スピーチ


2020年 5月 28日

2019年度決算報告及び事業構造改革計画


CEOスピーチ

本日はお忙しい中、当社の2019年度通期決算発表及び事業構造改革の取り組みに関する説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。

日本政府による緊急事態宣言は解除されましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、インターネット中継により実施させていただくこととなりました。

まず初めに、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々、ご遺族の皆さまに謹んでお悔やみ申し上げます。また、最前線の医療現場で困難に立ち向かわれている関係者の皆様に対し、心より感謝申し上げます。

当社は従業員、お客さま、そしてビジネス・パートナーの皆様の安全と健康を第一に考え、あらゆる対策を徹底しております。また、感染拡大を予防するべく、各国政府や自治体が規定するガイドラインに従い、在宅勤務や一時休業等様々な取り組みを適宜実施しております。加えまして、当社としても感染症対策に少しでもお役に立てればということで、フェイスシールドや医療用ガウンの生産、車両提供などの支援を世界中の拠点で実施させていただいております。

新型コロナウイルスは経済活動にも深刻な影響を及ぼしており、その影響は自動車業界にも及んでおります。

当社は、この感染症の影響に加え、自社固有の問題による業績の悪化にも直面しております。

本日は、2019年度決算をご説明した後、当社の業績回復に向けた取り組みについて、お話ししたいと思います。

まず販売実績ですが、2019年度通期のグローバル全体需要は、前年比6.9%減の8,573万台となりました。中国市場の減速や、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、第4四半期に各市場が低迷したことが、主な悪化要因であります。

当社の販売台数は第4四半期大幅な全体需要低迷に加え、第3四半期までの北米と欧州を中心とした販売減が響き、前年比10.6%減の493万台にとどまりました。

中国は1-12月の暦年での数値となりますが、全体需要を上回る販売を達成したものの、その他の市場では、残念ながら市場占有率を落とす結果となりました。

なお今年の2月に発表した2019年度の見通しと比べ販売台数は減少しましたが、グローバル市場占有率は当時の見通しどおり5.8%を維持しました。

次に主な財務指標でありますが、これまでと同様に中国合弁会社に持分法を適用したベースでの数値でご説明します。

2019年度通期の連結売上高は9兆8,790億円に減少。営業損失は405億円、当期純損失は6,712億円となりました。先に申し上げましたグローバルでの販売減に加え、当期純損失には、将来の収益性改善に向けた構造改革実施のため、6,030億円の構造改革費用および減損損失を計上しました。

これらを除くと、当期純損失は682億円となります。

自動車事業のフリーキャッシュフローはマイナス6,410億円と悪化しておりますが、2020年3月末の自動車事業のネットキャッシュは1兆650億円と、コロナ危機と業績低迷の中においても当社は引き続き健全な水準を維持しております。

こちらは損益計算書ですが、ここでのご説明は割愛させていただきます。

2月に発表しました通期見通しに対する主な減益要因は、新型コロナウィルス感染拡大による影響でありますが、台数・構成で700億円、部品販売の減少が200億円、また販売台数減少による販売金融事業の引当金を300億円計上しました。

前年比でみますと、第3四半期までの決算でご説明しております通り、為替変動、規制対応及び商品性向上コスト、ならびに原材料価格の高騰を含む外部要因が自動車業界全体の収益を圧迫しており、加えて当社は商品高齢化や販売正常化の取り組みが、まだ十分な収益の貢献に至っておらず、販売台数の減少が収益を圧迫しました。同時に、日産は将来に向けた投資が重なる年でもあり、研究開発費と生産費用は前年から559億円増加しました。

冒頭申し上げました通り、当社は収益性の改善と持続可能な成長に向けた事業改革遂行のため、総額6,030億円の構造改革費用と減損損失を計上しました。計画の詳細については、この後ご説明したいと思いますが、将来の台数見通しに基づくと現在の生産能力が余剰であることから、グローバルな事業用資産の減損を行い、5,220億円の損失を計上しました。この減損により、2020年度には約700億円の減価償却費の削減を見込んでいます。

なお構造改革費用に関しては、会社として正式決定した案件に関し、今後想定される費用を引当金として計上しており、2019年度はここに示している額を計上した、という事であります。

次に、短期の事業運営資金に関してでございますが、新型コロナウィルスは、一時期より改善に向かってきているものの、完全に収束し、経済活動が元の水準に戻るには、まだ時間を要するとみております。当社は引き続き十分な資金流動性を維持することを重視しています。

