スピーチ


2012年11月6日

2012年度上期決算報告
日産自動車株式会社
最高執行責任者 志賀俊之

長引く円高、不安定なマクロ経済、更に欧州の厳しい状況が続く中、日産は2012年度上期も、確かな業績を上げることができました。

2012年度上期の連結売上高は、4兆5,468億円となり、前年から4.1%増加しました。連結営業利益は2,870億円、前年を7.3%下回りましたが、売上高営業利益率は6.3%に達しました。特に、第2四半期の3か月を見ると、営業利益は前年同期比で71億円の増益となっています。2012年度上半期の当期純利益は1,783億円、純利益率は3.9%となりました。自動車事業のフリーキャッシュフローは、主として2011年度末時点の低い在庫水準が通常のレベルに戻った結果、706億円のマイナスとなり、自動車事業実質有利子負債は4,420億円のキャッシュ・ポジションとなりました。

円高、欧州の債務危機、そして中国市場の伸びが鈍化する兆しがある中、当社は堅実な業績を維持しています。
当社の中国事業は、暦年ベースの会計期間を採用しているため、本決算では、本年1月から6月までの中国の業績が反映されています。従って、9月以降の中国の反日デモの影響は、下期の数字に現れる予定です。中国の生産活動は一時中断したものの、既に全工場で生産を再開しております。今年度の通期決算への影響は予想されますが、その影響を最小化すべく、合弁パートナーと力を合わせて、最善の努力をしているところです。

当社は全ての市場で積極的な新車攻勢を続けると同時に、成長著しい市場でのプレゼンスの拡大に努めています。また、数々の新技術の商品化を進めています。中期経営計画の日産パワー88は順調に推移しています。

2012年度上期の財務実績をご説明するにあたり、まずは最近の事業活動についてご報告いたします。

2012年度上期事業報告

日産の魅力的な商品ラインアップと、一貫した好業績が評価され、先月発表された2012年版インターブランドBest Global Brands 100のランキング結果で、当社は大きく躍進しました。昨年の90位から17ランク上昇し、世界で影響力のあるブランドとして、過去最高の73位にランクインしたのです。

これこそ、日産のパイオニア精神が認められた証です。当社のワクワクするクルマづくり、危機からの迅速な回復力、そして画期的なイノベーションを生み出し続ける革新力が評価されました。

2012年度第1四半期決算を発表した以降も、新車攻勢は加速しています。人気モデルの新型ノートは、国内で発売後、僅か2週間で、22,000台近くを受注しました。ホームマーケットである日本では、ノートのほかに、セレナS-ハイブリッド、新型ラティオ、第5世代となる新型シーマ、そして新型NV350キャラバンを投入しました。

一方、米国でも数々の新型車を発売しています。最量販車である新型アルティマはお客様から好評で、今やフル生産で対応しています。10月には新型セントラを発売しました。魅力溢れるデザインと、クラストップの燃費を兼ね備えた新型セントラは飛躍的な台数の伸びを期待しています。また先月下旬、軽量化し、空力と燃費を向上させたSUVの新型パスファインダーも発売しました。

更に、中国では、ロングホイールベースのインフィニティMとヴェヌーシア・モデル第一弾のD50を発売しました。暦年では下期にカウントされますが、スポーティなヴェヌーシアR50と小型セダンのシルフィも投入されました。日中関係の緊張は続いているものの、中国市場は引き続き、日産にとって重要な市場です。

成長著しい市場については、タイで新型シルフィを、そしてインドとインドネシアには7人乗りのMPV エヴァリアを発売しました。

また、新車攻勢にあわせて、次世代技術への投資も積極的に行っています。急な飛び出しなど、緊急に回避が必要になった際、自動ブレーキに加えて、自動操舵を行うことにより、衝突回避を支援する緊急操舵回避支援システムを開発しました。更に、世界で初めて、ハンドルの動きからドライバーの意図を読み取り、電気信号に置き換えてタイヤを操舵する次世代ステアリング技術を公開しました。この画期的な次世代ステアリング技術は、来年、インフィニティの一部の車種に採用する予定です。

