研究通信

当ラボの研究に関する情報、提案を不定期に発信するものです。是非お読みください。

見ているのに見えていない!?交通安全と有効視野計測システムの関連研究

2023.07.19NEW研究通信#7
見ているのに見えていない!?交通安全と有効視野計測システムの関連研究
 昨年、交通安全未来創造ラボにおいて、有効視野計測システムのプロトタイプを開発し、発表しました。その後、北里大学にて、高齢ドライバーの協力を得て当システムの実証実験を実施してきました。今回、その実験結果を分析しましたので報告します。

高齢者の自動車運転能力と運動能力との関連研究

2023.04.20研究通信#6
高齢者の自動車運転能力と運動能力との関連研究
 今回の調査は、「高齢者の自動車運転能力と運動能力との関連」について検証したものです。一般的には、高齢者の自動車運転能力には認知機能が影響すると考えられています。しかし、運転中に姿勢を安定させ、ハンドル・アクセル・ブレーキを状況に応じて適宜適切に操作するためには、運動能力が必要であることは想像ができます。ところが実際には、自動車運転能力と運動能力との関連を調べた調査は少ないのが現状です。

社会デザイン研究 高齢ドライバー運転行動意識&社会・人との関り調査「社会や人との関り編」

2023.04.18研究通信#5の3号
社会デザイン研究 高齢ドライバー運転行動意識&社会・人との関り調査「社会や人との関り編」
今回は高齢ドライバーの社会や人との関り等(運転行動への間接影響要因)を中心にまとめました。

社会デザイン研究 高齢ドライバー運転行動意識&社会・人との関り調査「周囲の車や歩行者・自転車との関係編」

2023.04.18研究通信#5の2号
社会デザイン研究 高齢ドライバー運転行動意識&社会・人との関り調査「周囲の車や歩行者・自転車との関係編」
今回は運転行動意識について周囲の車や歩行者・自転車との関係(他者調和性・心理状態など)を中心にまとめました。

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ラボの機能

交通安全未来創造ラボは、研究機能と社会実装機能の2つがあります。

  • 研究機能
  • 社会実装機能

研究機能高齢ドライバーや幼児・児童の交通事故要因を解明する基礎研究や、その解決方策を産み出す研究などを行っていきます。

現在の研究内容

高齢ドライバーの交通安全

研究フロー

ラボでは、まずは大きな社会問題になっている高齢ドライバーの交通安全から取り組んでいきます。
高齢ドライバーの交通事故削減では、4つのステップで研究活動に取り組みます。

  • STEP1/2 このステップでは、少しでも早く 運動機能や基礎体力の衰えを自覚する仕組み、そして運転寿命を延ばすためのソリューションを開発します。 そのために、交通事故の要因にはどのようなものがあるのかを、その背景から掘り起こして研究していきます。
  • STEP3このステップでは、開発したソリューションを社会に広め、根付かせるためのソーシャル研究を行っていきます。
  • STEP4このステップでは、開発したソリューションの効果検証を行っていきます。 検証結果は、次の取組みに活かしていきます。
STEP1 交通事故要因の究明基礎研究への取組み: 交通事故の要因究明

高齢ドライバーの交通事故要因を様々な角度から、広く、深く、探求していきます。

これまでの研究から、事故に関わる運転能力は、認知や、様々な身体機能が
関連しあっていることが徐々に分かってきました。
この関連性を正しく把握すること、そして、これら認知・身体機能の低下を引き起こす背景要因までさかのぼって探究し、
解決策を提案することが、私たちがチャレンジする課題です。

研究内容の紹介

@コンピュータグラフィックスを用いて、高齢ドライバーの視認性研究と、その自覚ツール及び交通安全ソリューションの開発。2021年は、北里大学が、日産自動車の支援・監修、株式会社PRIDIST協力のもと、「有効視野*1計測システム」のプロトタイプの開発を行いました。現在、高齢ドライバーに協力いただき本システムの実験、評価を行っています。

A身体機能測定、ドライビングシミュレータ、実車走行試験を組み合わせた、高齢ドライバーの運動・運転機能データの収集とその同期解析。現在、新潟大学が、CRT(自動車安全運転適性検査)と実車を使い、高齢ドライバーの運動機能に着目した運転行動の解析などを行っています。
また、関連研究として、北里大学にて、運転機能に関わる認知・身体・視野等諸機能の横串研究を開始しています。

B生活・服飾文化研究、及び上記@Aの研究成果を使った、高齢ドライバーにも目につきやすい歩行者側での交通安全ソリューションの開発
2021年は、相模女子大学が、歩行者の服装色に関する調査を行い、2022年は、北里大学、新潟大学とも連携し、フィギアと実車を使った衣装の視認性実験を行いました。今はさらに深化させた研究を行っています。

C新潟大学と日産自動車が共同創案した『ハンドルぐるぐる体操』の効果検証を行い、前屈測定(長座体前屈)や最大二歩幅測定において改善効果があることを確認しました。現在、効果を確かめつつ社会実装を進めています。

