スピーチ


2012年6月26日

第113期定時株主総会 事業報告

ゴーンCEO
2011年度、日産は過去最高の販売台数と成長を実現しました。複数の自然災害と為替変動による逆風にも拘わらず、当社は改めて、危機を乗り越える力を証明しました。難局に直面するたびに、日産は速やかに足並みを揃えて必要な手立てを講じ、事業の継続を図ってきました。株主の皆様には、いつも暖かいご支援を賜り、深く御礼申し上げます。日産は、確かな戦略と、2011年度の勢いに更に弾みをつけ、自信を持って、2012年度に臨む所存です。

では2012年度の計画の主なポイントについてお話しする前に、まずは最高執行責任者の志賀より、2011年度の業績について、ご説明いたします。

志賀COO

皆様、おはようございます。COOの志賀でございます。私からはまず、2011年度の販売実績についてご説明いたします。

2011年度販売実績
2011年度の世界の全体需要は、前年比4.2%増の7,570万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比15.8%増の484万5,000台に達し、過去最高を更新しました。当社は、全体需要の伸びを上回る販売増を果たし、グローバルな市場占有率は前年比0.6ポイント増の6.4%に到達しました。

では地域別の販売実績をご報告いたします。

日本国内の全体需要は、前年から3.3%伸びる一方、当社の販売台数は前年比9.2%増の65万5,000台となりました。市場占有率は前年比0.8ポイント増の13.8%です。販売好調なセレナとノートがシェア拡大に寄与し、日産リーフの販売台数は8,700台に達しました。

中国における当社の販売台数は、前年比21.9%増の124万7,000台となり、日系メーカーの中で最大の販売増を果たしました。特に健闘が目覚ましかったのは、サニー、ティアナ、シルフィ、キャシュカイ、そしてティーダの5車種で、それぞれ10万台を超える販売を実現しました。

米国の当社の販売は、売れ行きが好調なアルティマ、ローグ、そしてセントラの貢献により、前年比11.8%増の108万台となりました。日産リーフの販売も1万1,000台となり、拡販に寄与しました。

ロシアを含む欧州では、前年比17.5%増の71万3,000台の販売を記録しました。

アフリカ、中南米、アセアンなど、その他市場における当社の販売台数は、前年比16.4%増の82万6,000台となりました。特に健闘が目覚ましかったのは、中南米、ブラジル、インドネシア、そしてインドの販売です。

2011年度の重点活動
私たちがコントロールできない様々な要因による、厳しく不安定な経営環境にもかかわらず、日産はこの一年、あらゆる分野で飛躍的な進歩を遂げました。

現在進めている中期経営計画 日産パワー88の「パワー」とは、お客様の経験に、より焦点を当てた、ブランド・パワーとセールス・パワーの向上に向けた取り組みを指します。「88」は、グローバルな市場占有率8%の獲得と、売上高営業利益率8%を達成・維持する目標を指します。日産パワー88は6年間を対象期間にすることで、長期的な戦略視点のもと、商品・技術・地理的拡大のための投資を行い、2016年度以降もその成果を期待するものです。

2011年度の具体的な活動についてご説明いたします。まずは、会社の要である、商品と技術についてお話ししたいと思います。

日産パワー88では、平均で6週間ごとに1車種、新型車を発売する計画です。ニッサン・ブランドとインフィニティ・ブランドの商品ラインアップを拡充するだけでなく、ダットサン・ブランドの復活を支える、新たな商品群も開発していきます。

2011年度は、グローバルで新型車5車種を投入しました。

  • 中国にはティーダ
  • 日本にはラフェスタハイウェイスター
  • 欧州では商用バン NV400の前輪駆動と後輪駆動の2タイプ
  • そして、米国にインフィニティJXです。

また、2011年度は日産リーフが世界最大の販売台数を誇る電気自動車となりました。日産リーフの販売台数は2011年度だけで2万3,000台、2010年末の発売以来の累計では3万2,000台に達しました。

更に、2011年度は生産能力の増強投資を行うと同時に、ルノーとのアライアンスをはじめ、ますます拡大するパートナーとの協力関係を活用しています。

日産にとって最大の市場である中国では、広州・花都第二工場で、ティーダ ハッチバックの生産が始まりました。これにより、花都工場は年間60万台の生産能力を誇る、グローバル日産最大の生産拠点となりました。

ブラジルとメキシコでは、レゼンデとアグアスカリエンテスにそれぞれ新工場を建設することを発表しました。これにより、北米と中南米地域の年間生産能力は、2011年度の120万台から2014年度までに200万台に拡大します。

本年3月には、ダットサンの復活を宣言しました。2014年から、象徴的な同ブランドをインド、インドネシア、そしてロシアに展開するべく、鋭意、準備を進めています。ダットサン・ブランドのもと、これら成長著しい市場で、急速に拡大する将来有望な中間層のお客様に、モダンで価値のある、確かな品質の商品を提案していきます。

