スピーチ


2012年5月11日

2011年度通期決算報告
日産自動車株式会社
最高経営責任者 カルロス・ゴーン

2011年度、日産は過去最高の販売台数と成長を実現しました。複数の自然災害と為替変動による逆風にも拘わらず、当社は改めて、危機を乗り越える力を証明しました。難局に直面するたびに、日産は速やかに足並みを揃えて必要な手立てを講じ、事業の継続を図ってきました。

本日は、2011年度通期の財務実績と、2012年度の業績見通しについてご説明したいと思います。

2011年度通期の連結売上高は9兆4,090億円、連結営業利益は5,458億円、そして当期純利益は3,414億円となりました。また、自動車事業のフリーキャッシュフローは3,795億円となり、その結果2011年度末は6,198億円のキャッシュポジションとなりました。

不可抗力に満ちた不安定な経営環境のもと、日産はこの一年、あらゆる分野で飛躍的な進歩を遂げました。

昨年6月には、事業の発展、拡大を目指した包括的な事業計画、「日産パワー88」を発表しました。これは更なる成長に向けた6ヵ年の中期経営計画です。

日産パワー88の「パワー」とは、お客様の経験により焦点を当てた、ブランド・パワーとセールス・パワーの向上に向けた取り組みを指します。「88」は、グローバルな市場占有率8%の獲得と、売上高営業利益率8%を達成・維持する目標です。日産パワー88は6年間を対象期間にすることで、長期戦略のもと、商品・技術・地理的拡大のための投資を行い、2016年度以降も成果を生み出し続ける計画です。

2011年度の具体的な活動についてご説明しましょう。まずは、会社の要である、商品と技術についてお話ししたいと思います。

日産パワー88では、平均で6週間ごとに1車種、新型車を発売する計画です。ニッサン・ブランドとインフィニティ・ブランドの商品ラインアップを拡充するだけでなく、ダットサン・ブランドの復活を支える、新たな商品群も開発していきます。

2011年度は、グローバルで新型車5車種を投入しました。

  • 中国にはティーダ
  • 日本にはラフェスタハイウェイスター
  • 欧州では商用バン NV400の前輪駆動と後輪駆動の2タイプ
  • そして、米国にインフィニティJXです。

また、2011年度は日産リーフが世界最大の販売台数を誇る電気自動車となりました。日産リーフの販売台数は2011年度だけで23,000台、2010年末の発売以来の累計では30,000台に達しました。

2011年度は様々な領域で進歩を遂げました。生産能力の増強を目的とする投資を行うと同時に、ルノーとのアライアンスをはじめとする、益々拡大するパートナーとのネットワークを活用しています。

日産にとって最大の市場である中国では、花都第二工場で、ティーダ ハッチバックの生産が始まりました。これにより、花都工場は年間60万台の生産能力を誇る、グローバル日産最大の生産拠点となりました。これは、中国のパートナーである東風(とんぷう)との合弁事業の力の証です。

ブラジルとメキシコでは、レゼンデとアグアスカリエンテスで新工場建設の発表をいたしました。これにより、アメリカズ地域の年間生産能力は、昨年度の120万台から2014年度までに200万台に拡大します。

2012年の3月には、ダットサンの復活を宣言しました。2014年から、象徴的な同ブランドをインド、インドネシアそしてロシアに展開するべく、準備を進めています。ダットサン・ブランドのもと、これら成長著しい市場で急速に拡大する将来有望な新しいクラスの中流層のお客様に、モダンで価値のある、確かな商品をご提案していきます。

小型商用車事業は、2011年度に初めて、グローバル販売100万台超えを果たし、2016年度までに世界最大の小型商用車メーカーになる目標に向かって順調に歩を進めています。

世界中のパートナーとのネットワークも、業界で最も持続的な効果を発揮しています。ルノーとのアライアンス、拡大するダイムラーとの戦略的協力関係、アショック・レイランド、三菱自動車、そして今回、資本参加を発表したアフトワズ等、幅広い協力関係を実現しています。多くのメーカーが、協力関係を結びはじめた今、日産は既に長年に亘るウィン・ウィンの関係を維持していきました。2011年暦年のルノー・日産アライアンスのグローバル販売台数は、アフトワズを含めて800万台を超え、今や世界トップ3の自動車グループの一つとなりました。
2011年度も大きな成果を生み出しています。

ルノーとのアライアンスでは、17億ユーロ相当のシナジー効果を創出しました。ロシアでは、アフトワズとのパートナーシップの拡大の一環として、ルノーと日産両社あわせて4億ユーロの投資を行い、同社のトリアッティ工場にて、3ブランドで合計5車種を生産する予定です。

ダイムラーとは、ダイムラーの最新プラットフォームを採用する新たなインフィニティのエントリーカーを発表するとともに、米国のデカード工場で、メルセデスベンツとインフィニティに搭載するエンジンを生産すると公表しました。

