2010年5月12日
2009年度決算報告
日産自動車株式会社
取締役社長兼CEO カルロス ゴーン
取締役兼COO 志賀 俊之
<カルロス ゴーン>
はじめに
2009年度は極めて厳しい年となりました。今回のように、世界の自動車産業が、金融危機、世界的な不況、経営難に陥るサプライヤー、そして不安定な為替レートの脅威に同時に晒されたことは、歴史上初めてと言ってよいでしょう。
日産は、リカバリー・プランに基づき、業績回復に集中的に取り組んできました。当社は危機対応の体制を依然として継続しているものの、完全回復に向けて、順調に活動を進めています。
2009年度通期の連結売上高は7兆5,170億円に達し、連結営業利益は3,116億円、当期純利益は424億円となりました。
自動車事業のフリーキャッシュフローは3,755億円のプラスとなりました。一方、自動車事業実質有利子負債は297億円まで減少し、2008年度末の3,879億円から飛躍的に改善しました。
コア事業である自動車事業を支えたのは、グローバルに発売した新型車8車種です。これらの商品はお陰様でご好評いただいております。その結果、当社は、日本・欧州・米国で市場占有率を維持、または向上し、中国では大きく販売を伸ばしました。
日産は、金融危機と景気後退に対処しつつも、重点戦略を犠牲にすることはありません。
更に、ゼロ・エミッション社会の実現に向けた投資活動の手も緩めてはいません。今年の日産リーフ発売をもって、ルノー・日産アライアンスは世界で初めて、手頃な量販電気自動車を販売することになります。ご存知のように、日産リーフは、当アライアンスが今後投入予定の電気自動車8車種の第一弾モデルです。本活動を支えるのは、2012年に確保する50万台のバッテリーと電気自動車の生産能力ですが、これほど大規模な台数のバッテリーや電気自動車を生産するメーカーは他にありません。そして、市場では電気自動車を受け入れる準備が整っています。これまでに、米国では13万人のお客さまに日産リーフの予約希望者登録をしていただきました。12月から販売が開始されますが、米国及び日本では、予約受付開始以降、僅かひと月で1万3,000台の予約をいただいており、個人のお客さまがその多くを占めています。この台数は、すでに2010年度の生産能力を上回っております。
電気自動車に加え、私どもは、手頃なモビリティにも投資を行っています。現在、エントリー・セグメントは、グローバル全体需要6,400万台の25%を占めており、今後更に拡大する見込みです。当社は、最大の価値を、手頃な価格でご提案します。最新のVプラットフォームを採用するグローバルコンパクトカー・ラインアップはその第一弾です。同プラットフォームの展開が本格化した暁には、年間100万台の販売台数に達する見込みです。また、これら小型車に搭載される新型エンジンで、世界中のお客さまに燃費の新たな基準をご提供します。
日産は新興国で様々な取り組みを進めています。
- 中国では、2012年に花都、襄樊(じょはん)、そして鄭州工場で、それぞれ2直体制によって年間合計100万台以上の生産能力を確保します。その後もさらに市場の成長に合わせて拡張していきます。また、市場占有率を現在の6%から10%に出来るだけ早い時期に伸ばしていきたいと考えています。
- インド チェンナイでは、アライアンス工場が操業開始しました。現在は20万台の生産能力ですが、本格稼働時には40万台に拡大し、インドの国内市場で販売するとともに、欧州、アフリカ、中東等、100カ国以上に輸出も行う予定です。また、アショック・レイランドとの提携のもと、小型商用車の生産を2011年半ばに開始し、バジャージとはアライアンスの超低コスト車の開発を進めています。
- 2009年度に16.1%伸長したブラジル市場における日産の市場占有率は1%未満です。商品ラインアップの拡充と販売網の拡大で、中期的には5%の市場占有率を達成し、ルノー・日産アライアンス全体では10%以上を目指します。
- ロシアでは、2011年初旬に、サンクトペテルブルグ工場でエクストレイルとティアナに続き、ムラーノの生産が立ち上がります。現在、ロシアにおける日産の市場占有率は4%です。ルノーとアフトヴァズのプラットフォームと生産拠点を共用し、当社の生産能力の適正化を進めることで、ロシア市場が回復する中、ルノー、日産、アフトヴァズ3社合わせた市場占有率を現在の3分の1から40%を目標に伸ばしていきます。
