星野EVPメッセージ

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「日産といえば“・・・”!」をつくることがブランド力向上には欠かせない

「日産」と聞くと思い浮かべることができる特徴があるか、どういうブランドなのか、それらを好ましくイメージできる、ということがブランド力の基盤になります。私は5年前に日本市場を担当してから、この「日産と言えば“・・・”!」をつくることに注力してきました。では、日産の「顔」となりえる日産の強みとは何か。それは自動車メーカーとして培ってきた技術です。「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける」というコーポレートパーパスを掲げる日産にとって、社会が直面する課題の解決に貢献することは大きな使命です。自動車は人々の生活に利便性をもたらし、運転する楽しさを提供する一方で、温室効果ガスの排出、交通事故、交通渋滞は自動車メーカーにとって緊喫の課題となっています。日産は、走行中のCO2排出量をゼロにする「ゼロ・エミッション」と、日産車がかかわる交通事故の死者数を実質ゼロにする「ゼロ・フェイタリティ」を実現するために、弛まぬ努力を続け、さまざまな技術を磨き、市場にいち早く投入してきました。「他のやらぬことを、やる」という日産DNAの精神で、ゼロから1を生み出してきたのが日産です。

ゼロ・エミッションにおいては2010年、100%電気自動車(EV)「日産リーフ」の量産・販売を開始しました。「日産リーフ」のゼロ・エミッションへの貢献は二酸化炭素排出量の削減にとどまりません。電池として活用すれば発電量の安定しない再生可能エネルギーを効率よく使用できます。災害時には移動電源としても活躍します。日産は日本電動化アクション「ブルー・スイッチ」を推進しており、すでに100を超える自治体と、環境、災害対策、エネルギー・マネジメント、観光、過疎化対策などを目的とした、連携協定を締結しています。 ゼロ・フェイタリティについても、クルマが人を守る「セーフティシールド」というコンセプトのもとに、世界初となる安全技術を次々と市場投入してきました。長きに渡り磨き続けた安全技術を集積して進化させたのが、高速道路における運転支援技術「プロパイロット」です。今後、日産はこの先進的な自動運転支援技術をどこよりも早く全車標準にしていきたいと考えています。もちろん、この技術の進化は、交通渋滞の解消にも役立ちます。 こうした活動の結果、日本市場では「EVといえば日産」「自動運転といえば日産」というイメージが浸透し、中国市場においても日産は先進技術のあるブランドとして多くのお客さまから認識されており、日産ブランドの強み、「顔」となってきています。

すべてのタッチポイントで「技術の日産」を浸透

もともと日産では商品を重視したマーケティングを行なっていました。その結果、「スカイライン」や「NISSAN GT-R」、「フェアレディZ」、「セレナ」といったクルマにはしっかりとした顔ができましたが、それらをくくる日産というブランドのイメージは作られていませんでした。それでもクルマを販売することができたのです。しかし、自動車業界は100年に一度という変革期を迎えており、お客さまの考え方や行動は大きく変化しています。以前は販売会社に何度も足を運んで、話を聞いて、試乗して、比べて、そして購入車両を決めていましたが、今では、事前に情報はネットで検索し、最初に販売会社に行った時にはすでに何を購入するのかを決めている人が7割にのぼります。また、所有しているクルマと同じブランドの車種を購入する人が増えています。つまり、最初にクルマを購入する段階で、「このブランドはいいね」と思ってもらうこと、「このブランドはチェックしておかなきゃ」と思ってもらうことが極めて重要になっています。
その為には、やはり「技術の日産」というブランドの「顔」をしっかりと訴求させることが大切という視点でスタートしたのが「やっちゃえ日産」キャンペーンです。どのクルマにおいても、技術をしっかりと伝えること、そして「その技術がお客さまに、どの様な価値をもたらすのか」をしっかりと伝えることにこだわりました。特に大切なのが、日産の技術があるからこそ実現できた「ワクワクするドライビング」をすべての日産車で感じてもらうことです。

ブランドというのはテレビCMで訴求すれば強化できるというものではありません。販売店舗での体験を含め、お客さまとのすべてのタッチポイントで日産の優れた技術を訴求していかないと、「技術の日産」というブランドイメージを浸透させることはできません。特に大切なのが従業員とのコミュニケーションです。すべての従業員がアンバサダーとして日産の魅力が伝えられるようにするために、あらゆるツールを活用した情報の社内共有や、従業員への教育に注力しています。

お客さまをワクワクさせる新型車で販売力を回復

グローバルの販売力を回復する上で、日産は市場におけるカバー率を向上させることよりも、セグメントでNo.1になる可能性のある新型車の投入に注力していきたいと考えています。具体的には米国市場における新型「ローグ」であり、日本市場の新型「ノート」です。現在、日産は「ニッサン インテリジェント モビリティ」という取り組みを通して、クルマを未来へと導き、お客さまをもっとワクワクさせる存在に進化させていますが、第2世代の「e-POWER」を搭載した「ノート」などはまさに「ニッサン インテリジェント モビリティ」を具現化したクルマです。「電動化」と「自動運転化」を軸に新型車の開発・投入を進めることで、ブランド価値の向上とマーケットシェアの回復を目指しています。ホームマーケットである日本市場では、2023年度末までに新たにEV2車種と「e-POWER」を搭載した4車種を追加する予定で、電動化率は60%に達するでしょう。

