スピーチ


2009年11月4日

2009年度上期決算報告

日産自動車株式会社
取締役兼COO 志賀俊之

はじめに
年度当初は、未曾有の金融危機に続く世界的な景気後退が拡大している最中にあり、市場・為替の変動等、各社は深刻な脅威に直面することが予想されていました。

厳しい環境下、当社の2009年度上期の実績は、回復基調であることを見せているものの、まだ完全とは言えません。

当社の業績は、中国の好調な販売や日・米・欧における自動車買い換え助成等、外的要因に後押しされた面もありますが、同時に社内のあらゆる部署の業績回復努力に支えられたもので、世界中の従業員がリカバリー・プランの遂行に向けて集中し、積極的に取り組んだ証しであります。

2009年度上期の当社の連結売上高は前年比30.5%、連結営業利益は前年比50.5%とそれぞれ減少しました。しかしながら、当社の業績は予測を上回る結果となりました。日産は正しい方向に進んでいると申し上げたいと思います。

2009年度販売状況
2009年度上期のグローバル需要は前年から9.3%減少しました。現在、成熟市場の大半が低迷しています。中国市場は大きく拡大しており、前年から22.5%増加しました。

2009年度上期の日産のグローバル販売台数は前年比14.6%減の162万3,000台となりました。上期には、欧州で街乗りのコンパクトカーPIXO、国内で小型商用車のNV200バネット、そして北米でG37コンバーチブルをそれぞれ発売しました。

国内の全体需要は前年比10%減の220万台に留まりました。当社の販売台数は前年比10.3%減の28万5,000台となりました。セレナやノート等のエコカー減税対象車、日産エコシリーズの健闘で、市場シェアは13.1%と前年並みを維持しました。

米国の販売台数は40万6,000台となり、21.9%落ち込んだ全体需要と同様に、21.4%落ち込みました。市場シェアは前年並みの7.2%です。低燃費車ラインアップのお陰で、多くの日産車が、連邦政府が導入した30億ドル相当の低燃費車の新車購入支援制度の対象となりました。事実日産車は、当該制度で購入されたクルマの8.7%を占めております。

欧州の全体需要は前年から14.7%減少しました。当社の販売台数は前年比18.5%減の24万9,000台となり、市場シェアは0.1ポイント下がりました。減少幅の大半は、前年の8万5,800台から64.2%減の3万700台まで落ち込んだロシアに起因しています。ロシアを除く欧州における当社の市場シェアは、前年の2.3%から2.5%と微増でした。西ヨーロッパにおける販売は、各国政府の買い換え助成に支えられ、第2四半期は前年比18%増と、上期全体で4.4%伸びました。

中国の全体需要は1月から6月にかけて22.5%増の560万台に達し、日産の販売台数は前年比19.3%増の33万2,000台となりました。この内、東風汽車の乗用車販売は前年比41.3%増の22万5,100台に伸びました。マイナーチェンジしたセダンのシルフィが当社の販売増に寄与しました。暦年ベースの第3四半期にかけて、中国の販売は飛躍的に伸びています。7月から9月にかけて、当社の販売は前年比71.6%増の20万9,200台に達しました。全体需要の拡大を受けて、10月には広州の花都工場を3直化しました。24万台の能力増強に向けた同工場の建設プロジェクトも順調に進んでおり、2012年に稼働する予定です。

アジア、アフリカ、南米、中東を含むその他市場では、販売台数は前年比28.5%減の23万8,000台に留まりました。インドやブラジル等、一部の市場で回復が見られましたが、残念なことに、これらの市場において当社のプレゼンスは未だに高くないため、販売への直接的な貢献は得られませんでした。一方、2008年度の販売に大きく貢献した中東は、景気が未だ回復途上にあり、2009年度上期は販売減となりました。

2009年度上期財務実績
連結売上高は前年比30.5%減の3兆3,834億円となりました。台数減が21%の減収要因となり、為替レートは9%の減収要因となりました。

連結営業利益は949億円となりました。
連結当期純利益は90億円です。
では連結営業利益の増減要因をご説明しましょう。

  • 1,427億円にのぼる為替変動による減益は、全ての通貨に対する円高によるものです。通貨別には、米ドル、カナダドル、豪州ドル、そしてロシアルーブルが大きく影響しています。
  • 購買コストの削減は862億円の効果を生み出しましたが、これには原材料価格とエネルギー価格の下落による213億円の増益が含まれています。
  • 台数・車種構成はグローバルな販売台数の減少に伴い、2,542億円の減益要因となりました。第2四半期は、第1四半期の1,518億円の減益から、1,024億円の減益に改善しています。
  • 宣伝費等の固定費削減の結果、販売・マーケティング費は811億円の増益要因となりました。
  • 2008年度上期は北米でリース車両残存価値リスクに対する引当金が630億円増加しました。一方、2009年度上期は、リース車両の中古車価格が上昇しているため、引き当て金の積み増しはしませんでした。その結果、前年に比べて736億円の増益要因となりました。
  • 研究開発費は420億円減少しました。2008年度に対し、2009年度は555億円削減する計画であり、予定通り推移しています。
  • 残る差異は製造費用や一般管理費を含む固定費削減による173億円の増益です。

2009年度リカバリー・プランの進捗状況
リカバリー・プランは順調に進んでいます。当社は引き続き世界経済の動向と市況を見極め、状況に応じて事業計画や方向性を随時修正する態勢で臨んでいます。

2008年度末には、グローバル販売の状況に応じて慎重に生産台数を調整し、2008年度第4四半期のグローバルな生産を僅か52万台に抑えました。2009年度第1四半期に続き、第2四半期も全体需要の増加を受けた生産を行いました。2009年度第2四半期には、グローバルで80万3,000台と生産台数は回復基調にあります。
各国の新車買い換え助成による需要増を受け、当社の生産は柔軟に各地域のタイミングと商品の要望に応え、販売を支えています。

