2011年11月2日
2011年度上期決算報告
日産自動車株式会社
最高執行責任者 志賀 俊之
2011年度上期の事業運営と業績、そして販売は順調に推移しました。財務指標も、厳しいマクロ経済の環境と円高にも拘らず、確かな実績を残しました。
2011年度上期の連結売上高は、4兆3,674億円となりました。連結営業利益は3,097億円、売上高営業利益率は7.1%に達し、当期純利益は1,834億円、純利益率は4.2%となりました。自動車事業のフリー・キャッシュフローは1,604億円のプラスとなり、自動車事業実質有利子負債は3,204億円のキャッシュ・ポジションとなりました。
さらに上期は、本年10月までに一切の制約のない生産体制に戻すという目標を見事達成することができました。当社は、東日本大震災から力強い回復を遂げたのです。
日産には、素早く、足並みを揃えて、複数の経営課題を克服する力があります。現在、当社はタイの洪水被害に対応し、事業への影響を最小限に抑えるとともに、あらゆる手段を尽くして、被災地の支援・復旧にあたっています。
2011年度下期は、依然厳しい市場環境にありますが、そのような中でも当社は着実に販売を伸ばし、売上を確保してまいります。
また、円高による通期業績への影響は予想されるものの、日産は引き続き緊張感と勢いを維持して、確かな実績を残していきます。
2011年度上期の財務実績をご説明するにあたり、まずは最近の事業活動についてご報告いたします。
2011年度事業報告
日産は、2011年度上期も、成長への勢いを維持しており、複数の戦略を発表してきました。6月には新たな中期経営計画である日産パワー88を発表しました。この6ヵ年計画は、新規市場・新規セグメントにおける日産の成長を加速させる計画です。日産パワー88では、可能な限り早い段階で売上高営業利益率8%を達成し、それを維持しながら、2016年度末までにグローバルな市場占有率を8%に伸ばすという意欲的な目標を掲げています。
2011年度上期は、日産パワー88の達成を目指し、着実に歩み始めました。
まず、数ある新型車発表の中で、とりわけVプラットフォームを採用したセダンを各国で発表し、全ての市場で好評を博しました。中国では今年1月の発売以来、月平均で1万2,000台を超える販売を達成しています。一方、米国では、導入直後の9月にはセグメントトップに躍り出ました。また、タイでは、政府によるエコカー政策に適合する同国初のエコカーセダンに認定されました。
日産パワー88のもう一つの重要な側面は、持続可能なモビリティの普及です。私どもは、ご好評いただいている日産リーフで、電気自動車の新たなスタンダードを確立しました。ルノー・日産アライアンスにとって欠かせないゼロ・エミッションの取り組みは順調に進んでおり、日産リーフは今や業界で最も選ばれている電気自動車となりました。9月末現在の販売台数は累計1万5,000台を超える水準に達し、販売台数で世界ナンバーワンの電気自動車となっています。つい最近、日産リーフに搭載されたバッテリーから家庭に電力供給するLEAF to Homeのシステムも発表しました。本システムは、当社のゼロ・エミッションの取り組みにさらなる価値をもたらすでしょう。
円高による厳しい環境に対応するため、当社は通貨のバランスをとる様々な活動を進めています。その一環として、日産自動車九州株式会社を設立し、国内生産のコスト競争力の維持・向上を図っています。日産自動車九州は、地の利を活かし、中国や韓国をはじめとする他のアジア諸国との連携を深めていくことによって、部品調達と物流の効率化を進めていきます。
また、日産は引き続き、新興国での事業拡大に力を入れています。先日発表しましたブラジル リオデジャネイロ州での工場建設は、当社の成長市場における力強い取り組みの一例です。
2011年度上期は、これまでと同様に、ルノー・日産アライアンスに代表される複数のパートナーシップによる成果を生み出しました。最新のアライアンスの成果は、ルノーの開発による、最新技術の1.6リッターディーゼルエンジンです。このディーゼルエンジンは欧州向けの日産車で最も売れているキャシュカイに採用されています。また、インド製マイクラに搭載されているルノーが開発したディーゼルエンジンは、車両と同様に現地で生産する予定です。
