スピーチ


2017年5月11日

2016年度決算報告
日産自動車株式会社
社長兼CEO 西川 廣人

はじめに

2016年度は厳しい為替相場の中、しっかりとした財務実績を確保しました。

  • 2016年度通期の連結売上高は11兆7,200億円、連結営業利益は7,422億円に達しました。
  • 売上高営業利益率は6.3%となり、
  • 当期純利益は前年比26.7%増の6,635億円となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローは6,771億円となりました。
  • 三菱自動車の株式取得とカルソニックカンセイの売却を除くと、フリーキャッシュフローは前年度のほぼ倍となる8,171億円となります。キャッシュを作る力は格段に向上しています。
  • また、自動車事業のネットキャッシュは1兆6,400億円となりました。

不利な為替の影響を受け、結果としては減収減益でありますが、健全な財務実績を収めました。
なお当社の事業の成長、そして効率の改善も進んでいます。

仮に前年と同水準の為替レートで換算すると、売上高は2015年度の12兆1,900億円から12兆9,800 億円まで拡大し、営業利益は1兆200億円に増加しました。売上高営業利益率は7.9%に相当します。

2016年度連結財務実績

営業の努力、コスト低減の努力を含む、当社の事業効率は29.1%改善しましたが、為替変動による減益を補うことはできませんでした。 為替変動による減益要因を除くと、通期の営業利益は1兆200億円となりました。

為替の逆風は第4四半期に少し弱まったものの、通期の為替変動による減益は2,819億円にのぼりました。 結果として、営業利益は7,422億円となりました。

次に、中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づき、通期の財務実績をご報告いたします。

  • 連結売上高は前年から3.9%減少し、11兆7,200億円となりました。
  • 当期純利益は6,635億円となり、前年から26.7%増加しました。

中国合弁会社比例連結ベースの財務実績は次の通りです。

  • 連結売上高は12兆8,400億円に減少しました。
  • 連結営業利益は8,824億円でした。

中国合弁会社比例連結ベースの財務値でも、前年と同水準の為替レートで換算すると、前年から改善しています。

  • 連結売上高は14兆3,300億円に増加しました。
  • 営業利益は前年の9,355億円から1兆1,900億円に拡大し、売上高営業利益率は8.3%と、既に8%台に達しています。


ビジネスアップデート

2016年度、当社のグローバル販売台数は、前年の542万台から3.7%増の563万台と拡大しました。

上期決算発表で申し上げたとおり、残念ながら当社の2016年度上期のグローバル販売台数は微減となりましたが、見込み通り下期には前年比7.3%増の300万台以上を販売しました。

次に地域別にご説明いたします。

国内の当社の販売台数は、前年比2.6%減の55万7,000台となり、市場占有率は11.0%でした。
今年度前半の、「デイズ」、「デイズ ルークス」の販売停止が、大きく影響しました。しかし、「デイズ」、「デイズ ルークス」は7月に販売を再開し、8月には「セレナ プロパイロット」、11月には「ノート e-POWER」を発売したことで、下期は好調な販売となりました。下期の市場占有率は前年同期から0.7ポイント増の12.5%まで伸ばしました。

会計年度が暦年ベースの中国の全体需要は前年比13.2%増の2,690万台と大きく伸びました。当社の販売台数は前年比8.4%増の135万台、市場占有率は5.0%となりました。「エクストレイル」や「シルフィ」、そして直近では「キャシュカイ」を中心とする商品ラインアップが販売に寄与しました。

販売台数は増加し、ニッサン・ブランドも好調であった一方で、全需の伸びがさらに大きく、残念ながらシェアが低下する結果となりました。主な要因は、当社のローカル・ブランドであるヴェヌーシアの販売が、市場の大幅な成長ペースに追い付けなかったためです。しかし、12月には「ヴェヌーシア T90」を新たに投入し、すでに回復の兆しが見え始めています。2017年第1四半期の中国の販売は、市場の成長ペースを上回る前年比5.3%増の31万4,000台となりました。

