2004年10月29日

日産自動車株式会社

日産180進捗状況及び04年度上半期決算に関する記者会見

社長カルロスゴーン スピーチ原稿

I. はじめに

今年は日産180の最終年度にあたりますが、日産は引き続き着実に価値の創造と持続的な利益の確保を実現しています。2004年度上期の売上高は12.7%増、連結営業利益は4,034億円となりました。

2004年度上期の業績は堅調でしたが、決して容易な道ではありませんでした。年度の初めに、想定されるリスクとして、インセンティブ競争の激化、原材料の市況の高騰、金利の上昇等、想定されるリスクをいくつか挙げました。これらのリスクは全て現実のものとなり、時には予想を上回るレベルとなりました。しかしながら、当初から予想していた不利な為替レートによる影響を含め、当社はそれらの影響全てを補ってまいりました。

極めて厳しい環境の下、日産は一貫して正しい方向に進んでいます。本日、ご説明する数字が日産の成長を裏付けています。

本日はまず、今年度上半期における当社の全世界の事業と販売の状況をご説明した上で、財務実績の詳細をご報告いたします。最後に2004年度下半期の見通しを申し上げます。

II. 2004年度上半期事業概要

まず、各地域における主な動きについてご説明しましょう。最初は日本です。9月には、シフトイベントを開催し、業界でも前例のない試みとして、6種類の新型車を一斉に披露しました。既に発売されたムラーノ、ティーダ、フーガ3車種の販売は好調な滑り出しを見せています。また、本日のプレゼンテーションの終了後に、国内に投入する4番目の新型車、ティーダ ラティオをご覧いただく予定です。

北米では、テネシー州デカードのエンジン工場の更なる拡張を発表しました。また、ミシシッピー州キャントン工場ではアルティマの生産が始まりました。キャントン工場は、当初、不可能と思われていた、8ヶ月間で新型車5車種の生産を立上げるというコミットメントを見事達成したのです。スマーナ工場やメキシコの2工場と共に、北米の工場が、日産の販売拡大を支え、競争力となっています。

欧州では、スペインのバルセロナ工場で生産性と労働柔軟性の改善を伴う労働協約に合意しました。そして、同工場に投資を行い、パスファインダーと次期型ピックアップトラックの生産を行うことを発表しました。ロシアでは、新たに設立した販売会社が、1月1日から営業を開始しました。上半期には、ロシアの販売台数は二倍以上伸び、10,000台に達しました。

一般海外市場については、複数の戦略的な投資プロジェクトを発表し、この重要な市場における当社のプレゼンスを強化しています。6月には2010年まで総額1億ドルをエジプト事業に投資することを発表し、同事業を中東や北アフリカ地域での事業拠点に位置付けます。その翌週にはタイの事業計画を発表しました。タイ事業には今後5年間に2億5,000万ドル以上の投資を行い、商品ラインアップの強化と生産能力の増強を行い、タイをアジアの輸出拠点に育てます。更に、2004年度上半期には、高級車ブランドのインフィニティを北米以外に拡大し、韓国のソウルに導入しました。

中国では、東風(とんぷう)汽車有限公司が襄樊(じょはん)の新しい乗用車工場にティアナを投入した他、サニーとブルーバードを生産する広州花都新工場が操業を開始しました。また、広州市には3億3,000万人民元にのぼる投資を行い、東風と共同運営する研究開発センターを新設し、中国のお客様のニーズを満たす商品開発を行います。

このように私どもは、各地域における取組みや投資を通じて、将来に備えた土台づくりを行っています。成長は偶然の産物ではありません。成長には、大胆な計画と、念入りな準備と、着実な実行が必要です。ひとつひとつの決定により、今後の価値創造と、利益ある成長に向け、着実に基盤を積み上げているのです。

III. 2004年度上半期販売実績

ではグローバルの販売状況を振り返ってみましょう。販売台数は各国の会計年度に基づいてご報告いたします。つまり、今年度最初の6ヶ月の販売台数です。日本と米国については4月から9月までの台数。欧州、メキシコ、そして一般海外市場の一部は1月から6月までの台数です。各地域の2004年度上半期における販売台数を合算した結果、当社のグローバル販売台数は前年同期比8.8%増の1,596,000台となりました。