- 中東については、湾岸諸国での販売網強化と大型SUVのフラッグシップモデルである新型パトロールの投入で攻勢をかけていきます。
- また、インドネシアをはじめとするBRICsに続く新興国の対応に備えて、準備を進めています。
2010年度も厳しい一年を想定しています。グローバル景気は回復しつつあるものの、未だ健全な状態とは言えません。大部分の西洋諸国の消費傾向は、日本のそれと同様に消費者心理の低迷を物語っています。また、原材料価格も、景気回復とともに高騰していくでしょう。
しかしながら最悪の時期は去りました。今年度、日産は完全に危機を脱し、2011年度には新たな中期経営計画を開始する予定です。私どもは正しい方向に進んでおり、明確な優先順位に基づいて、積極的に取り組みを進めています。
ではここから、2009年度の業績の振り返りと、2010年度の見通しについてご説明しましょう。
<志賀 俊之>
2009年度実績
私から2009年度の実績をご報告するにあたり、まずはグローバルな販売実績からご説明いたします。
2009年度のグローバル全需は2008年度の6,160万台から6,410万台に増加しました。これは主として各国政府による需要喚起策や、中国市場を中心とする新興市場の拡大によるものです。
日産のグローバル販売台数は前年比3%増の351万5千台となりました。当社の販売は、全体需要にほぼ連動した結果となり、市場が激しく変動する中、グローバルな市場占有率は5.5%となりました。2009年度の第4四半期のグローバル販売台数は、前年同期比29.7%増の101万台に達しました。第3四半期と同様に、中国の販売の伸びと、大部分の成熟市場の販売回復が台数増につながりました。
2009年度はグローバルで8車種の新型車を発売しました。欧州でピクソ、中東でパトロール、日本国内ではNV200バネット、フーガ、ルークス、そして米国ではインフィニティGコンバーチブルと370Zロードスター、そしてグローバル・コンパクトカー第一号の新型マーチがタイでデビューしました。
では地域別の販売実績をご紹介いたします。
日本国内の全体需要はエコカー減税、補助金に支えられ、前年を3.8%上回りました。当社の販売台数も前年比2.9%増の63万台となりました。市場占有率は前年並みの12.9%です。低燃費の日産エコシリーズの健闘が、販売を支えました。セレナは2年度連続でミニバンの販売ランキング一位を獲得し、エクストレイルもSUVで3年度連続首位を維持しています。
米国の全体需要は前年比9.3%減の1,080万台に留まりました。当社の販売台数は前年比3.8%減の82万4,000台となり、市場占有率は0.4ポイント増の7.6%となりました。第4四半期の米国における販売台数は30.6%増加し、市場占有率は過去最高の9%に到達しました。好調なヴァーサとアルティマが、シェア向上の牽引役を果たしました。
欧州は全体需要が前年から6.4%減少する中、当社の販売は51万7,000台で、減少を2.4%にとどめ、市場占有率は2.8%と増加に転じました。各国政府の買い替え助成に支えられ、西ヨーロッパにおける当社の販売台数は前年から24.5%伸びましたが、60.6%減少したロシアの販売落ち込みで相殺されました。欧州の小型商用車セグメントでは、未だ厳しい状況が続いているものの、小型バンのNV200がインターナショナル・バン・オブ・ザ・イヤー2010に選ばれました。
中国における当社の販売台数は前年比38.7%増の75万6,000台に達しました。一方、市場占有率は、市場の伸びに供給が追いつかなかったため、前年比0.4ポイント減の6%に留まっています。2009年度第4四半期の中国の販売台数は前年比48.1%増の21万4,000台となりました。これはシルフィ、ティアナ、リヴィナの健闘が貢献したものです。2010年度第1四半期の販売は引き続き伸びており、前年比68.2%増の24万3,200台に達しています。
次にその他市場の販売状況です。タイにおける当社の販売台数は前年比24.2%増の3万4,600台となり、新型マーチが「もっとも環境にやさしいクルマ」部門で2010年のカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれました。中東における当社の販売台数は前年比19.7%減の17万9,100台に留まりました。オーストラリアにおける販売台数は前年比1.2%減の5万5,600台となりました。