自動車事業の資金は健全な水準を維持しており、危機に対応するために十分な資金を保有しております。2020年3月末の自動車事業の手元資金は1兆4,950億円で、自動車事業のネットキャッシュは1兆650億円でした。以上に加えて、約1兆3,000億円の未使用のコミットメント・ラインも確保しています。更に、新型コロナウィルス対応のために、4月から5月にかけて7,126億円にのぼる資金調達を実行しました。

また、経営トップレベルでのキャッシュマネジメントと収益改善プログラムを立ち上げ、市場や供給網の状況をタイムリーに反映した生産計画の見直し、在庫管理、経費節減に加え、将来の成長に足かせとならない範囲での、設備投資や新車投入時期の最適化を行っています。今後も市場の動向を見ながら、随時追加対策を実行してまいります。

2020年度のグローバル全体需要は、新型コロナウィルスの影響を受け、前年に対し15〜20%減少すると見込んでいますが、先行きは極めて不透明な状況です。現在、新型コロナウィルスが当社事業に及ぼす影響を見極めている段階にあり、現時点では2020年度の通期の業績予想を合理的に算定することは非常に困難であると判断しております。

従いまして、2020年度の通期見通しについては、この算定が可能になった時点で速やかに開示することとさせて頂きたいと思います。

以上が2019年度通期実績の内容です。では次に、当社の構造改革に関する内容をご説明したいと思います。

当社は日産パワー88以降、需要の増大を前提に、新興市場を中心とした事業規模(生産能力)の拡大による成長戦略をとってきました。

しかしながら、その際に色々まいた種を充分育てられず、結果として刈り取りができませんでした。更にその大きな投資の影響により、日本をはじめとする、主力市場へ新商品が投入できない、という事態を招きました。

2年ほど前から、このような拡大路線からの転換を図ってきましたが、足元で抱える700万台規模の門構えに対し、販売は500万台を割る状況となり、この状態で事業を継続して利益を出していくことは、到底困難、と言わざるを得ません。

この状況から脱却するために、当社がこれまで十分向き合ってこなかった、失敗を認め正しい軌道へと修正する事、回収が十分に見込めない余剰資産の整理を実行する事、そして「選択と集中」を徹底し、コアマーケットやコアセグメントに持続的にリソースを投入する事、これは苦渋の決断ですが、一切の妥協なく断行する事が必要であると考えています。

今回の計画のポイントは、

  • 過度な販売台数の拡大は狙わず、収益を確保した着実な成長を果たすこと
  • 自社の強みに集中し、事業の質、財務基盤の強化をすること
  • そして新しい時代の中で、「日産らしさ」を取り戻すこと

これにまず注力し、2023年度末には、その先の10年を戦う為の十分な体制を再構築し、日産を新たなステージに移行させること [Nissan Next]、これが大きなミッションであります。

本計画においては、2つの重点分野に注力していきます。

一つ目は事業規模の最適化です。まず、回収が十分に見込めない事業、及び余剰設備を整理し、事業の構造改革を断行します。そのために、

  • 生産能力の最適化
  • グローバルな商品ラインアップの効率化
  • さらに、その他経費等の最適化をすることで、大幅な固定費を削減します。

二つ目は選択と集中です。集中する領域においては、しっかりとしたマネジメントのもと、投資を行い、確実なリカバリーと着実な成長を果たします。

この二つの改革を実行する支えとして重要なことは、品質重視やお客様志向、そして、私たちのビジネスパートナーであるサプライヤー、ディーラーであることは言うまでもありません。

それでは、事業構造改革について、詳細をご説明します。

まず現状の販売レベルを踏まえ、門構えを2018年度の720万台規模から20%削減し、通常シフトで年間540万台体制とします。

加えて、一部の地域では車種を集約し、生産効率の向上を図ります。

具体的には、当社のインドネシア工場を閉鎖し、同地域での生産は、タイの一拠点とします。

西ヨーロッパでは、コアモデルを生産する英国サンダーランド工場を維持し、生産効率向上を図ります。尚、バルセロナの工場については、これまであらゆる方策の検討をしてまいりました。しかし、苦渋の決断でしたが、閉鎖にむけて協議と準備を進めていくこととしました。

