2002年5月9日

日産リバイバルプラン及び日産180に関する記者会見 ゴーン社長スピーチ

I/はじめに

日産リバイバルプラン(NRP)は終了しました。NRPを開始してから2年が経ちますが、公表したコミットメントにつきましては、全て1年前倒しで公約以上の実績を挙げました。今日は2001年度の振り返りをしますが、当社は2001年度、過去最高の通期利益及び4半期連続で過去最高の営業利益を計上する見込みであることをご報告いたします。これは正にNRPの成果であり、'99年当時、外部の最も楽観的な見方においてすら、予想し得なかった結果です。昨年の今頃、私は日産が復活したと申し上げました。今年は日産が、競争力及び収益力を兼ね備えた世界に通用するグローバルな自動車メーカーになりつつあることをお伝えしたいと思います。

'99年10月のNRP発表時、 当社は1つ目のコミットメントとしてNRP初年度である2000年度に当期利益を黒字化することを約束し、それを実現しました。

NRPの2つ目のコミットメントは、2002年度末までに4.5%の売上高営業利益率を達成することでしたが、これも実現しました。2000年度には既に4.75%を達成し、今回2001年度決算において1年前倒しで、7.9%の営業利益率を計上する見込みです。

NRP第3のコミットメントは、自動車事業実質有利子負債を2002年度末までに50%削減し7000億円以下に抑える一方で、投資額を売上高の3.7%から5%近くへ引き上げるというものでした。この約束も果たしたのです。2001年度末現在の自動車事業実質有利子負債は4,350億円で、過去24年間で最少の数字です。

NRPとその成果のお陰により、当社は成長に向けての体制を整えることができました。2002年度は新たな計画である日産180(ワンエイティ)のもと、幕を開けました。日産180とは当社の業績を更に向上させ、継続的な利益ある成長という新たな局面を開くものです。

今日は2001年度の営業実績を振り返ると共に、暫定値ではありますが、ポイントとなる財務値をいくつかご報告いたします。続いて新しい3ヵ年計画である日産180の詳細をご説明した上で、最後に2002年度の見通しについてお話しいたします。その後、プレゼンテーション資料を配布しまして、質疑応答に移りたいと思います。

改めて申し上げますが、今日ご覧いただく2001年度の決算数値は暫定値であり、5月20日の取締役会終了後に最終的な数字を発表するまでに若干の調整を行う可能性があります。また、今日の数値は、昨年10月18日に公表しました業績予想値の修正として、東京証券取引所に届出を行っております。

II/ 2001年度まとめ

A/ 日産リバイバルプラン(NRP)振り返り

NRPでは、全てのコミットメントを達成したことに加え、NRPの屋台骨である一貫性を持った主なアクションプランも全て実行され、それぞれの目標を達成致しました。では簡単にご紹介しましょう。

20%の購買コスト削減は達成しました。 取引サプライヤーの数については部品メーカーを40%削減し700社に、またサービスサプライヤーは60%削減しました。購買機能を整備し、グローバル化やルノーとの共同購買組織(ルノーニッサンパーチェシングオーガニゼーション)の設立などを行った結果、当社はベンチマークとの格差を縮め、さらに競争力を高めつつあるのです。

この成功に重要な役割を果たしたのは日産3-3-3活動です。日産3-3-3活動とは、当社とサプライヤーとの関係、及び当社のビジネスのやり方を根本的に変えたアクションプランです。購買コスト削減総額の40%以上がこの日産3-3-3活動の成果によるものです。

生産部門については、5つの工場を閉鎖する計画が完了しました。ただ、例外として中近東向けの需要増加により、九州工場におけるZ24エンジンの生産を数週間延長しましたが、これも遅くとも6月には打ち切る予定です。

生産体制の効率化は目覚しい効果を発揮しました。NRP実施以前の工場稼働率は平均51%でしたが、現在は平均75%に向上しました。当社のプラットフォーム構成と生産体制は簡素化されました。NRP開始当初は国内7工場で24ものプラットフォームから車両を生産しておりましたが、現在は、国内4工場で15のプラットフォームから車両を生産しております。

生産体制に関する計画の実施は模範的なものとなりました。計画台数に全く支障をきたすことなく、また多くの人の異動、大量の機械、設備の移動があったにも拘わらず生産停止や混乱は一切ありませんでした。

国内の販売網についても、アクションプランを着実に実行しました。355の不採算、或いは重複する店舗を閉鎖し、合理化を進めたのです。これは実施前の拠点数の10%強に相当します。

