スピーチ


2010年2月9日

2009年度第3四半期決算報告

日産自動車株式会社
取締役兼COO 志賀俊之

はじめに
本日は2009年度第3四半期の実績と2009年度通期業績見通しの上方修正についてご説明いたします。

2009年度第3四半期までの9ヵ月間の売上高は5兆3,796億円と、前年に対して19.5%減となりました。営業利益は前年比147.6%増の2,289億円に改善しました。
当期純利益は前年同期比25%増の540億円でした。
自動車事業のフリーキャッシュフローは2,263億円のプラスとなりました。

グローバルな金融・経済危機を受け、当社が取り組んできた業績改善策、リカバリー・プランが功を奏し、実施してきた諸施策が効果を発揮しています。しかしながら、これまでの改善実績は心強いものの、グローバル経済の先行きは未だ不透明であり、成熟市場の大半が減少している中、全てが元に戻ったと宣言するには時期尚早と考えております。私どもは警戒を怠らず、慎重に対応していきます。

2009年度第3四半期販売状況
ではこの9ヵ月間の販売実績をご報告いたします。

2009年度第3四半期までのグローバル販売台数は、累計で250万5千台となり、前年比では依然4.8%減でしたが、第3四半期は88万2千台を販売し、前年比20.6%増に達しました。牽引力となった中国の販売は前第3四半期から71.6%伸び、ほとんどの成熟市場の販売も回復しつつあります。

2009年度はこれまで、グローバルで6車種の新型車を発売しました。第3四半期には、日本国内にラグジュアリ・セダンのフーガと軽自動車ルークス、米国に370Zロードスターを投入しました。

では地域別の販売実績をご紹介します。

第3四半期までの日本国内の全体需要は前年比2.6%減の340万台となりました。当社の販売台数は前年比3%減の42万3千台に留まりました。第3四半期の当社販売は前年比16.7%増の13万8,100台となり、セレナ、エクストレイル、ティーダ、ノートが大きく貢献しました。セレナが3年連続でミニバン販売ランキング1位に、エクストレイルが2年連続でSUV販売ランキング1位にそれぞれ輝きました。当社の市場占有率は前年並みの12.5%でした。

米国の全体需要は前年比14.9%減の820万台となり、当社の販売台数は前年比12.7%減の59万5,000台となりました。第3四半期の当社販売は前年比14.6%増の18万9,800台となり、マキシマ、ヴァーサ、セントラ、そしてトラックラインアップが貢献しています。9ヵ月累計の当社の市場占有率は前年並みの7.2%でした。

メキシコにおける当社の販売は前年比24.5%減の11万7,000台となったものの、2009年暦年の市場占有率は20.9%となり、トップシェアを再び獲得しました。

欧州の全体需要は9.8%減の1,400万台となりました。当社の販売台数は前年比7.6%減の38万5,000台でした。各国政府による新車買い替えの助成制度が追い風となり、西ヨーロッパにおける当社の販売台数は9ヵ月累計で、前年から28.4%伸び、特に第3四半期は73.1%増と急速に回復しました。しかしながら、ロシアにおける販売は前年から62%落ち込み、前年の11万6,000台から僅か1年で4万4,000台に減少しました。9ヵ月累計の欧州での市場占有率は前年並みの2.7%を維持しています。

中国における当社の販売台数は前年比35.2%増の54万1,000台となりました。この内、ニッサン・ブランドとインフィニティ・ブランドの販売は47.2%増加し、39万1,000台となりました。1月から12月までの日産の販売は前年比38.7%増の75万5,500台となり、10月にはNT400キャブスターを発売しました。台数は伸ばしたものの、市場占有率は前年並みに留まりましたが、これは主に当社の主力セグメントが大きく伸張し、供給が需要に追いつかなかったこと、当社が参入していないセグメントが拡大したことによります。

アジア、アフリカ、南米、中東などのその他市場では、当社の販売台数は前年比20.4%減の38万台に留まりました。中東における9ヵ月累計の販売台数は前年比33.7%減の12万2,600台となったものの、第3四半期の減少率は21%に留まっています。オーストラリアの販売台数は前年比7.6%減の4万400台となりました。台数が拡大したのはタイで、第3四半期は前年から47.9%伸張し、9ヵ月累計でも11.3%増の25,100台となりました。

