ストイックな「感性」探求者

最近、カーディーラーや家電量販店、百貨店など、さまざまな場所で見られる不思議な光景は、「感性」探求者たちの仕業だった!ところでみなさん「感性に訴えかける品質」=「パーシブド・クオリティー」をご存知ですか?

「もうひとつの品質物語」ストイックな「感性」探求者 3:39

ここは休日のカーディーラー。立ったりしゃがんだり、クルマをせわしなく、そして執拗に眺める男がいる。家電量販店のテレビ売り場では、液晶テレビの背面を一台一台吟味して、満足そうな表情を浮かべる男性の姿がある。どちらも、ちょっと不思議な光景だ。デパートでは洋服を一枚一枚撫で回し、裏地やタグを穴があくほど見つめる男性を発見。すさまじい集中力だが、彼はここが婦人服売り場だと気付いているのだろうか…。
買い物をするわけでもないのに、商品を徹底的にチェック。細部の造り込みやその触感を記憶するかのように手を触れている人物。表情は真剣そのものだが、明らかに怪しい。しかし、そのままそっとして頂くことをお願いしたい。彼らは“お客さまの感性に響くクルマ”を常に考える、日産の「感性」探求者たちなのだから。

PATROLヘッドランプ

PATROLのヘッドランプは、性能の良さと高級感を演出するPQ視点の工夫がある。こうした工夫を積み重ねることで、人間の感性に訴えかける感性品質が生まれている。

クルマを見た時に「よく作りこまれていて高級感がある」と感じたり、座席に座った瞬間に「気持ちいい」と感じたり、人の感性に訴える性能もまた、れっきとしたクルマの品質だ。クルマには、走行性能だけでなく、人間の本能とも言える感性が「Yes!」と感じる「感性品質」=PQ(パーシブド・クオリティ)がある。
そんなPQを追求し、クルマの満足度を高めるプロ集団が、日産社内にいるパーシーブド・クォリティ部のメンバーだ。メンバーたちは、お客さま視点で、高品質を感じる処理とは何か?気持ちよいと感じる触感とは何か?を日常生活においても常に考えているのだ。感性品質を追い求める彼らは、日常生活においても感性品質の研究に余念がないのだ。日常の観察に加え、他社のクルマを撮影した膨大な資料など、世の中のあらゆるクルマをベースに感性品質の研究に取り組んでいる。クルマの印象を決定づけるグリルや人々が品質を感じやすいインパネ周りはもちろん、エンジンルームの処理の仕方、パネルの溶接など、普段見えない所まで目を配り、感性に訴えかける価値を研究するのが彼らの仕事だ。

メンバーたちは、研究データを元にPQという難解な価値を数値化することで、新しく開発するクルマに目標値を設けている。それが、従来のクルマや他社のクルマ以上の品質を目指す「PQスコア」と呼ばれる数値だ。部材、レイアウトなど、開発中のクルマがさまざまな要件を取り入れて市販車に近づくにつれ、PQスコアが基準値を下回りそうな事態が起こることもある。そんなときこそ、彼ら、パーシーブド・クォリティ部の出番である。デザイン部門や生産部門を交えて議論を重ね、PQスコアの基準値を保ちつつソリューションを提案。精度が高い解決策の提案ができるのも、これまで10年以上培ってきたPQ研究があるからこそだ。

PATROLのスピードメーター

シンメトリーになったPATROLのスピードメーター。目盛の幅や間隔を等しくするなどの作り込みが、メーターの見やすさを演出。数字の書体統一や文字に使った白い色などが高級感を感じさせる。

しかも、PQは発売することが研究の終わりではない。PQの成果を見極めるため、新車発売後にお客様の意見に耳を傾け、開発時に掲げたPQスコアを検証するのだ。基準値は、開発中のクルマが市場に登場する数年先を見越して作られる。長年積み上げてきた経験やノウハウから、未来の価値をできるのも彼らの強みである。設計から販売後まで、メンバーたちはPQという視点で常にクルマをウォッチし続けている。

その成果は、例えば、日産「PATROL」に見ることができる。PATROLのヘッドランプに注目すると、性能の良さと高級感を演出するPQ視点の工夫が見て取れる。性能の良さは、メインビームを強調したことでよりいっそう明るさを感じさせたり、しっかりした目線によってまっすぐ遠くまで届くことをイメージさせる。また、高級感は、手が込んでいると感じさせる立体的な凹凸形状や、ライト内部のギザギザの溝の面を鋭角にしていることで演出。こうした工夫を積み重ねることで、人間の感性に訴えかける感性品質が生まれている。

そして、PATROLはスピードメーターも、見やすさの工夫に加え、こだわった作り込みで高性能を演出している。メーターの特徴は、シンメトリーになっていること。目盛りの幅や間隔を等しくしたことなどの作り込みが、見てすぐ理解できるメーターだと感じさせ、さらに、数字の書体統一や文字に使った白い色などが高級感を感じさせているのだ。もちろん、これらの工夫はほんの一例だ。PQという品質は、PATROLだけでなく、日本で販売されている様々な日産車にも搭載されている。

冒頭で紹介した不思議な光景は、日産の快楽探求者たちの行動だ。テレビの裏側を見ていたのは、細かい所まで処理されていることを確かめるため。裏側にも気を配られた製品は、手を抜かないモノ作りの証拠である。洋服からは、縫製の善し悪しからPQを感じ取っていた。

底なしに感性に訴える価値を追求し、現状に満足できない快楽探求者たち。「どこに行ってもモノを簡単に買えなくなってしまった」とわが身を振り返る彼らは、真面目でストイックな、根っからの快楽探求者なのだ。日産の感性品質は、彼らの探究心によって高まり続けている。