スピーチ


2016年7月27日

2016年度第1四半期決算報告
日産自動車株式会社
常務執行役員 田川 丈二

為替の逆風や、新興国における環境の変動にも関わらず、2016年度第1四半期は確かな業績を収めました。北米と西ヨーロッパでの堅調な需要と、継続的なコスト効率化の取り組みにより、当社の業績を改善しております。

最近の円高基調と、厳しい状況の続く一部地域のマクロ経済を慎重に見通し、通期の業績予想は変更いたしません。

2016年度第1四半期の連結売上高は2兆6,500億円となりました。連結営業利益は1,758億円となり、売上高営業利益率は6.6%となりました。当期純利益は1,364億円、売上高純利益率は5.1%となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローは2,294億円となり、自動車事業のキャッシュ・ポジションは1兆3,650億円に達しました。

なお、参考までに、為替変動の影響を除いた場合、連結売上高は3.2%増の2兆9,900億円、営業利益は37.8%増の2,670億円となります。

2016年度 第1四半期 販売実績
2016年度第1四半期のグローバル全体需要は、前年比3.5%増の2,279万台となりました。

当社のグローバル販売台数は、前年に対して7,000台少ない128万7,000台となりました。国内における軽自動車「デイズ」、「デイズ ルークス」の販売停止の影響を、他の地域での販売増が一部相殺しました。

主な市場の販売状況は次の通りです。

日本国内の全体需要は前年比1.9%減の108万台に留まりました。当社の販売台数は前年比25.4%減の9万台となり、市場占有率は8.3%でした。「デイズ」と「デイズ ルークス」の販売停止、消費者心理の冷え込み、新型車の投入から時間が経過している商品ラインアップなど、厳しい状況が続きました。しかしながら、今年度は複数の主力モデルの刷新を控えています。8月の後半には、5世代目にあたる新型「セレナ」を発売予定です。新型「セレナ」には、日産自動車の自動運転技術、「プロパイロット」を搭載し、高速道路の単一車線における渋滞時の走行と、巡航走行の2つのシーンで、アクセル、ブレーキ、ステアリングのすべてを自動的に制御します。

会計年度が暦年ベースの中国の第1四半期全体需要は前年比6.0%増の630万台となりました。当社の販売台数は前年比0.8%増の29万9,000台となり、市場占有率は4.7%となりました。「エクストレイル」、「シルフィ」、「キャシュカイ」をはじめとする商品の堅調な販売が台数を支えています。

4月から6月までの第2四半期では、全体需要は前年比10.1%増の601万台、当社の販売台数は6.7%増の31万1,000台となり、市場占有率は5.2%となりました。6月までの半年間では、当社の販売台数は61万台に達し、前年同期から3.8%増に相当する2万2,000台の増加となりました。

中国における6月までの販売状況を詳細にみると、乗用車は6.6%増の52万6,000台となりました。乗用車の伸びは、商用車の減少によって一部相殺されました。小型商用車の販売台数は、同セグメントの全体需要の低迷を受けて11.2%減の8万4,000台となりました。

北米の全体需要は前年比1.5%増の552万台となる一方、当社の販売台数は市場の伸びを上回る前年比8.9%増の52万9,000台に達し、最高記録を更新しました。

米国の全体需要は前年比0.2%減の456万台となりましたが、当社の販売台数は前年比7.9%増の39万8,000台に達し、市場占有率8.7%を獲得しました。好調な「アルティマ」、「ローグ」、そして新型「マキシマ」が販売を牽引しています。

カナダでは、前年比7.1%増の3万9,000台を販売し、市場占有率は6.7%となりました。

メキシコでは首位の座を維持しています。同国における販売台数は前年比14.6%増の9万1,000台に達し、市場占有率は24.4%となりました。

ロシアを含む欧州では18万3,000台を販売し、計画通りの進捗となっております。ロシアを除く欧州の販売台数は前年比4.7%増の16万2,000台で、市場占有率は3.4%でした。欧州におけるアジアブランドのトップ集団の一角として、引き続き好調な「キャシュカイ」、「ナバラ」、「インフィニティQ30」などが販売を牽引しました。さらには、今年度中に新型「マイクラ」を発売いたします。