これら新技術は、日産パワー88の中核を成す、持続可能なモビリティ社会の実現を目指した取り組みの一環です。ゼロエミッション車、電気自動車では、数々の賞に輝いた日産リーフにより、技術的なリーダーシップを確立しています。加えて、ピュアドライブ技術であるハイブリッド化や燃費を向上させたガソリン車を含め、包括的な取り組みを続けています。8月にはセレナのSハイブリッドを発売しました。エンジンの小型化、車体の軽量化、そして小型車ノートに搭載しているスーパーチャージャーをはじめとする新技術を採用し、燃費の向上を図っています。

日産は引き続き、新商品と新技術の開発に力を尽くします。9月のパリ・モーターショーでは、水素燃料電池を搭載したコンセプトカー テラを披露しました。

9月と10月は、中国の反日デモの影響を受けました。デモがピークに達した9月の数日間は店舗の来場が大きく落ち込み、販売に影響を与えました。10月の当社の販売台数は64,300台、前年比40.7%減でした。最近は徐々に回復の兆しが見え、販売店へのお客さまの来場者数も、戻りつつあります。

現在は、慎重に状況を見極め、可及的速やかな事業の正常化に向けて、全力を尽くしています。

ルノー・日産アライアンスは、引き続き、大きなシナジー効果を生み出しています。例えば、今年の前半には、韓国のルノー・三星の工場で、次世代のニッサン ローグを生産すると発表しました。また、9月には、ダイムラーとの協力関係の拡大を発表しました。ルノー・日産アライアンスとダイムラーは、小型の4気筒直噴ガソリン・ターボ・エンジンを共同開発します。本エンジンは、2016年に日産、ルノー、そしてダイムラーのモデルに採用される予定です。更に、日産は、ダイムラーの最新技術を用いた、オートマチック・トランスミッションを生産し、2016年からニッサン車とインフィニティ車に順次搭載されます。当社の子会社であるジャトコが、同トランスミッションをメキシコでライセンス生産する計画です。

以上の取り組みは、日産の中長期的な発展を支える土台となります。では、ここから、2012年度上期の販売状況をご報告いたします。

2012年度上期販売状況

2012年度上期のグローバル全体需要は前年比7.4%増の4,010万台となりました。当社のグローバル販売台数は、前年比11.3%増の247万6千台に達しました。

では、地域別の販売状況をご説明します。

日本国内の販売台数は、前年比7.5%増の30万4千台となりました。当社の新商品の投入タイミングと、震災により供給制約を受けたマーケットが立ち直ったことにより、当社の市場占有率は低下しました。一方、セレナとノートをはじめとする主力商品の販売は好調で、新型ノートは発売後、9月と10月連続して、登録車販売ランキング3位を獲得しました。

中国の1月から6月までの当社の販売台数は、全体需要が鈍化する中、前年比14%増の67万8千台となり、市場占有率は前年比0.6ポイント増の7.5%となりました。ティーダとサニーを中心とする量販車が健闘しています。一方、7月から9月までの3ヶ月間は、日中関係の影響により、当社の販売は前年比13.8%減の26万9千台に留まりました。同期間の市場占有率は前年比1.5ポイント減の6.3%となりました。

次に北米ですが、米国における当社の販売は前年比11.3%増の54万4千台となりました。ローグとヴァーサが大きく貢献しています。しかしながら、力強く回復する全体需要の伸びには及ばず、当社の市場占有率は、前年比0.3ポイント減の7.3%に留まりました。

カナダでは販売台数は前年比7.4%減の44,000台に留まりましたが、メキシコでは、市場占有率24.5%と、首位の座を維持しており、販売は前年比8.3%増の11万5,000台となりました。

欧州は景気の悪化を受け、大半のメーカーにとって厳しい状況が続いています。しかしながら、当社の販売台数の減少は3.2%に留まり、32万8千台を確保しました。市場占有率は、主にキャシュカイとジュークの健闘で、僅かに上昇しました。ロシアでは、販売台数は前年比17.3%増の81,000台となり、市場占有率は0.2ポイント増の5.1%となりました。

