2008年度決算及びリカバリー・プラン進捗報告
<志賀 俊之> 当社は金融危機と景気後退に対応すべく速やかに対策を講じました。日産は従業員を総動員し、業績回復に向け、全力を尽くしています。 本日は2008年度の実績と、2009年度の見通しについて私からご説明します。その後、社長のゴーンより、日産の将来の方向性についてお話しさせていただきます。
2008年度販売状況 2008年度のグローバル販売台数は341万1,000台となり、前年度から9.5%減少しました。2008年度第4四半期では、グローバル全需が急速に悪化する中、当社の販売は前年度から26.3%落ち込みました。 2008年度通期では、北米と中国を中心にマーケットシェアを拡大した一方、日本と欧州でシェアを落としました。グローバルシェアは前年度並みの5.5%となりました。 2008年度は積極的な新車投入を行い、370Zやキューブ等、グローバルで8車種の新型車を発売し、14を超える地域に新車を投入しました。 また、日産車は数々の賞や高いランキングを獲得しました。 では地域別の販売実績をご紹介しましょう。 日本国内の全体需要は前年比11.6%減となり、下期に大きく落ち込みました。当社の販売台数は61万2,000台となり、前年を15.1%下回りました。市場占有率は0.6ポイント減の13%となりました。 米国の販売台数は前年比19.1%減の85万6,000台となりましたが、主に小型車の下支えにより市場占有率は前年の6.7%から7.2%に伸びました。ヴァーサと新型370Zの2車種はそれぞれのセグメントでナンバーワンのシェアを獲得しています。 欧州における販売台数ですが、地域別にはロシア、車種ではキャシュカイが貢献したものの、前年比16.7%減の53万台に留まりました。西ヨーロッパにはインフィニティブランドを導入しました。欧州における市場占有率は0.1ポイント減の2.7%となりました。 一般海外市場では、前年比7.1%増の113万6,000台を記録しました。中でも中国は、新型車4車種の投入が寄与し、過去最高の54万5,000台を達成しました。乗用車と小型商用車の市場占有率は0.6ポイント増の6.2%に達しました。日産は日系自動車メーカーの中で唯一、中国の小型商用車市場で大きなプレゼンスを誇っており、乗用車販売では3位、小型商用車の販売を加えると2位、更に合弁会社である東風汽車有限公司の中・大型商用車を加算すると1位となります。 新技術の導入についても、世界で最も厳しい排気規制をクリアするクリーンディーゼル車の投入や、低コストとクリーンな排気を実現する超低貴金属触媒、中国のスターウイングスという新しいルートガイダンスナビ等、11にのぼる重要な新技術を商品化しました。
2008年度財務実績 連結売上高は前年比22.1%減の8兆4,370億円となりました。台数・車種構成が11%、為替レートが9%、そして会計変更が2%とそれぞれ減収要因となっています。 連結営業損失は1,379億円となりました。 連結当期純損失は2,337億円です。 営業利益の増減要因をご説明しましょう。
収益の悪化を鑑みて、当社は2月9日に通期予測の下方修正を発表するとともに、年度末の配当金の支払いをご提案しない旨、お伝えいたしました。その結果、2008年度通期の配当金は一株当り11円となります。
リカバリー・プランの進捗状況 全体需要の落ち込みに応じて、生産台数を調整するべく、生産体制を見直し、休業日の設定や稼働時間の短縮等、世界中の車両とパワートレイン工場で対策を実施しました。その結果、2008年度のグローバル生産台数は計画台数に比べ77万2,000台減となり、20%減少しました。 当社は速やかにグローバル在庫の抑制に対処しました。2008年11月の72万台をピークに在庫を減らし、2009年3月には47万台と、前年度末を26%下回る水準に抑えました。さらに今後も販売、在庫、生産台数のバランスを慎重に図っていきます。 高コスト諸国における労務費は2008年度に対し2009年度に2割削減する対策を実施しています。グローバルでの労務費を含む固定費は2,000億円以上減少する見通しです。従業員の新規採用を最小限に抑え、時間外労働を短縮、出張費を75%削減し、休業日を実施しています。当社は予定通り適正化を進めています。
2009年度の見通し 2009年度にはグローバルで8車種の新型車を発売し、14の地域に新車を投入します。