一方、ロシア市場はルーブル安と経済の先行き不透明感が引き続き足かせとなっています。当社の販売台数は前年比38.2%減の2万1,000台に留まり、市場占有率は5.9%となりました。

その他の市場では、不安定な需要と為替変動による逆風を受け、当社の販売台数は前年比8.6%減の18万6,000台となりました。

この内、アジアおよびオセアニアの販売台数は前年比3.7%減の8万4,000台、中東の販売台数は前年比11.4%減の4万4,000台となりました。アフリカ及びその他の販売台数は前年比20.3%減の2万台です。中南米における販売台数は前年比8.5%減の3万8,000台、となりましたが、市場占有率は伸びました。

2016年度 第1四半期 連結財務実績
次に2016年度第1四半期の財務実績ですが、これまでの発表と同様に、中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づきご報告いたします。

  • 連結売上高は2兆6,500億円となりました。
  • 連結営業利益は1,758億円、営業利益率は6.6%となりました。
  • 当期純利益は1,364億円、当期純利益率は5.1%となりました。
  • 実態としての業績は改善しているものの、大きな為替変動によるマイナスの影響を完全に相殺することはできず、これらの財務指標は昨年と比較して悪化しました。

営業利益の増減要因は次の通りです。

  • 台数および車種構成は194億円の増益要因となりました。
  • 販売費用の増加は、347億円の減益要因となりました。
  • 購買コストの削減を含むコスト項目は、729億円の増益要因となりました。
  • 研究開発費は72億円減少しました。
  • 生産コストは63億円増加しました。
  • その他項目は148億円の増益要因となりました。
  • 為替変動の影響を除いた場合の営業利益は、37.8%増の2,670億円となります。
  • しかし、為替変動が912億円の減益要因となり、その結果、営業利益は1,758億円となりました。

2016年度第1四半期末の自動車事業実質有利子負債は、1兆3,650億円のキャッシュ・ポジションとなり、2015年度末時点の1兆5,000億円から減少しました。フリーキャッシュフローはプラスながらも、為替の変動に伴う外貨の換算影響と配当支払いおよび自社株買いの実施に伴うキャッシュの減少を相殺しきれませんでした。

2016年度第1四半期の中国合弁会社比例連結ベースの財務実績は次の通りです。

  • 連結売上高は2兆8,900億円。
  • 連結営業利益は2,090億円。
  • 当期純利益は1,364億円。
  • 自動車事業のフリーキャッシュフローは2,310億円。
  • 自動車事業実質有利子負債は1兆5,000億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

中国合弁会社比例連結ベースの売上高営業利益率は7.2%となり、前年から0.2ポイント上昇しました。

繰り返しになりますが、為替の大きな逆風により、実態としての業績改善が見えにくくなっています。中国合弁会社比例連結ベースの実績から為替変動の影響を除くと、連結売上高は4.3%増の3兆2,600億円、営業利益は38.4%増の3,041億円となります。

2016年度 見通し
2016年度の通期見通しについては、5月に発表しました予想から変更ありません。

2016年度の通期配当につきましても、当初の計画通り、前年に対し14.3%増の一株あたり48円を見込んでいます。これは、現在の株価に対し4.8%の配当利回りに相当します。先般発表した自社株買いも継続しており、日産自動車は魅力的な株主還元策を続けます。

まとめ
2016年度第1四半期は確かな財務実績を確保しました。

この3ヵ月間で当社の基礎体力は飛躍的にあがり、販売好調な北米の主力車種と回復を続ける西ヨーロッパ、そして継続的なコスト改善が業績を牽引しています。

これにより最近の不利な為替変動と、新興市場における厳しい状況の影響を打ち消すことができました。

日産自動車は2016年度を良いモメンタムでスタートしました。市場の先行きは不透明で、為替変動の逆風にも直面しているものの、引き続き確かな収益とフリーキャッシュフローを実現してまいります。

以 上