想いを原動力に:廃棄物から、新しい価値を生み出す
デビッド リプカ、マテリアルエンジニアリング部 シニアマネージャー(米国)
父親であり、そして熱心なガーデナーでもあるデビッド リプカ
彼が大切にしているのは、植物や土、微生物などが静かに支え合いながら成り立つ、生態系の美しさです。
「庭づくりは、いろいろな要素が自然に関わり合いながら、一つの形をつくっていくのを感じられるところが好きですね。そこには見た目の美しさもありますし、バランスの大切さもあります。何より、"待つこと"を教えてくれます。私は性格的にはせっかちなのですが、自然には自然のペースがあるので」
子どものころのデビッドは、数学が好きで、身の回りのものを分解しては仕組みを確かめていました。中に何があるか分からなくても、「なぜこうなっているのか」を知りたい―その好奇心が、今の仕事の原点になっています。
クルマは、たくさんの"つながり"から生まれる
デビッドは、クルマ一台一台を「小さな奇跡」のようだと感じています。世界中から集まった何千もの部品が、精緻に組み合わさり、一台のクルマとして完成する。そのプロセスは、実は毎日のように繰り返されています。この"つながり"の視点が、彼の考え方の軸です。
複雑さは、乗り越えるべき壁ではなく、新しい可能性が生まれる場所なのです。
「そうやって見ていくと、『もっと良くできるかもしれない』という気づきが増えていきます。環境への負荷を減らしながら、同時に価値も高められたら―そんなことを自然と考えるようになりますね」
挑戦のはじまり
デビッドが日産に入社したのは2011年。材料の仕組みを深く理解し、その知識を"社会にとって意味のあるもの"につなげたいと考えていました。転機の一つとなったのが、米国テネシー州スマーナ工場で生産された2013年型の日産リーフです。「当時は、簡単な挑戦ではありませんでした。でも、『誰かがやらなければ前に進まない』という思いがありました」
プラスチック廃棄物の削減、CO2排出量の低減、電気自動車のコスト課題―複数の難題に同時に向き合ったこの取り組みは、マテリアルエンジニアリングが"製品価値"と"社会的価値"の両立に貢献できることを示しました。
「できない」と言えない状況の中で
新型コロナウイルスの影響により、世界的に材料供給が不安定になったとき、デビッドとチームは迅速な判断を求められました。品質を守りながら、新しい材料を短期間で検証する必要があったのです。
「状況は日々変わっていました。その都度、最善策を探し続けるしかありませんでした」
デビッドにとって、ブレイクスルーとは必ずしも大きな出来事ではありません。
新しい素材を試すこと、検証のスピードを高めること、コストと品質のより良いバランスを見つけること。一つ一つは地道でも、確実に前進につながっています。
「すべてのクルマは材料からできています。材料をどう選び、どう使うか次第で、コストも品質も、そして環境への影響も変わってきます」
それは、派手ではないかもしれませんが、確かな変化を生み出す取り組みです。
デビッドのこれまでの歩みは、好奇心と忍耐、そして"つながりを理解すること"の大切さを映しています。
材料と向き合うときも、庭の成長を見守るときも、本質は同じ。時間をかけて丁寧に向き合うことで、想いのあるアイデアは、やがて意味のある価値へと育っていくのです。