北米においても、各工場での生産車種をセグメントやプラットフォームごとに集約し、効率の改善を図ります。

これらの取り組みに加え、更なる合理化を進め、工場の稼働率は80%以上を維持し、事業運営の収益性の大幅な改善を見込んでいます。

なお、需要が拡大した際には600万台近くまで増産できる上方弾力性を持たせます。

生産能力を適正化する一方で、働き方改革や、柔軟な生産体制を構築するための工場のインテリジェント化に対しては投資を継続し、新たな時代のものづくりとして、原材料やその他コストの最適化にも同時に取り組みます。

次に商品ラインアップについてですが、コアモデルに絞り込みます。

2023年度末までに、車齢の長い乗用車とトラック、地域専用となっているモデルやロシアにおけるダットサンなどを打ち切り、18年度と比較してラインアップの車種数を69モデルから20%削減し、55モデル以下の競争力の高いラインアップに切り替えていきます。

当社はグローバルに魅力と競争力を発揮できるモデル、つまり、C/Dセグメント、電気自動車、やスポーツカーに集中します。

これらのセグメントには、先進技術を搭載し、より価値の高い、競争力を持った商品として開発し、当社のリソースを集中します。また商品のライフサイクルについても、車齢を4年以下にし、刷新を図ります。

なお当社が得意とするセグメント以外は、アライアンス・パートナーであるルノーや三菱自動車のアセットを活用し、商品や技術の提供を受けます。

尚、その他固定費や経費についても事業規模に応じ、15%削減します。

このような取り組みによって、当社のコストベースを格段に改善させ、約3000億円の固定費を削減し、そのレベルを維持していきます。

ポイントは、削減するのは余剰設備、或いは採算性の低い商品群であり、当社が集中する領域においては、今後もしっかり投資を継続し、着実な成長を実現していく、という事であります。

次に選択と集中です。マーケット、商品、技術の3つの領域で選択と集中を進めます。

まず、マーケットで見てみますと、日本、中国およびメキシコを含む北米を当社のコアマーケットとして、経営資源を集中し、健全な事業運営を実現してまいります。

一方で、その他南米、アセアン、ヨーロッパにおいては、市場の回復、或いは成長のペースを見極めつつ、アライアンスのアセットも最大限活用しながら、適正な規模での事業展開を図っていきます。これら地域や中東においても、当社の成長のポテンシャルがあるマーケットに集中し、経営資源を投入します。

また、当社にとってビジネス・チャンスが限られている韓国からは撤退、アセアン地域の一部のマーケットの事業を縮小します。

同時に、地域のマネジメント体制についても、今回策定した新たな事業フットプリントに合わせ、より効率よく事業運営を行えるよう、体制の更新を進めます。

本日の時点で全てはお伝え出来ませんが、マーケットの選択と集中については、事業規模の適正化、或いは撤退を含め、今後も段階的に進めてまいります。

ホームマーケットである国内市場には改めて力を入れていきます。国内にはこれまで培ってきた日産の基盤があります。1999年以降、グローバル投資を優先し、国内への新モデルや新技術の投入に空白期間が生まれ、長年ご愛顧頂いているホームマーケットのお客さまのご期待に沿えない結果となりました。

当社は、単なる技術デモカーではなく、実用性のある先進技術とその価値に目を向け、より多くのお客さまにお届けできるパッケージにして、魅力のある商品を拡充してまいります。

特に電動化と運転支援技術については、実用的な新たな価値として多くのお客さまからご好評を頂いております。当社は引き続き、2023年度末までには新たに電気自動車2車種とe-POWER搭載車両4車種を追加しラインアップを拡充します。その結果、当社の販売の電動化率は60%に達する見込みです。

e-POWERやプロパイロット搭載車両は、90%以上のお客さまにご満足頂いており、当社は電動化と自動運転技術を基軸にして、引き続きブランドの向上と、マーケットシェアの回復を目指します。

中国は、当社が現在でも健全な形で事業運営を続けている地域です。

その中国においても、新型コロナウイルスの影響や、市場の成長ペースの鈍化、環境規制の強化等、リスク要因はあります。

しかしながら、世界最大の自動車市場である中国で、日産は強いプレゼンスを誇っています。今後も値引き販売によって台数やマーケットシェアを拡大するのではなく、着実な成長を果たすという方針のもと、健全な事業運営を続けてまいります。

中国は、将来の更なる成長や繁栄が期待されており、またコネクテッドカーを始めとするITの領域や電気自動車等の新技術に対し、高い受容性があります。当社はこれらの先進技術に強みがあり、これからも、着実な成長を見込んでいます。

