スピーチ


2020年 7月 28日

2020年度第1四半期決算発表 スピーチ


イントロダクション(CEO)

本日はお忙しい中、当社の2020年度第1四半期決算発表にご参加いただき、ありがとうございます。
今年度の第1四半期は、世界各国で新型コロナウィルス感染拡大の影響が広がった結果、全体需要が前年の約半分の水準まで減り、当社の販売台数も合わせて大幅に減少しました。
また、世界の多くの工場で稼働停止を余儀なくされ、稼働を継続した工場においても販売の減少に伴い大きく稼働率が低下するなど、非常に厳しい経営環境となり、業績にも大きな影響がありました。

まず、2020年度第1四半期の事業報告及び決算結果についてCOOのグプタよりご説明した後で、私の方から今年度の通期の見通し並びにNissan NEXTについてお話しさせていただきます。

2020年度第1四半期実績(COO)

まずグローバルな全体需要と当社の販売実績についてご説明したいと思います。
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、主要なマーケットにおいて四半期の業績に支障が生じたことは言うまでもありません。
1月から3月までの中国の台数を含む、会計年度ベースの2020年度第1四半期のグローバルな全体需要は、前年比44.5%減の、1,249万台となりました。そのような中、当社のグローバル販売台数は前年比47.7%減の64万3千台となりました。
4月から6月の中国の台数を含む、より現実的なセールス期間で見てみると、世界各地でロックダウンや新型コロナウィルスの感染拡大による市場の低迷等、販売に大きな影響がありましたが、当社の販売台数は82万7千台となり、米国のレンタル向けを除いた市場占有率は5.4%を維持しました。このような状況において、日産は何よりも従業員の健康・安全を第一に考え、事業運営を行って参りました。
当社が置かれている状況を正しく理解していただくために、3つのキーとなる項目についてご説明したいと思います。第一に生産の状況、第二に販売店の稼働状況、そして第三に新型車の生産開始です。

生産状況

こちらが第1四半期の生産の状況です。
国内では需要が低迷したことに加え、輸出台数も大きく落ち込んだ結果、当社の生産台数は前年を割り込みました。6月に入ってからも、国内の生産台数は前年比61%減となっています。
中国では、1月から3月までの生産台数は前年比51%減に留まったものの、4月から6月にかけては急激に回復し、前年を8%上回りました。
北米の工場は徐々に操業を再開しつつあるものの、6月は前年に対し60%に留まっており、欧州ではいまだ20%です。
日産は従業員の健康・安全を最優先に、慎重に工場の操業再開を行っています。

販売店の稼働状況

次に販売店の稼働への影響について見てみましょう。
国内の販売店は全て営業を継続していましたが、来店されるお客様の数は最大で6割落ち込みました。
中国でも同様に、全店舗が営業していましたが、来店されるお客様の数は減少しています。
北米および欧州でも営業再開した店舗は増えていますが、来店されるお客様の数は大きく落ち込んでいます。
しかしながら、新型コロナウィルスの感染が拡大する中、当社はオンライン販売のプラットフォームの拡充を加速させてきました。すでに11%のお客様にデジタルでクルマをご購入いただいております。「ショップ・アット・ホーム」というシステムを使った販売など、デジタルセールスのイニシアチブを開始し、よりスムーズなカスタマーエクスペリエンスを提供します。
生産停止または減産を余儀なくされる一方で、営業している販売店やオンラインで販売を継続することで、在庫を削減し、今後の販売の質の向上にもつなげて参ります。

コロナ禍におけるQ1の新型車立ち上げ

続いて、新型車の生産開始についてです。
在宅勤務中においても、予定どおりの新型車の生産立ち上げを実現してくれた国内外の従業員に感謝したいと思います。スケジュールどおりに生産を開始し、販売のモメンタムを維持できたのは彼・彼女らのおかげです。
生産を開始した新型車の一例を挙げると、以下のとおりです。

  • 1) 2月には、メキシコで「セントラ」の生産が始まりました。
  • 2) 3月には「キックス」e-POWERの生産を、タイ工場で日本とアジア諸国向けに立ち上げました。
  • 3) 6月には、国内で米国向けの新型「ローグ」の生産を立ち上げました。

