ミラーボアコーティング

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エンジン内部の抵抗が減り、燃費とパワーが向上します

エンジンのエネルギー効率は車の燃費や動力性能に大きくかかわっています。エンジンのエネルギー効率を改善することは、とても大切なことなのです。
エネルギー効率を引き下げる原因はいくつかありますが、そのうちのひとつに「機械損失」というものがあります。機械が擦れる時に発生する抵抗によって、エネルギーの効率が下がるのです。「ミラーボアコーティング」とは、エンジン内部の抵抗を減らすことでエンジンの効率を上げる技術のひとつです。

技術の働き

現代のエンジンは、シリンダーブロックに軽量のアルミを採用するケースが増えています。そしてシリンダーブロックに筒状のスペースを設け、その中でピストンが上下運動します。ただしアルミでは摩擦や熱に耐えられないので、鋳鉄製のシリンダーライナーという筒状の部品を用いて、その内部でピストンを動かします。
「ミラーボアコーティング」とは、この鋳鉄製シリンダーライナーを挿入する代わりに、溶かした鉄をシリンダーボア内部に吹き付ける技術です。結果、シリンダーボア内部の壁に鉄の膜が生まれます。そしてこの膜を鏡面仕上げにすることで、ピストンが動く時の抵抗が大幅に減るのです。
抵抗低減による効率化がこの技術の眼目ですが、ほかにもメリットがあります。
まず、シリンダーライナーを廃することで軽量化を実現しました。
また、約2mmの厚みがあるシリンダーライナーに対して、「ミラーボアコーティング」は0.2mmと非常に薄く、熱が伝わりやすくなります。結果としてエンジンの冷却性能が上がるのでノッキングが起こりにくくなり、エンジンの効率が全体的に上がりました。エンジンの働きに生まれた余裕は、燃費を伸ばす方向に使うことも、パワーを増す方向に使うことも可能です。
「ミラーボアコーティング」は、特別な装置を使うことなく、エンジンの基本性能を向上させることができます。

技術の仕組み

シリンダーボア内部をコーティングするという技術は、昔から存在していました。ただし、非常に手間がかかる技術なので、レーシングマシンや特別なスポーツカーだけに用いていました。日産でも、GT-Rに採用した実績があります。
日産は、溶けた鉄を吹き付けるアルミの表面に前処理をする独自技術により、この技術のコストを大幅に引き下げることに成功しました。量産エンジンにもコストの上昇なしに、この技術を採用できるようになったのです。

(左)鋳鉄ライナーと従来型4気筒エンジン。(右)ミラーボアコーティングを採用した新型4気筒エンジン。