2004年度上半期の全体需要は、日本市場が減少し、米国は横這い、欧州と一般海外市場は微増でした。インセンティブの増加は全ての市場で課題となっています。米国における当社のインセンティブは前年から20%増加したものの、その金額は業界平均の半分以下に留まっています。日産は引き続きインセンティブ競争への積極参加はいたしませんが、市場に見合った商品価格の設定は必要だと考えております。厳しい状況ではありますが、会社としては、商品とブランドを重視し、安売りはしない方針です。

上半期の終わりには新型車ティーダを投入しました。下半期にはグローバルであと8車種の新型車を発売予定です。従って、当社の販売は下半期から来年の9月にかけて加速する見込みですが、これは日産180の期間に発売された全ての新型車の販売を評価する対象期間であります。

上半期における販売台数の増加の大部分は2003年度下半期に投入したタイタン、アルマーダ、インフィニティQX56といった新型車の効果によるものです。また、発売からしばらく経った現行車の中にも、引き続き台数に大きく寄与している商品があります。例えばアルティマ、ムラーノ、マイクラ、そしてエクストレイルです。日産は、全ての主要な市場において、強力な商品ラインアップを揃えており、最も厳しい環境においても競争力を維持する力があります。

では地域別にご説明しましょう。まずは日本です。

国内販売台数は前年同期比4.9%減の368,000台でした。その間、全体需要は1.6%減少しました。市場占有率は軽自動車込みで13.6%と、前年から0.5ポイント減少しました。マーチとキューブは引き続き車種別売上ランキング上位10車に名を連ねており、軽自動車の販売は、倍増しました。国内販売台数は、9月に披露した新型車6車種によって、下半期に確実に拡大する見込みです。

次に米国の状況です。2004年度上期の販売台数は489,000台となり16.6%伸びました。米国における市場占有率は5.5%となり0.8ポイントの上昇です。

米国ではニッサン、インフィニティ、両チャンネルとも販売を伸ばしました。ニッサン・ディビジョンの販売は上半期で19.2%増加しましたが、これにはタイタン、アルマーダ、クエスト、アルティマが大きく寄与しています。また、インフィニティ・ディビジョンの販売も引き続き拡大しており、過去最高を記録した2003年度から2%増加しました。

次に欧州の状況です。欧州の2004年1月から6月までの販売台数は前年同期比6.6%増の285,000台でした。マイクラの販売台数は90,000台に達し、4x4(フォーバイフォー)、特にエクストレイルとピックアップも大きく着実に販売増に寄与しています。加えて、今年は新型車の投入がなかったにも拘わらず、販売台数を伸ばしています。現在、欧州事業は、2005年に予定している新型車5車種の発売に向けて、準備を加速しています。

次は一般海外市場です。販売は非常に好調です。2004年度上期は前年同期比15.2%増の454,000台に達しました。

ではいくつか重要な市場についてご説明しましょう。

  • 中国における販売は、84,000台となりました。内44,000台は小型商用車です。
  • アジアの販売台数は92,000台となり、前年同期から18%増加しました。台湾とタイが牽引役を果たしています。
  • メキシコの販売は105,000台となり、前年同期比7%増となりました。

IV.2004年上半期業績

では次に2004年度上半期の業績に移りたいと思います。

連結売上高は4兆79億円となり、2003年度上半期から12.7%増加しました。今回は、東風汽車有限公司、裕隆日産、サイアム・ニッサン等が連結対象となった結果、2,252億円の増収となりました。

連結営業利益は前年同期比0.6%増の4,034億円となりました。売上高営業利益率は10.1%です。では、増減要因をご説明します。

  • 為替の変動は、2004年度上半期の営業利益に対して560億円の減益要因となりましたが、内510億円は円高ドル安によるものです。米ドルに対する平均為替レートは2003年度上期の118円10銭から109円80銭となり、ユーロについては、2003年度上期の131円40銭から133円10銭となりました。
  • 先ほど申し上げました連結対象範囲の変更は、2004年度上期の営業利益に対して170億円の増益要因となりました。
  • 台数増及び車種構成は、1,100億円の増益要因となりました。
  • 販売費は590億円の減益要因となりましたが、これは特に米国におけるインセンティブ上昇によるものです。
  • 購買コストは引き続き改善し、営業利益に対して680億円の増益要因となりましたが、これには原材料市況の高騰による影響も織り込んでおります。
  • 商品性の向上と、規制対応に関わるコストは300億円の減益要因となりました。
  • 研究開発費は増加し、210億円の減益要因になりましたが、これは技術開発、商品開発の為の投資拡大を目的とするものです。
  • 製造費は90億円の減益要因となりましたが、これは主に生産性向上の効果と、キャントン工場における生産立上げ費用の最後の150億円の減益要因が含まれています。
  • サービス保証費は販売台数が増大した結果、130億円の減益要因となりました。