ご存知の通り、このパンデミックは当社のオペレーションに重度な影響を与えましたが、この環境下、社員のケアをしながら、事業が確実に継続できるようにしてまいりました。

コアマーケットにおける販売実績

それでは、3つのコアマーケットにおける販売状況について見ていきましょう。
まず日本ですが、4月から6月にかけて、月次マーケットシェアは8%を切る水準から11%を超える水準まで回復しました。6月には、軽自動車の販売が功を奏し、前年同月比でも改善しました。軽自動車については、3月に新型「日産ルークス」を発売し市場占有率を大きく伸ばしました。登録車においても市場占有率は改善傾向にあります。
特に、6月末に発売した小型SUV「日産キックス」はお蔭様でご好評をいただいており、1か月で1万台を超える受注がありました。これにより、登録車の市場占有率改善も今後さらに進むと見込んでいます。
続いて中国では当社の販売台数は着実に回復し、市場占有率も継続的に伸長しています。特に4月から6月にかけては、販売を前年から4%伸ばしました。特に「シルフィ」と「アルティマ」の好調が、販売の勢いを支えています。
米国では収益性の高い小売販売に集中し、事業改革を進めています。小売りの市場占有率を4月から6月にかけて4.9%から5.4%に拡大し、同時にフリート販売を前年の5分の1のレベルまで減らすことで、台当たりの売上高を前年比で約700ドル改善しました。また、最近発表されたJ.D.パワー商品魅力度の調査では、4車種の日産車がセグメントでトップの評価をお客様より受けました。 

米国では依然として新型コロナウィルスが猛威を振るっていますが、第1四半期の業績への同市場の貢献は着実に回復しています。特に「セントラ」、「ヴァーサ」、および「タイタン」がその中心となりました。

財務実績

続いて、財務実績についてご説明いたします。
グローバル市場の低迷と販売台数の減少に伴い、連結売上高は前年比50.5%減の1兆1,700億円となりました。連結営業損失は1,539億円、当期純損失は2,856億円となりました。
営業外損失には、持分法適用会社による投資損失847億円が含まれております。
特別損益のマイナス723億円には新型コロナウィルス感染拡大による操業停止等に伴う一時的な損失影響がネットで332億円、事業構造改革費用が401億円含まれております。
自動車事業のフリーキャッシュフローは新型コロナウィルス感染拡大に伴う収益の減少や工場の稼働低迷が大きく影響し、マイナス8,157億円となりました。
こちらは営業利益の増減分析です。
為替変動は35億円の増益要因となりました。
台数・構成、部品販売及び連結販売会社の収益悪化は2,322億円の減益要因となりました。
販売費用は359億円の増益要因、モノづくり・固定費・その他は生産固定費や一般管理費の削減効果を工場の低稼働による生産変動費の効率悪化が一部相殺し、373億円の増益要因となりました。
重要なことは、固定費削減や販売費の圧縮をしなければ、結果は更に悪化していたであろうということです。Nissan NEXTによる結果が実証され、持続可能な成長への基盤の重要性を示しています。当社が直面している課題に対して、適切なタイミングで、適切な計画により対処し続けなければなりません。
最後に流動性ですが、2020年度第1四半期の自動車事業のフリーキャッシュフローは大幅なマイナスとなり、その結果ネットキャッシュポジションは2,352億円となりました。ネットキャッシュは減少したものの、当社は引き続き1.2兆円を超える自動車事業手元資金を維持しています。
6月から7月にかけて追加で1,824億円のコロナウィルス感染拡大対応の資金調達を確保したほか、700億円の社債発行も行いました。また、6月末時点で約1.9兆円の未使用のコミットメントラインも維持しています。当社は感染拡大の状況を注視し、必要に応じ即座に対応できるよう準備しています。
今一度優先領域について強調したいと思います。

  1. 固定費削減の徹底
  2. 新型車の販売の質向上に向けた取り組みを実施し、収益性の伴う市場での占有率の拡大
  3. 営業活動におけるキャッシュフローの管理および十分な資金調達で流動性を確保

20年度は直面する課題のスケールや市場環境が不安定であり続けることを、私たち経営層は重々承知しています。
長期的な視点で持続可能な収益ある成長へと回復させるよう、引き続き取り組んでまいりたいと思います。

2020年度業績見通し(CEO)

販売台数見通し

2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、全ての市場において全体需要が前年を下回り、グローバルでは前年比16%減の7,204万台になると予想しています。日本や中国は前年比7から8%程度の減少と想定していますが、欧米やその他市場は前年比2割前後の減少となる見通しです。現時点においても、市場の見通しは依然不透明であり、第2波によって更に市場環境が悪化する可能性もありますが、その影響見通しを示すことは現時点では難しく、引き続き、市場動向を注視していく必要があると思っております。
そのような市場環境の中で、弊社の2020年度の販売台数は、前年比16.3%減の412万5千台を見込んでおります。日本と中国では全体需要を上回る販売台数を見込んでいますが、それ以外の地域では下回る見通しです。これは、米国市場でのフリートミックスの見直し、インセンティブの適正化など、これまでの課題であった「過度に台数を追う」ことをせず、販売の質向上に向けて取り組んでいることが主な要因です。グローバルのマーケットシェアは、5.73%と前年レベルをキープします。

