スピーチ


2015年6月23日

第116期定時株主総会 事業報告

西川CCO

2014年度は、事業の強化に取り組み、着実な成果を挙げました。
新興国では、経済、市場環境の面で厳しい状況に直面しているところもございますが、業績の面では前年度に対し着実に改善がすすんでおります。

グローバル販売台数は、日本を始めとした一部の地域で苦戦を強いられたものの、好調な北米、需要が回復してきた欧州に支えられ、前年度の519万台から532万台に増加、過去最高の販売を記録致しました。

当社は、世界の市場の伸びとほぼ同様の伸びとなり、グローバル市場占有率は前年並みの6.2%となっています。

2014年度通期の連結売上高は、11兆3,800億円、連結営業利益は前年から18.3%増加し、5,896億円となりました。売上高営業利益率は5.2%となりました。
当期純利益は、前年から17.6%伸び、4,576億円に達しました。
自動車事業のフリーキャッシュフローは3,658億円となり、2014年度末のキャッシュポジションは、自動車事業で1兆3,900億円のネットキャッシュとなっております。

新型車の投入

商品の面では、2014年度、当社は革新的で、エキサイティングな商品を、世界各国へ投入し、各ブランドを合わせ、全部で10の新型車を発売しました。

ニッサンブランドとしては、「パルサー」、「NP300/ナバラ」、「ムラーノ」、「e-NV200」を発売、「ムラーノ」は、米国にてベスト ファミリー向け SUVに選ばれています。
さらに「e-NV200」は環境への貢献が大きい車として高く評価されています。

インフィニティは、「Q50」のロングホイールベースを投入しました。

ダットサンは、「GO+」、「on-DO」、「mi-DO」 の3車種を発売し、中国のヴェヌーシアには、EVの「e30」、さらに「R30」を追加しました。

各地域の販売実績

次に主な市場の販売実績について、ご説明します。

日本:
日本市場についてですが、全体需要は、登録車、軽ともに前年に対して減少し、前年比6.9%減の530万台となる中、当社の販売台数は前年比13.3%減の62万3,000台、市場占有率は11.8%となり、厳しい結果となりました。

「エクストレイル」や「デイズルークス」等、好調な販売を記録している商品がある一方で、「ノート」、「セレナ」といった主力車種の競争が激化した事が主な要因と言えますが、他社の攻勢に対し、日産としてのユニークなイメージ、つまり日産車としてのアピール力に欠けていた、とも認識しております。

中国:
中国については、1-12月の暦年を年度としていますが、全体需要は前年比7.6%増の2,234万台となる中、当社販売はほぼ前年並みの122万台となり、市場占有率は5.5%に留まりましたが、引き続き日系メーカーナンバーワンの座は維持いたしました。

2014年度は小型商用車の排気規制が強化された影響により、商用車は各社軒並み販売を落とす結果となりました。このセグメントは当社が強みを持っているところであり、販売実績の伸び悩みにも影響しております。乗用車の分野では、「シルフィ」シリーズや中国カー・オブ・ザ・イヤー2014に輝いた「エクストレイル」が大変好調な販売を続けておりますが、中国市場の競争環境は厳しさを増しており、競争力の一段の強化の重要性を強く意識した年でもあります。

北米:
キーマーケットである北米では、過去最高の販売台数を記録しました。

米国の全体需要は前年比6.9%増の1,673万台となる中、当社の販売は8.9%増の140万台に達し、市場占有率は8.4%に上昇しました。主力モデルの「アルティマ」、「ローグ」、そして「セントラ」が好調を支えています。

カナダでも、当社の販売台数は全体需要の伸びを上回り、前年比22.4%増の11万8,000台に達しました。市場占有率は6.3%に達しています。

メキシコでは、引き続きトップブランドの地位を維持しており、販売台数は前年比16.9%増の31万台を記録し、市場占有率は26.1%となりました。

他市場に先駆けて取り組んだ販売力の強化の成果が着実に出てきていると見ております。

欧州:
ロシアを含む欧州の全体需要は、前年比1.7%増加しました。

当社の販売台数は前年比11.7%増の75万5,000台となり、市場占有率は過去最高の4.3%に達しました。「キャシュカイ」や「ジューク」など、クロスオーバーのリーダーとなる商品が、けん引しました。

ロシアでは、全体需要が約18%落ち込んだにもかかわらず、当社の販売台数は、前年から約5%増加し、17万3,000台となりました。市場占有率は7.6%に伸びました。

