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2015年11月2日

2015年度上期決算報告
日産自動車株式会社
チーフ・コンペティティブ・オフィサー 西川 廣人

昨年度に引き続き、2015年度上期、当社はしっかりとした業績を達成する事が出来ました。北米と西ヨーロッパの販売は好調を維持し、中国でも台数を伸ばしました。また、コスト面でも徹底した管理を継続し、さらに為替変動が増益要因となりました。
これらの増益要因が、鈍化している新興国と日本市場の影響を補っています。

2015年度上期の連結売上高は5兆9,300億円となり、前年から15.3%増加しました。
連結営業利益は3,950億円で、売上高営業利益率は6.7%となりました。
当期純利益は、前年から3,256億円に増加、売上高純利益率は5.5%となりました。
自動車事業のフリーキャッシュフローは2,130億円となり、2015年9月末は自動車事業で1兆4,700億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

2015年度上期事業報告

上期の主な事業活動と販売状況についてお話しします。

当社は日産パワー88の一環として、15年度上期も世界中で新車攻勢を続けています。

重要な市場である中国では、8月に新型「ムラーノ」、10月に「キャシュカイ」と「ラニア」の3車種を発売しました。
これらの新型車は、中国での9ヵ月間の乗用車販売が、9.5%増と順調に推移している中での発売となりました。
加えて「ムラーノ」には、重要な市場である中国に、世界に先駆けてハイブリッドモデルを投入しました。

もうひとつの要である北米市場では、デザインを一新し、性能を向上させた新型「アルティマ」を発表しました。この車は、クラス最高の高速道路燃費を実現しています。
この5年間で、米国における「アルティマ」の販売台数は60%以上伸びました。最新型は更に販売を増やし、「ローグ」を中心とする好評なSUVラインアップとともに市場をけん引しています。

当社が意欲的に成長を目指しているインフィニティについては、9月に欧州で開催されたフランクフルト・モーターショーで「Q30」アクティブコンパクトを披露しました。
「Q30」はインフィニティで初めてのコンパクト・セグメントで、新たな世代のプレミアム・ユーザーの獲得を狙っています。

ニッサン・ブランドは、更に知名度を高め、魅力を増しています。
先日発表された、インターブランド社の調査で、ニッサン・ブランドは56位から49位に順位を上げました。
昨年に引き続き、最も成長した自動車ブランドとなっています。

またスポーツへのスポンサーシップでは、欧州サッカー連盟UEFAチャンピオンズリーグや2016年夏のリオデジャネイロ・オリンピックに加え、先月新たに国際クリケット評議会へのスポンサー契約を発表しました。注目度の高いスポーツイベントによって、ブランドイメージのさらなる向上を図ります。

さらに、中国では、東風日産乗用車公司が中国国際バスケットボール協会、NBAとの複数年に亘るスポンサー契約を締結しました。
中国にはポスト80年代、ポスト90年代と呼ばれる若い世代に、多くのバスケットボールファンが存在します。
彼らは今や、中国の自動車市場において最も意欲的な購買層となっており、当社が中国で推進する「ヤング日産戦略」に合致する世代でもあります。
中国NBAとパートナーシップを結ぶことで、これらの若い購買層とのコミュニケーションの機会が向上し、その結果、投入した商品が良い評判を獲得できると期待しています。

日本では「挑戦」をテーマとした、大々的なブランドコミュニケーションを実施しています。
「ゼロ・エミッション」と「ゼロ・フェイタリティ」の2つの「ゼロ」を、車の「電動化」「知能化」技術により、具現化してまいります。

ゼロ・エミッション戦略については、引き続き変わらぬ決意で取り組んでいます。
新たなバッテリーを搭載した「日産リーフ」は、航続距離を20%以上向上しております。
当社の電気自動車の累計販売台数は20万台を超え、今後もゼロ・エミッション車のリーダーであり続けることを目指します。

当社のゼロ・エミッションへの決意を反映させたものとして、パリで開催される国連主催のCOP21に、アライアンスパートナーであるルノーともに、世界最大規模となる電気自動車200台を提供します。

今年の東京モーターショーでは、日産が目指す未来の電気自動車と自動運転を具現化した「ニッサンIDSコンセプト」を公開しました。
この車は、長距離走行を実現するバッテリーの技術と、人工知能、自動運転システム、最先端のデザイン、そして先進的な装備を融合させています。
より豊かなドライブ体験、交通事故のリスク低減、乗員の快適性をも向上させ、更にCO2排出ゼロと、まさに将来を予見させるクルマといえます。

