2002年10月23日
「日産180」進捗状況及び02年度中間決算見通しに関する記者会見
ゴーン社長スピーチ
I/ はじめに
日産180は進行中です。しかもかなり順調に進んでいます。新たな3ヵ年計画の開始から6ヶ月経過した現在、日産は5つの半期連続で過去最高の利益を計上する予定です。日産180の成果は、よりスリムで効率的な事業、販売台数増加、コスト削減という要素が相俟って生み出されます。つまり成長のための基盤作りをしてきたわけですが、その結果、成長を実現したのです。
2002年度上半期、
・ 連結営業利益は01年度上期から84%増加し、3,480億円を達成する見通しです。
・ 連結売上高営業利益率は10.6%を見込んでおり、業界トップレベルの収益性を実現します。
・ 連結売上高は10.2%増加し3兆2,800億円となる見込みです。
・ グローバル販売台数は前年比7.5%増の1,386,000台に達しています。
これらの数字は日産の再建プロセスの抜本的な転換を証明するものです。1999年10月、日産リバイバルプラン(NRP)のコミットメントが設定されました。当時、当社は深刻な不信感や不安に直面していました。NRPは当初予定していた3年ではなく、2年間で期待された以上の実績を挙げて完了し、より効率的に事業を管理する仕組みを確立したのです。
日産180は、NRPが築いた基盤の上に、再建プロセスの第2段階、最終段階として、利益ある成長を実現するという信念のもとに策定されました。日産180は2004年度末までに100万台の販売台数増、業界トップレベルの営業利益率、そして負債をゼロにすることを目的としています。本日発表致します上半期の実績は、当社が着実に前進していることを示しています。
本日はまず、今年度上半期における当社の全世界の販売状況をご説明した上で、暫定値ではありますが、上半期の営業実績をご報告いたします。続いて02年度通期の見通し及び修正しました予測を発表いたします。
II/ 成長軌道に乗った日産: 02年度上半期販売実績
これまでに何度か申し上げたように、利益ある成長とは、計画して初めて実現するものです。当社は、将来の利益ある成長を目指し、計画を策定しておりますが、最近決定しました中国への投資もそのプロジェクトの一つです。
今回の投資は、今まで行われた中国の自動車産業への投資とは性質が異なります。9月19日に当社は東風(トンプウ)との新たな提携事業に85億5千万元、すなわち1204億円を出資し、新・東風汽車有限公司の50%を保有することを発表いたしました。このフルラインアップを揃えた新たな自動車メーカーでは、2006年までに55万台の販売を目指しています。55万台の内22万台は日産ブランドの乗用車になる予定です。2006年以降については、今後10年以内に90万台の販売台数を可能とする見込みです。
今回の投資により、日産180の期間中に最低8万台の拡販を見込んでいます。しかしながら、数字が示す通り、中国という新たな市場は、当社にとって日産180以降に遥かに大きな可能性を開くことになります。
では現状をご説明いたします。
グローバル販売台数は各国の会計年度に基づいてご報告いたします。つまり、今年度の最初の6ヶ月ということです。日本、アメリカについては2002年の4月から9月まで。ヨーロッパ、メキシコ、南アフリカについては1月から6月までを基準としております。その結果、02年度上半期のグローバル販売台数は、前年同期比7.5%増の1,386,000台でした。2002年の4月から9月までの直近6ヶ月間の各地域の販売台数を合算すると、前年同期に比べ、9.3%上昇し、世界中で販売が加速していることを示しています。
この結果は市場を問わず、主として刷新した商品計画によってもたらされたものです。日産180の期間中に投入する28の新型車の内、12が02年度に発売される予定です。現在まで、6つの新型車を投入しました。
グローバルでの自動車市場は全体としてはそこそこであったものの、業界の販売の内訳は単純に好調と言えるものではありませんでした。上期には日本・欧州市場共に落ち込み、米国の全体需要は引き続き好調だったものの、インセンティブは大変高いレベルで推移しています。
では地域別にご説明しましょう。まずは日本です。
02年度上半期の当社の国内販売台数は01年度上期から12.1%増の383,000台でした。軽自動車を除いた登録台数は4.1%増加しています。重要なエントリーレベルのクルマが牽引役となりました。ご承知のように、当社は最近、このセグメントに新型車3車種を投入しました。
マーチは発売以来、月間販売台数は平均14,500台以上を記録しており、当初のライフ平均目標の8,000台を大きく上回っております。また、日産初の軽自動車モコは、発売から半年を経て、販売は好調で、27,000台の売上を上げています。2週間前に新型キューブを発売しました。既に11,500台以上受注し、順調な滑り出しを見せています。更に、フェアレディZは僅か2ヶ月で当初予定していた1年分の受注台数を達成しました。