また、連結子会社である国内販売会社の数についても2割削減し、その数を80社にしました。この販売網合理化は、連結販売子会社の統合による効率化や地場販売会社への売却及びMBO(マネジメントバイアウト)による起業家精神の喚起を行うことにより、推進してきたものです。

2001年度末のグローバルな総従業員数は、当初目標の2002年度末127,000人に対し、125,100人になりました。これは99年10月に発表した21,000人を上回る削減となります。その大部分が自然減や定年退職などによるものですが、ノンコアビジネスの売却によるものも含まれています。

また、各プログラム当たりの研究開発業務の効率化についても計画以上の実績を挙げました。2年弱で効率は25%以上改善し、更なる技術や商品の開発を支えるための原資を生み出したのです。

更に、ノンコア資産の売却は、この2年間で総額5,300億円以上のキャッシュを生み出し、1年前倒しで目標を達成しました。売却によって得たキャッシュで自動車事業の有利子負債を大きく圧縮し、資金をコア事業である自動車事業発展のための活動に振り向ける余裕が生まれています。

以上の成果はNRPを速やかに、徹底して、妥協することなく実行したからこそ可能だったのです。'99年のNRP発表時、私は計画の策定は再建の取組みの5%に過ぎず、残りの95%は実行にかかっていると申し上げました。NRPを当初予定していた3年間ではなく、2年間で達成できたことは、日産の社員、当社のパートナー、サプライヤー、販売会社等、NRPの精神を全身全霊で受けとめた全ての人々の努力の賜物です。また、日産とルノーのアライアンスのポテンシャルを示すものでもあります。

B/ 事業活動

では2001年度の事業活動を振り返ってみましょう。販売台数と市場占有率については既に発表済みであり、お配りする資料にも記載しておりますので詳細は割愛します。勿論、ご質問のある場合は質疑応答の場でお答えいたします。今日はその数字の裏付けについて一部ご説明して、販売状況のより定性的な面をご覧いただきたいと思います。

2001年度のグローバル販売台数は前年比1.4%減の2,597,000台でした。半期毎に見てみますと、下期は上期に比べ好調でした。上期の販売は対前年同期比で3.6%減少したものの、下期には0.8%増加しました。これはNRPの下で計画された積極的な新車投入の効果の現われです。

では地域別に詳しくご説明しましょう。まずは日本です。

ご承知のように、国内販売が芳しくない大きな要因は、これまでの当社の商品計画が顧客の求めるものに必ずしも合致していなかったことにあります。特に当社のエントリーセグメントの車種は車齢が高くなり、収益性も極めて低かったことから、市場で十分に戦うことができなかったのです。販売会社は集客力のなさ、顧客基盤に若年層が少ないこと、そして他社ユーザーを獲得する機会が少ないことを嘆いていました。

新型マーチはルノーとの共通プラットフォームのもと開発された、当社のエントリーレベルのラインアップを刷新する最初の商品です。新型マーチには既に大量のご注文をいただいております。4月末までの受注は累計で55,000台以上にのぼりました。台数の多さもさることながら新型マーチは、今まで日産車を購入されたことのないお客様の来店を促してもいます。

単なる良い商品とヒット商品の違いは、その車が消費者を自社ブランドにひきつける魅力があるかどうかです。現在、新型マーチを購入された方々の40%が他社ユーザーです。新型マーチが日本市場における当社の業績に大きく寄与する事を確認させる極めて明るい兆しであります。

ご存知のように、重要なエントリーレベルのクルマはマーチだけではありません。2001年度終了直後の4月には日産初の軽自動車モコを発売しました。モコの効果は2001年度の決算には反映されておりません。モコにも多数のご注文をいただいており、発売後3週間目にあたる4月末時点で9,500台以上を受注しました。軽自動車市場には今回初めて本格参入したわけで、モコの販売台数はそのまま当社の販売台数増につながります。

次に米国の状況です。

2001年度の特徴は上半期と下半期の実績に大きな差があるということです。ご記憶かもしれませんが、上期の販売は14%落ち込み、市場占有率も4%に低下しました。上期には新車投入もマイナーチェンジもなく、2000年度下期からの新車効果もありませんでした。 一方、下期には状況が一変しました。米国における販売は9.4%増加し、3月の市場占有率は5%に到達しました。勿論、下期の売れ行きに重要な役割を果たしたのは強力な商品です。

