スピーチ


2017年6月27日

第118期定時株主総会 事業報告

西川CEO

2016年度は、為替相場の悪化をはじめとした厳しい事業環境の中、着実に生産及び販売を拡大するともに、事業運営効率の改善を進め、しっかりとした財務実績を確保することができました。

  • 連結売上高は11兆7,200億円、連結営業利益は7,422億円に達しました。
  • 売上高営業利益率は6.3%。
  • 当期純利益はカルソニックカンセイの売却を含んでおりますが、前年比26.7%増の6,635億円。
  • 自動車事業のフリーキャッシュフローは6,771億円。
  • 三菱自動車の株式取得とカルソニックカンセイの売却益を除くと、フリーキャッシュフローは、8,171億円。
  • その結果、自動車事業のネットキャッシュは1兆6,400億円となりました。

以上の健全な業績を反映し、2016年度通期の配当金は、ご案内の通り1株につき48円を予定しています。

2016年度のグローバル販売については、前年の542万台から20万台増加し、563万台となりました。昨年に引き続き過去最高を更新し、着実に成長しています。特に下期は大きく成長し、下期だけで前年比7.3%増の300万台以上を販売しました。

主要地域別に見ると、日本での当社の販売台数は、年度前半の「デイズ」、「デイズ ルークス」の販売停止の影響を受け、前年から減少しました。しかしながら、「デイズ」、「デイズ ルークス」は7月に販売を再開し、8月には「セレナ プロパイロット」、11月には「ノート e-POWER」の発売によって、年度後半の市場占有率は、前年同期から0.7ポイント増の12.5%まで上がりました。一貫して実施してきた積極的なブランド・キャンペーンに加え、販売店舗の改修や人員の増強など、15年度以降準備を進めてきた結果が、徐々に表れていると認識しています。

中国では、競争環境が厳しさを増していますが、当社は台数を大きく伸ばし、販売実績は135万台に達しました。「エクストレイル」や「シルフィ」、そして直近では「キャシュカイ」を中心とする商品ラインアップが増販に寄与しました。

昨今中国では、ローカル・ブランドが大きく成長しています。その成長のペースは非常に早く、昨年は約3割拡大し2,700万台の全需のうち、1,000万台に迫る規模となり、さらに拡大を続けています。当社のローカル・ブランドであるヴェヌーシアでは、戦略的に強化を進めており、昨年12月に新しく「ヴェヌーシア T90」を投入しました。その結果、今年の1月から4月の累計で、市場拡大に合わせ、前年比約10%の増販を達成しました。当社は、市場の競争激化や変化に対処すべく、適切に対応しています。

米国では158万台を販売し、前年同期比で全体需要を大きく上回り、市場占有率は0.4ポイント増の9.0%に達しました。好調な「ローグ」と「アルティマ」に加え、新型の「アルマーダ」やフルサイズピックアップの「タイタン」も着実に販売を伸ばしました。米国では、需要がセダンからSUVやクロスオーバーへシフトしてきておりますが、当社はクロスオーバーで強みを持っており、同セグメントの需要の増加にも十分に対応することができました。
カナダでも全体需要を上回る販売を達成し、メキシコでもマーケット首位の座を維持しました。

欧州では、需要が拡大し、当社も販売を伸ばしました。SUVの「キャシュカイ」とピックアップの「ナバラ」を中心に好調な商品ラインアップが販売をけん引しました。また年度末には、第5世代の新型「マイクラ」の出荷も始まり、今年度の販売に貢献することを期待しています。

一方、ロシアでは経済の先行き不透明感により、引き続き全需は低迷しています。当社の販売台数も減少しましたが、昨年度を底として、今年度以降の段階的な回復を想定しています。

2016年度に発売した主力モデルをまとめると、先ほどご紹介したモデルに加え、中南米では「キックス」、インフィニティ・ブランドではスポーツクーペの「Q60」、ダットサン・ブランドではインドで「redi-GO」を発売しました。

次に新技術の取り組みとして、当社のブランド戦略の中核である、ニッサン インテリジェント モビリティのステップとして、16年度に順次新技術をお届けしました。

自動運転の領域では、新型「セレナ」に初のプロパイロットを搭載。電動化の領域では、「ノート」に初のe-Powerを搭載し、新たな電気自動車の形として、好評を得ております

また、コネクテッドとニュー・モビリティ・サービスの領域では、DeNAと提携して、無人運転車の開発、そして運用の実証実験に向けた準備を共同で開始し、将来に向けて着実に前進しております。
さらに、本年度後半に発売予定の新型「リーフ」にもプロパイロットの機能を搭載し、お届けする予定です。

16年度は、アライアンスも大きく進展しました。2016年10月、日産から三菱自動車への出資が完了し、三菱自動車がルノー・日産のアライアンスに、第三のパートナーして加わりました。この出資により、3社を合わせたアライアンスのグローバル販売台数は、ほぼ1,000万台の規模となりました。

