スピーチ


2019年6月25日

第120期定時株主総会 事業報告
スピーチ原稿

西川CEO

はじめに
はじめに、業績等のご報告に入る前に、昨年度発生しました不適切な完成検査、ならびに、元会長らによる重大な不正について、株主の皆様に、大変なご心配をおかけしましたこと、会社を代表し、改めて深くお詫び申し上げます。

当社といたしましても、これらの問題を深く受け止め、あらゆる業務における法令遵守、コンプライアンス意識の醸成・徹底を図るとともに、新たな取締役候補者を選任、そして本日の定時株主総会でのご承認を得て、指名委員会等設置会社に移行したいと考えております。大きな節目を迎えており、今日以降、さらに経営レベルでのガバナンス改革を迅速に進めてまいります。

それでは、ここからは2018年度の業績と2019年度の見通し、加えて、取り組みを始めております事業構造改革 New Nissan Transformation の概要について、お話ししたいと思います。

事業報告:2018年度の販売・財務実績
まず、2018年度事業報告について、グローバル販売台数は、日本、中国、中南米、タイ・フィリピン等で増加した一方、米国や欧州では減少し、グローバルでの市場占有率は6.0%となりました。

主要地域ごとに見てみますと、日本は、「ノート」 e-POWERが2018年度登録車販売で1位、また、「セレナ」もミニバンセグメントで1位となり、堅調に台数を伸ばしました。

中国は、全需が縮小する厳しい中、当社は順調に販売を伸ばし、2.9%増、シェアも0.3ポイント増の5.9%に達しました。

一方で、北米は販売正常化の取り組み、欧州は、環境規制により、ガソリン車へのシフトが加速する中、エンジンの供給不足の影響を受け、販売台数を落としました。

次に、2018年度の財務実績ですが、連結売上高は11兆5,700億円、連結営業利益は3,182億円、売上高営業利益率は2.7%となりました。

為替悪化や、欧州を中心とした環境規制への対応や、商品性の向上、原材料価格の上昇等が2,100億円の減益要因となったほか、米国での、CVTの保証期間延長に伴う、約660億円の一時的な費用計上なども影響しました。

その他、インセンティブによるプッシュセールスを抑制し、販売の質改善に取り組む中、これまで値引き販売に依存していた反動により、台数が減少、その減益分を、インセンティブの削減やその他コスト削減で吸収できず、全体として減益となりました。

地域軸で見ると、日本や中国、中東で前年より増益となりましたが、米国とヨーロッパで大幅な減益となり、結果グローバルで減益という事でございます。

2019年度の販売・業績見通し
2019年度のグローバル台数は、0.4%増の554万台を見込んでいます。

日本、中国、その他市場が堅調に増加する一方、北米と欧州は、厳しい状況が続くと見ています。中国の増加分を除くと、グローバルでは12万台、3%の減少となります。

これをベースとして、中国事業を除いて見てみますと、2019年度売上高は前年比1.9%減の11兆3,000億円、営業利益は2,300億円と見込んでおります。

引き続き、為替や原材料費の高騰、また米国、欧州の規制対応コストの増加といった、外的環境の悪化に加え、米国をはじめ、主力モデルの車齢が高まる中、今年度、特に前半は更なる売り上げ減少を覚悟せざるを得ず、今年度、特に前半は無理な販売をせず、一時的なプッシュ販売で短期的利益を追わず、販売の質改善に取り組み、来年度以降の着実な挽回を優先して進めていく姿勢で取り組んでおります。

加えて、当社の将来の着実な成長に向けた、CASEなどの技術革新や新商品への投資拡大、まさにこれが始まっており、将来へ向けた、これらの負担が集中する年であります。

また、これまで売り上げ減を原価低減の努力で利益を支えてまいりましたが、今年度は、過去のストレッチによる反動を受け、また、主力車種がモデル末期であること等々大幅に原価低減効果が見込めない状況であり、結果として、残念ながら、当年度は厳しい業績見通しであります。

次年度以降、状況は徐々に改善させていく見込みでありますが、決算時に申し上げた通り、今年度、特に前半を業績の底という事で覚悟を決め、その上で、将来にむけ確実にリカバリーを進める年としてまいりたいと思います。

2018年度/2019年度 配当
最後に、配当でございますが、2018年度は、期末配当として28.5円、11月の中間配当28.5円と合わせ、当初予定どおり、通期で57円を、お支払いする予定です。

2019年度は、厳しい外部環境や足元の業績、将来に向けた必要投資、手元資金の状況などを考慮し、1株あたりの通期配当金を40円、とさせて頂きたいと考えております。

株主の皆さまには、2019年度は減配となり、大変申し訳なく思います。しかし、将来の投資を減速させない事、そして事業を抜本的に改革し、その先の着実な成長を実現する為、今年度はこのようなご提案をさせて頂きたく、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

