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2007年度上半期決算報告

2007年10月26日

日産自動車株式会社 取締役社長兼CEO
カルロス・ゴーン

 

はじめに

皆様、こんにちは。本日はお越しいただきましてありがとうございます。

年度当初、私どもは日産を持続的な利益ある成長軌道に戻すことをお約束しました。

業界全体が厳しい環境に晒された2007年度上期、当社は多くの面で進歩を遂げました。当社は長期を見据えて、円滑な軌道修正を行い、通期の目標に対して順調に推移しています。

2007年度上期、連結売上高は11.7%増加しました。

連結売上高営業利益率は第1四半期の6.1%から、第2四半期には8.4%に上昇し、上期全体では7.2%となりました。

昨年度を上回る実効税率と一過性の利益の減少により、2007年度の上期の当期純利益は前年比22.5%減の2,124億円に留まりました。

本日はまず、グローバルな販売状況についてご説明した上で、財務実績の詳細をご報告いたします。そして最後に、2007年度通期の見通しを申し上げた後、質疑応答に移りたいと思います。

2007年度上期グローバル販売台数

では販売状況をご説明いたします。2007年度上期は国内、米国、欧州の全体需要が減少する中、日産のグローバル販売台数は181万6,000台に達し、前年比6.3%増となりました。

2007年度上期には、グローバルで7車種の新型車を投入しました。様々な地域への展開を含めると15車種以上の新車発表となります。

各地域の販売状況をご説明しましょう。

国内の全体需要は前年から8.1%落ち込み、軽自動車は6.8%減、登録車は8.8%減少しました。

全体需要が下がり続ける中、当社の販売台数は前年比5%減の33万2,000台となりました。軽自動車の販売が13.2%伸びた一方、登録車の販売は8.7%減少しました。その結果、日産の市場占有率は0.5ポイント増の13.4%に達しました。

貢献したのは15,000台の販売を記録した新型クロスオーバーSUVのデュアリスと前年比38%増の13,000台を販売した新型エクストレイルです。

米国における上期の販売台数は前年比5.4%増の53万4,000台となりました。その間、全体需要は2.4%減少しています。米国でも、全体需要が下がる中、当社の市場占有率は0.5ポイント増の6.3%に上昇しました。

米国における2007年度上期のニッサン・チャンネルの販売台数は5.5%伸びました。

昨年発売した2車種の重要な新型車は引き続き好調です。ヴァーサとアルティマは共に、衝突安全性能総合評価で5つ星を獲得し、影響力のあるコンシューマー・レポート誌の「お勧めのクルマ」に選ばれました。

ヴァーサは上期に45,000台を販売し、本セグメントのマーケットシェアは17.9%になりました。更に、2006年度の旧型モデルに対し、新型アルティマは27.9%増の14万4,000台にのぼる販売を獲得しました。これには、5月の発売以来好評を博しているアルティマ初のクーペが大きく寄与しています。

一方、多くの皆様の関心を集めることができたローグは9月の発売以降、下期に向けて勢いを増しています。

米国のインフィニティ・チャンネルの販売台数は前年比5.1%増の61,000台を越えました。コンシューマー・レポート誌の「お勧めのクルマ」に名を連ねたG35セダンの販売も前年から52%伸び、26,000台に到達しました。

8月に新型G37クーペがショールームに登場し、更に集客力が向上しています。

欧州の全体需要は前年比0.9%減の1,090万台となりましたが、当社の販売台数は30万4,000台となり、前年を10.5%上回りました。

ロシアにおける台数増が引き続き西ヨーロッパの台数減を相殺しています。ロシアの上期の販売台数は67,000台に達し、前年から倍増しました。

イギリスの工場で生産しているキャシュカイは欧州の自動車衝突テストのNCAPで最高の5つ星を獲得しておりますが、当社の欧州における総販売台数の2割を占め、更に勢いを増しています。

ロシア、ウクライナ、そして北欧では、キャシュカイのバックオーダーが半年先まで溜まっているほどです。お客様のご要望にお応えするため、私どもはサンダーランド工場の生産能力を20%増強し、年間生産台数を18万5,000台に拡大しています。

12,900台の販売台数を達成した新型エクストレイルが欧州における次なる新車攻勢となりました。

昨年ロシアに投入したインフィニティも順調に推移しており、同国のラグジュアリーカー市場の7.3%のシェアを獲得し、前年から70%販売台数を伸ばしました。

メキシコとカナダを含む一般海外市場における2007年度上期の販売台数は前年比13.1%増の64万6,000台となりました。

  • 中国における当社の販売台数は前年から25.2%上昇し、22万5,000台となりました。小型商用車の拡販、リヴィナの発売、そして引き続き好調なティーダが台数を支えています。
  • インドネシアについてはグランド・リヴィナの投入により、総販売台数はより適切な水準の11,000台まで伸びました。
  • 中東の販売台数は89,000台に達し、前年比21.3%増となりました。主としてピックアップトラックが牽引役を果たしています。
  • 以上の市場における好調な販売が、メキシコと台湾の減少を補いました。