2009年度財務実績
では、2009年度財務実績をご説明いたします。
キャッシュの確保と利益改善に向けたリカバリー・プランが、2009年度の財務実績を支えました。
連結売上高は前年比10.9%減の7兆5,170億円となりましたが、これは円高の影響が、台数増による増収を相殺したことによるものです
連結営業利益は前年度の1,379億円の損失から、3,116億円の黒字に転じました。当期純利益は2008年度の2,337億円の損失から424億円の黒字に改善しました。
それでは営業利益の増減要因をご説明いたします。
- 1,625億円にのぼる為替変動による減益は、ほぼ全ての通貨に対して円高が進んだことによるものです。通貨別には、主に米ドルが860億円、ロシアルーブルが280億円、そしてカナダドルが140億円の減益要因となりました。
- 購買コストの削減は2,154億円の増益要因となりました。これには、原材料価格とエネルギー費の減少による810億円の増益が含まれています。現在、原材料価格は急騰しているものの、2009年度については増益要因となりました。
- 台数・車種構成はグローバル販売台数が増加した結果、269億円の増益要因となりました。2009年度第4四半期は殆どの市場で台数が回復した結果、1,531億円の増益要因となりました。
- 販売・マーケティング費用は宣伝費等の固定費削減で、271億円の増益要因となりました。一方、欧州では厳しい市場に対応するため、販売奨励金が増加しました。
- 北米のリース車両残存価値リスクに対する引当金は1,417億円の増益要因となり、中古車価格の改善によるリース期間終了車両の売却益も寄与しました。
- 研究開発費は645億円減少しました。
- 販売金融事業は501億円の増益要因となりました。これは主として各国で資金調達コストが改善するとともに、貸倒引当金が前年度に比べ、減少したためです。
- 残る863億円の増益要因は、生産コスト、一般管理費等の固定費の削減と、ジヤトコをはじめとする関係会社の利益改善によるものです。
なお、2009年度第4四半期のグローバル生産台数は95万1,000台に達しました。日産は柔軟な態勢で、需要の回復に機敏に対応し、生産を調整しています。
また、在庫管理を徹底した結果、2009年度末の新車の在庫は低水準の47万台に留まっています。私どもは引き続き厳格な在庫管理に取り組み、フリーキャッシュフローへの影響を最小限に抑えます。
2010年度の見通し
では今年度の見通しについてご説明いたします。
2010年度はグローバルな全体需要6,600万台を前提として、当社のグローバル販売台数は前年比8%増の380万台と過去最高を見込んでいます。グローバル市場占有率は5.8%となります。
また、グローバル生産台数は375万台を計画しています。
2010年度はグローバルで10車種の新型車を発売し、各地域に10を越える新車を投入します。
- 日本にはジューク、エルグランド、新型ミニバンと新型の軽自動車を投入します。
- 米国に続いて湾岸諸国やロシアにインフィニティQX
- 米国には商用バンのNVシリーズとコンバーチブル・クロスオーバー。米国とカナダでは新型クエストを発売します。
- そしてゼロ・エミッション車、日産リーフがいよいよ米国、日本、欧州に登場します。
- さらに、グローバル・コンパクト・カーシリーズ第二弾の手頃な価格のセダンも投入予定です。
また、2010年度には15件を超える新技術を商品化します。
ゼロ・エミッションとピュア・ドライブは日産の環境技術を支える二つの重要な柱です。
当社のゼロ・エミッション技術は、本年12月に発売予定の電気自動車「日産リーフ」によってその真価が問われることになります。
同時に、電気自動車以外の従来の内燃機関搭載車両にも、低炭素、低排出ガス技術の総称であるピュア・ドライブの適用に注力します。日産独自のハイブリッドシステムや、ルノーと共同開発したクリーンディーゼルの技術は、いずれも画期的な燃費を実現します。これ以外にも、更に多くの商品に順次、低排出技術を搭載していきます。例えば、小型車を皮切りに、アイドルストップ機能の適用を拡大します。
