<参考資料>

 

2006年度上半期決算報告

2006年10月26日

日産自動車株式会社取締役社長兼CEO カルロス・ゴーン

 

はじめに

皆さん、こんにちは。本日はお越しいただきありがとうございます。

年度当初、私は原材料市況の高騰、エネルギー費の上昇、そして金利の上昇が当面は続くと申し上げました。

加えて、成熟市場の全体需要は伸び悩み、インセンティブは上昇し、自動車メーカーはコスト増を価格に反映することができなくなると予想しました。

以前も申し上げましたように、このような不利な状況を、当社は新車投入の数が少ない中、乗り越えなくてはなりませんでした。今年度発売予定の新型車10車種の内、上期に投入されたのは小型商用車の新型キャブスターのみです。

このような好ましくない環境の下、当社の連結売上高は1%増加しました。

連結営業利益は第1四半期に前年同期から25.7%減少しましたが、第2四半期では4.9%の減少でした。2006年度上期の連結営業利益は前年比15.3%減となりましたが、以上は年度当初の想定内で推移しています。

2006年度上期の連結営業利益は減少したものの、当期利益は前年比18.8%増の2,742億円に達しました。これは主に一過性の増益要因によるものです。

本日はまずグローバルな販売状況をご説明した上で、財務実績の詳細をご報告いたします。そして最後に2006年度通期の見通しを申し上げた後、質疑応答に移りたいと思います。

2006年度上期グローバル販売台数

では販売状況をご説明いたします。2006年度上期の日産のグローバル販売台数は170万9,000台となり、前年比6.9%減となりました。

地域別の販売台数ですが・・・

国内の全体需要は3.4%減少しました。軽自動車市場は4.9%拡大し、登録車の全体需要は7.5%の減少です。軽自動車についてはOEM契約で供給に制限がある為、日産にとって有利な環境ではありませんでした。特にこの市場では、利益よりインセンティブの引き上げによる台数増を目指す傾向があります。2006年度上半期の日産は新車イベントがほとんどなかったことや、前年同期が日産  180のラストスパートにあたったことを考慮に入れなければなりませんでした。

2006年度上期の当社の国内販売台数は前年比16.9%減の35万台となりました。軽自動車の販売は1.9%伸びた一方、登録車の販売は19.9%減少しました。当社の市場占有率は前年比2.1ポイント減の12.9%に留まりました。

日産は日本事業の収益性の向上を目的とした方策を打ち出し、特に販売、マーケティング、販売網の面で取り組んでいます。例えば連結販売会社については既に店舗の統合や、バックオフィス機能の合理化、連結販売会社の合併などの対策を実施しています。さらに、インセンティブや販売会社のマネジメントを見直しています。市場環境は厳しいものの、解決策はあり、実行することでより良い結果を出さなければなりません。

米国市場では、今年7月に発売したヴァーサ・ハッチバックまで、16ヶ月の間、新車投入がありませんでした。

このような状況を鑑み、米国における上期の販売は落ちると見込んでいました。2006年度上期の米国における販売台数は前年比10.2%減の51万3,000台となりました。全体需要は5.6%減少し、当社の市場占有率は前年比0.3ポイント減の5.8%に留まりました。

ニッサン・チャンネルの販売は前年から9.8%減少しました。しかし、大きな商品イベントである7月に米国に投入したヴァーサ・ハッチバックは、市場のニーズに応える商品であり、好評を博しています。

米国におけるインフィニティ・チャンネルの販売は、19ヶ月間新車投入されなかったことにより、前年から17.5%減少しました。

会計年度が暦年ベースの欧州の販売状況も同様です。1月から6月までの欧州における当社の販売台数は27万5,000台となり、前年比4.4%減でした。

この間、欧州の大半の市場でプリメーラ、アルメーラ、そしてティーノが打ち切りを迎え、唯一の新車投入は3月に発売されたノートでした。

一方、メキシコとカナダを含む一般海外市場の販売は好調です。2006年度上期の販売台数は前年比2.9%増の57万1,000台となりました。主な市場の状況は次の通りです。

  • 中国については、ティーダが牽引役となり、販売台数は18万台と、前年度から28%伸びました。現在の急成長が年間を通じて続くことは期待できないため、通期の販売台数は15%増を見込んでいます。
  • 中東の販売台数は前年比18%増の7万3,000台となり、ティーダとピックアップが好調です。この勢いは年度末まで続くでしょう。
  • 台湾における販売台数は前年比39%減の23,000台に留まり、その間、全体需要は26%減少しました。
  • タイにおける販売台数は前年比24%減の17,000台となりました。全体需要は3%減少しています。当社の商品ラインアップ、特に主力のピックアップ・トラックがモデル末期を迎えています。一方、事業上の問題も発生していますが、これはマネジメントの刷新と組織改正によって解決するでしょう。

