ブリコラージュ発想が生んだプロトタイプセダン
「コンテンポラリー ライフスタイル ビークル」

セダンの機能やデザインを損なうことなく、さまざまな機能を実装

『くうねるあそぶ』の現代解釈

「コンテンポラリー ライフスタイル ビークル(CLV)」は、日産を代表する「スカイライン」をベースに、セダンという形式を守りながらも、そこに快適に「食べる」「寝る」「遊ぶ」ための数々の仕掛けをを詰め込んだプロトタイプモデルです。1988年に発売された「セフィーロ」の“くうねるあそぶ”というコンセプトを現代に蘇らせた、まさに「アナザー・イノベーション」の結晶なのです。

コンテンポラリー ライフスタイル ビークル

30を超える驚きの仕掛け

CLVには、ユーザーの利便性と快適性を追求した30以上もの革新的な機能が搭載されています。アームレスト下のわずかな隙間に仕込まれたスライド式サイドテーブルは、航空機のビジネスクラスを想起させる上質な設計。保温機能付きのボトルヒーターや、脱着式のカーナビゲーション画面、それを装着できるステアリングホルダーなど、快適に「食べる」ための工夫が随所に施されています。

ステアリングホイールに装備された「これっきりワンボタン」を押せば、AIが起動し、ドライバーの望むさまざまな機能を先回りして提供。食事や仮眠時には、シートポジションを自動でリクライニングし最適化してくれます。さらに後部座席のヘッドレストを活用したヘッドフラットスペーサーと、シートバックと座面の間の隙間を埋めるシートフラットスペーサーの組み合わせにより、ドライバー席でも快適に「寝る」ことが可能に。後席を倒せばフルフラットベッドに様変わりし、天井に埋め込まれたムーンルーフビジョンで映画鑑賞なども楽しめます。

雨の日に重宝するサイドシル内の長傘収納、ハンガーに早変わりする後部座席のグリップ、サイドミラー内蔵のゴミ箱、そしてBピラーに装備されたアウトドア用の汎用フックなど、快適に「遊ぶ」ためのアイデアにも事欠きません。これらの機能は、日常のあらゆるシーンで、ユーザーの期待を超える価値を提供します。

脱着式のカーナビゲーション画面、それを装着できるステアリングフォルダー
サイドシル内の長傘収納

AIアシスタントは搭載ではなく同居

CLVには、AIアシスタント「SORA」が搭載されています。SORAは、車内の随所に配置されたセンサーとアクチュエータを介して、まるでクルマと一体化したかのように機能します。乗員の状況や車内の環境を常に把握し、スマートフォンを通じて対話することで、ドライバーとの深いコミュニケーションを実現するのです。

例えば、SORAは傘が収納されているかどうかを確認し、もし忘れていればリマインドしてくれます。また、ブランケットの洗濯時期を教えてくれたり、乗員が食事中なのか仮眠中なのかを察知して、最適な車内環境を提案してくれたりもします。

AIアシスタント「SORA」

SORAは単なる情報の受け渡しだけでなく、ドライバーの習慣や嗜好を学習し、それに合わせて成長していく存在でもあります。まるで人間の優秀なパートナーのように、ドライバーに寄り添い、サポートしていくのです。

これは「搭載」という言葉では表現しきれない、AIとの革新的な関係性。「同居」とでも呼ぶべき、新たな共生のカタチがここにあります。人とAIが互いに理解を深め、ともに進化していく――CLVは、そんな未来のモビリティライフも具現化した一台なのです。

ブリコラージュ思考が導く、新たなものづくりのプロセス

CLVの開発プロセスは、従来のエンジニアリングとは一線を画すものでした。セダンとしての機能やスタイリッシュなデザインを損なうことなく、さまざまな機能を実現するために、開発者たちは徹底的な観察から始めました。彼らは長い時間、ただクルマに乗り込み、思索にふけったのです。

時には半日以上もクルマと向き合い、頭の中で試行錯誤を繰り返しながら、数多くの斬新なアイデアを創出していきました。こうして思いついた機能をAIと融合することで、外見からは想像もつかない驚きの体験を実現。現代のライフスタイルに合った形で「食べる」「寝る」「遊ぶ」といった日常のシーンを、クルマの中に巧みに織り込んだのです。

これこそが、「ブリコラージュ」の真髄です。ゴールを決めて最適解を追求するエンジニアリングとは対照的に、ブリコラージュは対象との対話を重ねながら、既存の素材や道具を創意工夫で組み合わせ、当初の想定を超える何かを生み出していく。まさに、観察と創造の連続によって、思いもよらない価値を生み出すことに成功したのが、このCLVなのです。

CLVの制作プロセス

  1. 車内を観察しながら熟考し、生まれたアイディアをポストイットで貼り付け
車内を観察しながら熟考し、生まれたアイディアをポストイットで貼り付け
車内を観察しながら熟考し、生まれたアイディアをポストイットで貼り付け
  1. アイデアをスケッチに
アイデアをスケッチに
アイデアをスケッチに
  1. 段ボールや発泡スチロールで試作
段ボールや発泡スチロールで試作
段ボールや発泡スチロールで試作

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