国内向けエントリーレベル同様、当社は米国の中型ファミリーセダン市場の顧客のニーズも注視してきました。その結果、サイズ、パワー、スタイリング、そして全体的な性能の面で、アルティマを一新することにしました。9月に投入した新型アルティマは、変動が激しく厳しい市場環境にも拘わらず販売が好調で、供給が追いつかないほどです。

1月のデトロイト自動車ショーではアルティマが日本メーカーで初めて北米カー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。翌月には、カナダ カー・オブ・ザ・イヤーも受賞したのです。アルティマはヒット商品となりました。ヒット商品は短期間で様々な波及効果をもたらします。そのいくつかをご紹介しましょう。

当社と主な競合他社との間には、同等のモデルの実売価格に大きな格差があり、当社はより多額のインセンティブを費やさざるを得ませんでした。現在、当社のブランド力を示す指標においてトヨタの実売価格をベンチマークにしておりますが、その差は計画より早く縮小しています。

米国の大手自動車メーカー数社に端を発したゼロ金利の導入や多額のインセンティブ攻勢にもかかわらず、当社はインセンティブを抑制するという方針を貫き、インセンティブ削減にも成功したのです。

アルティマ発売以降、新規の顧客や若い方々が来店するようになりました。また来店者数が増えたのに伴い、顧客はアルティマ以外の商品にも目を向けるようになりました。下期のセダンの販売状況を見てみますと、マキシマの販売はアルティマとの競合もなく9%増加しました。また、セントラの販売も14.3%アップしています。

以前、「自動車メーカーには良い商品で解決できない問題はない」と申し上げました。2001年度下期の結果はまさにその具体例です。近い将来、更なる具体例をお見せできるでしょう。

C/ 財務実績

次に連結決算の業績予想に移りたいと思います。まずは損益計算書についてご説明します。

2001年度の連結売上高は前年比1.8%増の6兆2千億円となります。前年まで採用していた会計基準及び連結範囲を適用した場合には、売上高は5.4%増となります。変更は以下の二点です。第一に、より国際会計基準に近づけていく一貫として以前は費用項目として計上していた米国とメキシコにおけるインセンティブ費用を、売上高から直接差し引いて算出をしています。その影響が、989億円、1.6%相当の売上減少要因となっております。第二に、バンテック、テネックス、日産陸送、国内の連結販売会社等、18の連結会社株の譲渡を行っており、この影響が1,132億円、1.8%相当の売上減少要因となります。

連結営業利益は前年の2,903億円から68%増加し、過去最高の4,900億円に改善します。売上高営業利益率も7.9%を実現し、過去最高の値となっています。2002年度末までの目標として設定していたNRPのコミットメントである4.5%を前倒しで達成します。特に下期に限るとより高い数値となっており、9.0%を越える売上高営業利益率を達成します。

2000年度の営業利益2,903億円と2001年度の4,900億円との差を詳しく見ていきましょう。8つの項目に分けてご説明します。

  1. 2001年度も購買コスト削減は収益改善に最も重要な役割を果たしました。 NRP期間中の合計20%の購買コスト削減の内、2001年度分の購買コスト削減9%は、2,450億円の増益要因となりました。
  2. 研究開発費は為替の影響を除いたところで280億円増加しました。これは、商品ラインアップの刷新及び増強と、新技術の研究開発によるものです。
  3. 商品力向上と規制対応コスト増による減益要因は620億円です。2000年度の数字を若干下回っているものの、これは自動車メーカーにとって、今後も見込んでいかなければならないものです。
  4. グローバルな販売台数減と車種構成の悪化は、通年で710億円の減益要因となりましたが、中間決算時に公表した予測値と比べると、下期に特に米国において改善がみられました。
  5. 販売費は、110億円増加しました。これは主に日本で旧型マーチの打ち切り等により、下期に販売費が増加したことに起因しています。米国・欧州における販売費に大きな変動はありません。
  6. その他として90億円分の減益要因がありました。
  7. 先ほど申し上げた、売上高の認識に関連する会計基準の変更による営業利益への影響はありませんでしたが、18社の連結会社を連結対象からはずしたことにより、110億円の減益要因となりました。
  8. 円安基調は通年で1,470億円の増益要因となりました。
所在地別には以下の通りです。

日本では、売上に占める収益車種の比率が引き続き拡大したことと為替環境の更なる好転により、利益が大きく改善しました。営業利益は2000年度の1,743億円から2,900億円になりました。

米国とカナダの営業利益は販売台数減により、上期は振るわなかったものの、下期には飛躍的な改善を果たしました。通年では2000年度の1,134億円に対して2001年度は1,590億円を達成しました。