ルノーとの長期的なアライアンス戦略によって、日産自動車は引き続きメリットを享受しています。7月には、2014年に過去最高となる38億ユーロのシナジーを記録したことを発表いたしました。
購買や技術開発などの、機能統合の効果が貢献しています。
車両の基本構造となるコモン・モジュール・ファミリーは、シナジーの象徴です。
9月のフランクフルト・モーターショーにて、ルノーは新型「メガーヌ」を公表しました。これはCMF-C/Dを活用した、アライアンスで6車種目のモデルとなります。
ルノーは、インド市場に向けて、新型「クウィッド」を発表しましたが、これはCMF-Aを使った初めてのモデルになります。
日産もこのCMF-Aを活用した車種を投入していきます。

9月に開催されたフランクフルト・モーターショーでは、ダイムラーとの協力関係が更に発展したことをお伝えしました。
2010年に戦略的協力関係を締結して以来、共同プロジェクトの数は4倍以上となり、今では欧州、アジア、北米で13件が進行中です。

9月に起工式を行った、メキシコ中部のアグアスカリエンテスに建設する生産合弁会社「COMPAS」では、メルセデス・ベンツとインフィニティの次世代プレミアムコンパクトカーを生産し、年間生産能力は2020年までに23万台以上になる予定です。

中国事業の要である東風汽車とのパートナーシップの発展は言うまでもないことですが、ロシアにおけるアフトワズとの協業も引き続き発展させてまいります。

先月、三菱自動車およびその合弁会社であるNMKVと、次期型軽自動車の開発に関する共同プロジェクトに合意しました。今後もNMKVが企画・開発を統括しますが、従来よりも、日産が開発業務により深くかかわることになります。
三菱自動車が持つ軽のノウハウに加え、ルノー・日産のアライアンス技術・資産を軽自動車にも活用していくことで、より特徴のある軽自動車開発を行い、お客さまに魅力的なクルマを提供してまいります。また、今後共同で軽自動車のEVの開発も進めてまいります。

2015年度上期の販売実績

2015年度上期の販売状況についてご説明いたします。

2015年度上期のグローバル全体需要は、前年比1.2%増の4,320万台となりました。当社のグローバル販売台数は、前年比1.3%増の262万台となり、北米・欧州・中国の好調な販売が、日本や新興市場の販売減を補いました。

主な市場の販売状況は次の通りです。

まず日本についてですが、全体需要は5.8%減となりました。当社の上期国内販売台数は、前年比9.0%減の26万5,000台となり、市場占有率は0.4ポイント減の11.4%となりました。全体需要、当社販売はともに低迷している中ですが、ハイブリッドを加えた「エクストレイル」は人気を博し、2万9,000台の販売台数となりました。また、「デイズ」、「デイズルークス」は6万2,000台を販売し、引き続き当社の量販車種となっております。

2015年度上期の中国における当社の販売台数は5.7%増の58万8,000台となり、市場を上回る成長となりました。「エクストレイル」や「シルフィ」シリーズは引き続き好調で、市場占有率は前年比0.2ポイント増の5.2%に達しました。1月から9月までの第3四半期累計販売台数は、前年比1.8%増の85万9,000台となり、市場占有率は5.2%を維持しました。
9ヵ月間の販売実績を詳細に見ますと、乗用車販売は9.5%増の72万2,000台と着実な伸びを示しましたが、25.7%減の13万7,000台に留まった小型商用車の需要低迷に相殺されたことになります。
乗用車の堅実な成長基調は続いています。速報値ですが、10月の中国の販売も好調で、東風日産ブランドの乗用車で19%を超える上昇、商用車やInfiniti含む中国全体でも16%以上の上昇が見込まれています。

北米では、前年比6.6%増の75万5,000台を販売し、全体需要の伸びを上回るペースで推移しています。市場占有率は8.3%に上昇、「ローグ」と「アルティマ」をはじめとする商品が好調な販売を支えています。
カナダでも当社の販売台数は前年から11.7%増の7万3,000台となり、市場占有率は0.5ポイント増の6.7%となりました。
メキシコでも16万6,000台まで増加し、市場占有率は前年比0.4ポイント増の26.0%を獲得。引き続きトップブランドとなっています。