昨年は横這いだった国内の市場占有率は上昇しています。軽自動車を含めた当社の市場占有率は、01年上期から1.6ポイント増加し、13.8%になりました。軽自動車を除くと、前年の17.6%から18.8%に伸びたことになります。これらの実績と今後投入予定の新型車により、日産180の下で日産は国内市場における30万台の増販を目指しており、その目標に向けて着実に前進しています。
次に米国の状況です。02年度上期、新商品の効果により、米国の販売は好調です。上期の販売台数は前年同期比8.3%増の378,000台でした。また、市場での競争が激化しているにもかかわらず、市場占有率も前年の4.0%から4.2%に上昇しています。
アルティマの販売は引き続き好調で、どこまで増産対応できるかが唯一の問題です。8月の発売以来、350Zは順調な滑り出しを見せ、8月の販売開始以前に既に8,000台を受注しました。インフィニティ・チャンネルについては、G35が成功を収め、米国における日産の高級車チャンネルの売上に大きく寄与しています。
強力な商品群により、当社はインセンティブ競争に加わることなく、売上を伸ばすことができました。先ほども申し上げましたように、米国の自動車市場におけるインセンティブは、月によっては驚くほど高いレベルに到達しましたが、当社は市場シェアの向上のみを目的とするような行動には一切出ませんでした。そのような行為は短期的であり、当社が目指す収益性の目標とは相容れない上に、ブランド力向上を目指す努力を鈍らせるものだからです。
欧州の2002年1月から6月までの販売台数は前年同期比9.4%減の251,000台でした。また、市場占有率は2.7%から2.5%に減少しています。現行のマイクラがモデル末期であるため、欧州では当初から台数面で厳しい状況を予想していました。9月末のパリ・モーターショーで発表しました新型マイクラの生産は11月末に開始します。欧州では引き続き収益性を優先させますが、日産は収益目標と矛盾するような台数の追及はいたしません。
プラス面について申し上げますと、欧州向け商品ラインアップの刷新は7月に投入したプリメーラのハッチバックに続き、数ヵ月後にはルノーが供給する新しいディーゼルエンジンも搭載されます。また、車齢が高くなっている小型商用車については、ルノーとのクロス・バッジングであるインタースター とプリマスターを皮切りに、ラインアップの入れ替えが進んでおります。9月末には、日産のバルセロナの工場でプリマスターの生産を開始しました。
次は一般海外市場です。一般海外市場における販売も好調で、メキシコとカナダを含めた市場で01年度上期から16.2%増加し、374,000台を記録しました。一般海外市場は複数の国から成っているため、全体の市場占有率を計算する意味がないのはご存知の通りです。 とはいえ、いくつかの最も重要な市場について申し上げますと、メキシコでは前期からの勢いを持続し、前年同期比18.4%増の105,000台を達成しました。牽引役となったのはルノーのクリオの派生車であるプラティーナの投入です。プラティーナは人気車種ツルの販売にも繋がっています。4月から9月の中国の販売台数は前年同期比80%増の36,000台でした。
III/ 02年度上半期 業績予想
次に02年度上半期の業績予想に移りたいと思います。これから発表します数字は日産180のみならず、NRPのもとでなされた決定の賜物でもあります。では上期のハイライトをご紹介しましょう。改めて申し上げますが、今日ご覧いただく決算数値は暫定値であり、11月19日に監査済みの決算値を発表するまでに若干の調整を行う可能性があります。
連結売上高は01年度上期から10.2%増加し、3兆2800億円となる見込みです。主な増収要因は販売台数増と車種構成の改善です。まず、02年度と01年度を比較するために、2点、調整をする必要があります。01年度下半期の決算を発表した時にも申し上げましたように、米国とメキシコのインセンティブ費用に関する会計上の取り扱いを変更しました。現在、インセンティブ費用は売上高から直接差し引いて算出しています。その影響が、上半期の600億円の売上減少要因となっております。第二に、連結対象範囲の変更により、200億円のポジティブな影響が出ています。これは主にアルティアとドイツ日産が売却により連結会社対象外となった一方で、三菱自動車との合弁によるオートマティック・トランスミッション・メーカーのダイヤモンドマティック社を連結対象としたことに起因しています。以上を調整すると、02年度上期の連結売上高は、01年度に対し、11.7%増加したことになります。
