スピーチ


2017年11月8日

2017年度上期決算発表
日産自動車株式会社
社長兼最高経営責任者 西川廣人

はじめに
2017年度上期は前年と比べ販売台数、売上高、市場占有率が増加した一方で、収益力は前年並みとなりました。国内市場における完成検査に係る影響と、米国のタカタに関わる集団訴訟費用が、営業利益を圧迫しました。

2017年度上期の連結売上高は5兆6,500億円、連結営業利益は2,818億円、売上高営業利益率は5%となりました。当期純利益は2,765億円となり、売上高純利益率は4.9%でした。2017年9月末現在の自動車事業のフリーキャッシュフローは2,397億円、ネットキャッシュポジションは1兆7,600億円となりました。

販売実績
2017年度上期のグローバル全体需要は前年比1.9%増の4,555万台でした。当社のグローバル販売台数は、前年比4.6%増の273万台に達し、市場占有率は0.2ポイント増の6%となりました。

日本国内の全体需要は前年比7.7%増の248万台となりました。当社の販売台数は前年比34.1%増の28万3,000台となりました。好調な「セレナ」と「ノートe-POWER」に支えられ、登録車の販売台数は前年比17.1%増の19万3,000台を記録しました。さらに、昨年の後半に販売を再開した「デイズ」と「デイズ・ルークス」が健闘し、軽自動車の販売台数は前年比93.9%増と飛躍的に拡大し、9万台に達しました。その結果、国内の市場占有率は前年比2.2ポイント増の11.4%となりました。

会計年度が暦年ベースの中国では、上期である1月から6月までの全体需要は前年比2.1%増の1,260万台となりました。当社の販売台数は前年比6.7%増の65万1,000台となり、市場占有率は5.2%となりました。

会計年度が暦年ベースの中国で第3四半期にあたる、7月から9月までの販売台数は、全体需要の伸びを上回り、36万9,000台に達しました。好調な「エクストレイル」と「シルフィ」が販売をけん引し、15.7%増と大きく台数を伸ばしました。

北米の全体需要は前年比1.5%減の1,074万台となり、当社の販売台数は前年比1.3%減の103万5,000台となりました。米国の全体需要は前年比2.1%減の884万台となる一方、当社の販売台数は微減の77万9,000台となり、市場占有率は8.8%でした。「ローグ」と「ローグスポーツ」が販売を支えています。

カナダでは前年比8.6%増の8万1,000台を販売し、市場占有率は6.9%となりました。

メキシコの当社の販売台数は前年比8.9%減の17万4,000台となったものの、2位メーカーとの差を広げ、100か月連続で首位の座を維持しました。市場占有率は23.9%となりました。

ロシアを含む欧州における当社の販売台数は前年比3.6%増の37万5,000台となりました。モデルチェンジした「キャシュカイ」と新型「マイクラ」が台数増に寄与しています。市場占有率は前年並みの3.8%でした。ロシアを除く欧州の販売台数は前年比2.1%増の32万6,000台となり、市場占有率は3.6%でした。ロシア市場では長引く経済の不透明感に回復の兆しが見えてきています。ロシアでは前年比15.1%増の4万9,000台を販売し、市場占有率は6.1%となりました。

その他市場における当社の販売台数は、中南米とアフリカを中心とする市場拡大に伴い、前年比2.3%増の39万台となりました。「ダットサンredi-GO」や「キックス」をはじめとする商品が販売をけん引しています。アジアとオセアニアでは、前年比2%減の16万5,000台を販売しました。中南米の販売台数は前年比12.2%増の9万4,000台となりました。中東の販売台数は前年比4.8%減の8万6,000台に留まりましたが、アフリカとその他市場の販売台数は前年比15.6%増の4万6,000台となりました。

販売実績
次に2017年度上期の財務実績をご説明しますが、これまでの発表と同様に、中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づき、ご報告いたします。また、前年度との比較においては、昨年度実施したカルソニック・カンセイ社の連結除外による影響を除き、同一条件での比較をしています。

  • 2017年度上期の連結売上高は5兆6,500億円となりました。
  • 連結営業利益は2,818億円、売上高営業利益率は5%となりました。
  • 当期純利益は2,765億円、売上高純利益率は4.9%となりました。

カルソニック・カンセイ社の連結除外影響とその他特別項目を除いた同一条件で比較すると、2017年度上期の連結営業利益はほぼ前年並みの3,226億円ですが、国内の完成検査に係る影響と米国のタカタに関わる集団訴訟の費用を含めると、上期の連結営業利益は2,818億円となりました。

第2四半期の営業利益は、国内の完成検査に係る影響と米国の集団訴訟に関わる費用を除くと、前年比9.2%増の1,693億円となります。これらの特別項目のインパクトを含めると、1,285億円となりました。

中国合弁会社比例連結ベースの財務実績は次の通りです。

  • 連結売上高は6兆2,200億円でした。
  • 連結営業利益は3,511億円となりました。
  • 当期純利益は2,765億円です。
  • 自動車事業のフリーキャッシュフローは2,737億円でした。
  • 自動車事業のネットキャッシュポジションは1兆9,600億円となりました。