2009年度上期の在庫は41万台に留まる一方、第2四半期は第1四半期に対して29%の増産を行いました。最新の予測では、2009年度末の在庫台数は、現在の水準を上回る見込みですが、当社は引き続き在庫管理に努め、フリー・キャッシュフローへの影響を極力抑えます。

2009年度の見通し
リカバリー・プランの実績と景気後退の中、市場シェアを維持してきたこれまでの成果は、明るい兆候です。しかし、警戒は怠りません。

2009年度のリスクは為替レート、原材料価格の反発、サプライヤーの経営悪化が挙げられます。さらに、最も注視しなければならないのは、主な市場の政府によるインセンティブ打ち切り以降に、全体需要の更なる悪化が予想されることです。一方、好機は為替レート、中国市場の更なる成長、そしてルノーと共に取り組んでいるアライアンスのシナジー効果です。

以上の見通しに基づいて、2009年度通期予測を修正いたします。
2009年度通期のグローバル販売は前年比3.3%減の330万台を見込んでいます。グローバル全需が前年比5.9%減の5,800万台となることを前提に、グローバルな市場シェアは5.7%を想定しています。

需要の拡大に対応するため、当社はグローバルな生産台数を前年比2.8%増の317万台に増やす予定です。

以上を踏まえ、東京証券取引所に通期業績予測の修正の届出を行いました。下期の為替予測は1米ドル85円、1ユーロ130円を前提としています。

  • 連結売上高は7兆円
  • 連結営業利益は1,200億円
  • 連結当期純損失は400億円
  • 研究開発費は3,950億円
  • 設備投資は3,250億円です。

2008年度に対する営業利益の増減要因の前提は次の通りです。

  • 為替変動による減益は2,000億円を見込んでいます。下期におけるさらなる減益要因は、主として米ドルに対する円高によるものです。
  • 台数・車種構成は800億円の減益を想定しています。
  • 購買コスト削減は1,800億円の増益を見込んでいます。
  • 販売・マーケティング費用の削減は400億円の増益を見込んでいます。
  • リース車両残存価値リスクに対する引当金は1,300億円の増益を見込んでいます。
  • 研究開発費は500億円の減少を見込んでいます。
  • 販売金融事業は400億円の増益を見込んでいます。
  • 残る979億円の増益は主に、一般管理費と製造費用の削減によるものです。

今後の優先課題
最後に今後優先すべき取り組みについてご説明いたします。自動車産業は引き続き厳しい逆風に晒されるでしょう。しかし私どもは、これまで同様、当座の課題に対処していくと同時に、将来に備える準備を継続していきます。自動車業界で起こりつつある大きな変革に対応する複数の計画が、日産の持続的な成長を支えます。

その一つはグローバルコンパクトカーの投入です。グローバルコンパクトカーは、より幅広いお客さまを対象とする、手頃な低燃費車です。急速に伸びている手頃な価格帯の市場ニーズに応えるべく、当社は向こう三年間で、ハッチバック、セダン、そしてコンパクトなMPVの三車種のグローバルコンパクトカーを順次発売します。

新規のVプラットフォームを採用するこの三車種は、現地化によってグローバルに業務効率を上げることができるよう、設計されています。最初に発表する低燃費・低排出のラインアップは2010年3月にタイで生産を開始します。次いで、2010年5月にインドの新しいチェンナイ工場、そして数ヵ月後の2010年度半ばに、中国で生産が立ち上がります。

本格稼働した暁には、グローバルコンパクトカーを150カ国を超える市場で販売し、年間で100万台販売する見込みです。

もう一つの重要な戦略は、ゼロ・エミッションの領域でリーダーになることです。ゼロ・エミッション車には、電気自動車と燃料電池車が含まれます。2010年秋の日産リーフの生産開始を控え、車両とバッテリーの生産から耐用年数の終わりまで対応する取り組みを実行していきます。

二週間前の東京モーターショー初日に、計画中の電気自動車3車種と、コンセプト・カー1車種を披露しました。日産リーフに続いて、NV200をベースにした小型商用電気自動車とインフィニティの小型ラグジュアリー・カーを発売予定です。4車種目のランドグライダーは、特徴的なサスペンションで、コーナリング時に車体とタイヤが傾きます。

2010年初めには、日本、米国、欧州で世界初の手頃な電気自動車、日産リーフの予約注文の受付を開始します。その他市場については、2010年後半の予約受付開始を予定しています。量販開始は2012年です。

また、当社は住友商事と共に、リチウムイオンバッテリーの再利用、再販売、再製品、そして再生を行う2次利用事業を設立し、世界にエネルギー貯蔵のソリューションをご提案します。

このように、ゼロ・エミッションに関わる全てのコア技術を手がけると同時に、アライアンス・パートナーであるルノーと電気自動車の量販に向けた投資を行っています。日産には、グローバル自動車業界でゼロ・エミッションのリーダーになる自信があります。

まとめ
2009年度上期は心強い実績を残しましたが、年度末までの経営環境の見通しは不安定且つ不透明です。積極的な取り組みと、足並みの揃った活動をもってしても、危機は去っていないのが現状です。

日産の取り組みは予定通り進んでおり、コミットメントに揺らぎはありません。

私どもは、景気後退の危機を切り抜けるべく、努力を続けています。日産は積極的に、お客さま、株主の皆様、そして地球全体に価値をもたらす優先課題に力を入れていきます。そしてこれは、日産の将来を約束するたいへん重要な取り組みであると信じております。

以 上