アショック・レイランドとは、インド市場向けの手ごろな価格の小型ピックアップトラック、ドストを立ち上げました。発売から僅か6ヶ月で、ドストは販売するインドの6つの州で当該セグメントをリードしており、先日、LCV カーゴ・キャリア・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。ドストは今後の同市場における小型商用車事業の発展に寄与するでしょう。

三菱自動車とは、日本市場における軽自動車のデザイン、商品企画とエンジニアリングを行う合弁会社を設立しました。


2011年度の実績
では2011年度の業績についてご説明したいと思います。

2011年度のグローバル全体需要は、前年比4.2%増の7,570万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比15.8%増の484万5,000台に達し、過去最高を更新しました。当社はグローバル全体需要の増加率を上回る販売増を果たし、グローバルな市場占有率は前年比0.6ポイント増の6.4%に到達しました。

では地域別の販売状況をご説明します。

日本国内の全体需要は、前年から3.3%伸びる一方、当社の販売台数は前年比9.2%増の65万5,000台となりました。市場占有率は前年比0.8ポイント増の13.8%です。販売好調なセレナとジュークがシェア拡大に寄与し、日産リーフの販売台数は8,700台に達しました。

中国の全体需要は前年比3.3%増の1,720万台となりました。当社の販売台数は前年比21.9%増の124万7,000台となり、市場占有率は1.1ポイント増の7.3%となりました。特に健闘が目覚しかったのは、サニー、ティアナ、シルフィ、キャシュカイ、そしてティーダの5車種で、それぞれ10万台を超える販売を実現しました。2012年度に入ってもこの勢いは続いており、2012年1月から3月までの販売台数は12.2%伸び、市場占有率は7.5%に上昇しました。

次に北米ですが、米国の全体需要は前年比8.9%増の1,320万台となりました。当社の販売は前年比11.8%増の108万台となり、市場占有率は0.2ポイント増の8.2%に達しました。アルティマ、ローグ、そしてヴァーサが大きく貢献しました。日産リーフの販売も11,000台となり、拡販を支えました。一方、カナダにおける日産の販売台数は前年比5%増の87,500台となりました。メキシコでは、市場占有率を更に2.2ポイント伸ばし、25.3%を達成するとともに、前年比20.7%増の23万5,300台の販売を記録し、トップブランドの地位を維持しています。

ロシアを含む欧州の全体需要は前年から1.7%伸びる一方、当社の販売台数は前年比17.5%増の71万3,000台となり、市場占有率は3.9%に達しました。ロシアを除く欧州の販売台数は前年から9.4%増加し、55万2,000台となりました。ロシアにおける当社の販売台数は前年比57.3%増の16万1,000台を記録しました。

アフリカ、中南米、アセアンなど、その他市場における当社の販売台数は、前年比16.4%増の82万6,000台となりました。中南米における販売台数は前年から33.2%伸び、22万5,600台に到達しました。特にブラジルの販売台数は前年比94.8%増の、81,000台を記録しました。インドネシアでも急成長を果たし、販売台数は41.8%増の60,400台となる一方、インドでは前年の二倍以上に相当する31,300台を販売しました。

では2011年度の財務実績をご報告いたします。2011年度の連結売上高は前年から6,359億円増加し、9兆4090億円となりました。台数増による増収が、円高を中心とする為替変動におる減収を相殺しました。

2011年度の連結営業利益は5,458億円となり、売上高営業利益率は5.8%となりました。当期純利益は3,414億円となり、当期純利益率は3.6%となりました。為替変動、原材料価格、そして販売費による減益を、台数増と購買コストの削減による増益が相殺しました。

営業利益の増減要因をご説明しましょう。

  • 1,700億円にのぼる為替変動による減益は、主として米ドルに対する円高によるものです。
  • 原材料価格とエネルギー費の上昇は1,156億円の減益要因となりました。
  • 購買コストの削減は2,001億円の増益要因となりました。
  • 台数・車種構成は2,236億円の増益要因となりました。
  • 販売費の増加は、1,513億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は331億円増加しました。
  • 販売金融事業は498億円の増益要因となりました。
  • その他項目は48億円の増益要因となりました。

自動車事業実質有利子負債は、引き続きプラスを維持し、6,198億円のキャッシュ・ポジションとなりました。


2012年度の見通し
では今年度の見通しについてご説明いたします。2012年度の当社のグローバル販売台数は前年比10.4%増の535万台と、前年に続き、過去最高を見込んでいます。

グローバルな全体需要は前年比5.3%増の7,970万台を前提に、当社のグローバル市場占有率は2011年度の6.4%から6.7%に伸ばす計画です。

2012年度は、量販のグローバルカー3車種を刷新します。その第一弾である新型アルティマは、先月のニューヨークモーターショーで発表しました。2012年度はアルティマに加え、新型パスファインダー、シルフィ/セントラ、NV350キャラバンそしてロングホイールベースのインフィニティMセダンを含め、10車種の新型車を投入する予定です。