インドのアショック・レイランド、ダイムラー、それに三菱自動車とのパートナーシップについても成果が現れています。アショック・レイランドとの合弁事業として、第2四半期に、プライスエントリーの商用車第1弾である、ドストの生産が始まりました。日産は、戦略的協力関係にあるダイムラーとも、エンジン供給に関する協力を拡大していきます。さらに、三菱自動車とは、合弁会社を通じて軽自動車の開発を進めています。
最後に、つい先日発表したニッサン・グリーンプログラム2016では、持続的な社会づくりを目指す戦略が新たなステージに入ったことを示しました。売上高で世界の上位50位内に入る日産は、社会と環境に対する責任を担っています。2016年度までの本計画は、日産パワー88を補完する、新たな中期環境行動計画となります。本計画では、低炭素化を目指し、ゼロ・エミッション車の普及を図るとともに、様々な環境技術を投入して業界をリードする低燃費や、再生可能エネルギーの活用を進めます。また、資源循環にも積極的に取り組んでいきます。
以上が、今年度これまでの主な事業活動となります。次に、今年度上期の実績についてご説明したいと思います。まずは地域別の販売状況をご報告いたします。
2011年度上期販売状況
2011年度上期のグローバル全体需要は前年比3.7%増の3,734万台となりました。当社のグローバル販売台数は前年比10.7%増の222万5,000台となりました。その結果、グローバルのマーケットシェアは、0.4ポイント上昇し、6%となりました。日産は各市場で、全体需要の増加を上回る販売増を果たしており、確かな足取りで成長しています。
では、地域別の販売台数を申し上げます。
日本国内の全体需要は、東日本大震災の影響で、前年比23.7%減の194万台に留まりました。当社は、迅速な対応により早期に生産を再開したことで、上期の販売台数の減少は14%に留まり、市場占有率は前年比1.7ポイント増の14.6%に達しました。好調な販売を続けるセレナは、同セグメントの販売ランキング1位を獲得し、市場占有率向上に寄与しました。
1月から6月までの中国の全体需要は前年比4.3%増の856万台となりました。当社の販売台数は18.2%増加し、59万5,000台を記録しました。特に健闘が目覚ましかったのは、サニー、キャシュカイ、そしてティーダです。7月から9月までの3ヵ月間の当社販売はさらに勢いを増し、前年比24.1%増の31万2,500台となり、市場占有率は1.2ポイント増の7.8%となりました。
次に北米ですが、米国の全体需要は前年比6.3%増の646万台となりました。ここでも当社の販売は9.7%増と市場の伸びを上回り、48万9,000台となりました。日産リーフは6,700台を販売し、成長に貢献しました。東日本大震災による生産台数の減少はあったものの、当社の市場占有率は前年比0.3ポイント増の7.6%となりました。カナダでは、販売台数を前年から0.2%増やし、4万7,300台となりました。一方、メキシコでは、市場占有率を25.2%まで伸ばし、10万5,800台を記録しました。
欧州の全体需要は前年比5.1%増の934万台となりました。当社の販売台数は、前年比22.6%増の33万9,000台となり、市場占有率は前年比0.5ポイント増の3.6%となりました。特に大きく貢献したのは、ジュークとキャシュカイです。欧州で特筆すべきはロシアで、当社の販売台数は前年比61.8%増の6万9,000台を記録し、市場占有率は4.9%に伸びました。
アセアン、アフリカ、南米など、その他の市場では、当社の販売台数は前年比13.9%増の36万6,000台となりました。特にブラジル、タイ、インドネシア、そしてインドでは二桁台の成長を果たし、将来への明るい展望を見せています。
2011年度上期財務実績
では2011年度上期の財務実績をご説明いたします。連結売上高は前年比483億円増の4兆3,674億円となりました。台数増を中心とする増収が、為替変動による減収を相殺しました。
連結営業利益は3,097億円となり、売上高営業利益率は7.1%となりました。
当期純利益は1,834億円、売上高当期純利益率は4.2%です。