このように、数々の革新技術と商品を投入することで、2010年度は「技術の日産」を強く印象付ける年になるでしょう。
どの年にも、リスクと好機はつきものです。2010年度のリスクは長引く円高、原材料価格の高騰、先行き不透明な世界市場、そして不安定な欧州情勢が挙げられます。一方、好機は為替レートが想定より改善すること、新興国での販売拡大、アライアンス・パートナーであるルノーとのシナジー創出の加速化、そしてダイムラーとのさらなる戦略的協力です。
以上の見通しに基づいて、2010年度の業績予測を東京証券取引所に届出を行いました。為替予測は1米ドル90円、1ユーロ120円を前提としています。2010年度の予測は次の通りです。
- 連結売上高は8兆2,000億円
- 連結営業利益は3,500億円
- 連結当期純利益は1,500億円
- 設備投資は3,600億円
- 研究開発費は4,300億円
- フリーキャッシュフローはプラスになり、
- 2010年度末には、自動車事業実質有利子負債をゼロにする見込みです。
営業利益の増減要因
先ほど申し上げましたように、2010年度は依然として厳しい経営環境が続くと予想しています。しかしながら、連結営業利益は、2009年度の3,116億円を384億円上回る3,500億円を見込んでいます。これには複数の要因を加味しています。
- 為替レートは300億円の減益要因となる見込みで、その大部分を占めるのは米ドルです。
- 北米におけるリース車両残存価値リスクに対する引当金は400億円の減益要因となる見込みです。これは主として、2009年度には、中古車価格の上昇によるリース期間終了車両の売却益が計上されていたためです。
- 購買コストの削減は600億円の増益要因となります。これには、原材料価格とエネルギー費の高騰が含まれます。
- 台数・車種構成はグローバル販売台数の拡大によって、2,700億円の増益要因となります。
- 販売・マーケティング費用は、宣伝費等の固定費が従来の水準に戻り、台数増に伴う販売奨励金の増加で、1,400億円の減益要因となります。
- 研究開発費は450億円増加する見込みです。
- 残る366億円の減益要因は、主に生産コストの増加と労務費が一部危機前の水準に戻ることによるものです。
リカバリー活動の方向性
2009年度は当初の予想を上回る業績を実現したものの、市場は依然として不安定な状態が続いています。日産は全社をあげて、リカバリー・プランの完遂に全力を注ぎます。リカバリー・プランは、売上の増大、コストの徹底管理、フリーキャッシュフローの創出という三本柱を中心とした取り組みです。それぞれ詳しくご説明しましょう。
一つ目は売上の増大です。
販売台数は、全体需要の変動等、外的要因に左右される面はあるものの、台数増に向けて様々な取り組みを加速します。当社は主要市場で、新型車10車種の発売をテコに、市場占有率向上に向けた具体策を進めていきます。具体例をいくつかご紹介いたします。
- 米国では、販売網の強化が、売上の拡大を支えています。
- 中国では、急速な需要の拡大に対応すべく、十分な供給確保に力を入れています。
- 欧州では、ベンチマーク調査で洗い出した改善点、実行計画、リソース配分、月次の進捗管理等、具体的なシェア・アップ計画を実行中です。活動の成果は2009年半ばから出はじめ、現在も改善し続けています。
また、毎月グローバルなカー・フローを注意深く確認し、あらゆる機会を捉えて対策を講じています。
新車販売に加え、アフターセールス、販売金融、OEMビジネス等、関連事業の拡大にも注力しています。2010年度は、特装・架装事業、部品事業ならびにサービス事業の強化、販売金融事業の地域拡大、そして、当社の技術的な強みを活かしたライセンスビジネス等、車両、パワートレイン、技術に関連した事業の展開にも取り組んでいきます。
二つ目はコストの徹底管理です。
モノづくり部門による原価低減活動は、2010年度もリカバリー・プランの重点領域となります。モノづくりの中枢である開発、購買、生産、サプライ・チェーン・マネージメント部門は引き続き、テクニカルな原価低減、部品仕様・種類の低減、材料使用量の見直しに関わる実行計画を中心に取り組んでいきます。原価低減と為替レートの変動に対応すべく、車両、部品、パワートレインのソーシングの変更及び部品の国産化を進めていきます。
