2015年2月9日
2014年度第3四半期決算報告
日産自動車株式会社
常務執行役員 田川 丈二
まず、2014年度第3四半期までの9か月の主な事業活動、販売実績、及び財務実績についてご説明したいと思います。
厳しい市場環境にもかかわらず、日産自動車は中期経営計画「日産パワー88」を引き続き遂行し、利益ある成長を遂げながら、確かな財務実績を残しました。2014年度第3四半期までの9か月間の連結売上高は8.1兆円となり、前年同期から11.1%増加しました。連結営業利益は前年同期比39%増の4,179億円、売上高営業利益率は5.2%となりました。当期純利益は23.6%増の3,388億円に増加し、売上高純利益率は4.2%となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローは、1,557億円のプラスとなり、2014年度第3四半期末は自動車事業で1兆1,800億円のキャッシュ・ポジションとなりました。
2014年度第3四半期は、米国市場における拡販と、円ドル為替レートの是正効果が、中国と日本など、一部の市場の停滞、ならびにロシアの政情と景気によるマイナス要因を補いました。
財務実績の詳細に入る前に、2014年度第3四半期の主な事業活動についてご説明したいと思います。
2014年度第3四半期事業報告
商品につきましては、当社は引き続き、新型「キャシュカイ」、「ローグ」及び「エクストレイル」で採用を開始した「コモン・モジュール・ファミリー(CMF)」のメリットを享受しています。これら3車種はいずれも販売台数を伸ばしており、前年比で欧州のキャシュカイは22%増、米国のローグは16%増となっています。そしてエクルトレイルは中国では7倍、日本で74%台数が拡大しています。
更に、「キャシュカイ」、「ローグ」、「エクストレイル」は、多くの市場で、重要な複数の賞に輝いています。例えば先月、「エクストレイル」は中国の「カー・オブ・ザ・イヤー2014」を獲得しました。
また、新車攻勢の手も緩めていません。この2か月の間に、米国では第3世代の「ムラーノ」を発売し、デトロイトの北米国際オートショーでは、重要な2つのモデルを披露しました。一つ目は新型「タイタン」で、今年後半に米国で発売する予定です。二つ目はインフィニティ「Q60コンセプト」で、2016年に生産開始予定の新型スポーツクーペの重要なコンセプトカーです。更に、先週は新型「マキシマ」をお披露目し、今年、米国に投入する予定です。
日産自動車は引き続き、自動運転システムと先進技術をリードしていきます。
先月、当社はアメリカ航空宇宙局(NASA)と共同で研究開発を行う5年間のパートナーシップを締結しました。これにより、カリフォルニア州のNASAエイムズ研究センター敷地内で、ゼロエミッションの自動運転車両の実験を行うことができます。また、両者がそれぞれ進めている自動運転システムと人工知能の研究成果も共有していきます。
世界初の「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング」は、RJC、日本自動車研究者ジャーナリスト会議による「2015年次RJCテクノロジーオブザイヤー」に輝きました。本システムは、国内では「スカイラインセダン」に、海外ではインフィニティ「Q50」に搭載されています。
また、日産自動車は、移動物検知機能付きアラウンドビューモニター技術をライセンス供与する契約を日立建機と結びました。
当社のゼロ・エミッション・モビリティに対する決意に揺らぎはありません。発売以来、「日産リーフ」の販売台数は15万8,000台を超え、世界で最も売れている電気自動車の地位を確固たるものにしています。
これまでアライアンス・パートナーであるルノーと共に、両社あわせて20万台以上の電気自動車を販売しました。
電気自動車の普及を支える重要な要素の一つは充電インフラの整備です。
当社は、米国で実施している「No Charge to Charge」という、公共の充電スタンドを無料で使用できるサービスを、更に多くの主要都市に拡大、展開しています。
日本では、全国の急速充電器の数が、2014年度末には6,000基近くに達する見込みです。普通充電器やお客さまのご自宅に設置している充電器を併せると、合計4万基にのぼり、国内にある34,000箇所のガソリンスタンドを上回ることになります。
ルノー・日産アライアンスは、グローバルの自動車業界をリードするグループの一つです。2014年暦年でも、世界第4位を維持し、グローバル販売台数は850万台に達しました。
以上が、第3四半期までの主な事業活動です。ではこの9か月間の業績について詳しくご説明したいと思います。まずは販売状況です。
2014年度第3四半期販売状況
2014年度第3四半期までの9か月間のグローバル全体需要は前年比2.8%増の6,342万台となりました。
当社のグローバル販売台数は、前年比4.4%増の380万台となり、北米と欧州における好調な販売が、各市場の伸びを上回る台数につながりました。
日本国内の全体需要は前年比3.4%減の372万台に留まりました。当社の販売台数は前年比10.5%減の41万7,000台となり、市場占有率は11.2%となりました。