財務実績
次に2009年第3四半期までの9ヵ月累計の財務実績についてご説明します。
前年に対し、第3四半期には売上高が飛躍的に改善しましたが、リカバリー・プランでは引き続き支出を抑制しています。この取り組みが、今期の確かな業績を支えました。

売上高は前年比19.5%減の5兆3,796億円となりました。台数と車種構成で12%、為替レートで7%が、それぞれ減収に影響しました。

営業利益は2,289億円となりました。
当期純利益は540億円です。

それでは営業利益の増減要因をご説明いたします。

  • 1,683億円にのぼる為替変動による減益は、ほぼ全ての通貨に対して円高が進んだことによるものです。
  • 購買コスト削減は1,545億円の増益要因となりましたが、これには原材料価格とエネルギー費の下落による514億円の増益が含まれています。
  • 台数・車種構成はグローバル販売台数が減少した結果、1,262億円の減益要因となりましたが、第3四半期には大部分の市場で販売が回復し、1,280億円の増益要因に転じました。
  • 販売・マーケティング費は宣伝費等の固定費削減で、658億円の増益要因となりました。
  • 北米のリース車両残存価値リスクに対する引当金は1,065億円の増益要因となり、中古車価格の改善によるリース期間終了車両の売却益も寄与しました。
  • 研究開発費は599億円減少しました。
  • 残る442億円の増益要因は、主として製造費用や一般管理費等の固定費削減によるものです。

実行中のリカバリー・プランの効果は、生産台数と在庫台数に表れています。

第3四半期のグローバル生産台数は90万7,000台となり、2008年度半ばのグローバル危機前の水準に近づいています。日産は柔軟な態勢で、需要の回復に機敏に対応し、生産を調整しています。

また、徹底した在庫管理で、2009年12月末現在の新車の在庫は低水準の49万台に留まっています。私どもは引き続き厳格な在庫管理に取り組み、フリーキャッシュフローへの影響を最小限に抑えます。

2009年度の見通し
今後も年度末を見据えて、環境を見極め、警戒を怠りません。先ほど申し上げましたように、第3四半期が好調だったのは、台数増と経費節減に支えられた結果と言えます。しかしながら、第4四半期に状況は変わる見込みです。これまでリカバリー・プランの一環として研究開発費を削減してきましたが、今後は将来に備えて増やしていく予定です。加えて、今後、原材料価格の上昇影響も予想されます。

2009年度通期の当社のグローバル販売台数は前年比2%増の348万台を見込んでいます。通期の生産台数は前年比6.6%増の328万7,000台を計画しています。

以上の前提条件を鑑みて、2009年度通期の業績予測を次の通り修正しました。第4四半期の為替予測は1ドル87円、1ユーロ130円を前提としています。

  • 連結売上高は7兆4,000億円
  • 連結営業利益は2,900億円
  • 連結当期純利益は350億円
  • 研究開発費は3,950億円
  • 設備投資は3,000億円

2008年度と比較して、今年度の営業利益は4,279億円の改善を想定しています。昨年度のマイナス1,379億円から2,900億円の黒字に改善した要因は次の通りです。

  • 為替レートは1,850億円の減益要因となる見込みです。米ドルとロシアルーブルがその大部分を占めることになります。
  • グローバル販売台数の増加に伴う台数・車種構成の改善は200億円の増益要因となります。
  • 2,200億円の増益要因となる購買コスト削減。これには、原材料価格とエネルギー費の下落による増益分が含まれます。
  • 300億円の増益要因となる販売・マーケティングの固定費削減。しかしながら、第4四半期には前年同期に対し、増額する見込みです。
  • 北米のリース車両残存価値リスクに対する引当金は1,400億円の増益要因となりましたが、これは主に当社のリース車両の中古車価格が、引当金を計上した昨年当初の予想を上回ったことによるものです。しかしながら、2010年度は同様の増益は見込んでおりません。
  • 研究開発費は500億円減少しています。
  • 販売金融は450億円の増益要因です。
  • 残る1,079億円の増益要因は主として、一般管理費と製造費用の節減、及びジヤトコやカルソニックカンセイ等、関係会社の利益改善によるものです。