営業利益は前年から微減となりましたが、これは、為替変動と原材料価格上昇による減益が、台数増と購買コスト削減による増益を上回ったためです。
2010年度上期に対する営業利益の増減要因を詳しくご説明いたします。
- 1,057億円の為替変動による減益は、主として米ドルに対する円高によるものです。仮に為替の状況が前年同期と同じであれば、売上高営業利益率は9%となっていました。
- エネルギー費と原材料価格の上昇は、733億円の減益要因となりました。
- 購買コスト削減は1,009億円の増益要因です。
- 台数・車種構成は291億円の増益要因となりました。
- 販売費用の増加は、388億円の減益要因となります。
- 研究開発費は78億円減少しました。
- 販売金融事業は310億円の増益要因となりました。
- サービス保証費の減少を含むその他の項目は238億円の増益要因です。
2011年度上期の自動車事業実質有利子負債は引き続きキャッシュ・ポジションを維持し、3,204億円に達しました。年度当初の為替水準に置き換えれば、キャッシュ・ポジションは4,080億円となります。
2011年度通期見通し
当社は、6月23日に2011年度通期予想を発表しました。2011年度上期の実績は、当社が世界中のお客さまのニーズにお応えする商品をご提供し、顕著な営業利益を生み出している証です。厳しい経済環境が続いているものの、2011年度通期の当社のグローバル販売台数は、6月時点の予想を3.3%上回る475万台を見込んでおります。
タイにおける洪水被害につきましては、代替部品を調達するなどの努力により、11月14日より部分的に生産再開の準備を進めています。今後、できるだけ早くフル生産の体制に戻せるよう、タイと日本の従業員が一丸となって様々な対策に取り組んでおります。現時点でタイ以外での生産への影響は出ておりませんが、引き続きそのリスクを最小化するよう、努力してまいります。
以上、販売台数の見通しと、今後の更なる事業の効率化を加味し、次の通り、東京証券取引所に通期業績予想の修正を届け出ました。2011年度下期の為替レートは1ドル80円と1ユーロ110円を前提としています。
- 連結売上高は9兆4,500億円。
- 連結営業利益は5,100億円。
- 連結当期純利益は2,900億円。
- 設備投資は4,100億円。
- 研究開発費は4,400億円。
当初の予想に対する営業利益の増減要因は次の通りです。
- 円高に起因する為替変動による減益が200億円。
- 台数構成による増益が450億円。
- 販売費の増加による減益は140億円。
- 販売金融事業による増益が300億円。
- その他の項目で90億円の増益。
6月に発表しましたように、今月、一株あたり10円の中間配当を実施する予定です。
まとめ
2011年度下期は様々なリスクをはらんでいますが、同時に多くの好機も想定されます。リスクは主として、不利な為替レート、タイで発生した洪水、そして、グローバル経済鈍化の兆しです。
しかしながら、世界中の従業員の力強い取り組み、当社の商品に対する旺盛な需要、そして日産パワー88で掲げる意欲的な計画の実現に向けた継続的な取り組みが、今後の日産の業績を支えてくれると信じています。
2011年度上期は確かな業績をあげることができました。成熟市場と新興市場ともに、多くの市場で日産は販売を伸ばしています。販売の増加を図る一方で、コスト管理の手も緩めていません。
日産の生産レベルは東日本大震災前の水準に戻りました。円高対策も積極的に進めています。リオデジャネイロの新工場をはじめ、当社は引き続き新興国に力を入れていきます。日産リーフは単一モデルの販売台数で世界ナンバーワンの電気自動車となりました。ゼロ・エミッションでリーダーを目指す取り組みは順調に進んでいます。日産はさらに、革新的なクルマづくりと技術開発を続けていきます。
グローバル経済の先行きは未だ不透明です。しかしながら、私どもはこれまでも危機に際し素早く対処し、金融危機も東日本大震災の影響も乗り越えてきました。
先行き不透明な環境とはいえ、グローバル市場は長期的には拡大すると見込んでおります。日産にはそのチャンスをつかむ態勢が整っています。
以 上