事業構造改革New Nissan Transformation
次に、取り組みを始めております事業構造改革、New Nissan Transformationについて、概要をご説明します。

ガバナンストランスフォーメーション改革
ガバナンス改革については、みなさまご承知の通り、「ガバナンス改善特別委員会」からの提言を踏まえ、監督と執行を分離し、指名委員会等設置会社へ移行することを、本日ご提案いたします。

取締役会についても、実効性を高めるべく、過半数を独立社外としたうえで、幅広い経験や知見と、多様なバックグラウンドを持つ候補者を人選しました。

ガバナンス体制の再構築は当社にとって喫緊の課題であり、本年3月のガバナンス改善特別委員会からの提言を真摯に受け止め、ガバナンス体制を刷新すべく取り組んでまいりました。

今回の重大な「経営者不正」を教訓に、監督と執行の分離を徹底させ、本定時株主総会の承認を得て、現在の監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に移行いたします。

短い移行期間での実施ということであり、事前に皆様へ十分なご案内が出来ず、ご心配をおかけしましたが、ご案内の通り、独立社外取締役の方々に、議長、各委員会の委員長の役割を担って頂くべく、準備ができた所でございます。

これに伴い、本総会後の取締役会にて、正式に決定をしてまいる予定であります。もとより、ハードルは大変高い課題である、と思って進めてまいりましたが、当社のガバナンス元年として、やらねばならぬ改革として推進してまいります。

今日以降も、運営を軌道に乗せるまで、チャレンジが続きますが、新たな取締役の皆さんとともに、狙い通りに機能するように立ち上げていくことに注力したいと思っております。

組織改革(執行体制に関して)
次に、組織改革について5月に経営会議の体制を刷新いたしました。業務運営を強化するために、新たに、COO(最高執行責任者)とVice-COO(副最高執行責任者)を任命しました。影響の大きい日本、北米、中国を統括する各役員を、経営会議メンバーとし、構造改革を進める専任の役員とガバナンス改善担当の副社長を加えています。

この新体制のもと、各地域と本社機能の連携を強化し、全社一丸となり、課題解決に取り組んでまいります。

事業構造改革
最後に、事業構造改革についてでございますが、業績回復への取り組み、道のりについてお話しさせていただきます。

もともと、中期経営計画では利益構造として、米国、日本、中国は10%台の営業利益率を確保し、その他地域を5%まで成長させる、これで8%台の収益性を確保と狙っておりました。

これに対して、日本と中国は健全なレベルを維持し、狙った線で成長・進化してきていますが、北米の事業の採算が大きく悪化し、加えて欧州も悪化、大きく収益の前提を落としてしまったという状況であります。これが地域ごとの事業の現状であります。

一方、グローバルのコスト側の構造を大きく捉えてみますと、NP88の拡大戦略で、新興国を中心に行った大きな投資、狙った販売台数と利益に全く届かず、投資回収ができずに大きな負担となったこと、過去に投資をした新興国向けの小型車や工場は、未だに狙った台数や収益がでないまま、余剰の生産能力や多額の固定費を抱える中、一方、CASEなどの技術革新や新商品への取り組みの加速、投資の拡大が、待ったなしの状況で始まり、コスト負担が大きくなっているという状況です。

勿論これを販売増加、限界利益増でカバーしていく必要があり、そのためには最大収益源の北米の挽回がマストでありますが、この挽回には時間がかかることが予想され、また過去の間違いを繰り返さない為には、焦らずに着実に進めるべきでもあります。

こうしたことを踏まえ、当社としては、中期計画の後半の道筋として、将来の成長へ向けた投資、CASE、技術革新への積極的投資は従来方針通り維持する一方、収益上の負担となっていた不採算事業について、より厳しく選別をしていく、短期的なプッシュでなく、着実に販売を挽回し、3年、できれば2年で業績、収益性を挽回する、このような方針を固めました。

取り組むべき事業改革のポイントは3つあります。

  • 1. 米国事業のリカバリー
  • 2. 事業及び投資効率を適正化すること、選択と集中
  • 3. 新商品、新技術、日産インテリジェントモビリティをベースとした着実な成長、です。

一言でいえば、コスト構造、生産体制などの外科的手術は足早に、販売の拡大、または、米国販売の回復、これは慌てずに日産インテリジェントモビリティの戦略を徹底、ブランドの魅力度を上げながら着実な成長を目指す、このようなスタンスで進めていきたいと考えています。

この取り組みについて、先月の決算時に概略の取り組みをご説明差し上げましたが、その後の進捗、また22年度までの道のり等々、来月7月末にご報告を予定しております。

今日の成長戦略のキーである、日産インテリジェントモビリティ、ここについて少しご紹介させていただきます。

戦略的に集中する領域には、引き続き積極的に投資をしてまいります。そしてCASEと言われる、技術変革、これを実用化、市場展開で先行する、この方針、姿勢は変わらず、最優先事項として進めてまいります。