既に申し上げましたように、欧州事業は2001年度に黒字化を果たしました。2000年度の273億円の営業赤字に対し、2001年度は30億円の利益を計上する予定です。

一般海外市場については、2000年度の422億円の営業利益に対し、2001年度は580億円を達成しました。各国で当社のプレゼンスを強化する中、収益性の向上は心強いかぎりです。

最後に、地域間の利益の内部消去は2000年度の123億円に対して、200億円となりました。

今日、最後にご覧いただく損益計算書の暫定値は当期純利益です。まだ連結ベースでの税額の調整が残っているものの3,720億円を見込んでおり、売上高当期利益率は6%となります。この当期利益は、日本での有価証券売却に伴う特別損失270億円を加味したものです。

このような好決算となることから当社の取締役会では、6月に行われる株主総会にて一株あたり配当金を7円から14%引き上げ8円として提案することを決定しました。我々は、株主の皆様に中期的に満足いただけるような安定した配当政策を構築していきたいと考えております。 また日経平均株価の推移に対し、当社株価は大きく上昇基調が続いてきたことも付け加えさせていただきます。

貸借対照表は、2001年度に目覚しい改善を果たしました。自動車事業実質有利子負債は大幅に減少し、予想値とNRPのコミットメント値を共に過達しました。2001年度には1,920億円にのぼった資産売却もさることながら、事業収益や運転資金の改善がより多くのキャッシュを生み出しました。それにより、2001年度末の自動車事業実質有利子負債は4,350億円になりました。これは一年間で5,180億円の減少となります。 全ての数字が心強い状況を物語っています。これらはNRPの目的であった、持続する利益ある成長を支えるためのしっかりした財務基盤の再構築を実現できたことを示しています。当社は競争力を強化し、新たな3ヵ年計画である日産180に必要な勢いを生み出しました。

III/ 日産180

A/ コミットメント

日産180はNRPの成功を土台にして、利益ある成長に焦点を当て日産の再建プロセスを完結させるものです。

ご承知のように、日産180の目標はその名前にこめられています。ではひとつひとつ簡単にご説明しましょう。

最初の「1」は2001年度を起点として2004年度末までに当社の全世界の販売台数を100万台増やすという意味です。"2004年度末までに"と申し上げている期間は、具体的には、2004年度末を中間点とした1年、つまり2004年10月からの1年間を指します。目標台数には日産と関連ブランドの乗用車及び小型商用車が含まれます。販売台数は一定のペースで増加するわけではありません。新車効果の積み重ねと、新セグメントへの参入(日本における軽自動車や米国のフルサイズトラック)、及び新規市場への参入(ブラジル、インドネシア、及び中国など)により、日産180の期間後半に特に拍車がかかると見込んでいます。

2番目の数字の「8」は、現行の会計基準に基づいて、8%の売上高営業利益率を達成することです。8%の売上高営業利益率を実現することで、日産はグローバルレベルでみた自動車業界でトップクラスの収益性を継続して実現することになります。

最後の数字「0」は、2004年度末までには自動車事業実質有利子負債をゼロにするという目標です。自動車事業実質有利子負債も現行の会計基準に基づいて算定されます。

さて、今後3年間に予想される外部環境について主要な前提条件を設定しました。前提条件においては、為替レートについても全体需要についても、現実的かつ堅めの数字を選びました。

為替レートについて日産180の期間は、米ドルは2002年度には125円、2003年度及び2004年度は115円を、ユーロは3年間を通じて110円を前提値として設定しています。日産180以降の期間において、目標を設定する際は、対ドル・対ユーロ共に100円を前提とするつもりです。

成熟市場では今後3年間に大幅な市場拡大は望めないと考えており、2004年度において、日本では軽自動車を除く市場で6.7%の拡大、米国は0.5%の微減、欧州については2.1%の拡大を見込んでいます。成長の可能性がより大きいのはアジアや南米等の市場であると考えています。グローバル市場では軽自動車を含み3年間で3.9%、あるいは年平均1.3%の拡大を見込んでおり、これは妥当な数字であると言えるでしょう。

B/ 4つの柱

日産180の達成は、4つの柱、すなわち売上の増加、コスト削減、品質とスピードの向上、そしてルノーとのアライアンスの最大化にかかっています。

売上の増加

100万台の販売台数増の地域別の内訳は次の通りです。日本30万台、米国30万台、欧州10万台、そして一般海外市場30万台です。2001年度の260万台を起点にすると100万台の増加は、3年間で40%近くの販売台数増に相当します。