2007年度上期財務実績

次に2007年度上期の財務実績についてご説明します。

連結売上高は前年比11.7%増の5兆645億円に達しましたが、これは主にグローバル販売台数増と有利な為替レートによるものです。

連結営業利益は前年比5.3%増の3,671億円となりました。円安による為替効果と台数増、そして購買コスト削減の増益要因が原材料価格の高騰と車種構成の悪化を補いました。

以上の実績は、連結営業利益が3.2%減少した第1四半期に対し、第2四半期は12%増加しており、様相が一変したことを示しています。

売上高営業利益率は7.2%に達し、第1四半期の6.1%から第2四半期は8.4%に改善しました。

経常利益は3,603億円となり、営業外費用の増加により、前年と同水準に留まりました。

特別損益は197億円の損失となり、前年から145億円悪化しました。

主な要因は、前年度に計上された日産ディーゼル株の売却益と、今年度の上期に計上されたカルソニック・カンセイと日産車体のセカンドキャリア支援制度に対する引当金です。

実効税率は前年度の19.2%から今年度上期は35.9%に上昇しました。

2006年度の実効税率は、北米日産本社のナッシュビルへの移転に伴なう優遇税制と、国内販売会社の再編に伴う税金費用の軽減により、相対的に低い水準に留まりました。

その結果、当期純利益は2,124億円となり、前年から22.5%落ち込みました。

2007年度通期予想

以上が上期の実績です。次に2007年度通期の見通しについてご説明いたします。

リスクと好機について申し上げますと、最大のリスクは引き続き世界的なインセンティブの上昇、車種・グレード構成の悪化、原材料市況の高騰、そしてエネルギー費の増加です。また、米国市場は更に低迷すると見込んでいます。

主な好機は予定されている強力な商品計画の完遂です。現段階の商品サイクルによって、逆風の中でも前進できる態勢が以前より整っていると言えるでしょう。

また、一般海外市場におけるさらなる成長、インフィニティブランドや小型商用車ビジネスの強化、そして価格競争力のある国々からの低コストな調達の活用などによりもたらされる利益も期待できます。

今月は国内で新型スカイライン・クーペを発売しました。また、12月にはいよいよ待ちに待った新型GT-Rが国内の販売会社に届きます。この二車種をショールームに展示すれば、第4四半期の集客力は間違いなく、大きく向上するでしょう。

更に、人気を博しているデュアリスの供給も強化されます。2008年の初頭から、デュアリスは年間24,000台、九州工場で生産される予定です。

米国では、12月に新型インフィニティEX35クロスオーバーを発売します。2008年1月から、販売会社のショールームには新型ムラーノがローグと並べて展示され、注目を集めるでしょう。

一般海外市場ではリヴィナ・シリーズを拡充するとともに、キャシュカイやエクストレイルを一部の市場に投入します。また、タイではフロンティア ナバラ ピックアップに新たにシングルキャブ・バージョンを発売予定です。

以上の商品投入と拡販に支えられ、下期の国内生産工場の稼働率は大幅に高まります。業界標準の年間3,548時間で104%、国内の社内基準である年間4,400時間では84%に達する見込みです。

以上のリスクと好機を鑑み、通期については当初予測の連結営業利益8,000億円と当期純利益4,800億円を維持します。

まとめ

上期の実績から、当社の状況と将来の展望について説明させていただきます。

年度当初、日産は「私どもの力の及ぶ、短期的な課題に対処すると同時に長期的な目標を見据えること」を目標として掲げました。

第2四半期では明らかに業績向上対策が功を奏しています。下期には更に期待できるでしょう。しかし、これらは長期的な目標を犠牲にした結果ではありません。

長期的な目標に向けて、私どもは様々な面で前進しています。

第一に、日産は引き続き、将来の商品開発に多額の投資を行っています。つまり、他社と一線を画す、日産独自の魅力あるクルマへの投資です。

2008年度以降の3年間には、33以上の新型車を投入予定ですが、これは
平均すると、ほぼひと月に1車種、新車が発売される計算になります。

次に、お客様に優しい技術と革新に投資を行い、商品の差別化を図ると共に、ブランド力を強化し、技術のパイオニアとしての評判回復を目指します。

今週、東京モーターショーにいらした皆さんは、日産ブースでそれをご覧いただけたと思います。

マルチ・パフォーマンス・スーパーカーのGT-Rと、革新的な電気自動車のコンセプトカーであるPIVO2をご覧いただけば、日産が最新技術を開発しているだけでなく、それら技術を商品化し、最大限の力を発揮させていることがご理解いただると思います。