2017年度に日産として三菱自動車との提携で新たに240億円のシナジーが得られる見通しは、購買、物流を中心に順調に推移しています。また中期的な協力関係も、プラットフォーム開発、アジアでの連携を中心に検討が進んでいます。4月には、インドネシアで三菱自動車の資産を活用し、ミニバンのOEM供給を受けることを発表しました。今後もさらに、テーマ毎に具体化を進めていきます。

ニッサン インテリジェント モビリティの戦略を進めるために、従来の自動車関連の枠組みを超えたパートナー関係の構築が必要と申し上げてきましたが、2016年はこの点でも進展しました。DeNAとの提携に加え、マイクロソフト、トランスデブ、モービルアイを始めとする複数のパートナーと、共同の取り組みを開始しております。また、米国においては、NASAとの将来技術の共同研究も進めております。

当社は引き続き、企業の社会的責任、CSRについても、幅広く、積極的に取り組んでいます。既にご案内の通りですが、2016年度には、チーフ サステナビリティ オフィサーの役職を新たに設け、専務執行役員の川口を任命しました。彼のリーダーシップの下、持続可能な企業として社会に貢献する活動を加速させています。

昨年度の取り組みをいくつか挙げますと、熊本で発生した地震では、当社は義援金や飲料水、食料等の必要物資の支援に加え、東日本大震災の際と同様、「リーフ」と「e-NV200」合わせて100台を、行政とNPOへ無償で貸し出しました。また人的支援として、従業員がボランティア活動を行いました。また、東日本大震災の被災地の支援も2011年から継続して行っており、海外での災害復興支援も迅速に行いました。

2017年度、当社は、

  • 着実な成長
  • 新技術、新商品によるニッサン インテリジェント モビリティの更なる推進
  • それらを実現するためにアライアンスのベネフィットを最大限活用すること

この大きく3つのテーマに取り組んでまいります。

当社のグローバル販売台数は、着実な成長という方針のもと、583万台を見込んでいます。中国と、回復が見込まれる日本を中心に、全地域で販売を伸ばします。

以上の販売計画をもとに、2017年度は、

  • 連結売上高11兆8,000億円
  • 連結営業利益6,850億円
  • 売上高営業利益率5.8%
  • 連結当期純利益5,350億円

を見込んでいます。

今年度は、原材料コストの上昇、想定される為替レートに基づく逆風が見込まれ、また米国の市場の勢いもやや弱くなってきているため、収益についてはやや慎重な見方をしています。足元は慎重に見る一方、確実に将来に向けた研究開発への投資を拡大していきます。

市場環境としては、やや逆風と見ていますが、その中でも技術の日産としてのDNAを持ち、ニッサン インテリジェント モビリティを着実に発展させ、しっかりとした日産の顔づくりを進めていきます。

今年度は、そのための重要な商品も投入していきます。昨年度の「セレナ」、「ノートe-POWER」に続き、今年は新型「日産リーフ」を発売します。さらに航続距離を伸ばし、ニッサン インテリジェント モビリティの中心とも言える商品として大いに期待してください。日本を皮切りに、北米、欧州へ投入を予定しています。

「プロパイロット」技術は、国内の「エクストレイル」や欧州の「キャシュカイ」へ搭載し、新技術の商品化をグローバルに進めます。「e-POWER」の他車種への拡大も進めていきます。
米国では、フルサイズピックアップ「タイタン」のキングキャブをこの夏に追加し、需要が高まるこのセグメントで攻勢をかけます。

中国では、ニッサン・ブランドの「パラディン」に加え、今後の中国市場でのキーとなるヴェヌーシア・ブランドのミニバン「M50V」を4月に発売しました。

ご紹介した商品以外にも、今年度は魅力的な商品を世界各地に投入する予定です。これらの商品を、確かな品質でお客さまへお届けし、確実な成長を実現していきます。

当社は、健全な収益性とキャッシュフローのもと、今後も積極的な配当政策を継続します。2017年度は、前年に対し、一株当たり5円プラスの53円の通期配当を実施する予定です。

2016年度は日産パワー88の最終年度であり、2017年度は次期中期経営計画をスタートさせる年となります。これまでの進捗と次期中期経営計画の骨格について少しお話しします。
日産パワー88は大きな投資をもとに、大きな成長を狙った計画でした。2010年度を起点としてみると、これらの指標で見られるように、この6年間で3割から4割の事業規模拡大、事業のフットプリントの拡大に成功したことになり、これは今後の中期の事業展開の大きな基礎となったと評価しています。残念ながら、ターゲットとした8%の市場占有率には届きませんでしたが、次期中期経営計画の期間中に、このレベルに到達したいと考えています。

もう一つの8である8%の収益性、あるいはそれを維持できる事業運営効率の面では、前半に大きな投資に伴う難しさを経験しましたが、これを後半で克服し、14年度以降着実に効率を上げました。為替の条件を一定とすると、2年間でそれぞれ1.2ポイント、1.3ポイントの収益性の改善を達成し、一定の経済、市場条件のもとでは、8%の収益性を確保できる状態まで来たと言えます。