北米では再び販売記録を更新しました。米国では全体需要を上回る4.2%増を記録し、158万台を販売しました。市場占有率は9.0%です。

引き続き好調な「ローグ」と「アルティマ」が販売をけん引しています。フルサイズピックアップの「タイタン」も着実に売り上げを伸ばしました。米国市場の需要はピークを越えたとの見方もありますが、当社の第4四半期、2017年暦年の最初の3ヵ月の販売は引き続き好調でした。当社はクロスオーバーセグメントで強みを持っており、同セグメントの需要の増加にも対応できると考えています。

カナダでは前年比3.0%増の13万8,000台を販売し、市場占有率は7.0%となりました。

メキシコでは首位の座を維持し、販売台数は前年比14.4%増の40万9,000台と、最高記録を更新しました。市場占有率は25.0%です。

ロシアを除く欧州の販売台数は前年比7.2%増の68万3,000台でした。SUVの「キャシュカイ」とピックアップの「ナバラ」を中心に好調な商品ラインアップが販売をけん引しました。また3月末には、第5世代の新型「マイクラ」の出荷も始まりました。

一方、ロシアでは経済の先行き不透明感により、引き続き販売は低迷しています。当社の販売台数は前年比19.7%減の9万3,000台に留まりました。市場占有率は1.1ポイント減の6.5%となりましたが、2017年度以降の段階的な回復を想定しています。

その他市場における当社の販売台数は、主に不安定な需要と為替変動により、前年比3.3%減の80万8,000台となりました。

中南米は非常に好調で、将来に向けて勢いをつけており、全体需要の伸びを上回る前年比6.0%増の18万2,000台を販売しました。中東の販売台数は前年から減少したものの、全体需要の減少幅を下回りました。

アフリカとその他の市場では、全体需要は6.2%伸びたものの、当社の販売台数は前年比10.7%減となりましたが、この全体需要の伸びには、当社が事業を行っていないイランの急激な伸びが含まれていることが要因です。

2016年度は複数の主力モデルを発売しました。国内では「ノートe-POWER」とプロパイロットを搭載した「セレナ」、アメリカと欧州ではスポーツクーペ「インフィニティQ60」、欧州では第5世代の「マイクラ」、アメリカではフルサイズピックアップの「アルマーダ」、インドでは「ダットサンredi-GO」、中南米では「キックス」、中国では「ヴェヌーシア T90」を投入しました。

2016年度は、我々日産のブランド戦略の中核である、ニッサン インテリジェント モビリティのステップとして、順次新技術、そして新商品をお届けしました。

自動運転の領域では、新型「セレナ」に初めてプロパイロットを搭載、また電動化の領域では、「ノート」に初のe-POWERを搭載し、新たな電気自動車の形として、好評を頂いております。またコネクテッドとニュー・モビリティ・サービスの領域では、DeNAとの提携を通して、無人運転車の開発、そして運用の実証実験に向けた準備を共同で開始し、将来へ向けて着実に前進しております。

また本年度中に発売予定の新型「リーフ」にも、プロパイロットの機能を搭載し、お届けする予定です。

16年度は、アライアンス戦略も大きく進展しました。2016年10月に、日産から三菱自動車への出資が完了し、三菱自動車が、ルノー・日産アライアンスに、第三のパートナーとして加わりました。この出資により、3社を合わせたアライアンスの販売台数は、ほぼ1,000万台の規模となりました。

2017年度に日産として240億円のシナジーを得られる見通しは、購買、物流を中心に順調に進んでいます。また中期的な協力関係も、プラットフォーム開発、アジアでの連携を中心に検討が進んでおります。先日インドネシアで三菱自動車の資産を活用し、ミニバンのOEM供給を受けることを発表しました。今後もさらに、テーマ毎にシナジーの具体化を進めてまいります。

ニッサン インテリジェント モビリティの戦略を推進するため、従来の自動車関連の枠組みを超えたパートナー関係の構築が必要と説明してまいりましたが、2016年度はこの点でも進展しました。

DeNAとの提携に加え、マイクロソフト、トランスデブ、モービルアイを始めとする、複数のパートナーと、共同の取り組みを開始しています。また米国においては、NASAと将来技術の共同研究も進めています。


