スピーチ


2014年11月4日

2014年度上期決算発表
日産自動車株式会社
CCO 西川廣人

2014年度上期6か月間の主な事業活動、販売実績、及び財務実績についてご説明致します。

2014年度上期はしっかりとした業績を達成することができました。
当社は中期経営計画 日産パワー88の実行の中にあり、収益性を伴った成長を遂げています。
北米の販売は勢いを増し、前年、減速した中国販売も一部回復しつつあり、また、西ヨーロッパの市況も好転しています。 これらの好材料が、今年度初めの消費税増税に伴う需要の反動減から軟化している日本国内市場と、不安定な新興市場の影響を補っています。
財務実績は、順調に推移しております。
今日は中国の現地合弁会社に持ち分法を適用する会計基準に基づいてご報告いたします。

2014年度上期の連結売上高は5兆1,400億円となり、前年同期比で8.2%増加しました。

連結営業利益は2,619億円、売上高営業利益率は5.1%となりました。
当期純利益は2,370億円に増加し、売上高純利益率は4.6%となりました。
自動車事業のフリーキャッシュ・フローは1,640億円となり、上期末でのキャッシュ・ポジションは1兆1,300億円となりました。

財務実績の詳細に入る前に、2014年度上期の主な事業活動と販売状況についてご説明したいと思います。

まず商品について、ご説明します。
14年度上期、当社は新車攻勢を続け、欧州では新型「パルサー」を発売しました。
これは、この12か月間で、12車種目の新車投入になります。

前回も申し上げましたように、当社は、ほぼすべてのセグメントに商品を揃えることを目指しております。
「パルサー」は、欧州市場の中心である重要なCセグメントに再参入するモデルです。

欧州のクロスオーバーセグメントでは、「キャシュカイ」が引き続きご好評いただいております。
今週、英国サンダーランド工場では、キャシュカイ生産が累計200万台に達しました。
コモン・モジュール・ファミリー、CMFを採用する最初のグループである、「ローグ」と「エクストレイル」とともに、これらのクロスオーバーは、当社のラインアップの中でも特に人気のあるモデルです。

先月の米国EPA,環境保護庁の発表はお客様に、日産車をお選び頂くもう一つの動機を加えてくれました。
EPAのトレンドレポートにおいて、日産グループは、企業平均燃費値が1ガロン当り26.2マイルと、フルラインアップメーカーの中で最も燃費の良い企業にランクされた事を、改めて、ご報告をさせて頂きます。

プレミアム市場では、インフィニティのグローバル展開が進んでいます。
今週、中国では「インフィニティQ50L」、ロングホイールベースの生産が始まります。

今後のインフィニティは、現在の商品群に留まりません。
先月のパリ・モーターショーでは、デザインコンセプトの「インスピレーション」を披露しました。
「インスピレーション」は、インフィニティのデザインと技術の方向性を予感させると同時に、インフィニティが他のプレミアム・ブランドとどのような違いを出していくのかを示しています。

次に、ブランドパワーについて、ご説明します。
ニッサン・ブランドは、更に知名度を高め、魅力を増しています。
インターブランド社の調査で、ニッサン・ブランドは9位順位を上げ56位になり、ベスト・グローバル・ブランドの中で最も順位を上げた企業の一つとなりました。
これは、今年の前半に発表されたインターブランド社による、ベスト・グローバル・グリーン・ブランド調査の結果に続く快挙であります。

ブランドの知名度を高める上で重要な活動の一つは、英国プレミア・リーグ、欧州サッカー連盟チャンピオンズリーグ、そしてアフリカネイションズカップ等、主要なスポーツ・イベントとの協力です。
影響力のあるスポーツ・フランチャイズとの協力は、重要なマーケティング・ツールであり、観衆との関わりを深めます。
メディアがどれほど多様化しても、試合の生中継の決定的瞬間を迎えると、視聴率は飛躍的に上昇します。
従って、このようなスポーツ・イベントに関わることで、ブランドの認知度は向上していきます。

また、日産自動車は、ゼロ・エミッション戦略の実行を進めております。
「日産リーフ」の販売台実数は累計14万2,000台に達し、米国では、19か月連続で販売を伸ばしました。
更なる電気自動車の普及をめざし、中国では9月にヴェヌーシア「e30」を発売、また、「e-NV200」を欧州と日本に投入しました。

アライアンスについて、ご説明します。
アライアンス戦略は、大きなシナジー効果の創出を目指し、順調に進んでいます。
9月には、ルノーの工場である韓国のルノーサムスンの工場から、日産「ローグ」の米国向け出荷が始まり、米国の需要拡大に対応しています。 また、先ほど申し上げましたように、CMFを採用した最初の商品群の販売が勢いを増しています。

パリ・モーターショーでは、ルノー・日産アライアンスとダイムラーの戦略的協力関係の強化についてご説明しました。2010年のパートナーシップ締結以来、当アライアンスとダイムラーの共同プロジェクトの数は4倍に増え、現在、12件にのぼるプロジェクトが、欧州、アジア、北米で進行中です。メキシコにおけるプレミアム・コンパクトの共同開発・生産と、エンジンの共用がその一例です。

次に、2014年度上期の販売について、ご説明します。
グローバルの全体需要が前年比3.1%増の4,269万台となる中、当社のグローバル販売台数は、北米の好調な販売と中国の回復が寄与し、前年比5.8%増の258万台となりました。
更に、欧州は安定化の兆しが見え始め、日本市場の鈍化と、不安定な新興市場の影響を一部補いました。

