるフォーアールエナジー株式会社(以下、フォーアールエナジー)の出番です。フォーアールエナジーでは、EVからバッテリーを取り出し、48個ものモジュールをそれぞれ独自の技術で分析し、ランク分けします。

Aランクのバッテリーモジュールは、自動車用に十分な性能を維持しているため、電気自動車の交換電池として使用できます。

Bランクのモジュールは、自動車に比べて使用負荷の低い定置用蓄電池などに使用します。例えば、昼間に太陽光で発電した電気を家庭用蓄電池に貯めて、夜間に使うということが可能です

Cランクのモジュールは、Bランクより更に使用負荷の低い用途、例えば停電時に作動するバックアップ蓄電池として活用できます。回収されたバッテリーの寿命は、そこからさらに10~15年なので、従来のバックアップ蓄電池として使われてきた鉛電池よりはるかに長いのです。例えば、冷蔵庫や照明を常時稼働させる必要がある食料品店などでは、停電や自然災害など電力網が故障した際のバックアップ電源が必要となります。そのような場合に、再利用バッテリーが十分に役に立つのです。

「日産リーフ」のバッテリーモジュールを持つフォーアールエナジーの牧野 英治社長

フォーアールエナジーは、日産と住友商事によって2010年9月に設立され、EVバッテリーの再利用、再製品化、再販売、リサイクルするための技術とインフラを開発してきました。EVのバッテリーをエネルギー貯蔵システムの一部として使用することは、二酸化炭素(以下、CO2)の排出量削減に貢献し、再生可能エネルギーの安定的な供給を実現する方策として大変有効です。EVバッテリーにさらなる価値を与えることでEVの価値はいっそう高まり、EVの普及にもつながります。

フォーアールエナジーの牧野さんは、元日産のEVプロジェクトメンバーで、これまでも EVの拡販に情熱的に取り組んできました。そして、現在はEVバッテリーの再利用に取り組んでいます。牧野さんは「EVが社会に与える影響力はまだまだ十分に評価されていません」と語ります。「10年前に『日産リーフ』が発売される前から、私たちはクルマが寿命を迎えたその先のことを考えることで、一歩前進することができるのではないかと考えていました。EVの場合、古いクルマを単に金属スクラップとして活用する以上の再利用が可能で、EVのオーナーの方にとってお得な、より良い再利用方法があることが分かったのです。」

牧野さんにとってEVバッテリーを再利用することは、環境面でのメリットを追求することにとどまりません。コスト面でのメリットも追及しています。EVにはメンテナンスコストと燃料代を削減できるという利点がありますが、ガソリン車のような内燃機関車よりも生産時のコストや購入コストが高いのが現状です。しかし、中古バッテリーの需要が高まれば、EVのオーナーは廃車時にバッテリーを高い価格で販売することも期待できます。フォーアールエナジーは、EV用としては適さなくなったバッテリーでも、日常生活の他の多くの領域に電力を供給するには十分な性能を持っていることに注目し、使用済みEVバッテリーを幅広い分野で活用し、普及させていくことを目指しています。

日本初の「使用済みEV用バッテリーの再製品化専用工場」(福島県双葉郡浪江町)

それでは、実際に再生バッテリーがどのような分野で活用されているかをご紹介しましょう。

フォーアールエナジーは、革新的な世界初のリユース蓄電池システムを開発しました。大阪府にある人工島 夢洲には「日産リーフ」16台分のリチウムイオンEVバッテリーが設置され、太陽光発電の蓄電に使われています。

「日産リーフ」の使用済バッテリーを世界で初めてメガソーラーの蓄電池に活用(大阪府の人工島 夢洲)

さらに、鹿児島県の甑島(こしきしま)では、CO2を排出しない「エコアイランド」になるという目標の達成のために、リユース蓄電池を太陽光で発電した電気の貯蔵に活用し、しばしば停電が発生する離島での電力インフラの安定化を支援しています。

また、より身近なところでは、太陽光発電、蓄電池、EVやPHEVの電気を出し入れできるV2X(Vehicle to X)を統合制御するV2X付蓄電池を開発しています。平時はCO2と電気代の削減に貢献し、停電などの有事には非常用電源として活用することができるため、今後、太陽光発電と合わせて導入が進むことが期待されています。また、工場で部品を運ぶ無人搬送機(AGV)に使用済みEV用バッテリーを活用したり、「日産アリア」のEVバッテリーを再利用する方法も模索しています。

このように、フォーアールエナジーの取り組みは様々なメリットを生み出す可能性を持っていますが、実際の運用開始には少なからず時間がかかりました。なぜなら、「日産リーフ」のバッテリーの寿命が大変長く、これまで使用済みとなったバッテリーがとても少なかったのです。しかし、「日産リーフ」の誕生から10年を迎え、バッテリー再利用、再製品化、再販、リサイクルの実証実験結果やノウハウの蓄積とともに、十分な量の使用済みバッテリーが回収できるようになってきました。

一方で、世界に目を向けてみると、地球温暖化対策の一環として、2035年からガソリン・ディーゼルなどの内燃機関(ICE)搭載車両の販売を禁止する国や地域が増えてきています。あまり知られていないことですが、EVやPHEVのバッテリーを製造する際にも、容量当たり100kg-CO2/kWh程度のCO2が排出されると言われています。日産とフォーアールエナジーが推し進めているバッテリーの再利用は、バッテリー製造時の CO2を削減するという観点からも、大きな役割を担っているのです。日産は、10年以上前からあるビジョンを思い描いていました。

それは、使用済みとなったEVバッテリーに第二の命を吹き込むこと。電気自動車用として役目を終えたEVバッテリーを取り出し、それを再利用するビジネスを立ち上げることでEVの価格を引き下げること。さらに手頃な価格で再利用バッテリーを提供することで再生可能エネルギーの普及、 CO2排出量の削減に貢献することです。そして今、そのビジョンはフォーアールエナジーによって現実のものとなり、電動化を促進する波に乗って、さらにその可能性を拡げていきます。

車載バッテリーは、最終的にリサイクルされるまで、様々な用途、ニーズに応じて、社会で有効に活用され続けるのです。

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