スピーチ


2013年2月8日

2012年度第3四半期決算報告
日産自動車株式会社
執行役員 田川 丈二

はじめに
近年重大な、且つ一部では歴史的な、経済上・政治上の複数の課題に直面してきたわけですが、当社は確かな財務実績を上げてきました。日産自動車は15四半期連続で黒字を確保しました。バランス・シートも健全です。欧州経済の低迷に影響を受け、昨年の日中関係は日本車各社の立場に影響を与え、我々は米国での新車の立ち上げや厳しい競争で課題に直面しました。こうした環境下、私どもは、難局と先行き不透明な中でも確実なかじ取りができることを証明しました。

しかしながら、一部の分野では、当初の予定を下回る実績に留まっています。未だ満足できる水準ではありません。当社は引き続き長期的な利益と市場占有率向上を目指す、2016年度までの中期経営計画 日産パワー88に取り組んでいきます。この日産パワー88の活動を通じて、職場を支えている従業員と規模・シナジー効果・柔軟性向上に取り組み、将来を見据えた技術・商品・プロセスへの投資が貢献してくることは間違いありません。

2012年度第3四半期連結財務実績
2012年度第3四半期までの連結売上高は6兆7,552億円となりました。連結営業利益は3,492億円で、売上高営業利益率は5.2%となりました。当期純利益は2,324億円、純利益率は3.4%となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローは2,823億円のマイナスとなったものの、自動車事業実質有利子負債は3,338億円のキャッシュポジションとなりました。

欧州全体のマイナス成長に加え、中国市場の成長の鈍化、更には日中関係の問題等、不利な条件が重なる中、第3四半期を終えました。

日産パワー88
先ほど申し上げましたようなマクロ経済の環境下、我々は未だ目標とする実績を挙げるに至っていません。しかしながら、目指す目標は明確で、積極的且つ包括的な戦略もそろっています。既に皆さんの多くは、中期経営計画の内容をご存じのため、詳細は割愛いたしますが、これまでの主な進捗状況をご説明いたします。

2012年度第3四半期事業報告
2012年度第3四半期の財務実績を詳しくご説明するにあたり、まずは最近の事業活動についてご報告いたします。第3四半期は、継続的な進歩と複数の戦略的な発表に加え、画期的な取組みが評価され、複数の商品が賞に輝いた3か月間でした。

受賞モデル
11月には日産ノートが、数ある競合モデルの中から、日本自動車研究者・ジャーナリスト会議による2013年RJCカー・オブ・ザ:イヤーに選ばれました。ご記憶の方もいらっしゃると思いますが、前年は日産リーフが受賞しました。

また、昨年末には、新型シルフィが中国主流自動車メディア連盟が主催する「カー・オブ・ザ・イヤー」を、自主ブランド ヴェヌーシアのR50が「最優秀経済車」を受賞しました。両車種は、中国の合弁会社 乗用車部門の東風日産で生産・販売しています。9月以降の厳しい市況にも拘わらず、新型シルフィの販売台数は12月には約12,000台に達し、Cセグメントで10%の市場占有率を獲得しました。

受賞モデルのほかにも、日産は今年度、数々の革新的な新型車を発売し、日本、中国、米国、タイ、インド、そしてインドネシアを含め、世界中で新車攻勢をかけています。

ゼロ・エミッション・リーダーシップ
ゼロ・エミッションの領域では、日産自動車は依然として、業界をリードしています。先日、日産リーフは累計販売台数5万台を達成しました。当社は引き続き、新技術の開発・展開と商品改良に取り組んでいきます。

11月には、国内で、日産リーフのマイナーチェンジを発表しました。このマイナーチェンジでは、航続距離を延長し、より手頃な価格に抑えるとともに、様々な改善と装備を加えています。米国では、先月、2013イヤーモデルの日産リーフの生産がテネシー州のスマーナ工場で始まりました。同工場では、他のガソリン車も混流生産しています。電気自動車を生産するための工程変更は限定的で、電気自動車固有の品質確認や技能員の教育・研修を追加しました。

インフィニティの勢い
プレミアム・ブランドを目指すインフィニティの勢いは増しています。インフィニティは世界中で急速に拡大しています。今年度はシンガポール、チリ、ドミニカ共和国、南アフリカ、そしてオーストラリアで販売を開始しました。2013年度には香港にも拡大します。また、11月に発表しましたように、2014年からはブラジルでセダンとクロス・オーバーを発売します。

