スピーチ


2013年7月25日

2013年度第1四半期決算報告
日産自動車株式会社
執行役員 田川 丈二

2013年度第1四半期は厳しい経営環境が続きました。日本と北米の当社の市場占有率は改善したものの、会計年度が暦年ベースの中国では、諸島問題の影響が残る不安定な状況にあり、欧州市場の全体需要低迷も続いています。こうした全体需要の環境は当社に限ったことではなく、多くの自動車メーカーも同様です。

当社の第1四半期の業績には、今、申し上げた厳しい経営環境に加え、将来の成長に向けた継続的な投資の負担も反映されています。ただし、これらは計画に織り込まれており、当社の業績は当初の想定通り推移しています。

2013年度第1四半期の連結売上高は2兆5,121億円となり、連結営業利益は1,178億円、売上高営業利益率は4.7%となり、当期純利益は820億円となりました。自動車事業のフリー・キャッシュフローは1,503億円のマイナスとなり、自動車事業実質有利子負債は7,604億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

日産は中期計画のパワー88の目標に向けて計画通りに進んでおり、今後、更に業績の改善を見込んでいます。改めて申し上げますと、日産パワー88では、2016年度末までにグローバル市場占有率8%、そして売上高営業利益率8%の達成・維持を目指しています。

第2四半期からは、新車投入効果ならびに中国事業の回復、さらに主要マーケットである日本や北米での堅調な需要や販売により、業績は改善するものと思われます。従いまして、通期予測を達成する自信を持っています。

2013年度第1四半期の財務実績をご説明するにあたり、まずは最近の事業活動について詳しくご報告いたします。

2013年度第1四半期事業報告
第1四半期は新車の立ち上げを含むいくつかの特筆すべき節目を迎えました。例えば、国内では軽自動車の日産デイズを先月発売しました。デイズは三菱自動車との合弁会社のもと、日産自動車が企画の段階から開発に携わった軽自動車第一弾です。お蔭さまで受注は好調で、7月初頭までに3万台を超えるご注文をいただいております。

一方、米国でもアルティマとパスファインダーを中心に、新型車がご好評をいただいており、第1四半期は毎月、二桁台の販売増を果たしています。また、テネシー州のスマーナ工場では生産部門で新たに900名以上を雇用し、新型日産ローグの生産を行います。日産ローグを北米で生産するのは初めての試みです。

会計年度が暦年ベースの中国では、4月から6月の第2四半期で回復の兆しを見せています。今年の3月と4月に発売した新型ティアナとリヴィナの販売は好調で、世界最大の自動車市場である中国における販売の勢いを支えていくことを期待しています。

インフィニティ・ブランドもプレゼンスを拡大しています。インフィニティのグローバル拡大の一環として、栃木工場でQ50 の生産を開始しました。Q50は新型のプレミアム・スポーツ・セダンで、インフィニティ・ラインアップを刷新する主力商品です。第一段階として、今年8月に、米国全土で販売が開始されます。

当社は引き続き、ゼロ・エミッションの普及に専心しています。世界で最も売れている電気自動車の日産リーフは、累計販売台数7万台を突破しました。航続距離の向上と、サービス保証の充実で、更に魅力度を増し、国内生産に加え、米国と英国でも生産が立ち上がりました。先月、日産自動車はインターブランド社による環境ブランドランキングで、世界で最も環境に配慮するブランドの一つに選ばれました。更に、ルノー・日産アライアンス全体では、累計で10万台を超える電気自動車を販売しました。

当社のプレミアム・ブランドとゼロ・エミッションに関わる目標は、日産パワー88の重要な取り組みの一つです。本戦略のもう一つの柱は、拡大するエントリーレベルの市場でプレゼンスを確保することです。エントリーレベルの市場では、知名度の高いダットサン・ブランドの復活で目標達成を目指します。先日、インドで第一弾のダットサンGOを発表しました。同市場は、当社にとって重要な成長市場です。ダットサンは、インドだけでなく、ロシア、インドネシア、そして南アフリカをはじめとする市場において、重要なブランドとなります。

発足から14年間続いてきたルノーとのアライアンスでも大きなメリットを生み出し続けています。新たなコモン・モジュール・ファミリーの採用で、シナジー効果の創出は更に加速する見込みです。コモン・モジュール・ファミリーは様々な車体とパワートレーンの組み合わせを実現することで、両社は手頃な価格のクルマを提案することができます。また、CEOのゴーンは、この度、当アライアンスが出資するアフトワズの取締役会会長に就任しました。同社の取締役会は以前の12名から15名に拡大し、内8名はルノー・日産アライアンスの代表です。