その他市場:
中東では前年比4.7%増の23万7,000台を販売する一方、
アジア・オセアニアでは前年並みの36万3,000台にとどまり、
中南米では前年比1.2%減の18万4,000台の販売台数となっております。

2014年度の注目すべき取り組み

昨年度特に重点的に推進した2点の重要施策についてご説明します。

品質:
製品品質はご承知の通り、会社や商品に対する好感度、信頼性を支える非常に重要な要素になります。皆様もご承知の通り、品質は一度問題を起こしてしまうと、その回復に長い時間がかかります。

一方で、立ち上げから万全の品質を期し、お客さまへ商品をお届けすることで、新型車の好調な販売につながるだけでなく、その後の商品のライフとしての成功につながり、更なるブランドの強化へつながる基点となります。

当社では開発から生産立ち上げ準備までの間で、様々な品質向上プロセスを新たに導入したことで、米国市場での新型車立ち上げプログラムで非常に良い改善を進めることができました。これらをベースとして、引き続き、更なる品質改善に取り組んでまいります。

お客様満足度:
また販売の前線での仕事の品質、お客さまの満足度を確実に上げて行くため、当社は日本の店舗では、女性のお客さまに焦点をあて、Lady firstプログラムと称し、女性のお客さまへの対応強化を推進しました。具体的には、女性のカーライフアドバイザーを増やし、女性のお客さまに来店頂きやすい、心地の良い店舗作りを進めています。

CMF:
次に、開発、モノづくりの面において、「コモン・モジュール・ファミリー(CMF)」の進展に触れさせてください。

簡単に説明をしますと、CMFは、車体の外装、内装以外の中身、または基礎の部分を5つのかたまり、モジュールに分けて開発を進める方式であります。
エンジンを搭載する車の前方部分の構造体、車体の床とシャシーの部分の前方部分と後方部分、車内のスピードメーターやエアコン装置、そして座席の構造を含む運転席周りの装置全体、加えて車の電気/電子部品のつながり、指令系統の全体構成、これらを5つのモジュール、すなわちかたまりとして車種を横断し、共通化したものを開発し、それらに商品独自のスタイリングや、内装を組み合わせる事で、より魅力のある、高い商品競争力をもったクルマを効率よく開発する方式であります。

また、モジュール単位で、ルノーも含め徹底した共通化を進めることにより、高い品質を確保すると同時に、スケールメリットを生かした生産性の向上、コスト競争力の確保が可能となりました。

このCMF方式により開発されたエクストレイル、北米のローグ、そして欧州のキャシュカイは、高い商品競争力で数々の賞を受賞し、また販売も好調で、当社の収益を支える柱となっております。

当社は、このCMFを今後の開発、モノづくりの基本とし、様々な車へ拡大していきます。

まとめ

繰り返しになりますが、2014年度、マーケットにより苦戦したところはありますが、全体として業績面では良い結果を残すことができました。
当社の中期経営計画である「日産パワー88」に向かって、2014年度は適切な前進をした年であり、今年度以降は更なる改善、成長へ、様々な基礎固めを着実に進めることができた年であったと総括します。

ゴーンCEO

2014年度の成果

昨年の株主総会から、日産自動車は、より強く、より効率性が増し、業績も向上しました。

2014年度は重要市場において、多くの業績の向上と著しい成長を果たした一年となりました。

2014年度は、商品ラインアップを拡充し、賞に輝いた新型車を複数発売しました。例えば新型「エクストレイル」は、中国カー・オブ・ザ・イヤー2014を受賞しました。

部品調達、車両組み立て、物流までを含めた台当たりの総コストも削減しました。モノづくりの競争力を高め、グローバルな生産体制を拡大すると同時に、国内生産を増やす取り組みも始めています。新規市場への参入も続けており、例えばナイジェリアでは大手自動車メーカーとして初めて現地生産を始めました。

2014年度は確固たる財務実績も実現しました。昨年度はいくつかの新興国では厳しい環境下にあったにも拘わらず、高い連結売上高を達成しました。財務管理の徹底によって、今まで以上に高水準の自動車事業のネットキャッシュを確保しています。

2014年度は、グローバル販売台数を伸ばし、記録を更新しました。特に健闘したのは米国、メキシコ、そしてカナダで、北米では過去最高の販売を実現し、二桁台の伸長率を達成しました。

