スピーチ


2012年7月26日

2012年度第1四半期決算報告
日産自動車株式会社
執行役員 田川 丈二

厳しいマクロ経済環境にも拘わらず、日産は2012年度第1四半期も、一定の業績を残すことができました。しかしながら、長引く円高と、ユーロ圏の債務危機に起因する市場不安の影響は依然として続いています。

2012年度第1四半期の連結売上高は2兆1,364億円に達しましたが、連結営業利益は1,207億円、売上高営業利益率は5.6%と、前年同期比で減益になっています。のちほど詳細のご説明を致しますが、これは主に為替の問題とモデルチェンジサイクルのタイミングに起因する販売費の増加によるものです。
当期純利益は723億円、当期純利益率は3.4%となりました。自動車事業のフリー・キャッシュフローは393億円のマイナスとなったものの、5,092億円のキャッシュポジションとなりました。

中期経営計画 日産パワー88の2年目にあたる、2012年度も順調に推移しています。例えば、先日、格付け機関のムーディーズが、当社の信用格付けをA3(エースリー)に引き上げました。

事業報告

日産パワー88では、ブランド力の強化に取り組んでいます。今年から、日産初の試みとなる、グローバル・ブランド・キャンペーンを実施しており、既に主な国際空港でご覧になった方もいらっしゃるでしょう。本キャンペーンは、当社の革新的なクルマと技術を、ワクワクするイメージとブランド大使を駆使して表現しています。この取り組みは、新設した、グローバル・マーケティングコミュニケーション部門が手がける、ブランド・パワー向上に向けた活動の第一弾です。今後も同様に、革新的なキャンペーンを実施していく予定です。

今年4月には、ニューヨークで、同市の次世代タクシー「タクシー・オブ・トゥモロウ」に選ばれたニッサンNV200の試作車を公開しました。NV200ニューヨークタクシーは2013年からニューヨークの街に登場します。ニューヨークでは一日あたり、60万人がタクシーを利用します。その60万人のお客さま、ニッサンNV200がもたらす、これまでにない革新性と快適性を体感していただきます。

また、今年度に入って世界中で複数の新型車を発表しました。中国の北京モーターショーでは、新型シルフィと東風汽車との合弁事業による自主ブランド ヴェヌーシアの第一弾、D50を披露しました。また、中国市場のニーズに合わせて設計した、インフィニティの高級セダン第一弾、インフィニティMのロングホイールベースを発売しました。米国では向こう15ヶ月間で投入予定の新型車5車種の内の一つ、新型アルティマの販売を開始しました。日本では、新型シーマに続き、業務用およびプライベート両方に使える用途の広いNV350キャラバンを発売しました。更に、先週、新たなグローバル・ハッチバック 日産ノートを発表しました。日産ノートは、9月のはじめに日本国内の発売を控えております。

当社は世界中で生産能力を増強しています。中国では、襄陽(ジョウヨウ)工場に20億人民元(約250億円相当)を投じ、能力を拡大するとともに、中国市場向けのインフィニティ車を生産する予定です。これにより、襄陽工場の年間生産能力は現在の13万台から25万台に増加します。更に、50億人民元(約630億円相当)にのぼる投資を行い、大連に新工場を建設すると発表しました。これは、中国の北東部では日産初の工場となり、まずは年間15万台の生産能力を確保します。同工場は、2015年までに中国で200万台の販売台数を目指す上で重要な足がかりとなります。一方、ロシアでは2014年までにサンクトペテルブルグ工場の生産能力を倍増する計画です。米国では、テネシー州デカードで、新工場の鍬入れ式を行いました。新工場ではインフィニティとメルセデス・ベンツ用の4気筒ガソリンエンジンを生産します。以上に加えて、既に発表しましたように、メキシコとブラジルでも新工場を建設中です。

日産パワー88では、ゼロ・エミッションの取り組みを続けています。5月には、数々の賞に輝いた日産リーフに続く新たな電気自動車を発表しました。NV200ベースの電気自動車 e-NV200はバルセロナ工場にて、2013年から生産を開始します。ベース車のNV200も同工場で生産しており、e-NV200は私どものグローバルな商用車ラインアップに加わる重要且つ画期的なクルマです。5月には、日本国内で新たな電力供給システム「LEAF to Home」を発表しました。「LEAF to Home」は、日産リーフの大容量バッテリーに蓄えた電力を住宅に供給する、業界初の家庭用バックアップ電源です。本システムは、6月以降、国内の販売会社に展示し、効率的な電力マネージメントと電気自動車の魅力をご提案しています。国内で日産リーフにお乗りいただいているお客さまには、ご自宅に設備を設置する環境が整っている限り、どなたでも「LEAF to Home」をお使いいただけます。

ルノー・日産アライアンスは発展を続けています。5月には、ルノー・日産アライアンス全体で、ロシア市場をリードする自動車メーカー、アフトワズに7億5,000万ドル(約600億円相当)を出資すると発表しました。今年度の下期には、ロシアで現地生産する商品第一弾のエントリーカー、アルメーラを発売予定です。新型アルメーラはアフトワズのトリアッティ工場で生産されます。

