1933年の創立以来、「他のやらぬことを、やる。」という精神で、人々の生活を豊かにするためにイノベーションをドライブしてきました。時代を切り拓き、モビリティの未来を創造するために必要なのは〈無限大の想像力〉。日産においてこの想像力が開花する場所の1つが、デザインセンターです。
日産には、世界6都市にデザインセンターがあります。そしてグローバルなデザイン活動のハブとして、各地のデザインセンターをつなぐ役割を果たしているのが、神奈川県厚木市にあるグローバルデザインセンターです。
コンセプトカー:未来を描くキャンバス
世界各地のデザインセンターでは、皆さんが街で見かけるクルマ、いわゆる「市販モデル」だけでなく、「コンセプトカー」のデザインも行っています。デザイナーは「コンセプトカー」によって、未来のクルマの方向性を模索し、最先端のデザインを創造することで、未来のクルマやライフスタイルの可能性を提示します。
日産は2023年のジャパンモビリティショーで展示されたようなコンセプトカーで、日産ならではの想像力や構想力、革新的なアイデアを提示し、そのデザインや技術がお客さまにどう受け入れられるかを確認しています。しかし、デザイナーにとってコンセプトカーとは、それ以上の大きな意味を持ちます。市販モデルとは異なり、制約なく自由に大きな夢を描くことができる、まさにクリエイティビティを大いに発揮できるキャンバスなのです。
今回のストーリーズでは、過去を振り返りながら、米国と欧州のデザインセンターから生まれた象徴的なコンセプトカーをご紹介します。
日産デザインアメリカ
2023年2月に設立40周年を迎えた、カリフォルニア州・サンディエゴにある日産デザインアメリカ(NDA)のスタジオは、最新技術を牽引し画期的なデザインを生み出してきました。
1980年代:コンセプトカー「NX-21」
1980年代に日産が提示した最先端の技術を象徴するのが、1983年に発表した「NX-21」です。このクルマは、40周年を迎えた日産デザインアメリカ(当時の名称は日産デザインインターナショナル)が手がけたコンセプトカー第1号でした。
「NX-21」は空気抵抗を減らした流線形のデザインで、ガルウィングドアが採用されました。また、大きな車室を備え、さまざまな燃料で動くリアタービンエンジンも搭載されていました。
このコンセプトカーのデザインを担当したのは、現在エクステリアデザインのシニアマネージャーを務めるハイレン・パテルです。パテルは当時を思い起こし、「NX-21」のプロジェクトは、品質・価格・技術の三拍子が揃ったクルマを世に送り出すという日産の意気込みを示していたと語っています。
「『NX-21』は見た目だけでなく、機能面からも型にはまらない革命的なクルマで、未来のクルマそのものでした」
そして、1986年には「NX-21」の外観の要素が取り入れられ、これまでのクルマにはなかった脱着式のハッチルーフを搭載した第二世代の「パルサーNX」が発売されました。その角張ったリアやルーバーテールランプに「NX-21」の影響を見てとることができます。
2010年代:「Xmotion(クロスモーション)」コンセプトカー
日産「ローグ」は、アメリカで人気の高いSUVです。2010年代後半に刷新されたそのデザインには、コンセプトカー「Xmotion(クロスモーション)」のエッセンスが表現されていました。
「未来のデザインをどのように表現するかと考えたとき、『Xmotion』コンセプトを使おうと思ったのです」と語るのは、NDAで当時「Xmotion」のチームに所属していたプロジェクトリードデザイナーのラーズ・トーバートです。デザイナーたちは、日産に受け継がれている日本のDNAからインスピレーションを得て、タフでありながらも情緒的な要素も兼ね備えた市販モデルを生み出しました。
「Xmotion」のデザインエクステリアに採用された大胆な造形のフェンダーやブーメラン型ヘッドランプ、Vモーショングリルなどは、現行の「ローグ」に受け継がれています。
