スピーチ


2011年2月9日

2010年度第3四半期決算報告

日産自動車株式会社
執行役員 田川 丈二

はじめに
日産は2010年度第3四半期までの9ヵ月間、事業計画の実行を徹底し、経営環境の好材料・悪材料に素早く対応してきました。今後も引き続き、効率的な事業運営を進めると同時に、あらゆる経費の徹底管理を行うことで、年度を通して確かな業績をあげていきます。

2010年度第3四半期の連結売上高は6兆4,218億円となり、前年を19.4%上回りました。連結営業利益は前年比96.1%増の4,489億円となりました。

当期純利益は2,884億円となり、前年同期の水準に比べ、5倍以上伸びました。

自動車事業のフリーキャッシュフローは2,125億円のプラスとなり、自動車事業実質有利子負債は429億円のキャッシュポジションとなりました。

以上の結果は、日産が着実に回復していることを裏付けています。

2010年度第3四半期事業報告
ビッグ・ニュースはなんといっても当社のゼロ・エミッション車第一号、日産リーフの発売です。

日産リーフの生産は、昨年10月に追浜工場で立ち上がりました。3月までに月産4,000台程度まで引き上げ、2010年度末には累計10,000台を生産する見込みです。

日本と米国では、既に昨年12月から納車が始まっています。日産リーフは日本産業デザイン振興会による2010年度グッドデザイン賞金賞、米国ワーズ社のテン・ベスト・エンジン賞、欧州カー・オブ・ザ・イヤー2011など、おかげさまで多くの栄誉ある賞を受賞しました。お客さまとメディアからも、良い反響をいただいており、当社のゼロ・エミッション戦略に自信を新たにしています。

第3四半期には、日産リーフに加えて国内でミニバンのセレナとフーガ ハイブリッド、そして北米では小型クロスオーバーのジュークを投入しました。

第3四半期販売状況
2010年度第3四半期までの9ヵ月間のグローバル全体需要は前年から12.9%増加しました。最も成長著しい市場は中国で、34.8%拡大しました。

当社のグローバル販売台数は累計で、前年比20.5%増の301万8,000台に達しました。

第3四半期の3ヵ月間では、当社のグローバル販売は100万8,000台となり、前年同期から14.3%伸びました。中国を始めとする新興国のみならず、欧米各国でも販売を伸ばしました。

地域別の販売状況をご説明します。第3四半期までの日本の全体需要は、前年比2.2%増の350万台でした。当社の販売台数は、日産エコシリーズや新型モデルのジューク、マーチ、エルグランドの堅調な販売に支えられ、前年比3.6%増の43万8,000台となりました。国内の市場占有率は微増の12.7%でした。

第3四半期の日本の全体需要は、9月の政府による補助金打ち切りの影響もありましたが、想定内の24%減となりました。当社の販売台数は10万9,800台となり、市場占有率は0.5ポイント改善しました。

第3四半期までの米国の全体需要は前年比9.9%増の900万台となり、当社の販売台数は14.3%増の68万台に達しました。第3四半期の当社の販売は前年同期比23.7%増の23万4,900台となりました。当社のトラック販売は40.3%増と飛躍的に伸び、82,100台となりました。また、インフィニティ・チャンネルの販売も35%増え、28,600台に達しました。当社の今年度累計の市場占有率は7.5%に上昇しました。

カナダにおける当社の販売は前年比4.1%増の65,000台となり、市場占有率は前年並みの5.3%でした。

メキシコにおける当社の販売は14万4,300台となり、前年を23.4%上回りました。市場占有率は前年比2ポイント増の22.9%でした。

第3四半期までの欧州の全体需要は前年比2.5%減の1,320万台となりましたが、日産の販売は前年比12.1%増の42万5,000台となりました。市場占有率は前年から0.4ポイント伸び、3.2%となりました。西ヨーロッパの当社の販売台数は前年比4.4%増の32万6,700台となる一方、ロシアにおける販売は大幅に拡大し、前年比65.5%増の72,900台となりました。先月発表しましたように、サンクトペテルブルグ工場を3直制にし、ロシアでの好調な販売とムラーノの生産開始に対応します。

中国市場も引き続き拡大しています。1月から9月までの中国の乗用車と小型商用車の全体需要は、前年比34.8%増の1,200万台に達しました。当社のプレゼンスも拡大しており、販売台数は39.4%増の75万5,000台に達しました。

第3四半期の中国における当社の販売は、好調なキャシュカイ、シルフィ、ティアナに支えられ、前年比20.4%増の25万1,900台となりました。1月から9月までの中国における当社の市場占有率は前年比0.2ポイント増の6.3%でした。

