「第30回 日産 童話と絵本のグランプリ」表彰式を開催

大賞受賞者インタビュー<童話の部> なかじま ゆうき さん


【プロフィール】
大学時代はトクビ(教育学部特別教科<美術・工芸>)に学び、中学・高校の美術教師免許を取得。結婚、出産、子育てと、専業主婦として忙しい日々を送ってきたが、次男の小学校入学を機に、新たなチャレンジを決意。その第一歩としてグランプリに応募し、童話の部大賞を受賞。

【受賞作】
『カエルと王かん』
(あらすじ)
ある日、カエルのビクトールはぴかぴかと光る王かんを見つける。頭の上に載せるとなんだかとてもえらくなった気分になり、仲間のカエルに「ぶどう酒を持ってこい」「ミミズのフリッターが食べたい」と命令する。4匹の仲間は、なんだかわからないけれどそうしなければいけない気がして、それに従う。次の日は、マクウェルが王かんを見つける。その次の日はマーガレットが・・・。4日後には、あじさい池の王さまと女王さまは5人になっていた。そして・・・。

いつか「こんなお話があったな」と思い出してもらえる物語を

Q:童話を書いてみようと思ったきっかけは?
A:昨年の春、子どもが小学校に入学したことをきっかけに、自分でも何か挑戦してみたくなりました。はじめは絵本をつくりたいと考えました。でも、いざ描こうと思ったら、今の自分では一から絵を学び直さないと無理だな、と思えてきて。そこへ、頭の中にふわっとお話が湧いてきたので、とりあえず手近にあったノートに書きとめ、後で童話にまとめてみたんです。


Q:今回の作品の着想はどこから?
A:ある日、ご飯をつくっていたら、頭の中でカエルが話をはじめたんです(笑)。日頃の暮らしの中であれこれ空想することが好きだったので、そこからふと、思い浮かんだ感じでしょうか。子どもが通っていた幼稚園では、誕生月には王冠を被ってみんなにお祝いしてもらう行事があったので、そのシーンが投影されたのかもしれません。近くにある自然の池は、幼稚園の送り迎えで通ったり、鴨にえさをやったり、みんなが親しんでいる場所なので、そこが舞台になった気もします。
また、私が幼い頃、祖母の家にたくさんの本があったので、遊びに行くたびに読みあさっていました。有名な名作からマイナーな作品まで、100冊くらいはあったでしょうか。そこでたくさんの物語に親しんだ影響も、少なからずあると思います。
Q:作品の中で苦労した点は?
A:基本的なお話はすんなりまとまりましたが、細部の表現や構成については細かく推敲しました。カエルは「○匹」だけど、王様になると「○人」になるとか。最後にカタツムリの話につなげることで、別の世界へ広がりを感じさせるとか。あまん先生が、そうした点について講評でコメントしてくださったのが、嬉しかったです。
Q:どんなメッセージが込められているのでしょう?
A:一番シンプルな読み方をすれば、「皆が王様になっちゃったら“王様ごっこ”ができないね」という話になります。でも、もう少し社会的なことも込めたつもりです。立派な服を着てそれらしくふるまったら、なんだか立派な人に見えてしまい、よく知らない人なのに信じてしまう。あるいは、はじめは“ごっこ遊び”のつもりだったのが、いつのまにか立場が硬直化してしまい、辞めたくても辞められなくなってしまう。子どもたちはまだ経験したことがないし、ちょっと難しいかもしれませんが、いつかそんな場面に直面したときに「ああ、そんなお話があったな」と思い出してもらえたら、と思っています。
Q:今後の抱負についてお聞かせください。
A:いきなり大きな賞をいただいてしまったので、自分でもどうなるのかわかっていませんが(笑)、子どもが通っていた幼稚園のボランティアサークルを続けていきます。お母さん仲間でオカリナを吹いたり、歌ったり、踊ったりして、子どもたちと一緒に楽しく過ごすことが目的ですが、私自身、そこから吸収することは多いと感じています。
はっきり見えてはいないけれど、自分の中ではやりたいことがいろいろあるので、今回はその中の1つが実った、という感じです。ちょっと自信がついたので、いろいろやってみたいと思っています。


Q:これからグランプリを目指す皆さんにメッセージをお願いします。
A:昨年は幼稚園のPTA会長だったので、今ごろは卒園行事のことで頭がいっぱいでした。まさか1年後にこんな賞をいただけるとは思いもしなかったし、驚きでいっぱいです。でも、一歩踏み出したことで自分の可能性が広がっていくのを感じます。
実は、大学で学んだことを活かせていないことにコンプレックスを感じていました。でも、子どもを育て、私自身も成長して、やっと力を出せるときが来たのかな、という気がしています。人それぞれ「そのとき」があるのかもしれません。皆さんもぜひ、挑戦してください。

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