まず、ニッサン・インテリジェント・モビリティの戦略のもと、同市場に7車種の電気自動車をラインアップとして揃え、e-POWERを搭載した主力商品を投入していきます。

また、コネクティビティは中国市場においてキーとなる技術でありますが、当社はコネクティビティ搭載車の販売比率を現在の75%から90%へと拡大します。これらにより、600万台の保有台数がコネクテッドカーになります。お客さまの利便性を向上し、コネクトすることで得られるデータも活用することで、商品やサービスの更なる向上を実現してまいります。

米国は、この2年、フリートからピュアリテールに重点をおき、販売正常化の取り組みを進めています。台あたりの売価の向上やインセンティブの抑制を図っておりますが、当初の想定より大幅に時間を要している、という状況です。毀損したブランドを立て直すのは非常に難しい、このように実感しているところであります。

既に追加の手として、遅れているリカバリーのペースに応じた固定費の削減や、商品計画の見直し等、もう一段の合理化を進めています。

本当の回復は、販売正常化の取り組みをブレずに進め、新技術、新商品の投入が始まり、徐々に米国全体の業績が回復に転じたあとに見えてくる、このように申し上げてきましたが、昨年発売したSentraで成果が出始め、 今年は新型「ローグ」を皮切りに、いよいよ新車攻勢が始まります。新型「パスファインダー」、新型「QX60」、新型「フロンティア」をはじめ、SUVとピックアップトラックについても、商品力を強化していきます。

同時に、販売会社とサプライヤーの皆さんと連携して、当社のビジネス・モデルを改善できるよう、取り組みの一層の強化を図ります。

欧州は依然として日産にとって重要な地域であり、長い歴史と重要なアセットを保有しています。

昨今、ヨーロッパの自動車産業は、過渡期にあります。 より厳しさを増す競争に加え、環境対応を始めとする規制強化等によって、当社も苦戦を強いられています。

この厳しいマーケットで事業を継続するには、もう一段、対策を強化する必要があります。

その為に、昨日アライアンスで発表しました、Leader-Follower schemeによる一部の商品や技術の供給等を活用し、クロスオーバーSUVに重点をおきます。商品の電動化では、SUVをEVラインアップに追加し、e-POWERを拡大し、マーケットシェアを維持します。

尚、南米市場のように高いブランド力があり、将来の成長が期待できる市場は、適切な規模での事業運営と将来への投資を継続します。同時に積極的にアライアンスのアセットを活用することで商品ラインアップを維持し、投資効率を向上させ、将来の事業の柱に育てていく方針です。

商品については、ラインアップの整理とコアモデルへのリソースの集中、と申し上げましたが、当社は今後18か月の間に少なくとも12の新型車を投入する予定です。その中には、プレミアムブランドのインフィニティモデルも含まれています。本日はその一部をご紹介します。

来月中旬には、米国でもっとも売れている日産車の「ローグ」を一新します。

同じく6月には新型「キックス」が国内でデビューします。「キックス」は既に海外で若々しいデザインと実用的な技術でご好評をいただいております。この「キックス」に全車e-POWERを搭載し、ノートやセレナで人気のe-POWERラインアップを強化して更なる攻勢をかけていきます。

7月には、クロスオーバーEVの新型「アリア」を発表します。2019年の東京モーターショーでコンセプトモデルとしてご紹介しましたが、いよいよ、正式に発表します。「アリア」は、内外装に最新のスタイリングを実現すると同時に、先進運転支援技術「プロパイロット2.0」や最新のパワートレーンをはじめとする数々の先進技術を搭載しています。まさに新しい時代の日産の「顔」として、ブランドをけん引する重要な役割を担っています。

「アリア」に搭載される技術のハイライトは電動化と、将来の自動運転に繋がる先進運転支援技術の融合です。

「日産LEAF」は、世界初の量産電気自動車として2010年に発表以来、累計販売台数が約47万台に達しました。当社は新型の電気自動車2車種をラインアップに追加し、中計期間中に8車種を超える100%電気自動車を投入します。

また、電動化のもう一つの柱であるe-POWERを搭載した車両の累計販売台数も、既に約39万台に達しています。今後e-POWERは、グローバル市場のB、Cセグメントに拡大し、その結果、2023年度までに電動化比率を日本では60%、中国では23%、ヨーロッパでは50%に引き上げ、100万台以上の電動化技術搭載車の販売を見込んでいます。