また、日産パワー88の期間中に商品化を計画している90にのぼる新たな先進技術の内、今年は15件を市場にご提案します。例えば、アラウンドビューモニターのカメラ画像処理技術を採用した、マルチセンシングシステムです。また、次世代エクストロニックCVTも採用します。日産は今や、CVT技術の世界的なリーダーであり、この最新型は、現行CVTに対し、燃費を10%向上します。

低燃費技術は、当社の環境・安全・CSR活動のベースとなる、ブルーシチズンシップの取り組みの一環です。日産パワー88では、先行研究開発予算の7割を、ゼロ・エミッションリーダーシップに関わる取り組みを含めた環境技術の開発に割り当てます。

2012年度は引き続き、新興市場での拡大を進めます。中国では自主ブランド、ヴェヌーシアのラインアップ第一弾の生産が始まりました。ヴェヌーシア・ブランドを投入することで、当社は400万台規模の中国のエントリーセグメントで初めて戦うことになります。

ロシアでは、パートナーのルノーとアフトワズの3社で合計40%の市場占有率獲得を目指しています。今月の初めに、基本覚書に署名し、アフトワズとの協力関係の強化を図っています。今年の後半には、アフトワズのトリアティ工場で生産する現地生産のエントリーカー第一弾、アルメーラを発売予定です。

ラグジュアリ・ブランドについては、今月後半に、インフィニティの新しいグローバル本社を香港で正式にオープンします。2012年度は、チリやオーストラリア等、インフィニティを複数の市場に新規投入し、2016年度までには70にのぼる市場で、販売台数50万台を目指します。

日産パワー88では、ブランド・パワーとセールス・パワーを会社の重点領域に位置づけています。

強いブランド力は、販売・マーケティングプロセスのあらゆる測定可能な領域 ― オーバーオールオピニオンからパーチェスインテンション、そして販売する全ての車から得られる収益に至るまで ― に寄与します。

2012年度は、オーバーオールオピニオンの向上に特に力を入れていきます。オーバーオール・オピニオンと市場シェアとに深い相関関係が見られることと、売上高の増大とあわせて評価することで、最もコスト効率の高い方法で、市場占有率の拡大を図ります。

当社のこれまでの活動は世に認められつつあり、日産は、世界最大のブランドコンサルティング会社であるインターブランド社による、2011年ベスト・グローバル・ブランド・リストのトップ100社にランクインすると同時に、最もブランド価値が向上したブランドに選ばれました。今年は、日産史上初の試みとなるグローバル・ブランド・キャンペーンを実施します。本キャンペーンは主な国際空港で展開し、大勢の空港の利用者が一貫したメッセージを目にすることになります。

セールス・パワーの向上については、成長著しい新興市場で、販売網を拡充し、より科学的な、地理的情報を利用したジオマーケティングという手法で、販売店舗の効率的な立地を図っていきます。2012年度は、新たに750の販売店をオープンしますが、これは日産パワー88の期間中で最大の増加数となります。また、販売効率を示す店舗当りの販売台数を改善させます。

以上の計画に基づき、2012年度の業績見通しを東京証券取引所に届出ました。為替の前提は1米ドル82円、1ユーロ105円としています。

  • 連結売上高は10.3兆円。
  • 連結営業利益は7,000億円。
  • 連結当期純利益は4,000億円。
  • 設備投資は5,500億円。
  • そして研究開発費は4,850億円です。

営業利益の増減要因
2012年度は50万台以上、販売を伸ばし、日産パワー88で掲げる2016年度までにグローバル市場占有率8%獲得に向かって、順調に歩みを進めていきます。この成長計画を実現するために必要な研究開発費と設備投資も確保し、会社の長期的な拡大を支えます。2011年度と2012年度の営業利益の増減要因は次の通りです。

  • 400億円の為替変動による増益は、主として米ドルとロシアルーブルによるものです。
  • 原材料価格とエネルギー費の上昇と、購買コスト削減は、ネットで1,800億円の増益要因となる見込みです。
  • 台数・車種構成はグローバル販売台数の増加に伴い、1,750億円の増益要因となる見込みです。
  • 販売費用の上昇は、台数増に伴い、1,250億円の減益要因となります。
  • 販売金融は、170億円の減益要因です。
  • 今後の成長へのコストおよびその他は988億円の減益要因となる見込みで、研究開発費の増加と、ブラジルとメキシコをはじめとする生産能力増強のための費用がその大部分を占めます。

以上の予測に基づき、フリーキャッシュフローは引き続きプラスを維持できる見込みであり、2012年度の年間配当金は、前年比25%増の一株当り25円に増配する予定です。

新年度を始めるにあたり、日産は更に成長を加速化する態勢が整っています。

ブランドの向上と、商品・技術、そして生産能力増強のための大規模な投資をもってすれば、当社は日産パワー88を完遂し、それ以降も発展することができるでしょう。
今後も日産にご期待ください。

以 上