2018年11月8日
2018年度上期決算発表
日産自動車株式会社
最高財務責任者 軽部博
総括
2018年度第2四半期3か月の主要財務指標は、売上高2兆8,200億円、営業利益1,012億円、当期純利益1,304億円となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローはマイナス48億円、第2四半期末の自動車事業のネットキャッシュポジションは1兆5,600億円でした。
第2四半期の3か月は、残念ながら第1四半期に引き続き新興国通貨の下落や原材料価格の上昇といった逆風に直面し、減収減益という結果になりました。
第2四半期について総括いたしますと、販売の質の向上に取り組む中でも小売台数およびマーケットシェアはほぼ前年並みを確保しましたが、卸売台数を絞り販売会社在庫適正化を実現する中で売上高が減少する結果となりました。グローバルの小売台数は前年比0.7%減の137万4千台であったのに対し、卸売台数は3.7%減の131万3千台、売上高は2.6%減の2兆8千億円となりました。この結果、グローバルの販売会社在庫は第2四半期の3か月で約5万台、第1四半期も含めた上期では約10万台と大きく減少し、適正な在庫水準で下期のスタートを切ることができました。
地域別の販売を見ますと、日本、中国、タイ・フィリピン、および中南米は改善し、小売台数を伸ばすことができました。日本では、新型「日産リーフ」や「ノートe-POWER」、「セレナe-POWER」の販売が好調で、昨年度の問題から順調に回復し、第2四半期の小売台数は前年比1.6%増の15万5千台となりました。中国では、順調な成長を遂げ、第2四半期のマーケットシェアは前年比0.4ポイント増の6%となりました。タイおよびフィリピンにおいては、それぞれ前年比22%増、68%増と大きな伸びを実現し、ASEAN地域における販売回復の第一歩を踏み出すことができました。中南米におきましても、前年比17%増と台数を伸ばし、成長に向けてのファーストステップとなりました。
課題に取り組み中の地域に関しましては、米国では販売の質の改善、欧州では厳格化する環境規制への対応を喫緊の課題と認識し、引き続き取り組んでまいります。
2018年度第2四半期の営業利益は1,012億円と、273億円の減益となりました。販売活動では、主に卸売台数の減少により、それに伴う販売費用の減少も含めた台数・構成が144億円の減益要因となりましたが、米国のインセンティブ改善を含む販売費用の減少が72億円の増益要因となり、全体としては前年比マイナス72億円と減益を最小限にとどめました。一方でモノづくり・その他に関しましては、原材料価格の高騰が逆風になっているほか、厳しい状況の中でも研究開発をはじめとする将来に向けた投資を続けたことが減益要因となっておりますが、コスト削減などは順調に進んでおり、全体としては前年比で99億円の増益要因になっております。為替は主にトルコリラやアルゼンチンペソといった新興国通貨の下落の影響が大きく、300億円の減益要因となりました。販売活動による減益を、モノづくり・その他の増益でカバーいたしましたが、為替による減益まではカバーできなかったことから、残念ながら減益という結果になりました。
販売実績
2018年度第上期のグローバル全体需要は前年比2.3%増の4,659万台となりました。
当社のグローバル販売台数は、中国や中南米、アフリカ・その他等の地域で台数を伸ばしましたが、北米及び欧州で減少したことから、前年比1.8%減の268万台となりました。グローバル市場占有率は前年比0.2ポイント減の5.8%でした。
<日本>
日本国内の全体需要は前年並みの248万台となりました。当社の販売台数は前年比0.5%増の28万5千台となり、市場占有率は前年比0.1ポイント増の11.5%でした。
今年3月に販売を開始した「セレナe-Power」や、昨年発売した新型「日産リーフ」が牽引して前年に比べ台数を増やしたほか、「ノート」も好調を維持しており今年度上期の国内における登録車販売台数1位となりました。
<中国>
会計年度が暦年ベースの中国では、上期にあたる1月から6月の全体需要は前年比5.1%増の1,323万台となりました。当社の販売台数は前年比10.7%増の72万台となり、市場占有率は0.2ポイント増の5.4%となりました。「シルフィ」「エクストレイル」といった既存の車種が順調に台数を伸ばしたことに加え、昨年後半に新規投入したヴェヌーシア「D60」や「キックス」が台数増に貢献しました。
第3四半期にあたる7月から9月までの中国の全体需要は前年比5.4%減の613万台と市場が縮小する中、当社の販売台数は前年比1.6%増の37万5千台となり、市場占有率は0.4ポイント増の6.1%となりました。1月から9月までの当社の販売台数は前年から7.4%増の109万6千台となりました。市場占有率は0.4ポイント増の5.7%でした。
9月末には新型の電気自動車である「シルフィ・ゼロ・エミッション」を発売しました。中国ではこの「シルフィ・ゼロ・エミッション」を含め、電気自動車及びe-Powerを2022年までに20車種投入する計画であり、今後さらに電動化を強力に推し進めてまいります。
<北米>