先進技術の開発にも引き続き取り組みます。2009年度には17の新技術を商品化する予定です。その内、12の技術を次期型フーガ/インフィニティMから搭載します。 日産は研究と先行開発予算の内、2008年度に54%、2009年度に70%を環境に配慮した技術に充当しています。 中期環境行動計画である「ニッサン・グリーンプログラム2010」の取り組みは順調に進んでいます。一例を紹介しますと、2007年度にはCVT搭載車を100万台販売する目標を達成しました。2008年度にはエクストレイルのクリーンディーゼル車を予定通り発売し、2009年度には、日本国内でNissan ECOシリーズと銘打って、環境に配慮したクルマのための減税の対象となる14車種の販売促進活動を行っています。 2009年度のリスクは為替レート、サプライヤーの経営悪化、原材料価格の反発、そして全体需要の更なる悪化です。一方、好機は為替レート、そしてアライアンス・パートナーであるルノーとのシナジー効果創出の徹底です。 以上の見通しに基づいて、2009年度の業績予測を東京証券取引所に届出を行いました。為替予測は1米ドル95円、1ユーロ125円を前提としています。
営業利益の改善は主に以下四つの要因に起因しています。
私からは以上です。続きまして、CEOのカルロス ゴーンよりご説明させていただきます。
<カルロス ゴーン> まず、キャッシュ確保を目的とした対策に力を入れています。 2008年度末現在のグローバル在庫は新車、中古車、部品、原材料を含め7,350億円となりました。2009年度下期の販売台数は前年同期を上回る見込みですが、2009年度も前年並みを維持するべく、新車のみならず、中古車、部品、原材料も対象に管理を徹底します。 設備投資は前年比9%減の3,500億円に抑えます。その内、50%は新車に割り当てます。前回発表しましたように、経済危機終息の目処が立つまで設備投資の一部を延期、削減、あるいは中止しています。 更に、キャッシュ確保の一環として、ノンコアの資産・事業を既に特定し、売却の手配を進めています。2009年度の売却総額は700億円を見込んでいますが、その半分以上は不動産の売却です。ノン・コア資産の売却か、適切な金利で借り入れをするかの判断は、その時々の金融市況を見極めつつ、最終判断を行います。 次に、利益改善のための対策についてご説明しましょう。 モノづくりコストの削減は、リカバリー・プランで最大且つ最も重要な役目を果たします。台数減により、今年度に5%の原価低減を実現するのは決して簡単ではありませんが、モノづくり機能部署である開発、購買、生産、サプライチェーン・マネージメントはサプライヤーとの協力のもと、具体的な実行計画を策定しています。主な好機は部品仕様・種類の削減と為替レートに結びついています。 取り組みは以下4つの行動計画を中心に実施しています。
モノづくりコストの削減は、日産リバイバルプランを成功に導いた鍵でした。このリカバリー・プランについても同様です。 為替レートの変動の影響を極力抑える取り組みも実施しています。車両・パワートレイン・内製部品の海外生産を対象とした複数の計画策定を進めています。2009年度には、海外生産台数を7万台増やし、最小限の投資で既存の生産能力を活用します。例えば英国日産自動車製造会社では南アフリカ、シンガポール、マグレブ向けのキャシュカイプラス2を立ち上げ、現在のポンド安を利用します。もう一つの例は、メキシコで立ち上げるメキシコ、中南米、カリブ諸国向けのD22型フロンティアです。 同時に、国内工場の競争力強化に注力し、国内の生産台数は100万台レベルとなります。日本は日産の本拠地であり、当社のグローバル事業の拠点であり続けます。本拠地である日本に注力し、国内工場の競争力を維持するべく、強化していきます。 グローバルな市場占有率を伸ばしながら、マーケティングの固定費を2008年度から22%削減します。グローバルマーケティングアセットの共有化を最大限に進め、重要な市場で特に注目される商品を優先します。中国等、5台の内4台が初めてクルマを購入するお客さまである新興諸国に対し、重点的に攻勢をかけていきます。