電動化車両の魅力は実際に乗ってみないと伝わりません。より多くの人に体験してもらうという意味で、EVに比べて安価で気軽に購入できる「e-POWER」搭載車両の果たす役割は少なくありません。一方で、「ニッサン インテリジェント モビリティ」のフラッグシップモデルとして「日産アリア」を2021年度に販売開始する予定です。電動化・知能化・コネクテッドに関して最先端の技術を搭載しており、2020年7月に発表したときにはその先進的なインテリアとエクステリアが話題になりました。しかし、本当の魅力、電動化による素晴らしい走りの進化は実際に乗ってみないと分かりません。キビキビと動くのに、室内ではこれまでにない静粛性能を確保しています。乗り心地も上質で、一度体験したらお客さまは必ず購入したくなると確信しています。 「日産リーフ」や「日産アリア」といったEVについては、価格に見合う価値があることをお客さまにしっかりと理解してもらうことが大切です。クルマとしての価値にとどまらず、動く充電池としての価値も含めて、これから展開される電気自動車の時代の先駆者として、EVの魅力をしっかりと伝えることがマーケティングと販売部門にとって新たなチャレンジになります。

幅広い年代のお客さまに訴求するために

ここ数年の不正問題による企業イメージの低下に伴い、最も影響を受けたのが日本市場です。失ってしまった信頼を回復するにはガバナンスや企業文化を見直すなど、企業としての佇まいを見つめ直す必要があります。同時に傷ついてしまったブランドイメージを刷新しなければなりません。そのために重要な役割を担ったのが新しいロゴマークです。実は、不正問題が起こる前からロゴマークを変えようという動きは始まっていました。前のロゴが作られた20年前に比べ、私たちの生活やクルマのあり方は大きく変化しています。コミュニケーションはデジタルが中心になり、SNSによる情報発信が人々の生活に大きな影響を与えるようになっています。こうした時代に対応し、新たなお客さまに新たなメディアでリーチするために、二次元のデジタル発信に適したロゴマークが必要となっていたのです。新型「ノート」から新しいロゴマークに変更していますが、若い世代のお客さまからの評価も高く、SNSでも拡散されています。

日産では、電動化車両によるカーシェアサービス「eシェアモビ」をスタートしましたが、若い世代の利用が多く、電動化車両に魅了されたお客さまも少なくありません。 また、販売店にはあまり足を運ばないお客さまにも日産車に触れてもらえるように、販売を目的としていないブランド・エクスペリエンス・ストアを大型のショッピングセンターなどに設置しています。日本市場では日産の先進技術体験プログラム「Hello Nissan」を導入しました。ここでは、販売を目的とせず、日産の先進機能を存分に体験できるように最適化した試乗コースを用意して、最高のブランド体験を提供することだけを目指しています。 日産の販売力強化に欠かせないのがデジタルツールの活用です。AIを活用してお客さまへの対応をサポートすることで、世界各地のお客さまが最適な説明を受けられるようになります。今後、この新たなディーラー・マネジメント・システムの導入を拡大することで、AIのコミュニケーションの精度を高めて、より的確なサービスを提供できるようにしていきます。

こうした活動に加え、デジタルマーケットへの対応も進めており、お客さまは販売店に行かなくてもクルマを購入できるようにしていきたいと考えています。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により自動車販売も大きな影響を受けました。販売店への訪問回数も減少しています。こうした変化に対応するためにもデジタルマーケットへの対応を加速しています。 他の公共機関に比べて自家用車の移動が安心だと考えるお客さまも多く、お客さまの購買意欲は決して衰えていません。お客さまが求めるクルマを的確なタイミングで投入するとともに、デジタルによるセールスを強化することで、コロナ禍でも販売力を向上できると考えています。 例えば、米国やメキシコではすべての新車購入プロセスをオンライン上で済ませることができる取り組みを始めております。また、全てのプロセスではありませんが、オンライン上のライブチャットやライブビデオによりお客さまのご質問や疑問にお答えしたり、お客さまのご自宅もしくはご自宅の周辺で販売員を介さず日産車を試乗して頂けたりと、様々な取り組みが主要国で始まっています。 一方で、従来通り販売店に来店頂いてクルマを購入したいというお客さまも多くいらっしゃるので、お越しになるお客さまに対してはオンライン上と一貫して、シームレスな販売を実現するシステムの導入を加速しています。 お客さまに「日産らしさ」をお届けできるかどうかが今後の日産復活にかかっています。販売の最前線による日産ブランドの信頼回復にぜひ、応援よろしくお願いします。

2021年3月掲載