以上が主な事業活動です。次に、第1四半期の販売実績をご説明したいと思います。まずは地域別の販売状況をご報告いたします。

2013年度第1四半期販売状況
2013年度第1四半期のグローバル全体需要は前年比4%増の2,110万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比3.3%減の117万台に留まりました。主に、諸島問題に起因する中国の台数減が影響しています。

日本国内の当社の販売台数は前年比4.4%減の13万5,000台に留まりました。一方、市場占有率は前年比0.2ポイント増の11.4%となり、ノートとデイズが健闘しています。

中国の当社の販売台数は前年から15.1%減少し、市場占有率は前年比2ポイント減の5.5%に留まりました。諸島問題に起因する不安定な状況が引き続き影響しています。一方、シルフィとティアナの受注は堅調であり、今後、我々の商品への需要は正常化していくと見込んでいます。

次に北米ですが、米国の当社の販売は前年比20%増の30万6,000台に達しました。アルティマとパスファインダーが大きく貢献しています。日産リーフも健闘し、6,000台を販売しました。米国の市場占有率は7.4%に上昇しました。一方、カナダでは前年比2.5%減の25,000台に留まりました。メキシコでは引き続き首位の座を維持しており、市場占有率は25.1%、販売台数は64,000台でした。

欧州では長引く景気後退を受け、当社の販売台数は前年比9.8%減の15万1,000台に留まりました。ロシアでも前年比25.3%減の29,000台となりました。しかしながら、英国におけるキャシュカイとジュークをはじめとする商品の健闘で、欧州の市場占有率は3.4%を維持しました。

アジア、オセアニア、アフリカ、中南米、そして中東など、その他の市場では、当社の販売台数は想定を下回る20万4,000台となりました。中東では前年比16.4%増の48,000台を達成する一方、アジア&オセアニアでは前年から15.1%減少し、中南米では22.9%減少しました。

2013年度第1四半期財務実績
では2013年度第1四半期の財務実績をご説明いたします。

連結売上高は前年比3,757億円増の2兆5,121億円となり、円高是正の増収が台数減による減収を相殺しました。
連結営業利益は1,178億円となり、売上高営業利益率は4.7%となりました。
当期純利益は820億円となり、純利益率は3.3%です。

2012年度第1四半期に対する営業利益の増減要因を詳しくご説明いたします。これらの増減要因には、昨年度から引き続き中国事業における諸島問題の影響が含まれています。

  • 698億円の為替変動による増益は、主として米ドルに対する円高是正によるものです。しかしながら、円ドルレートは依然として、歴史的な平均レートには達しておらず、日本円は実力に対し、やや高い水準にあります。
  • 原材料価格の変動を含む購買コスト削減は、438億円の増益要因となりました。
  • 台数・車種構成は399億円の減益要因となりました。
  • 販売費用の増加は250億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は56億円増加しました。
  • 生産コストは164億円増加しましたが、これは主に生産能力増強に関わる投資によるものです。
  • 例外的に低かった前年同期に比べ増加したリコールとサービス保証費、米国におけるリース車両再販の減益、そして諸経費の増加を含むその他項目は296億円の減益要因となりました。

会計基準の変更に伴い、今年度から従来とは異なる手法で財務実績を東京証券取引所に届け出ています。具体的には、中国の現地合弁会社を従前の比例連結から持ち分法に変更となっています。こちらの画面にありますのが、新しい会計基準に基づいた2012年度と2013年度の第1四半期の損益計算書のサマリーとなります。

2013年度第1四半期の自動車事業実質有利子負債は7,604億円のキャッシュ・ポジションとなりました。これは、2012年度末の9,159億円を下回る水準であるものの、季節性に起因しており、2012年度第1四半期の5,092億円を大幅に上回りました。

今後の見通し
今後、第2四半期以降も新車攻勢は続き、特に米国では、新型ローグとインフィニティQ50を発売予定です。今後期待される米国事業の本格的な強化と、中国販売の回復で、2013年度の当初計画を達成する自信があります。

日産パワー88の高い目標達成に向けた取り組みも順調に進んでいます。

日産パワー88では、グローバル市場における更なる成長と、ルノー・日産アライアンスをはじめとする数々のパートナーシップによる効果を上げることを想定しています。日産自動車はこれからも、着実に歩を進め、将来の成長に向けた投資を続けていきます。

ご清聴ありがとうございました。

以 上