今後の方向性 グローバル経済で信用収縮が改善しない限り、フリーキャッシュフローを先行指標としますが、当面の課題に取り組むことで、将来のビジョンを犠牲にすることはありません。日産は当座の目標と長期的な目標のバランスをとることで、現在の厳しい環境を耐え抜き、自動車業界で起こりつつある大きな変化に備えていきます。 私どもは、ゼロ・エミッション車でリーダーになることを目標とした戦略を進めています。電気自動車や燃料電池車の開発がその一環です。まずは電気自動車の発売を控えており、生産計画も予定通り進行しています。電気自動車は、2010年秋に追浜工場で立ち上がりますが、他の地域での生産も検討しています。追浜工場が電気自動車のマザー・プラントとなり、競争力の高い品質と性能を保証します。まず年間5万台規模から生産を始め、2012年度の量販に向けて台数を拡大していきます。電気自動車のモーターは横浜工場で生産し、インバーターは当初、座間で生産します。 電気自動車の中核技術にあたる、日産のラミネート構造を採用したコンパクトリチウムイオン電池は座間にある関係会社のオートモーティブエナジーサプライ株式会社(AESC)で生産しています。この次世代ラミネート型バッテリーセルは17年に亘る開発の成果です。従来型リチウムイオン電池と同等の質量でありながら、2倍の出力とエネルギーをもち、高い信頼性と性能を発揮します。つまり、電池技術は大きく進歩しているのです。この先進バッテリー技術を求める同業他社からは既に発注いただいております。 今年の8月初旬には日産の新型電気自動車を、新しいグローバル本社のオープニングに合わせて披露いたします。私どものゼロ・エミッション戦略は、クルマの販売に留まらない、他にはない構想です。新技術の量産には、インフラの整備と、政府や第三者機関との連携を通じて経済条件を整えることが不可欠です。これこそが日産のビジョンであり、その実現に向けて積極的に取り組んでいます。 品質領域でリーダーを目指す活動も、全社的な目標の一つです。社内指標は改善を示しており、製品品質とサービス品質の向上を目指した活動は、第三者機関による調査結果でも心強い成果を生み出しています。 通常の商品ラインアップの刷新に加えて、当社は手ごろな、燃費の良いエントリーカーの投入計画にも注力しています。Aプラットフォームを採用するクルマで、Bセグメント車に匹敵する広さ、技術、快適性と、Aセグメント車の燃費と維持費を両立させます。マーチ/マイクラの後継車にあたるグローバルエントリーカー第一号は、2009年度末にタイで生産を開始する予定です。 当社は引き続きBRICs諸国と中東、北アフリカにも注力し、新興諸国の経済成長が回復して、需要が戻った暁には再び成長できる態勢を整えています。
最後に、私どもの卓越した競争優位性を支えるルノーとのアライアンスについてお話ししましょう。この危機を乗り越えると同時に、将来技術の開発に投資するには規模の経済が不可欠です。私どもには、10年に亘る確かなパートナーシップ、ルノー・日産アライアンスがあります。ルノー・日産アライアンスは合従連衡の真っ只中にある自動車業界で他に類のない、意義深い取り組みです。豊かな経験を積んだ今、ルノー・日産アライアンスは更に力を蓄え、より大きなシナジー効果を生み出す新たなステージにあります。 これまで、ルノー・日産アライアンスは各社のパフォーマンスを極大化するための優先的な選択肢の一つでした。しかし、今や、経済環境と両社の状況は一変しました。この新たな状況下で、アライアンスを、危機に対処すると共に危機が去ったあとに備えるための最優先手段とします。アライアンスは最早選択肢の一つではなく、必須です。 現在、両社は2009年度にアライアンス全体で1,800億円にのぼるフリー・キャッシュ・フローを生み出すシナジー効果を目的とする計画を策定しています。1,800億円の内、日産とルノーは900億円ずつ享受します。 配当政策については、世界的に競争力のある配当水準が、日産の戦略であり、株主の方々との関係においても重要な鍵だと考えています。現時点では、2009年度に配当金をお支払いする見通しは立っておりません。フリーキャッシュフローをプラスにした後、状況に照らして復配を検討します。
まとめ 私どもは危機に適応し、対処する術を心得ておりますが、それだけではありません。日産には革新的なモノづくりを支える知識とスキルがあります。その知識とスキルを駆使して、ゼロ・エミッション車、グローバルエントリーカー、新興諸国におけるプレゼンス、そしてお客さま一人ひとりに、よりコスト効率の高い、大きな価値を実現します。多様な人財とルノーとのアライアンスは当社の強みです。 以上、全ての対策の徹底で、現在の危機を乗り越えるだけでなく、将来に備えることができるでしょう。 以上
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