これまでの大規模な研究開発投資が実を結び始める中、今年は多くの重要な日産独自技術を新型車に搭載します。

既に商品化されております、先進的なVVELエンジンはGクーペとスカイラインクーペに搭載しております。また、スカイライン・クーペには、歩行者を保護するポップアップ・エンジン・フードも装備されています。

今週、アラウンド・ビュー・モニターがエルグランドに搭載されてデビューを果たしました。また、レーン・ディパーチャーチャー・プリベンション・システムは12月に発売するインフィニティEXに搭載されます。

以上のような革新技術によって、日産は安全分野におけるリーダーとしての地位を獲得するでしょう。更に、この表にもありますように、これ以外にも数多くの新技術の商品化を予定しています。

PIVO2は、日産がどのように今後の持続可能なモビリティ時代をリードしようとしているかを体現しています。電気自動車の登場は間近です。また、近々、当社は競争力の高いクリーン・ディーゼル車を投入予定です。国内のクリーン・ディーゼル第一号はエクストレイルで来年の秋に、また、米国ではマキシマで2010年に発売します。

米国ではアルティマハイブリッドを販売中ですが、日産グリーンプログラム2010のもと、日産独自のハイブリッド車を2010年度に投入予定です。

更に、日産は引き続き今後のグローバルな成長に向けて準備を進めています。特に新興市場では取り組みを強化しております。

今年度、一般海外市場の販売は19%増加し、当社のグローバル販売の三分の一にあたる100万台に到達するでしょう。一般海外市場の成長に伴い、当社は複数の重要な国に生産工場を建設しています。

 

ロシアでは、当社の輸入モデルの販売が前年から倍増しています。2009年にはサンクト・ペテルブルグの新工場が開業し、年間50,000台の生産能力を確保します。

インドの全体需要は前年比20%増の150万台となりましたが、当社は迅速に対応し、ルノーと現地パートナーと共に、複数の事業を立ち上げる予定です。

チェンナイの新工場は2009年に稼働開始し、インドにおけるアライアンスによるブランドの成長を支えることになります。また、小型商用車事業の強化を目指した、アショック・レイランド社との合弁事業設立も実現間近です。

中南米は、総生産能力55万台を誇る2工場から成る日産のメキシコ拠点とメルコスールにおけるルノーのプレゼンスによって、ルノー・日産アライアンスの成長の土台となるでしょう。

一方このアライアンスは、モロッコでの新たなグローバル生産拠点に10億ユーロにのぼる投資を行う予定です。免税対象となっているタンジールに戦略的に配置し、稼働開始する2010年には年間で40万台の生産能力を確保する予定です。

現在行っている投資が完了する向こう10年以内には、日産とルノーは柔軟で、包括的なグローバル生産ネットワークで、あらゆる新興市場を網羅することになるでしょう。高品質・低コストの供給体制で既存の事業を支えるのです。

同時に日産は、ラグジュアリー・ブランドであるインフィニティと小型商用車事業のグローバル展開を行っています。

インフィニティは今や15カ国230社以上のディーラーで販売しており、中国とウクライナが今年度新たに仲間入りします。2007年度上期のインフィニティのグローバル販売台数は74,000台に達し、前年を11.6%上回りました。

その内、61,000台は米国が占めますが、中東の湾岸諸国では60%増大し、韓国では113%拡大しました。インフィニティは正に世界中でラグジュアリー・ブランドとしての地位を確立しつつあります。2008年の西ヨーロッパへの投入に伴ない、インフィニティはグローバルなラグジュアリー・ブランドとしての評価を更に強化することになるでしょう。

2007年度上期、小型商用車は7.8%の台数増を達成しました。新型車であるADやクリッパーリオ、アトラス、キャブスター・シリーズが牽引役を果たしました。

近々、インドにおける新たな小型商用車の計画を発表する予定ですが、インフィニティと同様に、小型商用車も大西洋を横断します。但し、インフィニティとは逆の方向から展開していきます。既に進んでいる米国市場への参入計画で、日産の小型車商用車も近いうちにグローバル事業になるでしょう。

新型車、新技術、新興市場への進出、新規ビジネス。今までになかった変化の時代にあって、リーダーの一員であり続けるために、日産は長期的な成長に焦点を当てなくてはなりません。

しかし、今年は同時に業績を回復する必要があります。

本日発表しました2007年度上期の実績は、通期の目標に対して、計画通り、順調に進んでいます。

通期の結果を発表する2008年4月には、日産の次の章となる次期事業計画と配当政策をご説明したいと思います。

今後も日産にご期待ください。