クルマを作らない工場

「もうひとつの品質物語」クルマを作らない工場1:54

家電や携帯電話などの工業製品、食糧加工品に嗜好品…。日夜世界中の工場で、ありとあらゆるモノが生産されている。
しかし、日産自動車の出口氏は、「うちにはモノを作らない工場がある」と胸を張る。
その工場は「グローバル車両生産技術センター( Global Production Engineering Center )」、通称“GPEC”という。

出口氏

日産自動車は、標準生産システム(Nissan Integrate Manufacturing System)というのを作っています。
そのマスターをGPECで作りまして、生産するための最適条件を見つけて、それを各国に転写することによって、効率的に、早く新型車を立ち上げることができるようになりました。

つまり、GPECではクルマではなく、クルマを作るための「ノウハウ」を作っているのだ。
2007年にGPECが稼働する以前は、例えば日本で発売された新型車をタイで生産できるようになるまで、数年を要していた。
GPECでは工場のマスター作りだけではなく、人材育成も行っている。
世界中の拠点からスタッフがGPECに集まり、トレーニングを受け、ここで得た知識を各拠点へと持ち帰っているのだ。

出口氏

GPECでは今までに9ヶ国、330名近くの方を受け入れて、人材教育も行っています。
その上で、きちんと新型車を立ち上げる能力を身につけてもらって、卒業してもらっているという形になります。
各拠点から来る人材をいかに育てて、「Nissan Way」という“DNA”を移植していくか…というところが、非常に大事だと考えています。

“DNAの移植”…。なるほど、GPECを語るのにこれほど的を射た言葉もない。日産がグローバルで同時に新型車を生産できる背景には、GPECという縁の下の力持ちが存在したのだ。