2006年度上期財務実績

次に2006年度上期の連結財務実績についてご説明します。

連結売上高は4兆5,340億円となり、前年から1%増加しました。これは主に為替レートによるもので、2,012億円の増収要因となりました。

連結営業利益は前年比15.3%減の3,486億円となりました。

売上高営業利益率は7.7%となり、当初の想定内で推移しています。

では増減要因についてご説明しましょう。

1) 為替は2006年度上期の連結営業利益に対し、548億円の増益要因となり、主に米ドルとユーロが寄与しました。
2) 連結対象範囲の変更は、2006年度上期の営業利益に対して46億円の増益要因となりました。
3) 原材料市況の高騰は658億円の減益要因となりました。自動車メーカーはこのコスト増を価格に反映させることができず、当社はその大部分を自助努力で吸収せざるを得ませんでした。
4) 価格、台数及び車種構成は1,043億円の減益要因となりました。モデル末期による販売台数の落ち込みと米国における小型車および日本における軽自動車への需要のシフトが主な理由です。
5) 販売費は38億円の増益要因となりましたが、販売台数が減少したことを考えると朗報とは言えません。経費は削減しましたが、台当りのインセンティブとその他マーケティング費用は増加しました。
6) 購買コストは引き続き改善し、755億円の増益要因となりましたが、原材料市況とエネルギー費の高騰による影響がこれを相殺しました。
7) 商品性向上と規制対応に関わるコストは191億円の減益要因となりました。
8) 研究開発費は増加し、70億円の減益要因となりましたが、これは技術開発と商品開発の為の投資拡大を目的とするものです。
9) 製造費と物流費は43億円減少しました。製造費と物流費は43億円減少しました。
10) サービス保証費は39億円増加しました。これは2006年度第1四半期に発生したQRエンジンの補償費用計上によるものですが、2005年度第2四半期には一過性の品質対応コストを計上したため、差異は小さくなっています。
11) 一般管理費他は58億円の減益要因となりました。

営業利益を各地域で見ると、日本事業の営業利益は1,337億円となり、前年同期の1,994億円を下回りました。

米国とカナダの営業利益は1,211億円となり、前年同期の1,521億円を下回りました。

欧州の営業利益は268億円となり、前年の182億円から増加しました。

最後に、メキシコを含む一般海外市場については、前年の462億円から588億円に増加しました。

2006年度上期、営業利益は減少したものの、当期純利益は前年比18.8%増の2,742億円に達しました。主に9月に実施した日産ディーゼル工業株式の売却、中国事業における年金制度の改定、国内販売会社の再編に伴う税金費用の軽減によるものと、2005年に固定資産の減損処理に伴う費用と、確定拠出型年金制度導入に伴う一時的な費用が発生したことによるものです。

貸借対照表について申し上げますと、2006年9月末現在、当社のキャッシュ・ポジションは949億円となり、自動車事業実質有利子負債を1,263億円抱えていた2005年9月から2,212億円改善しました。しかしながら、2006年3月のキャッシュ・ポジションである3,729億円からは、通常のオペレーションの結果として減少しました。

2006年度通期予想

では2006年度通期の見通しについてご説明いたします。リスクと好機について申し上げますと、最大のリスクは引き続き世界的なインセンティブの上昇、車種・グレード構成の悪化、原材料市況の高騰、エネルギー費の上昇、そして高金利です。

主な好機は日産バリューアップの徹底、そして当初計画よりも有利な為替レートです。特に、日本円と米ドルのレートは当社の業績に寄与する見込みです。以上のリスクと好機を鑑みても、有利な為替レートがリスクを補う為、通期については当初の予測を変更する必要はないと考えています。

では上期と下期の違いをお話ししましょう。

自動車メーカーにとって重要な要素は商品です。新鮮で、魅力的な、市場トレンドに応えるクルマです。

2006年度下期から2007年度にかけては、日産の復活を支えた新車攻勢と同様の積極的な商品投入が予定されています。当社は複数の主力商品のモデルチェンジだけでなく、新規セグメントへの参入も果たします。

現在、生産が立ち上がっている新型車3車種は、日産の米国事業を支える重要な商品です。

今月発売した新型セントラは、よりコンパクトで燃費の良いクルマを求めるお客様にご提案する商品です。7月に投入したヴァーサと共に、セントラも急速に拡大しているサブコンパクトのセグメントで戦うことになります。

来月、米国全土のショールームに新型アルティマが登場します。現行車は台数と利益の両面で健闘を続けていますが、新型車ではこれを更に進化させ、現行車の強みを発展させます。

インフィニティ・チャンネルも同様に、販売ボリュームと収益を支える新型G35が来月、米国全土のショールームに到着します。インフィニティのグローバル展開で、新型G35は、インフィニティ・ブランドで益々重要な役目を果たすことになるでしょう。

国内では、2006年度下期に、新型車4車種を発売します。新型オッティと当社のラインナップに加わる新たな軽自動車を、拡大を続けるこのセグメントに投入する予定です。また、ADバンの後継モデルと新たなLCVも、好調な小型商用車事業に寄与するでしょう。