業績見通し

今年度の業績見通しは次のとおりです。
今年度の中国を除いた販売台数は前年比21.7%減の見通しとなっていることを反映し、連結売上高は前年比21%減の7兆8,000億円と予想しております。連結営業損失は4,700億円の見通しです。
持分法投資損益の悪化や昨年度末に計上できなかった事業構造改革費用も織り込んでいることから、当期純損失は6,700億円となる見込みです。
また、配当についてですが、今年度は、収益力の向上に向けた事業構造改革に取り組んでいる最中であることに加え、新型コロナウィルス感染拡大による大きな影響もあり、収益、フリーキャッシュフローともに非常に厳しい一年になるため、お支払いは見送らせていただく見通しです。一刻も早く、安定的かつサステナブルな株主還元を再開できるよう、全社を挙げて収益改善に向け事業構造改革に取り組んでまいる所存です。
続いて営業利益の増減分析をご説明します。
為替はドル円レートを中心に400億円の減益要因となっています。
新型コロナウィルス感染拡大に伴う、全体需要の落ち込みによる新車の台数・構成の悪化に加え、部品販売や連結販売会社の収益悪化により、4,250億円の減益を見込んでいます。
貸倒引当金計上を含む販売金融事業の収益悪化と、リマーケティング費用と呼ぶ米国を中心としたリース車両の残存価値低下に伴う費用は、合わせて850億円の減益要因となっています。
モノづくり・固定費・その他は、生産の減少に伴う稼働率の低下によって効率性が悪化した生産変動費や商品性向上費用の増加を、固定費や購買コストの削減による増益でオフセットし、1,205億円の増益要因となる見通しです。
5月に発表した2020年度に2018年度対比で3,000億円の固定費を削減する取り組みは計画通り進んでおり、今年度も減価償却費や広告宣伝費、一般管理費を中心に、1,500億円を超える削減を実行します。

事業構造改革「Nissan NEXT」の取り組みについて

最後に、事業構造改革「Nissan NEXT」について触れたいと思います。この取り組みは、2023年度までの4年間で、会社を成長軌道に戻し、その先10年を戦っていくための十分な体制を再構築することです。過度な販売台数の拡大は狙わず、収益を確保した着実な成長を果たすこと、自社の強みに集中し、事業の質、財務基盤を強化すること、そして新しい時代の中で、「日産らしさ」を取り戻すこと、この三つが大きなポイントです。

事業規模の最適化に向けては、先ほどご説明した通り、2020年度末までに2018年度対比で固定費を3千億円削減するという目標を計画通り達成する見込みです。加えて、2023年度末までに生産能力の540万台規模への最適化、 そして、グローバル商品ラインアップの効率化と競争力の強化に向けた取り組みを進めております。

また、選択と集中により、コアマーケット・コアプロダクト・コアテクノロジーに持続的にリソースを投入することで、確実なリカバリーと着実な成長を目指しています。
これらの改革を実行する支えとして、品質重視やお客様志向、そして、私たちのビジネスパートナーであるサプライヤー、ディーラーとの連携が必要不可欠であることは言うまでもありません。
また、今後18か月の間に少なくとも12の新型車を投入し、商品ポートフォリオの若返りを図る計画についても、着実に進行しています。
米国では、もっとも売れている日産車である「ローグ」を一新することに加え、パスファインダーとフロンティア、そして、インフィニティ2車種を投入し、販売の質とブランドをさらに向上させていきます。
日本国内では、日産ならではの電動パワートレインであるe-POWERを全グレードに搭載した新型「キックス」を発売しましたが、今後、e-POWER搭載車をさらに拡充し、アリアと合わせて電動化比率を60%近くまで引き上げ、更なる攻勢をかけていきます。
また、当社の強みであるC/D/EV/スポーツカーのセグメントにおいて、今後もラインナップの刷新と商品力の強化を積極的に進めてまいります。

先日発表いたしました、アリアは日産の新しい顔として、新ブランドロゴとともに日産の歴史の新たな扉を開きました。日産の強みのすべてを結集させたクロスオーバーEV「アリア」は、既に世界中から2万人を超えるお客さまから購入に関心を示していただき、電気自動車のフロントランナーとしてブランドをけん引していくものと期待しています。

本日発表しました2020年度の見通しは、昨今の厳しいビジネス環境と自社の事業構造改革の取り組みも相まって、大変厳しい内容となりますが、私は、「Nissan NEXT」を確実に実行していくことでマイルストーンとして掲げた、比例連結ベースで2023年度に営業利益率5%、マーケットシェア6%レベルの達成は、実現できるものと確信しています。何度も申し上げますが、日産はこんなものじゃありません。必ず成長軌道に戻し、再び輝ける日産の復活に向けて妥協せず、覚悟をもって取り組んでまいります。





 

以 上