以上、これまでの主な事業活動についてお話ししましたが、次に、2012年度第1四半期の販売実績についてご説明したいと思います。まずは、地域別の販売状況をご報告いたします。

2012年度第1四半期販売状況

2012年度第1四半期のグローバル全体需要は前年比6.5%増の2,037万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比14.6%増の121万台に達し、グローバル市場占有率は前年比0.4ポイント増の5.9%となりました。

では、地域別の販売状況をご説明します。

日本国内の全体需要は、政府のエコカー補助金と東日本大震災からの回復により、前年比62.6%増の126万台となりました。当社の販売台数は前年比19.5%増の14万1,000台となりました。2011年度、日産は他社よりいち早く回復を果たし、市場占有率を伸ばしました。今年度は他社も本格回復したのに加え、軽自動車への需要増加などもあり、当社の市場占有率は11.2%に留まりました。

中国の全体需要は前年比2.3%減の449万台となりました。一方、当社の販売台数は前年比12.2%増の33万4,000台に達しました。特に健闘が目覚ましかったのはティーダ、サニー、そしてキャシュカイです。4月から6月までの3ヵ月間も、日産の販売は好調で、前年から15.9%増加し、市場占有率は7.6%に達しました。

次に北米ですが、米国の全体需要は前年比16.3%増の380万台となりました。当社の販売は16.3%増の25万5,000台に達し、市場占有率は6.7%を維持しています。カナダでは、販売台数を2.8%伸ばし、26,000台となりました。メキシコでは、市場占有率24.9%と引き続き好調で、57,000台販売しました。

欧州の全体需要は前年比3.5%減の483万台となりました。当社の販売台数は全体需要の減少を下回る、1.7%減に留まり、16万7,000台となりました。その結果、市場占有率は前年比0.1ポイント増の3.5%となりました。最大のけん引役はキャシュカイとジュークです。特筆すべきはロシアで、当社の販売台数は前年比19.6%増の39,000台となり、市場占有率は4.9%に伸びました。

アセアン、アフリカ、中南米など、その他の市場では、当社の販売台数は前年比30.5%増の22万9,000台を記録しました。アジアとオセアニアにおける販売は前年比29.9%増の10万台に達しました。タイの販売台数は前年比44%増の24,100台となり、インドネシアでは、前年比45.6%増の16,900台に達しました。更に、インドでは前年比124%増の10,500台を販売しました。中南米では、36%増の63,500台となり、ブラジルでは133.6%増の30,700台を達成しました。

2012年度第1四半期連結財務実績

では2012年度第1四半期の連結財務実績をご説明いたします。売上高は前年比544億円増の2兆1,364億円となりました。台数増を中心とする増収が、為替変動による減収を相殺しました。

営業利益は1,207億円となり、売上高営業利益率は5.6%となりました。なお、為替レートが2011年度と同水準であったならば、営業利益は1,463億円、売上高営業利益率は6.6%となります。

また、当期純利益は723億円、売上高当期純利益率は3.4%です。

2011年度第1四半期に対する営業利益の増減要因を詳しくご説明します。

  • 為替変動は257億円の減益要因となりました。
  • 原材料価格とエネルギー費の上昇は186億円の減益要因となりました。
  • 購買コスト削減は540億円の増益要因です。
  • 台数・車種構成は534億円の増益要因となりました。
  • 販売費用は増加し、764億円の減益要因となりました。2011年度は東日本大震災を受け、広告宣伝費を抑制していましたが、今年度は正常化しました。また、昨年度は供給不足のため低いレベルにあった販売施策費は、在庫レベルの正常化に加え、販売台数が増加したことにより、上昇しました。
  • 研究開発費は188億円増加しました。
  • 生産コストの増加を含む、その他の項目は、24億円の増益要因となりました。

2012年度第1四半期の自動車事業実質有利子負債は引き続きキャッシュ・ポジションを維持し、5,092億円となりました。年度当初の為替水準に置き換えれば、キャッシュ・ポジションは5,324億円となります。

今後に向けて

第1四半期では、円高および米国を中心とする販売費の増加に加え、前年同期と比べて厳しさを増した価格競争など、困難な課題に直面しました。第1四半期の事業活動は前回発表しました通期見通しに沿った結果となりましたが、当社はこの現状に決して満足しているわけではありません。日産は今後、アルティマ、パスファインダー、セントラ、ノートをはじめとする新車を積極的に市場に導入していきます。これらの新車攻勢によって、適正な価格のもとに販売台数を伸ばし、さらなる利益を確保していきます。また同時に、徹底したコスト管理など、円高の影響を相殺するためのあらゆる活動を推進する予定です。当初想定した為替レートを前提とし、これらの活動により、通期の業績見通しを達成できると考えております。

以 上