見通し
国内の完成検査に係る影響やコスト効率化を考慮し、2017年度の営業利益の見通しを当初の6850億円から6450億円に下方修正いたします。連結売上高と当期純利益は当初の見通しから変更はありません。

これから年度末にかけては複数のリスクとオポチュニティーがあります。国内の完成検査に係る、事業及び最終的な財務面への影響、引き続き当初の想定を下回る可能性のある米国をはじめ一部の重要市場の需要、業界全体でのインセンティブ増加、そして原材料価格の上昇等が主なリスクとなります。

一方、オポチュニティーとしては、更なるコストの効率化、中国の好調な販売、アフターセールスおよび販売金融事業の利益の増大、そして為替変動の逆風緩和等です。日産はオポチュニティーを最大限に生かし、リスクの影響を打ち消すべく、しっかりとした取り組みを進めてまいります。

株主還元
2017年度の通期配当は、年度当初に申し上げました通り、前年比10.4%増の一株当たり53円に引き上げる予定です。先ほど取締役会で、中間配当として一株当たり26円50銭を今年の11月22日にお支払いすることを決定いたしました。

日産自動車は数々の強い逆風と、国内工場における完成検査に係る問題に直面する中、着実な収益を達成しました。今後も事業の持続的な成長を実現し、しっかりとした利益とフリーキャッシュフローを確保するとともに、魅力のある株主還元を実施してまいります。

中期計画
最後に、今年度より開始している新しい中期経営計画についてご説明したいと思います。今日は全体のフレームワークについてお話しし、それぞれ詳細は適切なタイミングでお話しさせていただきます。

まず今回の中期計画の位置づけですが、これまで「日産パワー88」で築いた基盤をもとに、アライアンスのベネフィットを最大限活用し、着実に進化することで、そのための6年間の取り組み方針を策定しています。

ミッションは二つあります。一つは、着実な成長です。成長と同時に、健全な収益性とフリーキャッシュフローを実現します。もう一つは、「技術の日産」としてのDNAを活かしに、新技術とビジネスの両面で自動車産業をリードすることです。

今回の中期計画は、今後10年から15年の間に本格的に訪れるであろう、大きな技術革新、そしてそれに伴う市場やお客さまの変化など、こうした変革の時代を見据え、今後6年間で当社がどのような成長を果たし、その先の更なる成長へ向けてどのように準備を進めるのかを念頭に策定しました。

中期計画の名称は、「日産 M.O.V.E. to 2022(ニッサン ムーブ トゥー ニーマルニーニー)」としました。当社が将来に向け、常に前進し、進化を果たしていくこと、そしてそれをドライブする

  • 将来のモビリティー、
  • オペレーショナル・エクセレンス、
  • お客さまへの価値提供、
  • 電動化、

を表しています。

まず着実な成長という点で申し上げると、8%の収益性は維持しながら、年間売上高を12兆円台から16.5兆円へ増加させ、そして、6年間の累積で2.5兆円の自動車事業のキャッシュフローを生み出すということであります。

この成長を支えるピラーとして、まず我々のビジネスを支えるメインマーケットである日本、中国、アメリカ、メキシコで、しっかりとした利益と成長を果たすことに注力していきます。加えて売上高の増大や成長という面を重要視し、アフターセールスと販売金融にもフォーカスしていきます。

次に「日産パワー88」の期間中に投資を先行させた市場で、まだ成果を出し切っていない、ブラジル、ロシア、インド、そしてアルゼンチン、またブランドの軸では、インフィニティとダットサンで今後投資の刈り取りを進めていきます。

そして、市場としては欧州、中東、アセアン地域で、また商品の軸では、本来日産の強みである大型SUVやピックアップビジネスで、我々の持つポテンシャルを最大限に活かして事業を拡大させ、マーケットリーダーとのギャップを詰めていきます。

さらに、これまで取り組んできた、売上高の最適化とTdCの改善は継続しながら、固定費も適切にコントロールし投資を進めます。

これらが、着実な成長を実現する大きなフレームワークになります。

次に新技術とビジネスの両面で自動車産業をリードするという点では、電気自動車、自動運転、そしてコネクテッドや新しいモビリティーサービスといった大きな変化をチャンスとして、技術、事業展開の両面で進化を加速していきます。

電気自動車では引き続きリーダーの座を維持し、また自動運転技術の領域では、最先端の技術と商品をいち早く展開していきます。また、自動運転車によるモビリティーサービスも、他社に先駆けて取り組みを進めます。当社のブランド戦略のコアである、ニッサン インテリジェント モビリティの一環として、順次新技術と新商品をお届けし、進化をリードしていきます。

このベースとなる技術開発には、アライアンスのベネフィットを最大限に活用することが不可欠であり、アライアンスとしての取り組みがベースとなります。その上で、ニッサン、インフィニティ、ダットサン、それぞれのブランドを通じてビジネスとして展開し、お客さまに先進的で価値のある商品やサービスをお届けしてまいります。

以 上