2014年1月から9月までの9か月間の中国の全体需要は前年比7.7%増の1,612万台となる一方、当社の販売台数は前年比5.2%増の87万9,000台に達しました。2014年暦年では、中国市場は前年比7.6%増の2,234万台に達し、当社の販売台数は122万台となりました。特に好調なのは「エクストレイル」と「シルフィ」です。市場占有率は5.5%となりました。
次に北米ですが、米国の全体需要は前年比7.3%増の1,278万台となる一方、当社は市場の伸びを上回る、前年比10.9%増の103万台を販売しました。特に目覚ましい健闘を見せたのは、「ローグ」と「アルティマ」です。当社の市場占有率は前年比0.3ポイント増の8.1%となりました。カナダでは、当社の販売台数は前年比26.1%増の9万2,000台に達しました。メキシコでは、市場占有率は25.9%と高水準を維持し、販売台数は前年比13.8%増の22万9,000台に到達しました。
欧州市場には、安定化の兆しが見えてきており、全体需要は1,320万台となりました。当社の販売台数は前年から13.4%伸長し、市場占有率は過去最高の4.1%に達しました。ロシアを除く欧州における当社の販売台数は40万台となり、前年から12.7%増加しました。市場占有率は0.3ポイント向上し、3.6%となりました。
ロシアではルーブルの下落と、経済不安により、消費者心理が冷え込んでいます。しかしながら、当社の販売台数は前年比15.5%増の13万4,000台となり、市場占有率は7.1%に達しました。
アセアン、アフリカ、中南米を含むその他市場では、引き続き景気が停滞しています。当社の販売台数は前年比0.9%増とほぼ前年並みの65万1,000台に留まりました。アジアとオセアニアでは、前年比1.9%減の26万7,000台を販売しました。中南米の販売台数は前年比3.4%減の14万2,000台に留まりました。唯一販売を伸ばしたのは中東で、当社の販売台数は前年比11%増の16万9,000台となりました。
2014年度第3四半期財務実績
では財務実績のご説明に移りたいと思います。中国合弁会社持ち分法ベースでは、連結売上高は前年から11.1%の増加、または8,099億円増加し、8兆900億円となりました。主な増収要因は台数増および円高是正による海外売上の換算効果です。
連結営業利益は4,179億円で、前年から39%増加し、売上高営業利益率は5.2%となりました。連結当期純利益は3,388億円となり、前年から23.6%増加しました。
営業利益の増減要因は次の通りです。
- 418億円の為替変動による増益は、主に米ドルに対する円高是正による増益と、ルーブル安による減益を差し引いた結果です。
- コスト項目は、714億円の増益要因となりました。
- 台数・車種構成は546億円の増益要因となりました。
- 販売費用の増加は、264億円の減益要因となりました。
- 研究開発費は83億円増加しました。
- 生産費用は151億円増加しました。
- その他項目は8億円の減益要因となりました。
2014年度12月末時点の自動車事業実質有利子負債は1兆1,800億円のキャッシュ・ポジションとなり、前年同期の6,435億円から5,339億円改善しました。
中国合弁会社比例連結ベースの2014年度第3四半期までの連結売上高は、8兆7,900億円、連結営業利益は5,168億円、連結当期純利益は3,388億円に上昇しました。自動車事業のフリーキャッシュフローは1,625億円、自動車事業実質有利子負債は1.3兆円のキャッシュ・ポジションとなりました。
比例連結ベースでも、業績は前年から飛躍的に改善し、売上高は10.8%増、営業利益は39.4%増、売上高営業利益率も4.7%から5.9%に1.2ポイント上昇しました。また、当期純利益も前年から23.6%伸びました。
2014年度の見通し
2014年度の残る四半期も、引き続き厳しい環境を想定しています。中国、ロシア、そしてその他の新興市場の状況は、大幅な改善は直ぐには見込めないと考えています。一方、西ヨーロッパ諸国では安定化の兆しが見えてきており、米国市場の勢いも続くと見込んでいます。以上の市況を鑑み、今年度の通期予測を修正いたします。
まず、グローバル販売台数は、足元の状況、特に中国・ロシア・その他新興市場の状況を考慮し、530万台に下方修正いたします。一方、通期の財務予測は上方修正いたします。有利な為替の状況、原材料価格の低下、およびコスト効率化によるプラスの影響が、台数の減少による悪化を上回ります。
以上の変更を加えた通期業績見通しを、東京証券取引所に届け出ました。第4四半期の為替レートは、1ドル115円と、1ユーロ135円を前提としています。こちらの業績予測は中国の現地合弁会社に持ち分法を適用した場合の値です。
- 連結売上高は11兆1,500億円。
- 連結営業利益は前回予想から350億円増加の5,700億円。
- 連結当期純利益は150億円増加の4,200億円。
- 設備投資は5,250億円で変更なし。
- 研究開発費も変更なく5,000億円の見通しです。
当初の見通しに対する営業利益の増減要因は次の通りです。
- 為替変動に伴う550億円の増益。
- 台数減少による250億円の減益。
- モノづくりその他項目で50億円の増益です。
まとめ
マクロ経済の環境は厳しいものの、当社は引き続き「日産パワー88」の戦略を実行していきます。修正しました通期予測でも確実なフリーキャッシュフローを生み出し、期初にお約束した一株当たり33円の年間配当金を実施し、「日産パワー88」の期間中は少なくとも30%の配当性向を維持します。
以 上