更に、当社は、インターブランド社による「ベスト・グローバル・ブランド」ランキングで、順位を9つ上げ、過去最高の56位にランクアップしました。また、自動車業界でのゼロ・エミッション・モビリティの明白なリーダーの座を維持しています。更に、自動車業界内外のパートナーとのネットワークを拡大しています。ダイムラーとの戦略的協力関係はピックアップトラックの分野まで拡大し、アメリカ航空宇宙局(NASA)と自動運転技術の共同開発も進めています。当社にとって、最も長く続いている、最も重要なパートナーシップであるルノー・日産アライアンスも深化しています。

2015年度以降の見通し

2015年度は、良い勢いでスタートを切ることができました。そして、今後も引き続きこの勢いを保っていきたいと考えています。今日は、2015年度とさらにその先の目標の一部についてお話ししたいと思います。

重要な戦略的目標/日産パワー88

当社のグローバル事業はすべて、戦略的な中期経営計画である日産パワー88を指針としています。この包括的な戦略は、2016年度末までに持続可能な売上高営業利益率8%を達成し、グローバル市場占有率8%を実現する計画です。

2015年度の見通し

今年度当社は、グローバルな全体需要の伸びを上回る販売を果たし、過去最高の売上高と堅実な利益を達成する見込みです。

グローバルな見通し

2015年度の世界の全体需要は前年から0.1%増の8,540万台を想定しています。一方、ニッサン・ブランドとインフィニティ・ブランドの数々の新型車の発売で、当社のグローバル販売台数は前年比4.4%増で過去最高となる555万台を見込んでいます。以上を前提に、2015年度のグローバル市場占有率は6.5%を想定しています。

地域別の見通し

では主な市場における販売と生産の好機と課題についてご説明したいと思います。

日本:
最新の見通しによると、今年度、自動車業界の景気は僅かに後退する見込みで、また厳しい一年になりそうです。当社の予測では、2015年度の軽自動車を含む国内需要は前年から3%下がり、当社の国内販売台数は3.7%減少する見込みです。一方で、現在の円・ドルレートは、輸出向け商品の生産を国内に戻す追い風となっています。

2013年度には、ご好評いただいている「エクストレイル」を発売しましたが、今年度はハイブリッドを追加しました。「エクストレイル・ハイブリッド」は300万円と、中型SUVのハイブリッド車の中では最もバリューのある価格でご提供しています。更に、「エマージェンシーブレーキ」、いわゆる「自動ブレーキ」も標準装備しています。

「エマージェンシーブレーキ」は現行車の中では、最も革新的な安全技術です。「エマージェンシーブレーキ」は常に前方の障害物を探し、ドライバーの気づかないものも検知します。本システムは将来の自動運転車の構成要素の一つです。正に「ワクテク」と言えるでしょう。

数年前、日産自動車は日産車の関わる交通事故による死亡・重傷者数を1995年と比較して、2015年までに半減させるという目標を掲げました。国内では既に6年前に目標を達成しています。現在、当社はその数を2020年までに更に半減させるべく取り組んでいます。

以上を背景に、今年は「エマージェンシーブレーキ」を国内で販売する車両の7割以上に標準装備し、2016年度末までに8割をカバーする予定です。

生産については、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、国内工場での生産を増やし、今後のグローバルな増販を支えることを検討しています。国内工場でローグの生産を立上げ、来春より米国に出荷することも検討しています。また年間を通じて、複数の国内工場で、2016年度に国内で発売予定の新型車の生産準備を進めていきます。

新型車の投入に備え、多くの販売店のリニューアルも進めています。今年度、多くの販売会社を当社のブランド基準にグレードアップさせます。更に、「レディー・ファースト」プログラムを引き続き推し進め、国内の販売店における女性のお客さま対応向上に努めています。

中国:
中国はもはや新興市場ではありません。中国市場は既に台頭し、今や世界最大の自動車市場となり、今年は更に拡大する見込みです。2015年の中国の全体需要は前年から5%増加し、当社の販売は市場の伸びを上回る6.4%増を計画しています。販売を支えるのは1月に発売した「ヴェヌーシアT70」や、今年後半に投入を控えている新型セダンの「ラニア」や「ムラーノ」、新型SUVです。

北米:
北米については、近年のような全体需要の伸びは2015年には終わると考えています。そのような中でも、当社の2015年度の北米の販売台数は前年比5%増、米国は6.4%増を計画しています。

特に主力商品である「セントラ」や「ローグ」が健闘する一方、新型「ムラーノ」も1年間フルに新車効果を発揮します。更に、今月初めには新型マキシマを発売し、年末には次世代ピックアップトラック 「タイタン」の投入を控えています。以上の商品ラインアップで、米国でも140万台を超える販売を目指し、記録を更新します。

