NISMO ヘリテージパーツ
商品化を支えた研究員たち

日産自動車株式会社は、金型を用いずにボディパネルを成形する「対向式ダイレス成形」と、製品開発における試作工程の一部で使用している3Dプリンター技術など、日産の新技術を活用した「NISMOヘリテージパーツ」を商品化すると発表しました。

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本サイトでは、ニュースリリースにプラスして、研究員の思いをお伝えします。

挑戦し続けた実用化への夢。今、この手に

鏡面化ダイヤモンドコーティング工具による無潤滑加工技術
無潤滑加工の実現へと導いたのは、エキスパートリーダー 南部 俊和、主任研究員 三輪 紘敬のチーム。そして現場では、コーティング加工を内山 典子、鏡面化を渡辺 秀徳が担当しました。


  左から三輪紘敬、南部俊和、渡辺秀徳、内山典子

三輪 紘敬チーム インタビュー

2013年から、無潤滑でダイレス成形を実現する工具の研究に着手しました。初めは金属系の硬い材料を中心に試しましたが、加工条件によっては凝着による部品加工面の肌荒れが激しく、なかなかうまく行きません。さまざまな可能性を模索し、低摩擦化に関する過去の研究から、摩擦係数の低いダイヤモンドコーティングの着想を得ます。しかし、被加工材である鉄とダイヤモンドの相性が悪いことは知られており、初めは成功するとは思っていませんでした。

ですが、ここが研究所の良い所。既成概念にとらわれない自由な発想や、失敗してもいいから試してみようという雰囲気があり、ダイヤモンドコーティング工具の可能性に気づくことができました。肌荒れ課題は、研究所で培った研磨技術のノウハウを活かし、幾通りもの方法を試して、新たに開発した鏡面化ダイヤモンドコーティング技術で解決したのです。

一番嬉しかったのは、ピカピカになった工具に、自分の顔が映り込んだ瞬間です。そして、生産に使われることが決定したときは、思わず声を上げて喜びました。
この8年間、ただただ夢に向かって取り組んでこれたのは、共に支え、高め合いながら頑張ったチームの存在があったからです。これからも難局をチャンスに変え、新しい技術を生み出していきたいと思います。

大切に乗り続けてくださっているお客様に届けたい

3Dプリンター技術
3Dプリンター技術でハーネス用プロテクターを復刻させたのは、主任研究員 吉田 晃のチーム。材料選定は弓削 健太郎、形状設計は三浦 善道が担当しました。


  左から吉田晃、弓削健太郎、三浦善道、松永智昭

吉田 晃チーム インタビュー

NISMOヘリテージパーツは、既に金型のない部品を再生産するにあたり、品質を確保した上でなるべくコストを抑える必要があります。一方、研究所では金型レスで製造できる、3Dプリンター技術の可能性を拡げたいという思いがありました。見事にニーズと技術がマッチングし、ヘリテージパーツ商品化への取り組みが始まったのです。

 

今回一番苦労したのは、コストと品質を両立させるための材料選定、形状設計でした。これまでの試作モデルや、治具製作で培った知識と経験があったからこそ、短期間での商品化が実現したのだと思います。

 

大多数の研究は商品化までの道のりが長く、最後まで携わるチャンスは限られています。幸いにも今回、最後まで携わることができ、いつもよりお客様が近くに感じられました。

 

30年以上前に発売された、R32型スカイラインGT-R。今でも大切に乗り続けてくださっているお客様がいると思うと、胸が熱くなります。これからも私たちは研究を続け、新しい技術をお客様にお届けしたいと思います。

先入観にも常識にもとらわれない発想で、新技術をクリエイトする

南部 俊和エキスパートリーダー インタビュー
「これまで携わってきた研究領域は、もうなくなるのではないか?」
私は常にこんな危機感を持っていました。技術の進歩もお客様のニーズも、加速度的スピードで変化しているように感じます。

 

ですから、これまで培ってきた強みの技術を、他の分野・業界へ転用すればもっと貢献できるのではないか?、広い視野で研究の成果を活かす場所を日々模索し、新しいことにチャレンジする、それが大切だと思っています。今回の鏡面化ダイヤモンドコーティング工具による無潤滑加工技術が、その良い例になりました。

 

そして、日産 総合研究所の良いところは、とにかく現場が近いこと。疑問が湧いたらすぐにモノを確認することができ、敷地内には分析センター(株式会社 日産アーク)もあります。目の前で起きている現象を、モノを見ながら納得いくまで確かめる、いつまでも忘れたくないエンジニアの原点です。成功の鍵の一つは、担当エンジニアらの熱意と、恵まれた現場という環境があったからではないかと思います。

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