小型商用車事業は、2011年度に初めて、グローバル販売が100万台を超えました。2016年度までに世界最大の小型商用車メーカーとなる目標に向かって順調に歩を進めています。

2011年度の財務実績
では2011年度の財務実績についてご報告いたします。2011年度の連結売上高は前年から6,359億円増加し、9兆4,090億円となりました。台数増による増収が、円高を中心とする為替変動による減収を相殺しました。

2011年度の連結営業利益は5,458億円となり、売上高営業利益率は5.8%となりました。当期純利益は3,414億円となり、当期純利益率は3.6%となりました。2011年度末は、6,198億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

なお、単独決算の詳細につきましては、お手数ですが、お送りいたしました本総会「招集ご通知」をご参照ください。

私からは以上です。つづきまして、CEOのゴーンより、2012年度の見通しと、日産パワー88に基づく、今後の取り組みについて、ご説明させていただきます。

ゴーンCEO

2012年度の見通し
では今年度の見通しについてご説明いたします。
いくつかの大きな市場で経済不安が懸念されるものの、2012年度の世界の全体需要は前年比5.3%増の7,970万台と見込んでいます。
当社の販売台数は、前年比10.4%増の535万台と、前年に続き、過去最高となる見込みです。グローバル市場占有率は2011年度の6.4%から6.7%に伸ばす計画です。

以上の計画に基づき、2012年度の業績見通しを次のとおり発表しました。為替の前提は1米ドル82円、1ユーロ105円としています。

  • 連結売上高は10兆3000億円
  • 連結営業利益は7,000億円
  • 当期純利益は4,000億円

2012年度は、量販のグローバルカー3車種を刷新します。その第一弾である新型アルティマは、先月、米国のスマーナ工場で生産が始まりました。2012年度は、パスファインダー、シルフィ/セントラ、NV350キャラバン、そしてロングホイールベースのインフィニティMセダンを含め、10車種の新型車を投入する予定です。尚、日本で、今年度最初に投入したクルマは、新型シーマです。ここのステージにも展示してありますので、是非ご覧ください。

また、日産パワー88の期間中に商品化を計画している90にのぼる新たな先進技術の内、今年は15の新技術を市場に提案します。例えば、アラウンドビューモニターのカメラ画像処理技術を採用した、マルチセンシングシステムです。また、次世代エクストロニックCVTも採用します。日産は今や、CVT技術の世界的なリーダーであり、この最新型は、現行CVTに対し、燃費を10%向上します。

2012年度は引き続き、新興市場での拡大を進めます。中国では自主ブランド、ヴェヌーシアの最初のモデルを4月に投入しました。ヴェヌーシアのモデルを投入することで、中国のエントリー・セグメントで初めて戦うことになります。

ラグジュアリ・ブランドについては、先月、インフィニティの新しいグローバル本社を香港に正式オープンしました。インフィニティの販売は伸びており、ますます重要性を増している日産の財産です。インフィニティのグローバル販売台数は前年の14万5,000台から2012年度は20万台に増やし、商品ラインアップを拡充していきます。将来的には50万台を達成し、ラグジュアリ市場で10%の市場占有率を獲得するのが狙いです。また、インフィニティは現在、45の市場で展開しておりますが、70にのぼる市場で販売する予定です。

日産パワー88では、ブランド・パワーとセールス・パワーを会社の重点領域に位置づけています。強いブランド力は、販売・マーケティングプロセスのあらゆる測定可能な領域に寄与します。2012年度は、オーバーオール・オピニオン、すなわちお客様の好意度の向上に特に力を入れていきます。

当社のこれまでの活動は世に認められつつあり、日産は世界最大のブランドコンサルティング会社であるインターブランド社による、2011年度ベスト・グローバル・ブランド・リストのトップ100社にランクインすると同時に、最もブランド価値が向上したブランドに選ばれました。今年は、日産史上初の試みとなるグローバル・ブランド・キャンペーンを実施します。本キャンペーンは主な国際空港で展開し、空港を利用される大勢の方々が、一貫した日産のメッセージを目にすることになります。

今、画面でご覧いただいているのは、日産GT-Rと「世界一速い男」のウサイン・ボルト選手の広告です。

このように、日産のストーリーを語る力、つまりはコトづくりを駆使して、今まで以上にお客様の心に訴える取り組みを進めています。これまで、日産は日本企業として、モノづくりの力を大事にして参りました。モノづくりに加えて、コトづくり通じて、つまり日産ブランドを伝える取り組みを強化することにより、お客さまとの間に、意義のある、長期的な関係を築いていきます。