10)一般管理費は47億円の減益要因となりました。

為替レートによる減益と、連結対象範囲による増益がなかったと仮定した場合、2004年度上半期の当社の売上高営業利益率は11.3%で、2003年度上期と同水準となります。

所在地別では、日本以外の全ての地域で利益が増加しました。

日本事業の利益は1,624億円となり、前年同期の1,933億円を下回りましたが、これは主として販売台数の減少と車種構成の悪化、研究開発費の増加、不利な為替レートによるものです。

米国とカナダの利益は1,695億円となり、前年同期の1,597億円を上回りました。販売台数の増加と車種構成の改善が、為替レートとインセンティブによる減益を相殺し、前年同期に対して98億円の増益となりました。

欧州事業の収益は、新車投入がなかったにも拘わらず、引き続き改善しています。利益は193億円となり、2003年度上期の115億円を上回ったのです。

最後に、メキシコを含む一般海外市場の、日産全体の利益に対する貢献は大幅に拡大し、前年同期の316億円から521億円に増加しました。これは、主に、連結対象会社の追加によるものです。

地域間の内部消去はプラス1億円となりました。2003年度上期はプラス50億円でした。

営業外損益は20億円の損失となり、経常利益は4,014億円と、2003年度上期の3,903億円を上回りました。これには、ルノーや日産ディーゼル等、非連結会社の持分法利益が増大したことによる、営業外損益の改善が寄与しました。

特別損益は309億円の損失となり、前年の222億円から悪化しましたが、これは主として欧州での製造事業の再編、子会社における国内の年金基金からの脱退等の、事業打ち切りに伴う経費によるものです。

法人税等は1,207億円となりました。実効税率は32.6%となりました。

少数株主持分、即ち100%子会社ではない、愛知機械や日産車体等からの少数株主持分利益は110億円となりました。

当期純利益は2,388億円となり、前年同期の2,377億円を若干上回りました。

設備投資額は、22.5%増加し、1,850億円となりました。

2004年度上期末時点では、投下資本利益率は通期目標の20%に沿って推移しています。

2004年9月末時点の自動車事業有利子負債は1,002億円です。これにはキャントン工場とリース債務が含まれていますが、計画を過達しており、また2003年9月末時点の2,781億円より大幅に削減されました。

V. 2004年度通期予想

当社のビジネスに伴うリスクと好機について申し上げます。引き続き重大なリスクと考えられるのは、まず第一にインセンティブの増加、そして原材料市況の高騰、金利の上昇です。最大の好機は日産180の迅速な実行です。

以上のリスクと好機を鑑みても、通期については当初の予測に変更はありません。2004年度通期の連結売上高は8兆1,760億円、連結営業利益は8,600億円、売上高営業利益率は10.5%、経常利益は8,460億円、そして当期純利益は5,100億円を見込んでおります。

通期のグローバル販売台数は338万台を想定し、2003年度から10.5%の増加を見込んでいます。

VI. まとめ

日産180の完遂を目指し、日産は着実な歩みを続けています。今までの実績と将来の可能性が評価され、この半年間だけで個人投資家の株主数が17,000人増えました。私どもはグローバル市民としての責任を果すと同時に、最高の業績を維持しています。本日は当社として初めてのサステナビリティ・レポートを配布させていただきます。ご一読いただければ、日産はどのような会社か、どのような事業運営方針なのかをご理解いただけるでしょう。

端的に申し上げますと、二つの要素が、当社の業績の中核を成しています。その二つとは、世界中の社員の高いモチベーションと商品です。

本日は、日本市場のお客様に新たな商品をご披露いたします。ティーダ ラティオです。ハッチバックのティーダと同様に、ティーダ ラティオも、同クラスの基準を上回る質感をご提供します。モダンな室内は、高級セダンに匹敵する広さであり、幅広いシートとゆったりと足を伸ばせる後部座席が快適性をお約束します。丁寧なつくりこみと手頃な価格で、ティーダ ラティオはお客様にご満足いただけるコンパクト・セダンの新たなスタンダードになるでしょう。

お客様とステークホルダーの方々全員にお約束します。私どもは大いなる価値の創造と、利益ある成長に向けて邁進してまいります。今後、当社は様々な課題に直面することもあるでしょう。しかし、我々は、日産には更なる成果を生み出す力があると信じています。