先進運転支援技術においても、商品展開と実用領域での技術の完成度において当社は先行しており、スカイラインには世界初のハンズオフ機能をもったプロパイロット2.0を搭載しました。

プロパイロット搭載車の累計販売台数は2020年3月末現在で66万台を超え、2023年度末までには20の市場、20を超える商品に適用することで、プロパイロット搭載車の年間販売台数は150万台を超える見込みです。

こうしてグローバルな市場から蓄積されるノウハウは、将来の自動運転技術に繋がります。

この数か月間、世界中の人々が従来とは異なるライフスタイルを余儀なくされています。改めて、モビリティを通じて人々の生活を豊かにし、社会の活力になることが、長期的な使命であることを実感しました。

ここ10年、市場をリードしてきた電気自動車と運転支援技術はそのためのKey Driverです。また、これら新技術を社会の活力に繋げるためには、今までにないアクションも必要です。

昨年甚大な被害を及ぼした台風15号の直後、停電でお困りの住民に電力を供給するために、我々は数十台の「日産リーフ」で駆け付けました。

また、横浜で3年間実証を続けてきたEasy Rideは、自動運転を使った新しいモビリティへのチャレンジです。

電気自動車と自動運転を融合することで、誰でも自由に移動できる社会が実現できるものと考えております。

ここまで、事業構造改革、そして選択と集中による着実な業績のリカバリーに向けた取り組み概要をご説明してまいりました。

ある一定の経済環境や市場環境が前提となりますが、今後2年間で、戦略的対策の実行を完了し、まず自動車事業のフリーキャッシュフローを健全なレベルにまで持っていくこと、これにより2023年度末には、中国の合弁会社を50%比例連結したベースで、マーケットシェア6%、営業利益率5%を(ボトムラインとして)回復できるとみています。

その先の10年を戦う為の事業基盤を再構築していくため、妥協せず覚悟を持って取り組む所存です。

最後に、私自身の決意を、お話ししておきたいと思います。

繰り返しになりますが、日産を必ず成長軌道に戻します。

「日産のポテンシャルはこんなものでは無い」と、12月の就任以来、繰り返し社内外に、発信してまいりました。

素晴らしい人財やグローバルでの事業の経験、目的に向かって物事を成し遂げる力、これまでの失敗からの学び、これらはすべて当社の大事なアセットです。

失敗から目をそらし、つじつまを合わせて取り繕うのではなく、失敗を認め、正すべきことを正す。

まず経営層が意識を変え、社内の内向きな文化を変えていく。そして、お客さまや販売会社、そして取引先の皆さまからの信頼を取り戻す。

こうした事は、例えば何か行動規範やプロセスを変えれば変わる、というものではありません。

全社で一貫性を以て、私達自身が変えていく。その為のあらゆる取り組みを、私は続けてまいります。

私からの説明は以上です。長時間ご清聴ありがとうございました。


【Q&Aセッション】


たくさんのご質問、どうもありがとうございました。大変厳しいご質問も頂戴いたしましたが、覚悟を持って責任を果たしてまいる所存です。

将来に目を向ければ、事業環境は非常に厳しい。規制の強化、限られた成長市場、そしてビジネスとテクノロジーの大きな進化、その為の投資等、生き残りをかけ、解決すべき課題は数多くあります。

道のりは決して容易ではありませんが、日産には素晴らしい従業員がいます。力を結集し、この危機を乗り越えていきたいと思います。

私は日産自動車が、日産らしさを発揮する会社であり続けたいと思っています。日産は、常に「人」を中心に見据え、「人」の為の技術やサービスを追求してきました。

電動化も、決して環境の為だけではありません。

日産の技術、商品には「楽しさ」があります。その一つが新しいドライビング・エクスペリエンスを提供するe-POWERでありますし、これから発表する新型「アリア」にも運転する楽しさ、「人」をワクワクさせる魅力があります。

自動運転も、「人」の為の技術です。

お客さまに常に新たな価値をご提案する、そのためにチャレンジし、ブレークスルーを果たす、これこそが、私たち日産のDNAだと思います。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、私たちのライフスタイルも一変しました。また、自動車業界も大きな転換点を迎えています。このような新しい時代、生活様式の中でも、日産は常に「人」を中心に見据え、「人」の為の技術で、日産ならではの挑戦を続けていきたいと思っています。

今後ともどうぞご支援のほど、よろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。






 

以 上