商品の面では、これまで仕込んできたコアモデルが、今年度以降順次市場に出てまいります。2022年度までに、グローバル戦略車全て、20車種以上の新型車を投入します。

電動化については、リーフやe-Powerなど既にご好評頂いていますが、今後さらに、フロントとリアに大容量のモーターを加えたハイパフォーマンスな四輪駆動モデルを追加し、日本と欧州では半分以上を、グローバルでも3割を電動化するなど、22年に向けて拡大を進めてまいります。

次に、自動運転技術の分野では、運転支援技術「プロパイロット」の累計販売が、既に約35万台に達しました。22年度迄に、20市場20モデルに搭載し、年間100万台まで拡大する計画です。そして、進化版として、複数車線での運転支援技術「プロパイロット2.0」を、この秋日本でスカイラインに搭載します。

このような技術・価値を、量産車として、多くのお客様の手に届く形でお届けする、まさにCASEの時代の「技術の日産のDNAの進化版」としての「日産インテリジェントモビリティ」を進めていく仕込みは出来ており、これを軸に、販売の質も無理な値引きで買って頂くのではなく、買いに来て頂けるような状態を作り出すこと、そのための取り組みを重ねてまいります。

同時に、規模拡大路線から転換し、「米国事業のリカバリー」と「事業及び投資効率の適正化」、「新商品、新技術、日産インテリジェントモビリティを軸にした着実な成長」という課題、これらに取り組み、よりサステイナブルな成長路線への変換を目指します。

よく、1999年のNRP(日産リバイバルプラン)の時と同じ状況なのかと聞かれることがありますが、やるべきことは明確であり、財務体制は健全であることをご理解下さい。今後2年で、長くとも3年の間に日産を再度、軌道に戻す予定で進めてまいります。そのお時間、そしてご理解を頂きたいと思います。

アライアンスについて
昨年の事案発生以降、不正対応が当社のルノーとの関係に動揺を与えないように鋭意努力してまいりました。

三菱自動車も加えた3社で、3月12日公表いたしましたMOUに基づき、WIN-WINのイコールパートナーシップの下、新たにアライアンス オペレーティング ボードをスタートしております。

また、当社として、本年4月に臨時の株主総会を開催、皆様のご支持を頂き、2名の取締役解任と新たにルノーの会長であるスナール氏を当社の取締役に迎え、元会長時代に終止符を打ち、新たな時代へと歩を進めてまいりました。

その後、決算発表時にも申し上げた通り、両社の関係に関し、様々な議論も重ねてまいりました。

スナール氏とは、当社とルノーの関係の将来にわたる関係の安定化、あるいは進化、資本構成の議論もございましたが、当面、日産としての新なガバナンスのステップ、そして業績回復を優先し、集中するという一致をみております。

ガバナンス及び新たな取締役会の構成について、準備の途上でご心配をおかけしましたが、基本構成については、最大の株主でもあるルノーの理解、支持をもらい、その結果、今次の提案に至っております。今後、新たなガバナンスを定着させていく為に、引き続大株主のルノーからの理解、協力が必要であり、今後も様々なルール、運営を定着させている中でも理解、協力を求めてまいります。

また、将来の両社の関係の議論、これを後送りにすることで、かえって、そこにおける方向性について、憶測を呼び、日常のアライアンスパートナーとしてのルノーとの共同活動、引いては当社の業績回復への取り組みに影響を与える懸念もあり、その意味では、両社の関係の将来像について、業績回復の取り組みと並行してルノーと議論、検討の場を持つこと、これも重要と思っております。

新しい日産に向けて
日産の優先課題は、今直面している業績のリカバリー、ガバナンスの再構築、そしてアライアンスの安定化であります。不正事件が発生して以来、動揺の中で本来打つべき施策が若干遅れましたが、一刻も早い挽回にむけ、取り組みを進めているところでございます。

当社のバリューの源泉は、やはり技術であります。その時代ごとにソリューションは異なりますが、技術デモカーではなく、実用価値として、より多くのお客様の手の届く形にパッケージングしてお届けする、その為にチャレンジをする、古くはスカイラインやZ、今ではリーフやe-Power、プロパイロット、形は変われど、そのDNAは不変であり、変革の時代を勝ち抜く力は十分あります。「CASE」に代表される次世代モビリティの技術革新においても、日産はさらに進化を続け、皆さまにとって新たなモビリティ社会の実現に期待される会社であり続ける、このように思っており、社内の力を結集して進めてまいります。

株主の皆様におかれましても、これからの日産自動車にご期待頂き、将来にわたり、暖かいご支援をいただければ幸いでございます。

 

以 上