2009年度通期の営業利益は、11月に発表しました1,200億円を上回ると予想していますが、これにはいくつかの要因があります。

  • 150億円の増益要因となる為替レート。これは主に、下期1米ドル85円から88円になった円安による効果です。
  • 台数・車種構成は主要国における台数増によって1,000億円の増益要因となります。
  • 購買コスト削減も400億円の増益を見込んでいますが、これは世界中で増産が進んでいる結果、経営難のサプライヤーによる影響が当初の予想を下回っているためです。
  • 販売・マーケティング費削減による増益は予想を若干下回りますが、これは主に販売台数増の影響によるものです。
  • 北米のリース車両残存価値リスクに対する引当金は主として中古車価格の改善により、100億円の増益要因となります。
  • 販売金融は50億円改善する見込みです。
  • 一般管理費、製造費用等、その他項目は100億円の増益要因となります。

経営状況
日産は金融危機に立ち向かい、有効な対策で対処しています。私どもは今後も景気後退の中、市況を見極めた舵取りを行います。コストを徹底管理し、計画的に重要な戦略を実行に移しています。また、将来有望なセグメントや市場で戦う態勢を整えています。

ここで世界中の重要な市場で今後展開していく新型車と活動についてご説明いたします。

  • 明日、欧州でスポーティな小型クロスオーバー、新型ジュークをお披露目します。
  • 2月13日には中東で新型パトロールをご披露します。
  • 新型パトロールは今月、日産車体九州の新工場で生産が始まります。
  • 3月には、Vプラットフォームを採用したグローバルコンパクトカーの第一弾がタイで立ち上がります。

2010年度には、インド、チェンナイのルノー・日産アライアンス工場で本格生産が始まり、中国でもVプラットフォーム車の第一弾が立ち上がります。更に下期は、新型フーガに投入する日産独自のハイブリッド技術、日・米・欧で発売する電気自動車、日産リーフのゼロ・エミッション技術、日産の革新的な技術に焦点が当たることを期待しております。

日産には確かなグローバル商品戦略があります。Vプラットフォームのグローバルコンパクトカーの投入で、私どもは業界でも数少ないフルラインアップを揃えたメーカーとなります。日産は今後も成長市場や、現在ラインアップのない市場を含め、あらゆる主要セグメントで、魅力溢れる商品をお客さまにご提案していきます。

更に、日産リーフの登場で、当社のラインアップはこれまで以上に充実します。このブレークスルーとも言うべきゼロ・エミッション車は発売前にも拘らず、TIME誌の選ぶ最も優れた50の発明のひとつに選ばれただけでなく、Automotive Design & Production誌のカー・オブ・ザ・イヤー、MarketWatchのベスト・グリーン・カー・オブ・ザ・イヤーをはじめ、複数の賞や高いランキングを獲得しています。

ルノー・日産アライアンスは世界中でこれまでに40以上のパートナーシップを、持続可能なモビリティ社会の推進に積極的な政府や第三者機関と結んできました。
私どもはアライアンス・パートナーのルノーと共に、車両とバッテリーの生産工場建設に投資を行い、グローバルな量販を目指して取り組んでいます。

今やゼロ・エミッション・モビリティに向けた潮流が起こっています。今年いよいよ、スマートで手頃な価格の、ゼロ・エミッションのソリューションが登場し、環境保護に寄与すると共に、クルマに対する見方が大きく変わることになるでしょう。
ゼロ・エミッション技術のリーダーは日産である、と敢えて申し上げたいと思います。

まとめ
先行き不透明な環境下でも、私どもには確かな将来のビジョンがあります。2010年にはリカバリー・プランを完遂し、再び成長軌道に乗せたいと思いますが、注意は怠りません。短期的には、グローバル経済は依然として不安定です。原材料価格の高騰など、複数の外的要因が引き続き足かせとなるでしょう。私どもは消費者心理の回復と長期的な業績改善の兆しを見極めつつ、慎重に舵取りを行っていきます。

日産の中・長期的な見通しには自信があります。この自信を支えるのは、取り組むべき課題の明快な優先順位付け、ルノー・日産アライアンス、今後のゼロ・エミッション車投入に向けた取り組み、そして新興諸国におけるプレゼンスの強化です。景気が回復した暁には、日産は迅速に行動を起こす準備ができています。今後の日産にご期待ください。

以 上