欧州:
欧州については、業界全体にとっても、当社にとっても、好材料・悪材料の両方を想定しています。ロシアを含む欧州の全体需要は昨年から4.1%減少しますが、これは主としてロシアの異常な経済状況に起因しています。しかしながら、ロシアの厳しい環境にも拘わらず、当社の欧州販売は4.6%増大する見込みです。

欧州市場における当社の強みは「キャシュカイ」と「ジューク」をはじめとするクロスオーバーです。今年はピックアップトラック「NP300」と新型インフィニティ・モデル2車種を発売する予定です。

インフィニティ

2015年はインフィニティにとって重要な年となり、「Q30」とコンパクトクロスオーバー「QX30」を投入いたします。「Q30」と「QX30」はイギリスで生産しますが、インフィニティにとって初めての欧州製モデルとなります。これにより、インフィニティの生産体制は、日本・米国・中国・英国の4か国、3つの大陸に拡大することになり、2014年にインフィニティが果たした成長をさらに伸ばしていく助けとなります。

昨年、インフィニティの販売は12%伸長し、19万台近くに達しました。中国では、前年比72%増となる3万台以上を販売しました。この勢いを維持するべく、中国のパートナーである東風汽車と合弁会社を設立しました。その一環として、ご好評いただいている「Q50」セダンと「QX50」のロングホイールベースの現地生産を開始しました。

より魅力的な商品と生産拠点の拡大により、2015年度にはインフィニティはグローバルで2桁増の成長を見込んでいます。

ダットサン

ダットサン・ブランドにも大いに期待しています。2014年の投入以来、ダットサンはインド、インドネシア、ロシア、そして南アフリカで展開し、販売は累計で78,000台に達しています。

ダットサン・ブランドはグローバルでの拡販に貢献しており、発売以来、インドとインドネシアでは各国での当社の累計販売台数の半分、ロシアでは3分の1を占めています。

2015年度はダットサンの販売を倍増させる計画です。また、インドでは、商品ラインアップを3車種に拡充すべく準備を進めていきます。

2015年度財務予測

以上を前提に、東京証券取引所には、次の通り今年度の通期予測を届け出ました。こちらの業績予測は、中国の合弁会社に持ち分法を適用した値です。2015年度通期の連結売上高は前年比6.4%増の12兆1,000億円、連結営業利益は6,750億円、売上高営業利益率は5.6%、当期純利益は前年比6%増の4,850億円を見込んでいます。

2015年度の配当/株主へのリターン

2015年度の見通しと、継続的な利益と堅実なフリーキャッシュフローを鑑み、通期配当を、27%増となる一株当たり42円に引き上げる予定です。

2015年度戦略

我々は自社の今後に大いに期待しています。目標達成を目指し、包括的なグローバル戦略を引き続き実行していきます。今日は特に、今年度を含め、日産パワー88の残りの期間中に重点的に取り組む3分野についてお話ししたいと思います。
1. 革新的で高品質な新商品と画期的な技術をお届けすること
2. お客さまに我々の取り組みを知っていただくために、商品・ブランドの知名度向上に努めること
3. アライアンスの相乗効果を深化させ、競争力を向上させること

2015年度の新型車と新技術

2015年度は、新型車6車種を含む新車攻勢を予定しています。

インフィニティQ30 とQX30:
先ほど触れました「インフィニティQ30」と「QX30」は欧州を皮切りに販売を開始します。両モデルともに、初期評価で好スコアを達成しています。競合車の中で、「Q30」はデザインの総合評価で首位に輝き、複数の重要な指標で「アウディA3」と肩を並べています。このように、競争力溢れるラインアップで、これまで特に中国を中心に築いてきたインフィニティの勢いを発展させていきます。

ヴェヌーシア T70:
中国における当社の販売は、1月に新たに投入された小型SUVの「ヴェヌーシア T70」で更に加速します。

ラニア:
そして、新型「ラニア」の発売により、中国における当社のラインナップをさらに拡充させます。大胆でスポーティな中型セダン「ラニア」は中国の若いお客さまのために開発しました。中国では、若い世代のお客さまが急速に増えてきており、今や購入者の大部分を占めています。市場調査室の調査結果によると、「ラニア」は「ファッション性に溢れ、斬新でダイナミック」と評価され、対象となるお客さまが重視するデザイン要素をあますところなく実現しています。