中国の第4四半期の当社販売はさらに勢いを増し、中国市場の成長率を上回る水準で増加しました。第4四半期の全体需要は24%増加する一方、当社の販売は25.5%伸び、26万8,600台に達しました。

2010年通期の中国における日産の販売は、35.5%増の102万4,000台と、ついに100万台越えを果たしました。

アジア、アフリカ、南米、中東など、その他市場では、当社の販売台数は前年比31.8%増の50万8,000台となりました。

多くの市場が大きく伸びており、例えば中南米では、日産の販売は前年比70.4%増の12万台に達しました。タイでは、前年を78.8%上回る5万台近くを販売し、インドネシアでは69.6%増の28,800台を達成しました。

財務実績
前年に比べ、当社の財務実績は売上の増大と継続的な業務効率化が功を奏し、改善しています。2010年度第3四半期も着実な業績を実現しました。

連結売上高は前年比19.4%増の6兆4,218億円となりました。為替変動の減収によって一部相殺されたものの、台数増が主な増収要因となりました。

連結営業利益は4,489億円となり、当期純利益は2,884億円となりました。

営業利益の増減要因をご説明します。

  • 1,103億円の為替変動による減益は、主として米ドルに対する円高によるものです。
  • 購買コスト削減はネットで、908億円の増益効果をもたらしました。内、エネルギー費と原材料価格の上昇は、446億円の減益要因となりました。
  • 台数・車種構成は、グローバル販売台数の増加により、3,447億円の増益要因となりました。
  • 販売・マーケティング費用は1,338億円の減益要因となりました。
  • 北米のリース期間終了車両の売却益は前年を下回り、193億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は246億円増加しました。
  • 販売金融事業は199億円の増益要因となりました。
  • 残る526億円の増益は、主として関係会社とアフター・セールス事業の利益改善とその他項目によるものです。

第3四半期末の自動車事業実質有利子負債は、前年に比べ飛躍的に改善し、429億円のキャッシュポジションとなりました。年度当初の為替水準に置き換えると、キャッシュ・ポジションは1,599億円となります。バランスシートの強化が第三者機関にも評価され、格付け機関のスタンダード・アンド・プアーズは、日産の長期信用格付けをトリプルBフラットからトリプルB+に、また格付投資情報センターはA-からシングルAフラットに引き上げました。

2010年度通期見通し
2010年度第3四半期までの実績は、日産が効率的な事業運営に成功している証です。今後も原材料価格の高騰、為替レートの変動、そして先行き不透明な経営環境というリスクに備え、慎重に舵取りを行います。

2010年度グローバル販売台数は、昨年11月の前回予想値から1.6%増の416万5,000台を見込んでいます。6万5,000台の増加は、主に中国の販売増を反映したものです。

これまでの結果と残る3ヵ月の見通しを鑑み、2010年度通期の業績予想を次の通り修正し、届出を行いました。第4四半期の為替は1米ドル80.9円、1ユーロ110.2円を前提としています。

  • 連結売上高は8兆8,000億円。
  • 連結営業利益は5,350億円。
  • 連結当期純利益は3,150億円。
  • 設備投資は前回予想の通り3,400億円。
  • 研究開発費も据え置きで4,250億円。

2010年度はこれまで新型車をグローバルで5車種発売しましたが、第4四半期にも5車種の投入を控えています。

中国では、サニーの名称で、低燃費なセダンを競争力ある価格で発売します。

今年の春には、米国の商用車市場に新規参入を果たします。当社がこれまで長きに亘って培ってきた商用車ビジネスの経験と高品質なニッサンNVシリーズで、米国でも競争力のある商品をご提案したいと考えております。

加えて、米国では、モデルチェンジしたミニバンのクエストと、クロスオーバー・コンバーチブルの新型ムラーノ クロス カブリオレを発売します。

国内では軽自動車の新型モコがまもなく登場します。

また2011年初旬には、ポルトガル、アイルランド、英国、そしてオランダで、お客さまへの日産リーフの納車が始まります。その他欧州諸国では夏に販売を開始する予定です。

日産は商品ラインアップを拡充し、様々なカテゴリーで幅広い選択肢を揃えて、世界中のお客さまのニーズにお応えすることをお約束します。

世界経済が回復基調に向かう中、全ての地域での利益ある成長に向けて、強力な商品ラインアップ、価値の高い技術、そして将来に向けた成長戦略を着実に実行に移し、日産は確かな成果を生み出し続けます。

日産は将来の成長に向けて準備を進めています。新しい年度がスタートした後には次期中期経営計画の詳細についてご説明いたします。

以 上