スピーチ


2014年2月10日

2013年度第3四半期決算報告
日産自動車株式会社
執行役員 田川 丈二

2013年度第3四半期までの9か月間、日産自動車は業績向上に向け、着実に歩を進めてきました。競争の激化と不透明な経済環境にも拘わらず、中国合弁会社比例連結ベースで、特に第3四半期3か月間の実績は、前年に対し大幅に改善しました。しかしながら、その利益水準は会社の本来の収益力を十分に発揮しているとは言えません。第4四半期に更なる業績向上を見込んでおり、従って、通期の業績予想に変更はありません。

2013年度第3四半期までの連結売上高は、中国合弁会社比例連結ベースで7兆9,356億円、連結営業利益は3,708億円、売上高営業利益率は4.7%となりました。当期純利益は2,741億円となり、純利益率は3.5%です。自動車事業のフリー・キャッシュフローは2,036億円のマイナスとなりました。一方、自動車事業実質有利子負債は7,330億円のキャッシュ・ポジションとなり、前年同期の倍を超える水準です。

強力な商品や技術力、ブランドパワーやセールスパワーの改善に基づく、高い市場占有率と売上高営業利益率を目標とする日産パワー88に変更はありません。2013年度第3四半期までの財務実績をご説明するにあたり、まずは最近の事業活動について詳しくご報告いたします。

2013年度第3四半期事業報告

第3四半期にはコモン・モジュール・ファミリー(CMF)の第一弾を採用した一連の新車を発表しました。CMFのスケール・メリットと先進技術を最初に享受するのは、新型ローグ、新型エクストレイル、そして新型キャシュカイです。今後、このCMF第一弾が適用される車種が全て販売されると、日産自動車とアライアンス・パートナーであるルノーとあわせて、年間160万台の規模となる見込みです。

生産能力の増強も進んでおり、既に稼働を始めたメキシコの第3工場に加え、複数の新たな拠点が開設を控えています。メキシコ第3工場の稼働に伴い、当社は同国において首位の座を更に強固にし、年間生産台数は従来より25%多い、年間85万台以上になる計画です。

成長市場における当社の集中的な取り組みは、中国の販売回復にも表れており、日産自動車は引き続き中国市場最大の日系メーカーとして、2013年暦年の販売台数は過去最高の127万台に達しました。パートナーの東風汽車と共同で生産するシルフィとヴェヌーシアR50Xをはじめとする新型車が貢献しています。

市場の拡大に加え、日産自動車は引き続きゼロ・エミッション車を推進しています。第3四半期までの実績は、世界最大の販売を誇る電気自動車メーカーとしての地位を更に固めました。日産リーフは世界35か国で販売され、1月には販売台数は累計10万台を突破しました。

当社の電気自動車の戦略は、2014年度に予定しているe-NV200の発売で更に加速します。e-NV200は、グローバルに販売する電気自動車第2弾です。商用車のエミッションに変革をもたらす可能性を持つe-NV200の投入に加え、当社は国内の電気自動車のカーシェアリングや継続的な充電インフラの整備に向けた取り組みを行っています。

昨年11月に、重要な経営陣と運営体制の変更を行いました。地域軸のマネジメント体制を順次見直すことで、よりきめの細かい市場対応が可能になりました。3リージョン体制から6リージョン体制に変更し、北米はホセ・ムニョス、中南米はホセ・ルイス・ヴァルス、アジアは片桐隆夫が統括しています。12月には、アフリカ・中東・インドに秦 孝之(はた たかし)、中国に関 潤、欧州にポール・ウィルコックスをそれぞれ任命し、新体制が固まりました。各地域のトップ体制が整い、高い目標達成に向けて活動を進めていきます。

15年にわたるルノーとのアライアンスは日産自動車のグローバルでのプレゼンスを高めてきました。本年1月末には、購買、研究・開発、生産・物流、そして人事の4機能における更なる協業によりアライアンスが大きく進展することを発表しました。ルノー日産両社が享受するアライアンスから創出されるシナジーは2016年までに年間43億ユーロ以上に達する見込みです。このシナジーには売上高の増加、コスト節減、クロスファンクションによる効率向上が含まれています。また、このアライアンス全体で2013年暦年は830万台を販売しました。この台数規模によって協力を行える範囲を今後さらに拡大することができます。

事業活動のご説明は以上です。では、次に2013年度第3四半期までの地域別の販売状況をご説明いたします。

2013年度第3四半期販売実績

2013年度第3四半期までのグローバル全体需要は前年比4.2%増の6,156万台となり、当社のグローバル販売台数は1%増の367万台となりました。北米と日本国内での力強い拡販が、市場の伸びを上回り、前半の6か月は未だ回復の途上にあった中国や、不安定であった他の市場を補いました。