「Xmotion」は第三世代の「ローグ」を予見させるコンセプトカーでした。そして、そのスタイリングは、「ローグ」以外の他の日産車にも影響を与えています。
日産デザインヨーロッパ
ロンドンに拠点を置く日産デザインヨーロッパ(NDE)は、2003年の設立以来、20年以上にわたり「キャシュカイ」などのアイコニックなデザインをリードし、日産の成長に貢献してきました。日産デザインアメリカ同様に、節目の年を迎えた同デザインセンターは、パディントンベイスンのグランドユニオン運河のほとりにオフィスを構え、エクステリアデザイナーやインテリアデザイナー、クレイモデラー、デジタルアーティスト、カラーとトリムの専門チームなど、60名超が在籍しています。
2000年代:「キャシュカイ」コンセプト
NDEが最初に取り組んだプロジェクトが「キャッシュカイコンセプト」でした。従来のCセグメントハッチバックのようなボディスタイルとSUVのような高い着座位置が印象的なデザインで、2004年にジュネーブで開催されたモーターショーにおいて発表されました。
このコンセプトカーをベースとし、欧州のお客さまや交通環境にあわせた市販モデル「キャシュカイ」を2006年秋にパリで発表しました。「キャシュカイ」は翌年に発売すると日産の予想をはるかに上回る反響を呼び、「クロスオーバー」という新しいクルマのカテゴリーを切り拓いたのです。
「日産コンセプト20-23」:ロンドンに住む人々をターゲットにした次世代のコンセプトカー
NDEは2023年9月に設立20周年を記念して、スポーティで都会的な新しいEVコンセプトカー「日産コンセプト20-23」を発表しました。このEVのデザインコンセプトは明確かつシンプル。なぜなら若手メンバーを含むチームに与えられたミッションは、「ここロンドンであなた自身が毎日運転したいと思うようなクルマをデザインせよ」というものだったからです。
このクルマのデザインには、セバスチャン・ジーザスのようなNDEの優秀なデザイナーの能力がいかんなく発揮され現代のライフスタイルにおけるさまざまな要素、例えば都市での生活やオンラインゲーム、そしてゼロ・エミッションモビリティなどが表現されています。
「若手デザイナーで議論し、フォーミュラEからも着想を得ながら、SF映画からそのまま出てきたようなクルマにしたいと考えました。未来を先取りした私たちの考え方を、今こそコンセプトカーに反映すべきだと思ったのです」とセバスチャンは述べています。
「日産は見た目のカッコよさだけではなく、環境への負荷を最小限に抑えたクルマをつくることを目指しています。流線形で近未来感のあるエクステリアや、デザインの細部にまで取り込まれたさまざまな技術など、『日産コンセプト20-23』は、私たちが将来に向けてお客さまに提供したい価値を具現化したものです。」
デジタルシフトでデザインチームの連携を強化
日産はデザインプロセスのデジタル化を推進し、デザイナーが新たなインスピレーションを得られるような革新を続けています。2023年10月には日本のグローバルセンターに デザインプレゼンテーションホール「 The Arc 」をお披露目し、デザイン開発プロセスに大きなブレークスルーを生み出しました。このホールを通じて、世界中のデザインチームの連携をさらに強化し、よりお客さまのニーズを満たすクルマを開発していきます。
このプレゼンテーションホールには、湾曲した24KのLEDスクリーンや7.1ch音響システムなどが装備され、ゲーミングエンジンを使って投影するコンテンツを作成するので、世界のさまざまな環境をリアルタイムで臨場感と没入感をもって再現することができます。また、オンラインでどこからでもアクセスできるため、インクルーシブでインタラクティブ、クリエイティブな開発環境を生み出すことができます。
日産では、コンセプト開発から実際のデザイン開発に至るまで、デザイナーの活動に大きなブレークスルーが生まれています。大胆な発想力とクリエイティビティで未来をデザインする、世界中の日産のデザイナーたち。デザインの力で「モビリティとその先」を切り拓くデザイナーの挑戦は、今後も続いていきます。