モノづくり部門による原価低減活動に加えて、マーケティング費用、生産コスト、研究開発費、時間外手当、出張費、一般管理費等の費用の効率化にも努めています。危機対応で導入した複数の暫定措置は解除するものの、新たな基準に照らして経費管理を行います。つまり、一部の危機対応措置が全社的に新たな標準になるということです。
三つ目の柱はフリーキャシュフローの創出です。
2009年度は利益の改善と、在庫、売掛金、買掛金から成る運転資本の徹底管理が功を奏し、フリーキャッシュフローをプラスにするという目標を達成しました。
2010年度は販売台数増と、インドやタイからのソーシングの増加に伴い、運転資本はフリーキャッシュフローの悪化要因になる見込みです。しかしながら、当社は継続的な部品種類の削減等による在庫管理の徹底で、マイナスの影響を最小限に抑えます。更に、投資活動等、運転資本以外のフリー・キャッシュフローの構成要素の管理にも引き続き務めます。
以上、売上の増大、コストの徹底管理、そしてフリーキャッシュフローの創出という3本柱に重点的に取り組むことで、今年度、日産は完全回復を果たすことができるでしょう。
<カルロス ゴーン>
まとめ
本日ご説明しました戦略的な取り組みは、日産がグローバル企業として、持続可能な価値創造を果たすという長期的なビジョンだけでなく、株主価値を最大化するという私どもの約束の証でもあります。現在の経営状況と今年のリスクおよび好機を鑑みた上で、2010年度は、中間期に5円、期末に5円と、年間で10円の復配を実施する予定です。詳しい配当政策については、次期中期経営計画を発表する時点でご説明したいと思います。
日産の戦略の基礎は、発足から11年目になるルノー・日産アライアンスに準拠します。アライアンスは今後も価値創造と業績改善の武器であり続けます。アライアンス活動を専門とするルノー・日産B.V.のサポートのもと、2009年はアライアンス全体で1,800億円の目標に対し、2,280億円にのぼるシナジー効果を生み出し、両社のフリーキャッシュフローに大きく貢献しました。日産単独では、コストと設備投資の低減および回避を中心に、1,160億円のシナジー効果を享受しました。
2010年には、新たに1,200億円相当のシナジー効果を見込んでおります。前年からの繰り越し分を加えると、2010年は2,400億円以上のシナジー効果が両社のフリーキャッシュフローに寄与します。売上の増大とコスト・設備投資の低減・回避等の領域でシナジーを創出します。意思決定の早い段階で、アライアンス視点を入れることで、両社の将来計画により多くのシナジーの機会を織り込みます。
ダイムラーとの戦略的な協力関係においても、シナジー効果を追求していきます。ダイムラーとは、小型車、ダイムラーの4気筒ガソリン/ディーゼル・エンジン及び6気筒ディーゼル・エンジンをインフィニティに採用する等パワートレインの共用、小型商用車、電気自動車、バッテリーを含め、双方にとって利益となる様々な領域で協業を進めます。ダイムラーとの協力で、正味現在価値に換算して20億ユーロ以上のシナジー効果をアライアンス全体で見込んでいます。
ルノー・日産アライアンスは自動車業界で有効なビジネス・モデルを確立しました。大規模且つ複雑な組織体系でも、それぞれのアイデンティティと自主性を維持しつつ、規模を活かして協業することに成功しています。当アライアンスは、戦略的なパートナーシップを通じて、各社が単独では成し得なかった成果を生み出しています。ルノー、そして新たに加わったダイムラーとの協力が、日産の本格回復に寄与し、今後の成長を支えるでしょう。
この新たな時代に、企業として持続的な成長を果たすためには、手頃なモビリティのニーズに応えると同時に、環境問題を認識し、対応することが求められています。
私は1年前、日産は危機に対処する術を心得ていると申し上げました。本日は私どものこれまでの進歩の過程と、今後の方向性をご確認いただきました。1999年の日産リバイバルおよび2009年のリカバリー活動の教訓を、今後もグローバル事業の運営に活かしていきます。私どもは、今回の危機の経験を経て、競争力を向上し、より強くなります。
今後どのような困難にあっても、常にベストを尽くすことを、お客さまとステークホルダーの皆さまにお約束します。
以 上