連結営業利益は01年度上期から84%増の3,480億円と増益する見込みです。売上高営業利益率も10.6%を達成する予定であり、日産180の3年間のコミットメントである8%を過達しました。これは過去最高の半期ベースでの営業利益率であり、自動車業界トップレベルの収益性を実現するものです。では、増減要因をご説明します。
1) 02年度上半期の営業利益に対して為替の影響はほとんどありませんでした。全通貨の影響を合算すると、70億円の増益要因となりました。米ドルに対する平均為替レートは01年度上期の122.2円から02年度上期は123.1円となり、ユーロについては01年度上期の108.1円から116.3円となりました。
2) インセンティブ費用の会計上の取り扱い変更は営業利益には影響を及ぼしませんが連結対象範囲の変更は、30億円の増益要因となりました。
3) 台数増減及び車種構成では、01年度上期に対し、640億円の増益要因となりました。先ほども申し上げましたように、日本、米国、一般海外市場における販売台数の増加は欧州における売上減を補って余りあるものでした。日本における車種構成の悪化がその他地域の改善を相殺したため、グローバルで、車種構成は若干の減益要因となりました。
4) 販売台数の増加に伴い販売金融会社のビジネスも拡大し、70億円の増益要因を創出しました。
5) 販売費は若干減少し、50億円の増益要因となっています。当社がインセンティブ管理を徹底した結果、欧州以外の市場ではインセンティブは減少しています。
6) 生産コストおよびその他の項目は220億円の増益要因となりました。
7) 購買部門は引き続き大きく貢献し、購買コスト削減により、1020億円の増益をもたらしました。これは年間の購買コスト削減にすると7%近くになり、コミットメントの5%を大きく上回っています。日産180における購買活動の貢献に加え、NRPで実施した購買方針の成果も出ています。通期の見通しも明るく、コミットメントを確実に達成する見込みです。99年以来実施している購買方針によって生み出された効率性は、当社のサプライヤーにも大きく寄与しています。ご承知のように、いくつかのサプライヤーは既に上半期の予想を上方修正しています。
8) 商品性向上と、規制対応に関わるコストは320億円の減益要因となりました。
9) 予定の通り研究開発費が増加し、170億円の減益要因となりましたが、これは日産180での技術・商品開発の強化を目的とするものです。
10) 一般管理費の増加による影響は20億円の減益に留まり、成長段階においても適切に管理されていることを物語っています。
所在地別では、4地域とも利益の改善が見られます。
02年度上半期の日本事業の利益は前年を大幅に上回ります。前年の1280億円から1780億円に増加する見込みです。
米国、カナダを含む北米については、利益は倍増しました。営業利益は前年の490億円から1140億円に増加しました。
欧州事業も引き続き改善しつつあり、赤字から脱却しました。01年度上期の50億円の赤字から02年度上期には70億円の黒字を計上しました。
最後に、一般海外市場は、日産全体の利益に更に大きく寄与し、同地域の利益は320億円から460億円へと改善しました。
地域間の利益の内部消去は01年度上期のマイナス150億円に対し、02年度上期はプラス30億円となる見通しです。
営業外損益は250億円の損失となり、昨年度に対し、若干改善いたしました。これは財務コストの減少によるものです。
その結果、経常利益は前年の2倍にあたる3230億円を見込んでおります。
税引後当期利益は前年同期比24%増の2860億円となる予定です。当社は再び通常の税率に戻りつつあり、当期利益は営業利益ほど増加するわけではありません。今後は過去の損失による益の税効果が発生することはありません。
日産180の重要な側面は、自動車事業実質有利子負債が示す財務基盤の柔軟性です。ご承知のように、当社は日産180の最終年度までに自動車事業実質有利子負債ゼロを目標としています。この目標についても、負債ゼロに向けて大きく前進したことをご報告いたします。02年度上半期の自動車事業実質有利子負債は01年度末の4320億円から2740億円に減少しました。資産売却はNRPの2年間で5300億円相当の負債削減に寄与しましたが、02年度上期には740億円の効果をもたらしました。負債の削減は、主として事業からの現金収入の改善によって実現しました。
IV/ 予測
環境は常に変化しており、当社のビジネスはリスクと好機にさらされています。
当社にとってのリスクには、減速する米国市場、未だ解決を見ない米国西海岸の港湾封鎖、そして国内金融市場の不安があります。
