結婚生活のためのレッスン

みなさんは自動車を買う時に、自動車販売店へどのくらい足を運ぶだろうか? 1カ月に4回? 3カ月に10回? おそらく、半年かけて30回も通う人は少ないはずだ。
何が言いたいかというと、自動車会社との付き合いは自動車を買ってからのほうが長くなる、ということである。10年でも20年でも、自動車に乗っている期間は、点検や整備などで自動車会社との関係は続く。恋愛の期間より、結婚してからの時間のほうが長いのに似ている。
日産は、結婚してからの期間を幸せに過ごすために、サービス品質の向上に取り組んでいる。そしてサービス品質への基本的な考え方は、グローバルで共通している。すなわち「一発修理率向上」「正しい作業」「適切な時間」の三本柱を軸とする。とはいえ、サービスへの要求はそれぞれの国や地域によって異なり、サービス担当者も各地域に実情にあった人材を育成する必要がある。まずは、日本におけるサービス担当者の育て方をお伝えしたい。

テストコースで行われた「走行体感シャシー講座」のひとこま。受講対象は日産1級整備士で、オートマチックトランスミッション、CVTの正常時とトラブル時の走行性能の違いを体感することが講座の目的。VDC(電子制御式横滑り防止装置)など、シャシーの最新技術を肌で知ることもできる。

時代にあわせたトレーニング内容

日本においてサービスを担当するのは整備士とアドバイザーのふたつの職種である。実際に点検・作業を担当する整備士を英語で言えば「mechanic」となる。一方、アドバイザーは、お客さまとのコミュニケーションを担当する。
女性ユーザーが増える状況にあっては、わかりやすい平易な言葉で伝える必要がある。また、電子制御システムが大量に使われるようになっている今、専門用語をかみ砕いて伝える能力は不可欠である。したがって、お客さまにサービスの内容を正確に、わかりやすく伝えるアドバイザーの役割はこれからさらに重要性を増すはずだ。クルマの技術知識はもちろんのこと、お客さまへの説明などのサービススキルが求められる。日産では、スキルによってアドバイザーの資格を認定する制度があるが、マスターサービスアドバイザーと呼ばれる知識とサービススキルのレベルが高いアドバイザーが存在する国も多い。
不具合を修理する整備士にも資格認定制度がある。日本においては、技能によって1級から4級までのランクが付けられている。2年前、車両メカニズムの複雑化に対応して、日産は整備士のトレーニング体制を変更している。
全般的にトレーニングの時間が増えた中で、特に内容が濃くなったのがお客様対応である。お客様対応の講座を受け持つ岡崎トレーナーによれば、日本のお客さまは整備士から直接、不具合の原因や改善策を聞いた場合に満足度が高くなるという。きちんとした説明をすることも含めて、お客さまに満足していただく整備を目指しているのだ。

日産1級整備士を目指すテクニカルスタッフが受講する講座の様子。電子制御装置の増加に伴い、整備が複雑化していることに対応するのはもちろん、お客さまの気持ちを理解しながらコミュニケーションを図ることの重要性も学ぶ。

コミュニケーション能力を磨け!

日本だけでなく、世界中の日産のサービス担当者たちが技能の向上に取り組んでいる。たとえばアメリカでも、サービス担当者とお客さまとのコミュニケーションの重要性が増す一方だ。ディーラーへ「1回入庫」で修理・点検が終わるかどうかは、お客様の関心が高いところ。アドバイザーたちはお客様からの相談内容をヒアリングし、整備士に内容を伝える。「アドバイザーたちには“内容を正しく整備士に伝えるスキル”が強く求められている。お客様とも整備士とも良いコミュニケーションができることが、1回入庫につながっていく」とアメリカで講座を企画するRobert McCann氏は言う。
整備士のトレーニングはAutomotive Service Excellenceと呼ばれるアメリカの自動車サービス技術の民間資格に沿って行われている。北米日産による講義や講座を受講後、この資格に合格することが整備士には求められる。
こうして高いレベルのサービス担当者たちを養成する背景には、講師たちの工夫がある。研修や必須講座を企画する講師たちは、若者たちにモチベーションを植えつけ、高い職業意識を持たせるためにあれやこれやの工夫を欠かさない
日本で講座を持つ講師によれば、「実際にクルマを使った研修」「テストコースでクルマを走らせて行う研修」など、実際に自動車を使った講義が効果的だという。
日本やアメリカ以外の地域でもさまざまな形でトレーニングは行われている。ディーラーのサービススタッフは認定試験に挑み、高品質サービスの提供を目指す。前出の岡崎トレーナーは言う。
「日産のサービス担当者は勉強熱心。自ら積極的に学び、より上位の資格へチャレンジしていく」
認定制度を用意し、トレーニングを行うトレーナーたち。それを熱心に学ぶサービス担当者たち。お客さまに満足していただくサービスを提供するために、今日もサービス担当者たちのチャレンジは続く。より幸せな結婚生活を送れるように-。