マキシマ:
米国では、待ちに待った新型車の販売を開始しました。新型「マキシマ」です。30年以上に亘り、「マキシマ」は、同市場における当社の成長と人気を支えてきました。3週間前に発売した、第8代目にあたる新型「マキシマ」は大幅に刷新したモデルで、正に4ドア・スポーツ・カーの再来です。当社の米国での商品攻勢について、こちらの映像をご覧ください。

<ビデオ>

タイタン:
米国の商品ラインアップは今年更に拡充し、12月には新型ピックアップトラック「タイタン」が登場します。

「タイタン」は、米国で最大であるピックアップセグメントで、小型ピックアップと大型ピックアップの中間に投入するために開発されました。今年初めの北米国際オートショーで発表して以来、「タイタン」は多くの注目を集めています。「タイタン」の投入で、年間200万台を超えるセグメントにおける当社の競争力は飛躍的に高まるでしょう。

米国の新型車

SUVセグメントにおける足場を更に固めるべく、今年はヒット商品の「ローグ」と「ムラーノ」を増産します。さらに今年度は、人気モデル「アルティマ」と「セントラ」の二車種のマイナーチェンジも行います。

技術

今後発売を控える各商品は、我々はクルマの安全性、効率性、コネクティビティ(接続性)を向上させるブレークスルーを提供していくという、当社の堅い決意を体現しています。

後ほど、2020年の自動運転車の発売に向けた当社の計画をご説明したいと思います。日産自動車は引き続き、このワクワクする技術の開発に取り組んでいます。

私の左手にありますクルマには、当社が開発中の自動運転車に関する最新のハードウェアとソフトウェアが搭載されています。また、右手にありますクルマにも画期的な先進技術を搭載しており、バッテリーに手を加えることでどこまで電気自動車の航続距離を伸ばせるかを追求しています。

現在、電気自動車の航続距離を伸ばす確かな方法は二つしかありません。

  • 一つは充電インフラを充実させて、出先でどこでも簡単に充電できる環境をつくることです。
  • もう一つの方法は、車両に今より大きなバッテリーを搭載して航続距離を伸ばすことです。しかしながら、現行技術では、バッテリーを増やすと、その分、コストも上がります。

ご存じのように、当社は、世界で最も積極的に充電ネットワークの整備を推進している企業です。
私どもの取り組みと、政府と民間部門のパートナーのご協力により、日本は世界で最も充電インフラの発達した国の一つとなりました。今や全国に、家庭用充電器を除いても、14,000基以上の充電器が設置されており、お客さまは、本州ではどこでも安心して、電気自動車にお乗りいただけます。

一部の市場のように、充電インフラの整備が始まったばかりの地域とは異なり、国内のお客さまには今すぐにでも、日産リーフのメリットを感じていただける環境が整っています。国内の大規模な充電ネットワークは、皆様に日産自動車のゼロ・エミッション技術をお使いいただくのに十分なきっかけになると考えています。また、今年度、国内の充電器の数は更に増えていきます。

しかしながら、当社が現状に満足し、バッテリーと車両技術の取り組みの手を緩めることはありません。

近い将来、当社は電気自動車をご利用いただくお客さまに、従来の内燃機関に匹敵する、更なる航続距離の「安心」をご提案できると信じています。

新たな材料や化学を駆使して、より薄く、軽く、そして低コストのバッテリー開発に取り組んでいます。いずれ、クルマをフル充電して家を出発すれば、帰宅するまで一日中安心して走っていられる日が来ると考えています。

今からご覧いただくのは、現在研究を進めている電気自動車を使った日常のイメージです。

<ビデオ>

ご覧いただいたビジョンを念頭に、バッテリーの先進技術研究を今後も続けていきますが、完了を待つことなく、次の段階に移行します。今年後半には、航続距離拡大に向けた最初のステップをご紹介する予定です。

商品・ブランドの知名度向上

引き続き今後も、当社の事業の中核は、革新的でワクワクする商品・技術を世に出すことです。これらの取り組みを最大限に活かすには、潜在的なお客さまに、我々のブランドに馴染んでいただくとともに、日産車とその技術について知っていただく必要があり、大胆で、的を絞ったコトづくりを行うことで、モノづくり活動を支えてまいります。当社の強みの一つはスポーツに関わるパートナーシップです。国内では、我々のホームタウンである横浜のプロサッカーチーム、横浜F・マリノスのサポートを積極的に継続しています。Jリーグにおける横浜F・マリノス及び当社の更なる知名度の向上を目指し、昨年にはシティフットボールグループと新たなパートナーシップを結びました。同グループは横浜マリノス株式会社の少数株主となっています。