D安全・安心なダイバーシティ交通社会を実現するための社会をデザインする研究。2021年は高齢ドライバーの運転行動意識の調査を行いました。現在、社会や人とのかかわり方を含めて、この研究をさらに深化させています。

* 1 有効視野研究
ドライバーが眼を使い、生理的視野(眼科で計測する視野)中心付近に固視点(注視点)を設けている際に、外界から有効に情報を得られる範囲を有効視野と呼びます。その有効視野範囲や視野内の反応時間を評価する仕組みを創る研究。

社会実装機能連携パートナーと共に、研究成果を社会に広め、定着させていく活動を行っていきます。

研究で生まれたもの

高齢者交通安全:ハンドルぐるぐる体操

日産と新潟大学は、2018年に、交通安全未来創造ラボの先駆けとなる交通安全プロジェクト、 「トリトン・セーフティ・イニシアティブ」を立ち上げ、「ハンドルぐるぐる体操」を共同制作しました。 本ラボにおいて、体操の効果評価を行うと共に、積極的に社会実装を推進しています。

ハンドルぐるぐる体操の映像はこちら

社会実装の活動例

メタバース体験会の実施

メタバース*上のバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」にて、高齢ドライバーの安全走行を促進・啓発するハンドルぐるぐる体操の体験会を実施しました。(2022年3月)
*三次元の仮想空間を使ったVR (Virtual Reality)コミュニケーション技術

ハンドルぐるぐる体操は、高齢ドライバーだけでなく、運転不足になりがちな誰にでも身体機能向上効果が期待できることから、利用者が急拡大しているメタバース上で体験会を実施することで、色々な世代の人々に認知を広げていくことを目的としたものです。

メタバースは距離感を感じさせないコミュニケーションができることから、皆で体操を数回繰り返すうちに、会場全体が強い一体感を感じるほどに盛り上がることができました。多くの参加者から、楽しかった、よい運動になった、またやりたいなどの声をいただきました。イベントの後には、SNSでも体操を広めるコメントが多く寄せられました。

また、メタバース上のインフルエンサーが様々なワールドで「ハンドルぐるぐる体操」を実施するYouTube動画も公開中です。是非ご覧下さい。

メタバース体験会の映像はこちら

全国オンライン体験会の実施

ハンドルぐるぐる体操を全国に広めるため、全国オンライン体験会を開催しました。(2022年10月)
 体験会には、山形、新潟、横浜、室戸、香川、福岡など14地域から37名が参加しました。アカデミアからも5大学の先生と学生が参加し、子供から高齢者まで幅広い層が集まり、世代を通した楽しい交流を行うことができました。

このイベントでは、運転に関わる筋力やバランス力への影響が想定される最大2歩幅を、体操の前後に各自が計測しました*。体操後には全参加者が、数センチ以上向上しました。

参加者からは、低年齢にも親しみやすいハンドルを使用するため3世代でやっていきたい(親子参加者)、高齢者施設のレクリエーションに体操を取り入れたい(介護士の方)、高齢者教室に組み入れたい(交通安全ボランティアの方)、子供園でも広めたい(保育士の方)、など非常に好評でした。

*ハンドルぐるぐる体操は、新潟大学による効果検証の結果、座った姿勢で前にかがむ前屈測定(長座体前屈)や、大きく前に歩幅を進める最大二歩幅測定において向上が見られました。適正な運転姿勢を保ち、左右確認やペダル操作に必要な体の柔軟性を測る長座体前屈や、筋力やバランス力を評価する最大二歩幅は、日常生活での自立度や転倒リスクを反映する指標となります。

ハンドルぐるぐる体操の効果検証結果について(PDF:265KB)

リアルとメタバースをつなぐ「ハンドルぐるぐる体操体験会」の実施

東京都銀座に実在するギャラリー「NISSAN CROSSING」と、メタバース*上のバーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」をオンライン中継でつなぎ、リアルとバーチャルのそれぞれから参加する、ハンドルぐるぐる体操の体験会を開催しました。(2023年3月)
*三次元の仮想空間を使ったVR (Virtual Reality)コミュニケーション技術

ハンドルぐるぐる体操は、主に高齢ドライバーの方々が日々の生活の中で運動習慣をつけることで、筋力と認知力を高め安全なドライブができるよう支援するためのものですが、運転不足になりがちな誰にでも身体機能の向上効果が期待できます。

バーチャル側では、愉快な動物のアバターが体操のインストラクターを担当。その映像とアバターの掛け声、音楽に合わせて、リアルとバーチャルの両会場で色々な世代の人々が体操を楽しみました。リアル会場では3組の親子が参加、子供たちは両手で玩具のハンドルを持って、元気に体操を行いました。

参加者は、リアルとバーチャル、そして色々な世代が交錯する不思議な空間の中で、体操を楽しむことができました。イベントの後には、思ったよりいい運動になった、このようなイベントを継続して開催して欲しいなどの声をいただきました。SNSでも、リアルとバーチャルが繋がる不思議な感覚を味わえた、面白かった、など多くのコメントが寄せられています。