好機は日産180にあります。リストラクチャリングの大部分は既に実行済みです。今後、日産は成長を目指す活動と日産史上でも最も積極的な商品計画に軸足を移します。02年度には12の新型車により世界中で21の商品投入を予定していますが、そのうち10の商品はこれから下期の実績に貢献するものです。
国内の全体需要は5,740,000台を見込んでいますが、これは当初の予測5,790,000台を若干下回ります。当社の国内販売台数は軽自動車を含め816,000台を見込んでおり、当初予測の807,000台から上方修正しました。米国の全体需要は今のところ好調で、日産は通期の予測を当初の15,600,000台から16,900,000台に上方修正しました。当社の米国における販売台数予測も771,000台から795,000台に増加しました。欧州の全体需要は当初の計画である18,600,000台から微増の18,800,000台に見直しました。当社の販売台数は計画の500,000台から484,000台に下方修正しました。メキシコ、カナダを含む一般海外市場の当社の販売予測は743,000台です。従って、グローバル販売台数は通期で前年比9.3%増の2,838,000台、台数にして241,000台の増加を見込んでおります。これは日産180でうたわれている終了時までの100万台の増販台数のおよそ4分の1を初年度に見込んでいるということになります。
以上を鑑みて、通期の業績予想値の修正を本日、東京証券取引所に届け出を行います。通期の売上高は6.8兆円、営業利益は7,200億円、売上高営業利益率は10.6%、経常利益は6,600億円、税引後当期利益は4,900億円になる見込みです。更に、02年度末の自動車事業実質有利子負債は800億円になると予想しています。以上の予測値の前提となる下半期の為替レートについては対米ドルは当初予想と同じ125円、ユーロは当初予想110円から120円に変更しております。8%の営業利益率達成と自動車事業実質有利子負債ゼロは達成に向け速いペースで進んでいます。
今朝の取締役会議で、ご覧いただいたプレゼンテーションの内容を承認いたしました。また、当社の配当政策についても検討しましたのでその結果をご報告いたします。今年の6月に開催された株主総会で、個人株主の方々から理にかなった増配のご要望をいただきました。それを受けて、当社取締役会は透明性の高い、そしてできれば高い関心を持っていただきたい日産180の3年間の配当政策をご提案することを決定いたしました。これは、日産180の最終年度に配当金を01年度の3倍にするという内容です。
今年7月、01年度について、日産は一株当たり8円の配当を行いました。また、11月19日に届出を行い12月10日に支払い予定の02年度の中間配当金につきましては、一株当たり4円とする見込みです。02年度期末配当については、更に一株当たり10円の配当を行うことを03年6月の株主総会で提案する予定です。従って、02年度については合計14円の配当を支払うことになります。03年度については、一株当たり19円の年間配当、04年度については一株当たり24円に増配する予定です。
04年度に予定しております一株当たり24円の配当金は、01年度の配当金の3倍に相当します。以上のことから、日産には、今後更に業績を伸ばす自信があるということがお分かりいただけるかと思います。
V/ まとめ
本日、皆様にご覧いただいた財務実績は注目に値するものであり、当社の実績の改善を証明しています。日産は変革しています。進歩しているのです。目に見える、意義の有る実績をあげているのです。
当社の財務諸表にも、ショールームにもそれは現れています。復活した日産のもうひとつの例として、当社の商品ラインアップに新たに追加する車種をお見せしましょう。ティアナです。
ティアナは日本・アジア市場向けの新しい高級セダンです。ティアナは現代の日本らしさ、バランスの取れた快適性と力強さを兼ね備えています。この車の詳細は2003年2月の発表・発売時に改めてご説明します。今後5ヶ月間で、グローバルで更に6つの新商品を発表する予定です。
最後に、日産は再建プロセスの道半ばだということを改めて申し上げたいと思います。再建プロセスは2000年4月のNRP開始と同時にスタートしました。当時、日産は成功することはおろか、存続も危ぶまれていたのです。今日、発表しました実績は日産の真の力、従業員の才能、献身の証です。
当社の計画は完成には程遠いものです。私どもは自動車業界の競争および変動し競争の激しい環境の厳しさを十分認識しています。今後も成長、収益性、そして財務基盤の強化に取り組んでいきます。
日産のビジョンは明確です。自信もつけてきました。長期的な成功を目指すという決意に揺らぎはありません。今日、2002年の10月に日産の業績はピークに達したわけではありません。日産の真の実力を示すのはまだこれからなのです。今後の日産にご期待下さい。
ご静聴ありがとうございました。
以上 |