セールス・パワーの向上については、成長著しい新興市場で、販売網を拡充し、より科学的な、地理的情報を利用したジオマーケティングという手法で、販売店舗の効率的な立地を図り、お客さまの利便性の向上に努めます。2012年度は、新たに750の販売店をオープンしますが、これは日産パワー88の期間中で最大の増加数となります。また、販売効率を示す店舗当りの販売台数も増やしていきます。

世界中のパートナーとの協力関係も、業界で最も持続的な効果を発揮しています。ルノーとのアライアンス、拡大するダイムラーとの戦略的協力関係、アショック・レイランド、三菱自動車、そして今回、資本参加を発表したアフトワズ等、幅広い協力関係を実現しています。多くのメーカーが、協力関係を結び始めた今、日産は既に長年に亘る良好なパートナーシップを維持し、成果を生み出し続けています。2011年暦年のルノー・日産アライアンスのグローバル販売台数は、アフトワズを含めて800万台を超え、今や世界トップ3の自動車グループの一つとなりました。

2012年度も大きな成果を生み出しています。

重要な成長市場である、ロシアでは、ルノー、アフトワズ、そして日産の3社で、40%の市場占有率の獲得を目指しています。2011年度は、ラダ・ブランドは20.4%、ルノーは6%、そして日産は5.6%で、3ブランド合計で32%の市場占有率を達成しました。先月、ルノー・日産アライアンスは、覚書を締結し、アフトワズ社との協力関係を強化しました。2012年度の後半には、現地生産のエントリーカー第一弾、アルメーラを発売します。

ダイムラーとは、ダイムラーの最新プラットフォームを採用する新たなインフィニティのエントリーカーの開発を進めています。また、米国デカードのエンジン工場の敷地内に、新工場を建設中です。同工場では、メルセデスベンツとインフィニティに搭載するエンジンを生産する予定です。

アショック・レイランドと共同開発したピックアップトラックのドストは、既に販売するインドの6つの州で当該セグメントをリードしており、小型商業車市場における日産のプレゼンスの拡大に寄与することを期待しています。

三菱自動車とは、日本市場における軽自動車のデザインとエンジニアリングを行う合弁会社を設立し、新型の軽自動車の開発を進めています。

CSR
環境・安全技術の取り組みに加え、ブルーシチズンシップでは、当社のCSR部門が中心となって進めている社会貢献活動も行っています。2011年度は、東日本大震災からの復興支援に力を入れました。

従業員、そしてビジネス・パートナーのご協力により、被災地の方々に支援の手を差し伸べることができました。具体例を申し上げます。

  • 世界中の従業員からの寄付と同額を会社が拠出する、従業員マッチング・ギフトプログラムの実施
  • 被災地に、四輪駆動車の寄贈と日産リーフの無償貸与
  • トラックの日産アトラスをベースとした移動図書館車両2台の寄贈。内1台は、本会場のマリン・ロビーにて展示
  • グローバル本社と日産テクニカルセンターの従業員ボランティアによる被災地の復旧・復興支援。

日産が事業を行う世界各地で、私どもは、人々の生活を豊かにすることを目指し、投資を続けています。詳しくは、本日受付で配布いたしました冊子、「ブルーシチズンシップ ストーリー」をご覧ください。

グローバル日産社長賞
東日本大震災では、日産従業員の思いやりだけでなく、日産の力が、従業員一人ひとりの意欲に支えられていることが改めて証明されました。毎年、株主総会では、特に目覚しい貢献を果たしてくれたグローバル日産社長賞の受賞者をご紹介しております。

今回のグローバル日産社長賞には、東日本大震災と、タイの洪水被害からの迅速な回復に尽力してくれた従業員の皆さんが選ばれました。機能をまたぎ、地域をまたぎ、また、会社をまたいだ、10にのぼる機能部署、5つの地域と関係会社が表彰されました。

では受賞者の一部をご紹介しましょう。受賞者の皆さん、起立をお願いします。

改めて、皆さんの力強い取り組みと大きな成果に心から感謝します。ありがとうございました。

配当政策とまとめ

今後の見通しと日産パワー88の取り組みについてご説明させていただきました。当社は今後も確かなフリーキャッシュフローを確保していく見込みです。以上を鑑み、2012年度の年間配当金は、前年比25%増の一株当り25円に増配する予定です。

2012年度に臨むにあたり、日産は更に成長を加速化する態勢が整っています。

ブランド力の向上と、商品・技術、そして生産能力増強のための大規模な投資をもってすれば、当社は日産パワー88を完遂し、それ以降も発展することができると確信しています。

日産の取締役会と経営会議である、エグゼクティブ・コミッティを代表しまして、皆様のご期待に応える、日産の将来像の実現に向かって、全力を尽くすことをお約束いたします。日産は、業界をリードするグローバル自動車メーカーとして進化を続け、持続可能なモビリティの責任ある推進役として、これからも取り組みを続けてまいります。今後とも、日産にご期待ください。

以 上