では、地域別に見てみます。

日本において、上期の当社の販売台数は、前年比7.6%減の29万1,000台となりました。
これは、期初の想定通りで、昨年度下期の消費税増税前の駈込み需要の反動を受けた影響です。
想定通りでは無かったのが、前年比3%減に終わった全体需要です。
  一部メーカーの昨年度からの受注残の持越し台数と、軽自動車を中心とした過度な販売競争が想定以上で、実態需要以上に全体需要を膨らませました。
その結果、シェアを落とすこととなりました。
ただし、競合の激しい軽セグメントにおいては、軽自動車でトップ2となった「デイズシリーズ」がけん引し、台数、シェアともに上半期で最高となりました。

中国での6月末までの上期の当社の販売台数は、前年から14.6%増加し、 市場占有率は前年比0.3ポイント増の5.6%となりました。
しかしながら、中国の第3四半期にあたる7月から9月までの3か月間の当社の販売台数は、前年比12%減の25万9,000台に留まり、市場占有率は5.1%でした。
第3四半期から、小型商用車を中心に、全体需要が鈍化し、また、コンパクト・セグメントの競争は激化しました。
更に、政治的緊張の消費者心理の影響がまだ尾をひいており、その結果、販売台数は当初の想定を下回る結果となりました。この状況に対処するため、在庫の正常化に取り組むと共に、ディーラーの活動のサポートを強化する策を打っております。

次に北米です。
米国の当社の販売は、前年比13.7%増の70万8,000台に達し、全体需要の伸びを上回り、市場占有率は8.2%に上昇しています。
主に「ローグ」と「アルティマ」の販売増加が、大きく貢献しています。
カナダでは前年比30.6%増の66,000台を販売しました。
メキシコでも販売を13万8,000台に伸ばし、引き続きトップ・ブランドとして、25.6%の市場占有率を獲得しています。

欧州では、市況の安定化の兆しが見えてきています。
当社の販売台数は前年比8.4%増の33万4,000台となりました。
ロシアを除く欧州の販売台数は、前年比9.5%増の26万1,000台となり、市場占有率を3.5%へ伸ばしております。
また、ロシアの販売台数は前年比4.4%増の73,000台となり、市場占有率は6.2%となりました。
アセアン、アフリカ、南米など、その他の市場では、当社の販売台数は、前年比0.2%減、微減の42万3,000台となりました。
中南米の販売台数は、前年比11.6%減の88,000台に留まりました。
一方、中東では前年比14.4%増の11万台、アジアとオセアニアでは前年比1.2%増の18万台を販売し、中南米の販売減をほぼ補った形となっています。

では2014年度上期の財務実績をご説明いたします。

中国合弁会社持ち分法ベースで、連結売上高は前年から3,884億円増加し、5兆1,400億円となりました。
これは主として、販売台数増と為替変動による増収によるものですが、 先ほどご説明しました厳しい市場環境による減収により一部相殺されました。
連結営業利益は2,619億円、当期純利益は2,370億円となりました。

2013年度上期に対する営業利益の増減要因を詳しくご説明いたします。

  • 173億円の為替変動による増益は、主に米ドルに対する円の変動によるものです。
  • 購買コスト削減活動、原材料価格の上昇、そして商品性向上に関わるコスト増加
    これらコスト項目は、差し引きで525億円の増益要因となりました。
  • 台数・車種構成は270億円の増益要因となりました。
  • 販売マーケティング費用の増加は347億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は44億円増加。
  • 生産費用は153億円増加。
  • その他項目は24億円の減益要因。

となります。

2014年度9月末時点の自動車事業実質有利子負債は1兆1,300億円のキャッシュ・ポジションとなり、引き続き、良い水準を確保しています。

これまでと同様に、東京証券取引所には、中国合弁会社に持ち分法を適用した実績を届け出ておりますが、日産パワー88の達成状況を評価するには、中国合弁会社比例連結ベースの値を採用しています。
こちらが、比例連結を適用した場合の上期の実績です。
連結売上高は5兆6,400億円、連結営業利益は3,326億円、当期純利益は2,370億円となります。

2014年度の通期見通しについて、
上期の販売実績と、下期に想定される市場の動向を前提に、 販売台数についての2014年度の予測を変更することに致しました。

具体的には、2014年度通期のグローバル販売台数を、当初予測から20万台減の545万台に見直しました。
これは主に、新興国の販売減を考慮したものであり、なかでも特に、中国における小型商用車市場の弱含みの状況、小型乗用車市場の競争激化、政治的緊張の日本ブランドへの影響が残っていることを考慮した結果です。
北米での更なる増販を込んでおりますが、それでは補いきれない、と見ております。

尚、財務予測については、連結営業利益と純利益の通期予測に変更はありません。
台数減による減益は、北米での販売増および更なるコストの改善と、想定以上の為替変動による増益、これらで十分オフセットできると見ております。

東京証券取引所には、既に通期業績見通しの修正を届け出ました。 2014年度下期の為替レートは1ドル105円と1ユーロ137円を前提としています。
こちらの業績予測は中国の現地合弁会社に持ち分法を適用した場合の値です。

  • 連結売上高は10兆8,000億円。
  • 連結営業利益は5,350億円。
  • 連結当期純利益は4,050億円。
  • 設備投資は当初の想定から変わらず5,250億円。
  • 研究開発費も当初の予定通り5,000億円です。

最後になりますが、この修正致した販売見通しをベースに、引き続き、確実に自動車事業のフリーキャッシュ・フローを生み出し、株主の皆様に対する確かなリターンを確保して参ります。
以前から申し上げている通り、日産パワー88の期間中は配当性向の最低ライン30%を維持致します。
2014年度は一株当たり33円の通期配当を実施する見込みです。
本日の取締役会で、一株当たり16円50銭の中間配当を決定し、今年の11月26日にお支払いする予定です。

日産自動車は引き続き業績向上に力を尽くし、通期予測達成に向けて着実に歩を進めております。

以 上