来月、G35の姉妹車にあたるスカイライン セダンを国内市場に投入します。伝説的なスカイラインの50周年を記念して、向こう1年間で様々なイベントを企画しており、これが日産ブランドを強化することになるでしょう。

一般海外市場では、新型グローバル・カーを、まず中国からリヴィナ・ジェニスとして発売する予定です。

欧州では、キャシュカイを発売します。キャシュカイは、先月パリ・モーターショーで披露した、革新的なコンパクト・クロスオーバーで、欧州の従来のCセグメントをシフトし、日産はこの拡大するセグメントに新規参入を果たします。

今後、2007年度には、更に多くの新型車を発売する予定です。来年度はグローバルで11車種投入しますが、例えば米国市場では、新型コンパクト・クロスオーバーのローグを投入し、米国市場の全ての主要なセグメントに商品ラインアップを揃えるという当社のコミットメントを実現することになります。

また、いよいよ待ちに待った日産ブランドの象徴、GT-Rが発売されます。これまでGT-Rは主に国内で販売しておりましたが、新型GT-Rはグローバルに販売していきます。今月からは試作車第一号の評価を、難コースとして有名なドイツのニュルブルグリングで実施していますが、このサーキットは今やGT-Rの伝説の一部となっています。

日産バリューアップ以降の事業計画では30を超える商品を投入予定で、この内少なくとも15車種を米国市場に投入します。現時点の計画では、この12ヶ月間のような商品投入の少ない時期はありません。

当社の取り組みは商品ラインアップの刷新・拡充に留まりません。日産は地理的拡大を着実に実行し、急成長を果たしている新興市場のロシア、エジプト、インド、インドネシア等にプレゼンスを広げています。これは今後の会社の成長を支えることになるでしょう。

まとめ

透明性は日産の企業文化の基本です。その理由をお話ししましょう。

透明性は本質的には、ビジネスにとってプラスに作用します。良い時はもちろんのこと、特に悪い時に一貫して透明性を貫くことで、ステークホルダーのより高い信用を勝ち取ることができますが、それだけではありません。

透明性は社内的にも対外的にも重要です。高い長期的なコミットメントを公表することで、日産に関係する全ての従業員が共通の目的に向かって団結することができます。私たちひとりひとりが納得して、共通の目標を目指すことになります。また、各段階で透明性を確保することによって正しい方向に進むことができます。

ですからこそ、ルノーと共に、日産は4年後の公約を掲げる自動車メーカーであり続けます。

これは当社がルノーとのアライアンスを通じて生み出した数多くの強みの一つです。ルノー・日産アライアンスの仕組みを正しく理解していない方々も少なからずいらっしゃいますが、その有効性は明らかです。

両社の時価総額の推移をご覧いただければその効果が分かるでしょう。1999年から現在まで、主なグローバル自動車メーカーの時価総額は27.1%増加しました。日本企業の時価総額は倍増する一方、欧州メーカーの時価総額は横ばいで、米国メーカーの時価総額は50%以上減少しました。同時期に、日産の時価総額は5倍、ルノーの時価総額は3倍に伸びたのです。

ルノー・日産アライアンスの時価総額は両社で4倍に増大し、グローバル自動車業界で、今や二番目に大きな額を誇っています。同時に、業界第二位の高い収益性を確保しています。ルノーと日産はプラットフォーム、技術、そしてベスト・プラクティスを共有しています。両社の間の購買のシナジー効果は年々増大しています。そして更に協力を進める余地が残っています。

一方、両社は別会社としての立場を保持し、それぞれのブランド、異なる企業文化を維持していきます。ルノーと日産がそれぞれ独立した組織であり続けるには訳があります。

私どもが徹底する多様なアイデンティティの尊重は、合併買収の考え方との根本的な違いです。アイデンティティを尊重することがアライアンスの成功の鍵です。だからこそ、このアライアンスは全く異なる文化を持つ新たなパートナーを対象に広げることができるのです。

中には、私どもの短期的な業績のみに着目し、ゼネラル・モーターズとの交渉は、第三のパートナーなしで高い業績を維持する自信がなくなった兆しだと推測する声もありました。

改めて申し上げますが、私どもは他のパートナーを探す必要に迫られているわけでも、新たなパートナーを求めているわけでも、こちらから働き掛けているわけでもありません。しかし、アライアンスがもたらす価値を考えると、その可能性を模索することは、私どものステークホルダーに対する責任だと考えます。都合の良いタイミングで機会が訪れた時には特にです。

今はただ、日産バリューアップの折り返し地点を迎え、向こう18ヶ月間、日産は今までにない新車攻勢で、コミットメント完遂を目指します。当社は持続可能且つ長期的な成長路線を維持していきます。日産は確かなビジネスの土台を確立しています。

今後の日産にご期待ください。