2016年度は、中期経営計画、日産パワー88の最終年度でもありました。振り返りますと、日産パワー88は大きな投資を行い、大幅な成長を狙った計画でありましたが、残念ながらターゲットとした8%のマーケットシェアには到達しませんでした。しかしながら、この6年間、2010年度を起点としてみますと、売上高や販売台数、総資産を始め、3割から4割の事業規模拡大、そして事業のフットプリント拡大に成功し、今後の中期の事業展開にむけて、大きな基礎となったと評価しています。

8%の収益性、そしてその収益性を維持できる事業運営効率については、日産パワー88前半の成長、そして大きな投資に伴い、収益性を維持する難しさを経験しましたが、後半に克服し、14年度以降着実に事業運営効率を向上しました。

為替の条件が一定であれば、2年間でそれぞれ1.2ポイント、1.3ポイントの収益性を改善し、一定の経済、市場条件の下では、8%の収益性を確保できる状態まで向上しました。今後更に厳しい経済環境下でも8%の収益性を維持できるよう、改善を進めてまいります。

これまでも、8%レベルの売上高営業利益率は必達目標、そして8%のマーケットシェアはターゲットとしていましたが、マーケットシェアについては、次の中期経営計画の期間中に8%のレベルに到達したいと考えています。

2017年度 通期予測

2017年度、当社は

  • 着実な成長
  • 新技術、新商品によるニッサン インテリジェント モビリティの更なる推進
  • それらを実現するためにアライアンスのベネフィットを最大限活用すること

この大きく3つのテーマに取り組んでまいります。

2017年度のグローバル全体需要は前年比2.4%増の9,400万台を想定しています。

当社のグローバル販売台数は、着実な成長という方針のもと、前年比3.6%増の583万台を見込んでいます。中国と、回復が見込まれる日本を中心に、全地域で販売を伸ばすことで、グローバル市場占有率は6.2%を想定しています。

これらの販売計画をもとに、東京証券取引所には次の通り2017年度通期業績予想を届け出ました。為替レートは1ドル108円を前提としています。2017年度通期の連結売上高は11兆8,000億円を見込んでいます。連結営業利益は6,850億円、売上高営業利益率は5.8%、連結当期純利益は5,350億円に達する見込みです。

営業利益の増減要因は次の通りです。

  • はじめにカルソニックカンセイの貢献が無くなったことによる起点の修正
  • モノづくりと販売による改善が、合計で1,950億円。
  • 一方将来の成長に向けた、研究開発への戦略的な投資の増大が350億円の減益要因
    さらに原材料コストの上昇による約900億円の減益を見込んでいます。

為替変動の影響を除くと、営業利益は7,450億円に達しますが、為替レートの見通しに基づくと6,850億円となります。

以上、健全な収益性とフリーキャッシュフローを前提に、当社は今後も積極的な配当政策を継続します。2017年度は前年に対し、一株当たり5円プラスの53円の通期配当を実施する予定です。

2017年度は、次期の中期経営計画をスタートさせる年でもあります。詳細は準備ができ次第、別途ご案内しますが、骨格について少しお話しします。

テーマは、これまで日産パワー88で築いた基盤の上で、着実な成長、進化を果たすことです。成長目標として主な部分では、8%の収益性は維持しながら、売上を増大することです。12兆円台の事業から、16.5兆円規模の事業へ拡大を図ります。加えて6年間の累積として、2.5兆円のキャッシュフローを生み出します。

またこの6年間で、8%のマーケットシェアに到達する目算を持って進めています。キーは中国の事業であり、中国で現在の5%のマーケットを8%まで引き上げることができれば、グローバルで8%のマーケットシェアは、十分到達可能とみており、現在計画を策定しています。

技術、そして事業の進化という面では、次の6年間で大きく変化するとみています。日産はすでに、ニッサン インテリジェント モビリティとして、戦略的に取り組みを進めていますが、この領域はアライアンスのベネフィット、強みを最大限に活かしていくべき領域となります。現在、ルノーに三菱自動車を加え、検討を重ねています。

今年度中に準備ができ次第、全体のご説明をします。

以上