欧州市場の販売台数は、前年比でほぼ10%増の36万7,000台となり、市場占有率は4.1%となりました。ロシアを除く欧州の販売台数は前年比17.1%増の30万6,000台となりました。
「キャシュカイ」、「パルサー」の台数増が貢献しています。市場占有率は3.8%に達しました。
ロシアでは、経済環境が引き続き安定せず、前年比15.9%減の6万1,000台となりましたが、全体需要は31.5%減と大きく落ち込んでおり、市場占有率は1.4ポイント増の7.6%となりました。

その他市場の販売台数は、新興市場の経済悪化に伴い、前年比5.2%減の40万1,000台となりました。
アジアとオセアニアでは前年比6.4%減の16万8,000台を販売し、中南米では前年比2.5%減の8万6,000台となりました。
中東では販売台数が前年比12.0%減の9万7,000台に留まりましたが、アフリカでは前年比10.7%増の5万台となりました。

2015年度上期財務実績

2015年度上期の財務実績の説明に移りたいと思います。

中国の合弁会社に持分法を適用する会計基準に基づき、ご報告します。
連結売上高は前年から7,887億円、15.3%増加し、5兆9,300億円となりました。主な増収要因は、北米と欧州での販売増と為替変動による影響です。
連結営業利益は1,331億円、50.8%増の3,950億円、当期純利益は886億円、37.4%増の3,256億円となりました。

営業利益の増減要因は次の通りです。

  • 466億円の為替変動による増益は、主として、米ドルに対する円高是正によるものです。
  • コスト項目は、購買コスト削減と原材料費減少が、商品性向上によるコスト増の影響を打ち消し、886億円の増益要因となりました。
  • 台数・車種構成は合計で1,252億円の増益要因となりました。
  • 販売費用の増加は750億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は108億円増加しました。
  • 生産コストは67億円増加しました。
  • その他項目は348億円の減益要因となりました。

自動車事業実質有利子負債は1兆4,700億円のキャッシュ・ポジションとなり、堅調に推移しています。

当社はこれまでの発表と同様に、日産パワー88策定時のベースであった中国合弁会社比例連結ベースの値を公表しています。上期の連結売上高は6兆4,500億円、連結営業利益は38.8%増の4,616億円、連結営業利益率は7.2%、当期純利益は37.4%増の3,256億円となっております。

2015年度通期見通し

通期の見通しについてですが、北米・西欧での好調な販売、徹底したコスト管理の継続、および有利な為替の影響により、通期の業績予測を上方修正することにいたしました。

東京証券取引所には次の通り、通期業績見通しを届け出ています。
2015年度下期の為替レートは1ドル117円と1ユーロ130円を前提としています。
こちらの業績予測は中国の合弁会社に持分法を適用した場合の値です。

  • 連結売上高は当初見通しより1.2%増の12兆2,500億円。
  • 連結営業利益は8.1%増の7,300億円。
  • 連結当期純利益は5,350億円。
  • 設備投資は当初の想定から変わらず5,500億円。
  • 研究開発費も当初の予定通り5,300億円です。

営業利益の上方修正の主な要因は次のとおりです。

  • 為替変動による450億円の増益
  • カントリーミックスの改善により、販売とマーケティング関連の収益が50億円増加
  • モノづくり関連およびその他項目による50億円の増益
    となっております。

この業績予想は、グローバル販売台数、前年比3.4%増の550万台を前提としております。

まとめ

2015年度上期、当社は魅力的な新車攻勢、コスト管理の徹底と為替変動による増益、および高水準のフリーキャッシュフローを確保した結果、良い業績を残すことができました。

今回修正した通期見通しを前提に、当社は引き続き、着実に自動車事業のフリーキャッシュフローを生み出し、株主の皆様に対する魅力的なリターンを確保してまいります。
以前から申し上げている通り、日産パワー88の期間中は配当性向の最低ライン30%を維持します。
2015年度は一株当たり42円の通期配当を実施する見込みであり、本日の取締役会では、一株当たり21円の中間配当を決定しました。今年の11月26日にお支払いする予定です。

日産自動車は引き続き業績向上に尽力し、利益ある成長に向けて着実に歩を進めています。

* 2015年度より、従来の「当期純利益」の正式名称は「親会社株主に帰属する当期純利益」となりましたが、本文中では引き続き当期純利益の名称を使用しております。

以 上