欧州サッカー連盟UEFAチャンピオンズリーグとのパートナーシップも当社の知名度を上げ、イメージ向上に寄与しています。UEFAチャンピオンズリーグの試合は毎回、1億1千万人を超える視聴者を獲得しています。本パートナーシップを締結して僅か1年ですが、UEFAとのパートナーシップを知っている人々の、日産自動車に対するオーバーオール・オピニオン(好意度)は30ポイント上昇しました。

アフリカ・ネイションズ・カップと2016年のリオ五輪の主要スポンサーも続けております。また、最近の例では、アメリカ最大の広告宣伝の舞台であるスーパーボウル期間中にテレビ広告を打ち、1億1,400万人以上のテレビ視聴者にご覧いただきました。更に、F1では、インフィニティ・レッドブル・レーシングチームとの継続的なパートナーシップのおかげで、インフィニティは引き続きグリッドで最も目立つブランドの一つとなっています。

ルノー・日産アライアンス

当社のもう一つの強みは、アライアンス主導の相乗効果創出の取り組みです。16年近く前、ルノー・日産アライアンスが発足して以来、当アライアンスは世界で4番目に大きな自動車グループに成長しました。2014年度のアライアンスのグローバル販売台数は850万台に達しました。これは世界で販売された10台のクルマの内1台に相当します。8つのブランドを手掛けるルノー・日産アライアンスのグローバル市場占有率は10%を誇っています。

当アライアンスの総売上高は1,500億ドルを超え、世界の上位20位に入ります。グローバルで約43万人の従業員を抱え、34か国に106の生産拠点があります。
当アライアンスの成功が、他社を惹きつけ、ドイツのダイムラー、中国の東風、国内の三菱自動車、そしてロシアのアフトワズ等、パートナーが広がっています。しかしながら我々には、更に成長し、より大きな成果を生み出す力があります。

アライアンスの相乗効果を最大化するべく、昨年、購買、生産・物流、研究開発、そして人事の4つの主要機能を統合しました。その結果、2016年度末までに、目標の43億ユーロ以上の相乗効果を生み出す目途がつきました。

今年は日産自動車とルノーの連携を更に深めていきます。一方で、各社の独自性を左右する面は引き続き別であり続けます。

社会貢献・CSR(企業の社会責任)

会社の業績向上に向けた数々の取り組みにはもう一つの利点があります。それはより良い企業市民になれることです。日産自動車は事業を行っているあらゆる地域社会に貢献していきたいと考えています。我々は世界規模で社会貢献活動を実施しており、国内でも人々の生活や地域社会の充実に最も効果を発揮している複数の取り組みを進めております。

東日本大震災からの復興

2011年以降、当社は東日本大震災の被災地の支援を続けています。2014年には最も被害の大きかった8市町村に「NV200」を寄付しました。また、従業員ボランティアは継続的に被害地域の家屋の修理に携わっています。更に、日産プレジデント基金を通じて、被災地の子供たちを対象に、あそびの場やプログラムの提供を実施しています。また昨年は、広島の土砂災害の被災地支援を行いました。

その他地域の復興支援

海外では、中国・雲南省地震やアフリカのエボラ出血熱とネパール地震の被災地支援に伴う支援を行いました。

安全の取り組み

以上のような災害支援に加え、当社は交通安全の取り組みも強化しています。最先端技術の開発・採用に加え、国内では40年前に始めた「ハローセーフティキャンペーン」を続けています。そして、中国、インド、そしてロシアでは、交通安全の更なる向上を目指し、安全運転啓蒙活動の「日産セーフティ・ドライビング・フォーラム」も開始しました。

安全への取り組みの詳細については、会場出入口のロビーに展示しているパネルをご覧ください。また、我々の持続可能性に向けた幅広い活動については、昨日、当社のホームページに掲載しました2015年サステイナビリティ・レポートをご参照ください。

まとめ

当社は今年度良いスタートをきっています。中期経営計画の完遂と、長期的で持続可能な成功に向けた道を歩んでいく決意に揺るぎはありません。日産自動車には目標達成のための資源、人財、そして強い意志があります。今後も、お客さまと、株主の皆様に価値をご提供していきます。改めて、日産自動車へのご支援・ご協力に心から感謝申し上げます。2014年度の事業報告と2015年度の見通しのご説明は以上です。

以 上