11月には、F1世界選手権のコンストラクターズ・ワールド・チャンピオン三連覇を誇るインフィニティとレッドブル・レーシングが、昨年3月にはじまった協力関係を延長・強化する包括的なパートナーシップを発表しました。2013年シーズンからインフィニティはレッドブル・レーシングのテクニカル・パートナーとなり、冠スポンサーとして、チームは、インフィニティ・レッドブル・レーシングに名を改めます。

12月には、インフィニティのプレミアム・コンパクト・カー第一弾を、欧州で複数の賞に輝いた英国サンダーランド工場で生産すると発表しました。

更に、先月のデトロイト・モーターショーでは新たなスポーツセダンであるインフィニティQ50を披露しました。

タイのモノづくりの強化
生産の取組みは、将来の会社の成長を支える礎です。

11月には、総額110億バーツ、約290億円を投じ、タイに第二工場を建設すると発表しました。2014年8月に操業開始予定の新工場は、アセアン地域における当社の成長戦略を支え、既存工場の生産を補います。新工場の生産能力は年間75,000台から始め、いずれは最大15万台を確保します。2016年度までに、タイの生産能力は、既存工場と合わせ、年間37万台に拡大する計画です。

また、今週の前半には、タイの研究開発拠点である日産テクニカルセンター・サウスイーストアジアの拡充計画を発表しました。これにより、アセアン地域における当社の成長に拍車をかけます。増員を行い、設備を拡張することでアセアンのお客様のニーズと市場要件により的確にお応えし、引き続き競争力溢れる日産車をご提案していきます。

中国の状況
次に中国の状況について触れたいと思います。今年度、中国では複数の想定外の課題に直面しました。他の日系メーカーと同様に、日産自動車も、日中関係と反日デモの煽りを受けています。昨秋のデモのピーク時には、販売店舗の集客が大幅に落ち込んだものの、1月現在では、前年を上回る水準まで回復しています。当社の花都工場と鄭州工場も2直生産体制に戻りました。

2012年暦年の中国における当社の販売台数は118万1000台となり、11月に発表しました年度予測の通りに推移しました。1月単月の販売台数は11万5700台となり、前年同期比22.2%増となりました。

また、先月発表しましたように、中国の中・重型商用車事業部門を、合弁パートナーである東風汽車集団に譲渡することを決定しました。これにより、当社は経営資源をコア事業の乗用車・小型商用車に集中させ、売却益と資金を、コア事業の投資に割り当てることができます。

アライアンスと戦略的パートナーシップの進化
第3四半期の業績をご説明する前に、アライアンス戦略の状況をご報告いたします。

ルノー・日産アライアンスは引き続き、価値あるシナジー効果を生み出しており、投資活動、原価低減、そして効率性の極大化に寄与しています。当アライアンスは、2012年暦年に810万台という過去最高の販売台数を記録しました。これは世界で販売された新車10台の内1台に相当します。

12月には、新たな合弁会社を設立し、ロシア最大の自動車メーカーである、ラーダ・ブランドを展開するアフトワズ社と戦略的なパートナーシップを結びました。ロシア市場で、ルノー、日産、そしてラーダという3ブランドの成長を加速させることが狙いです。現在、ロシアで販売されている新車3台の内、1台はこのアライアンスの車です。ロシアは成長著しい市場であり、アフトワズと共に、当アライアンスは少なくとも40%の市場占有率を目指しています。

2週間前、日産、ダイムラー、そしてフォードは新たな協力関係を結びました。3社は、燃料電池車技術の商品化を加速させるための合意書に調印しました。共通の燃料電池車システムを共同開発することで、技術開発の投資を抑えることが狙いです。各社は投資を均等に負担します。本戦略により、設計の共通性を最大限に高め、台数効果を活かし、効率化を図り、最終的には、世界初の手頃な価格の量販燃料電池車を、早ければ2017年に発売する予定です。

2012年度第3四半期販売状況

では、ここから、2012年度第3四半期までの販売状況をご報告いたします。
まずはグローバル販売台数についてご説明した上で、地域別の販売状況をご報告いたします。

グローバル販売状況
2012年度第3四半期までのグローバル全体需要は前年比6%増の5,909万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比6%増の363万5000台に達しました。
では、地域別の販売状況をご説明します。

日本
日本国内の全体需要は前年比20.1%増の368万台となりました。当社の小売販売台数は前年から1%伸びたものの、市場占有率は2.2ポイント減の11.8%に留まりました。