アセアン、アフリカ、南米など、その他市場では、当社の販売台数は前年比26.4%増の46万3千台となりました。アジアとオセアニアの販売は前年比27.9%増の20万2千台に達しました。タイでは、前年比49.8%増の52,600台となり、インドネシアでは前年比29.2%増の35,400台となりました。インドにおける販売台数は前年比139.5%増の21,300台に到達し、中南米では前年比23.3%増の12万1,200台、ブラジルでも前年比95.7%増の57,300台を達成しました。また、中東では前年比34.9%増の87,600台を販売いたしました。

2012年度上期財務実績

では2012年度上期の財務実績をご説明いたします。

連結売上高は前年比1,794億円増の4兆5,468億円となりました。先ほどお話ししました商品力と好調な販売が功を奏し、円高による海外売上の圧迫を補い、増収となりました。

連結営業利益は2,870億円、当期純利益は1,783億円です。

営業利益は、為替変動と昨年、震災直後で使用が少なかった販売費等の各種費用が増加したことによる減益が、購買コスト削減と台数増による増益を上回った結果、2011年度上期を若干下回ることになりました。2011年度上期に対する営業利益の増減要因を詳しくご説明いたします。

  • 349億円の為替変動による減益は、主としてロシア・ルーブルとブラジル・レアルに対する円高によるものです。
  • エネルギー費と原材料価格の上昇は、167億円の減益要因となりました。
  • 購買コストの削減は1000億円の増益要因です。
  • 台数・車種構成は896億円の増益要因となりました。
  • 販売費用の増加は738億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は389億円増加しました。
  • 販売金融事業は、51億円の減益となりました。
  • 生産コスト、サービス保証費、そして一般管理費を含むその他項目は429億円の減益要因です。

一方、表の下に記載していますように、第2四半期の営業利益は前年の1,593億円から1,664億円に改善し、増益となっています。

2012年度上期の自動車事業実質有利子負債は引き続き4,420億円のキャッシュ・ポジションを維持しています。年度当初の為替水準に置き換えれば、キャッシュ・ポジションは4,770億円となります。

2012年度通期見通し

継続する超円高、中国での反日運動の販売影響、欧州の厳しい経済環境を考慮し、2012年度の通期見通しを下方修正することを決定しました。中国と欧州の状況を鑑み、通期のグローバル販売台数を当初の535万台から508万台に見直しました。

既に、東京証券取引所に通期業績見通しの修正を届け出ました。2012年度下期の為替レートは1ドル80円と1ユーロ103円を前提としています。

  • 連結売上高は9兆8,150億円。
  • 連結営業利益は5,750億円。
  • 連結当期純利益は3,200億円。
  • 設備投資は5,200億円。
  • 研究開発費は4,670億円。

次に、通期の連結営業利益の見通しの差異につきご説明いたします。

前年度の営業利益の実績に対しては、為替変動による減益があるものの、コスト削減などの増益により、292億円の増益を見込んでいます。

また、前回の営業利益の見通しに対しては、円高や、中国、欧州市場の影響を受け、1,250億円の減益となる見込みです。

通期の営業利益見通しは下方修正しましたが、2012年度下期は、2011年度下期に対して、519億円の大幅な増益となる見込みです。

まとめ

日産は厳しい環境の中、確かな業績を維持しています。私どもは引き続き、中・長期的な利益ある成長を目指し、歩を進めています。

これからも、新技術開発、魅力的な商品投入、更なる市場の拡大、そして革新的なアライアンスの活動に取り組み、創造性溢れる熱意と徹底した財務管理で結果を出していく所存です。

日産には直面する課題を乗り越える力と、同時に、将来に向けた成長に取り組む力があります。従って、年度当初に発表しました一株当り25円の通期配当に変更はありません。今月末に一株当り12円50銭の中間配当を実施する予定です。

日産は円高の影響と欧州と中国を中心とする厳しい環境にもひるむことなく、商品力を活かし、効果的なコスト管理の徹底で、事業を推進していきます。

以 上