国内の全体需要は、4月の消費税増税前の駆け込み需要等の影響で、前年比4.5%増の385万台となりました。ノートとデイズをはじめとする新型車の健闘で、当社の販売台数は市場の伸びを上回る7.4%増の46万6,000台に達しました。市場占有率も12.1%に上昇しています。

9月までの2013年度第3四半期9か月間の中国の全体需要は前年比12.8%増の1,500万台近くに達しました。同期間の当社の販売台数は88万6,000台でしたが、第3四半期3か月間では販売の回復は顕著であり、前年同期比23%増の29万4,000台に達しました。
この回復の勢いは第4四半期でも続き、当社の販売は前年同期比93.8%増の38万1,000台に急伸しました。政情の安定化に伴い、中国全体需要は前年同期比17.1%増の578万台でしたが、当社の伸びは市場を大きく上回りました。その結果、市場占有率は前年比2.6ポイント増の6.6%に達しました。

次に北米ですが、米国の全体需要は前年比8%増の1,191万台となりました。当社の販売台数は再び市場の増加を上回る前年比13.5%増の93万台に達し、アルティマとパスファインダーが大きく貢献しました。米国の市場占有率は前年比0.4ポイント増の7.8%となりました。一方、カナダの当社の販売は前年比19.2%増の73,000台となりました。メキシコでは引き続き高いプレゼンスを維持しており、市場占有率は24.6%、販売台数は20万1,000台でした。

欧州の全体需要は前年比0.5%減の1,292万台に留まりました。当社の販売台数は前年比1.7%減の47万1,000台となったものの、市場占有率は3.7%を維持しました。絶好調のノート、ジューク、キャシュカイをはじめとする商品が販売を支えています。ロシア市場には回復の兆しが見られ、当社の販売台数は第3四半期だけの3か月間で25.7%伸び、市場占有率は6.5%に達しました。

アセアン、アフリカ、中南米等、その他市場の経済環境は不安定でした。その結果、当社の販売台数は前年比8.9%減の64万5,000台に留まりました。アジアとオセアニアは前年比15.3%減の27万1,900台、中南米は前年比15.7%減の14万6,500台となりました。一方、中東の販売は前年比15%増の15万1,900台となり、販売減の一部を補いました。加えてアジア・オセアニアに含まれているインドでの販売ですが、第3四半期9か月累計の販売台数は前年から22.2%減少しましたが、第3四半期だけの3か月間をみると、全体需要が8.8%減少しているにもかかわらず、当社の販売は27.5%増加しました。これはインドでの MUV・オブ・ザ・イヤーを受賞した新型テラノの販売好調が大きく寄与しています。

2013年度第3四半期財務実績

では2013年度第3四半期までの財務実績をご説明いたします。連結売上高は前年比1兆1,804億円増の7兆9,356億円となり、主に円高是正による増収が寄与しました。

連結営業利益は前年比216億円増の3,708億円で、売上高営業利益率は4.7%となりました。当期純利益は前年比417億円、17.9%増加の2,741億円に達しました。営業利益の増減要因を詳しくご説明いたします。

  • 2,234億円の為替変動による増益は、主として米ドルに対する円高是正によるものです。
  • 原材料価格の変動を含む購買コスト削減は、1,381億円の増益要因となりました。
  • 台数・車種構成は412億円の減益要因となりました。
  • 販売費用の増加は1,819億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は242億円増加しました。
  • 生産コストは247億円増加しました。
  • サービス保証費とリコール費用は484億円増加しました。
  • その他項目は195億円の減益要因となりました。

中国の現地合弁会社に持ち分法を適用すると、第3四半期までの連結売上高は前年比19.7%増の7兆2,786億円となります。連結営業利益は前年比9.5%増の3,007億円、当期純利益は前年比18.4%増の2,741億円です。

2013年度第3四半期の自動車事業実質有利子負債は7,330億円のキャッシュ・ポジションとなり、2012年第3四半期の3,338億円から更に改善しました。

2013年度通期の見通し

2013年度末に向け、北米と国内市場では好調な販売が続く見込みで、成長市場である中国やロシアでも回復の兆しが見られます。

更に、米国のローグ、欧州のキャシュカイ、インドのダットサンGO、国内のエクストレイル、デイズ・ルークスや新型スカイライン等、12月以降に発売する数々のフラッグシップの新車効果も見込んでいます。

こうした数々の新車投入や販売の季節性により、第4四半期は第3四半期に対し大幅に収益が拡大する見込みです。

日産自動車は引き続きビジネスのファンダメンタルズを強化していきます。一部のグローバル経済環境が不透明な中、通期業績予想は据え置き、通年でプラスのフリー・キャッシュフローを生み出す予定です。また配当予想についても変更はありません。

以 上