米国の全体需要は前年比0.6%減の879万台、当社の販売台数は前年比9.1%減の70万9千台となり、市場占有率は8.1%でした。当社は引き続き米国における販売の正常化に取り組んでおり、販売会社在庫の削減は順調に進んで上期の6か月で約5万4千台減少したほか、台当たりのインセンティブも第2四半期は前年と比べ減少に転じました。10月初旬には新型「アルティマ」の販売を開始し、今年度後半のインセンティブ抑制に貢献すると考えております。
カナダでは前年比1.8%増の8万2千台を販売し、市場占有率は7.2%でした。
メキシコの当社の販売台数は前年比13.6%減の15万台に留まったものの、市場占有率は21.7%で、引き続き首位の座を維持しました。
<欧州>
ロシアを含む欧州における当社の販売台数は33万台で、前年から12.1%の減少となりました。ロシアを除くと、欧州の販売台数は前年比14.3%減の28万台で、市場占有率は3.2%でした。欧州市場においては9月より新燃費測定基準であるWLTPが導入され、多くの会社と同様に当社の販売も影響を受けておりますが、10月にWLTP対応の新型エンジンを搭載した「キャシュカイ」を発売するなど対応を急いでおります。一方で、北欧を中心に「日産リーフ」の販売は非常に好調で、前年比約2.5倍と大きく台数を伸ばしました。
ロシアにおける当社の販売台数は前年比2.4%増の5万台となり、市場占有率は5.6%でした。
<その他市場>
その他市場における当社の販売台数は、前年比4.3%増の40万7千台となりました。
アジアとオセアニアの販売台数は、前年比4.3%減の15万8千台となりました。タイやフィリピンで台数を大きく伸ばした一方で、まだ課題が残るインドネシアやインドでは減少しました。「キックス」が好調な中南米においては前年比21.1%増の11万3千台を販売しました。中東においては当社の販売台数は前年比2.4%減の8万4千台にとどまりましたが、全体需要はさらに大きく減少しました。アフリカとその他市場では特にエジプトで大きく伸び、販売台数は前年比13.3%増の5万2千台となりました。
財務実績
次に2018年度上期の財務実績をご説明しますが、これまでの発表と同様に、中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づき、ご報告いたします。
- 連結売上高は5兆5,300億円となりました。
- 連結営業利益は2,103億円、売上高営業利益率は3.8%となりました。
- 営業外収益は1,196億円で、前年と比べて大幅に増えておりますが、これは主に持分法適用会社の投資収益の増加によるものです。中国の合弁会社がこの増加に最も大きく貢献しています。
- 営業外収益を加えた経常利益は3,299億円となりました。
- 当期純利益は2,463億円、売上高純利益率は4.5%となりました。
<営業利益増減分析>
為替影響は493億円、原材料価格の上昇は539億円の減益要因となりました。
会社のパフォーマンス面では、将来へ向けた投資の拡大による研究開発・生産費用の増加と、米国・欧州における販売台数の減少により販売活動が減益要因となりましたが、購買コストの削減と商品性向上を含むコスト項目による増益が、それを打ち消す結果となりました。
グラフの下には第2四半期3か月の実績を記載しております。ほぼ上期と同様のトレンドではありますが、米国における販売正常化に向けた取り組みの結果が徐々に現れ始めたことから、販売活動のマイナス幅が第1四半期と比べ縮小しています。
販売会社在庫推移
販売会社在庫は、適正化に取り組んだ結果、2018年3月末からの6か月で10万台減少し、9月末時点で51万台となりました。日本、米国、欧州という全ての主要な地域で減少しております。
主要財務指標 (中国合弁会社比例連結)
中国合弁会社比例連結ベースの第2四半期3か月の財務実績は次の通りです。
- 連結売上高は3兆1,700億円でした。
- 連結営業利益は1,523億円、売上高営業利益率は4.8%となりました。
- 当期純利益は1,304億円でした。
- 自動車事業のフリーキャッシュフローは173億円でした。
- 自動車事業のネットキャッシュポジションは1兆8,400億円となりました。
株主還元
2018年度第上期は、北米や欧州における販売台数の減少や原材料価格の上昇、為替等の課題に直面し、厳しい結果となりました。
一方で、米国における販売の質の改善は、時間がかかる取り組みではありますが、少しずつ結果も出始めており、下期はさらなる改善を実現できるものと考えております。また、コスト削減の取り組みも順調に進んでおり、モノづくりにおいてはしっかりとした結果を残せる見通しです。以上のことから、2018年度の通期の業績見通しに変更はありません。
自動車事業のフリーキャッシュフローも、上期は販売会社在庫の調整の影響もあり若干マイナスとなりましたが、下期は在庫調整もほぼ終了したことで収益とともに回復し、通年では3,000億円程度のフリーキャッシュフローを実現できると見込んでおります。よって、今年度の配当の計画に関しましても変更はなく、当初の計画どおり、前年に対し7.5%の増配となる一株当たり57円の通期配当を実施する予定です。中間配当につきましては、本日の取締役会において、1株当たり28円50銭とすることを決定し、今月末にお支払する予定です。
以 上