2017年度よりスタートさせる6ヵ年の次期中期経営計画のテーマは、日産パワー88で築いた基盤の上で、着実な成長、進化を果たすことです。成長目標として主な部分では、8%の収益性を維持しながら、売上を増大させることです。12兆円台の事業から、16.5兆円規模の事業へ拡大を図ります。加えて6年間の累積として、2.5兆円のキャッシュフローを生み出します。
一方、技術、事業の進化という面で、次の6年間は大きな変化が起こると見ています。
日産はすでにニッサン インテリジェント モビリティとして、戦略的に取り組みを進めておりますが、この領域はアライアンスのベネフィット、強みをフルに活かしていくべき領域です。現在、ルノーに三菱自動車を加え、検討を重ねています。

今年度中に準備ができ次第、全体のご説明をします。

 

ゴーン会長

この4月、私は日産自動車のCEO職を離れ、アライアンスの成長と進化により集中的に取り組める体制に移行しました。これは悩みに悩んだ末に下した決断でした。この18年間、日産自動車を率いてきたことは私にとって名誉なことだったからです。改めて、私に日産自動車の経営を任せてくださった株主の皆様に心から感謝申し上げます。また、今後は会長として留まる機会を与えていただき、誠にありがとうございます。

私がCEOの立場を離れることができたのも、当社が正しい方向に向かっていればこそです。日産自動車には優秀な幹部が揃っています。西川がCEOに就任したことは自然な流れであり、西川の指揮のもと、日産自動車には輝かしい未来が待っています。

私は今後、日産を含め、パートナー各社が、成長を続けるアライアンスのメリットを活かせるよう、力を尽くして参ります。今月、アライアンスは発足から18周年を迎えます。ルノー・日産アライアンスは自動車業界で唯一の長く続いているパートナーシップです。

昨年秋、日産自動車が三菱自動車の発行済み株式を取得し、三菱自動車がルノー・日産アライアンスに第三のパートナーとして加わりました。これにより、アライアンスの規模、シナジー効果の可能性、そしてアセアンをはじめとする市場におけるプレゼンスは大きく拡大しました。アセアンは、従来アライアンスが必ずしも強みとしていなかった地域です。

三菱自動車が加わることでもう一つのメリットが生まれました。2017年の最初の3ヵ月間の販売データを見る限り、アライアンスは今年の中盤には世界最大の自動車グループになる見込みです。世界最大の販売台数自体は目標ではありませんが、大変喜ばしいことです。次の一手は、アライアンスの持つスケールメリットを活かし、競争力向上を図ることです。

この点については、複数の好機があります。一つ目は継続的なシナジー効果の創出です。2016年、アライアンスによるシナジー効果は最高記録を更新しました。2018年には55億ユーロにのぼるシナジー効果の創出を計画しており、アライアンスによるメリットは今後も増えていきます。2020年までには、アライアンスが生産するクルマの7割で共通プラットフォームを採用し、それぞれ台当たりの調達コストを3割、台当たりの開発費を4割削減します。直近では、三菱自動車との協業による初年度のシナジー効果も出始める見込みです。

もう一つの好機は、新設した小型商用車ビジネスユニットがもたらすメリットです。小型商用車ビジネスユニットは日産の強みである米国、中国、および日本向けのピックアップトラックとSUVに、ルノーが15年間にわたり培ってきた欧州と南米市場向けの商用バンのノウハウを組み合わせます。三菱自動車を入れると、アライアンスは世界の小型商用車市場の77%をカバーしており、今後も各社の投資と専門性を活かし、各市場の事情と各ブランドを尊重しつつさらなる成長を実現します。

また、電動化の領域におけるリーダーの座もさらに強化していきます。アライアンスはこれまでに累計46万台の電気自動車を販売しました。これはメディアの注目を集めている競合他社、テスラの台数の2倍に相当します。2015年から2020年の間に、アライアンスは12億ユーロにのぼる資金を新技術開発に充て、効率化を図るとともに、さらに大きな成果を生み出す計画です。

今年度後半には、新型「日産リーフ」の発売を控えています。三菱自動車との協業で、プラグイン・ハイブリッドもラインアップに追加します。これらの取り組みは電動化のパイオニアとしての立場をさらに強固なものにするだけでなく、厳格化する環境規制に積極的に対応する力も向上させます。

3つ目の好機は技術の共有です。クルマは将来的に電動化し、自動運転となり、そしてコネクテッドカーになっていくことは疑う余地もありません。アライアンスでは、その規模、共同開発、研究開発を通じて、各市場のあらゆる分野の技術を、妥協することなく、ハンディキャップを背負うこともなく開発することができます。これから数ヵ月間、私たちはDeNAやトランスデヴと無人運転車の実証で協業し、マイクロソフトとは開発中のコネクティビティのプラットフォームの共有を進めていきます。

今後予定している節目のいくつかをご紹介しましたが、今アライアンスはまさに胸躍る時代を迎えています。しかしながら、自己満足に陥っている余裕はありません。規模が大きいからといって自動的に成功するとは限らないのです成否はパートナー各社がそれぞれ持てる力を余すところなく発揮できるかどうかにかかっています。

日産自動車は、アライアンスの可能性を左右する中心的な存在であり、確かな土台のもと、将来に向けた力強いビジョンを掲げています。

 

以 上