中国
中国の全体需要は前年比5.5%増の1,330万台となりました。当社の販売台数は前年比4.5%増の94万7000台となりました。ティーダ、サニー、そしてキャシュカイが健闘し、販売に寄与しました。10月から12月までの3か月間の当社の販売台数は、日中間の諸島問題の影響を受け、前年から31.2%の減少でした。

北米
次に北米ですが、米国の全体需要は前年比13.4%増の1,102万台となりました。当社の販売は、前年比8.2%増の81万9000台に達しました。ローグとパスファインダーが大きく貢献しています。

一方、カナダの販売台数は前年比8%減の6万1000台に留まりました。メキシコでは、市場占有率24.5%と引き続き好調で、18万4000台の販売を記録しました。

欧州
欧州の全体需要は前年比6%減の1,297万台となりました。当社の販売台数は前年比6.7%減の47万9,000台に留まったものの、市場占有率3.7%を維持しました。最大のけん引役となったのは、ジュークとキャシュカイです。ロシアでは、販売台数を1.5%伸ばし、11万8,000台を達成したものの、市場占有率は5.1%に減少しました。

その他市場
アフリカ、中南米、アセアンなど、その他市場では、当社の販売台数は前年比22.1%増の70万9,000台となりました。アジアとオセアニアでは、前年比33.3%増の32万1,000台を達成しました。販売を伸ばしたのは、前年比96.3%増の96,500台を記録したタイ、前年比16.2%増の51,600台を実現したインドネシア、そして前年比77.2%増の3万500台を販売したインドです。

中南米では、販売を8.5%伸ばし、17万3,800台を達成しました。特に成長著しいのはブラジルで、前年比44%増の7万7,400台を販売しました。同時に、中東でも販売を26.3%増やし、13万2,100台を実現しました。

2012年度第3四半期連結財務実績
では2012年度第3四半期までの累計の財務実績をご説明いたします。

連結売上高は前年比568億円増の6兆7,552億円となりました。連結営業利益は3,492億円となり、売上高営業利益率は5.2%となりました。
当期純利益は2,324億円、純利益率は3.4%です。

営業利益の増減要因
第3四半期までの実績では、為替変動、原材料価格の上昇、そして販売費用の増加などによる減益が、購買コスト削減の増益を上回りました。2011年度第3四半期に対する営業利益の増減益要因を詳しくご説明いたします。

  • 130億円の為替変動による減益は、主としてロシア・ルーブルとブラジル・レアルによるものです。
  • エネルギー費と原材料価格の上昇は、162億円の減益要因となりました。
  • 購買コスト削減は1,411億円の増益要因です。
  • 台数・車種構成は87億円の増益要因となりました。
  • 販売費用の増加は651億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は450億円増加しました。
  • 生産コストは297億円増加しました。
  • 販売金融事業は68億円の減益要因となりました。
  • 一般管理費とサービス保証費の増加を含む、その他項目は、526億円の減益要因となりました。

自動車事業のキャッシュポジション
2012年度第3四半期末の自動車事業実質有利子負債は引き続きキャッシュポジションを維持し、3,338億円となりました。

2012年度通期の見通し(11月時点の通期予測を維持)
2012年度通期の利益の見通しは、11月の発表から変更はありません。米国では新型車の生産が軌道に乗り始め、勢いを取り戻しつつあり、今後はその他市場でも販売を回復していきます。投入した新型車がフルに貢献し、円高の修正とコストの徹底管理をはじめとするプラス要因が、価格競争、厳しい販売環境、中国におけるコストの増加、そして欧州市場の更なる落ち込み等、数々のマイナス要因を補っています。

日産パワー88
私どもは、2012年度通期の営業利益の見通しの達成に向けて取り組みを続けます。今年度のこれまでの業績は、中期計画で目標としたレベルに届いていませんが、日産は全社をあげて、直面する数々の課題を乗り越え、計画の実行に全力で取り組みます。

今後も引き続き、コストの効率化、フリーキャッシュフローの創出、健全なバランス・シートの確保、そして、想定外の課題に対する即応力の向上に努めて参ります。更に、新技術の開発、魅力あふれる新型車の投入、更なる市場の拡大、そして革新的なアライアンス活動にも力を尽くします。それぞれの分野で、当社のマネージメント層は、創意あふれる熱意と規律正しい財務管理を駆使し、結果を出していく所存です。

以 上