これにより2004年度には、グローバル市場の占有率は、現在の4.7%から6.1%に上がることになります。 地域別では、日本では軽自動車を除くシェアが17.9%から22.5%に上昇することになりますが、これは当社の10年前のレベルに相当します。米国では2001年度の4.2%から過去最高の6.2%になる一方、欧州では現行の2.5%から3.1%になります。一般海外市場は複数の国から成っているため、市場占有率を算定することはできません。ただ、一般海外市場でも数多くの国で日産のプレゼンスを飛躍的に向上させることができるでしょう。

販売台数の増加と市場占有率の向上は容易にかつ自動的に達成されるわけではありません。段階を踏んで入念に計画しなければ実現できないものです。既にNRPの期間中に新型車の企画、開発に注力し、ブランドの再構築に取り組んできました。この期間に開発中だった商品を、日産180の期間中、順次市場投入していきます。

また当社ではすべての主要市場において、競合他社との実売価格の比較、中古車価格、ブランド力を調査してきました。当社のポジション改善のためにはまだ多くの課題が残されています。

ブランド力については既に2つの目標を設定しています。第1の目標は日米において、トヨタとの実売価格及び下取り価格の格差を50%縮小することです。2つ目は欧州でフォルクスワーゲンをベンチマークとし、その差を平均で30%縮めることです。一般海外市場については、市場毎に今後目標を設定する予定です。

また、日産が再び革新的な商品を開発する能力を回復し、先進的な企業として認識されるために、商品コンセプトを作るまでの上流プロセスを見直しました。 我々独自の調査によると、90年代初頭日産車は、国内で最も革新的なクルマのトップ10ランキングに、何車種も名を連ねていました。例えば1991年にはトップ10のうち、4車種が当社のクルマだったのです。それが90年代半ばになると日産車はトップ10ランキングから姿を消しました。そして、2000年に実施した調査によると、その企業を革新的と考えている人の割合が、トップメーカーでは70%を越えるのに対し、日産については僅か42%という状況に至ったのです。この認識を変え、再び革新的な企業としての評価を獲得しなければなりません。日本での目標は最も革新的なクルマのトップ10ランキングに少なくとも3車種ランクインさせると同時に、各車種について高い総合評価を獲得することです。

商品計画はNRPより更に意欲的です。2002年度から2004年度にかけて少なくとも28の新型車をすべてのセグメントにおいて投入予定です。2002年度には早速、グローバルで合計12の新型車を発売予定です。

日本市場におけるプレゼンスの強化は販売台数の増大と全社的な収益性向上を実現する要です。新型マーチ、モコ、キューブの投入でエントリーカー市場での復権を狙う商品計画をもって、当社は月間売上ベストテンに日産車を3車種入れることを目指しています。

また、日産180での成長を支えるにあたり、マーケティング部門と販売部門は一層大きな役割を担います。他社ユーザー獲得を最大化すると同時に顧客基盤を強化することでブランド力を向上させるのです。そのために購入意向、他社ユーザー獲得・既納先定着率の具体的な目標を設定しました。

日本におけるアクションプランはCR(コンビニエント・リテイラー)戦略、新たな他社ユーザー獲得戦略、そして店舗別経営効率化策に基づいています。

米国については、マーケティングと宣伝活動に更に注力し、販売網の強化、CSI(サービス面における満足度)とSSI(セールス面における満足度)の改善に努めます。

更に欧州ではブランド力の向上を図り、ルノーとのハブ戦略を引き続き実施することで効率化を図ると共に、CSIとSSIの向上に取組みます。

海外市場においては、それぞれの市場において販売増を図るため、マーケティングと販売の効率向上をそれぞれ行います。

コスト削減

広範囲に亘る積極的な商品投入とブランド力の強化は売上増大を支える基盤です。しかし、それはコストの効率化なしでは実現できません。NRPによって日産は土俵に再び登ったに過ぎず、競合他社に対して比較優位性を勝ち取ったわけではありません。全てのグローバル企業はコストベースの改善に取り組んでいるのです。

日産180には主なコスト要因に対して具体的なアクションプランが策定されています。では内容をご説明しましょう。

NRP同様、購買コストは損益計算書上、最も重要なコスト項目です。2月のサプライヤー会議では新しい目標を発表しました。3年間で15%のコスト削減を目標としていますが、その内容はNRPと大きく異なります。

まず、NRPでは販売台数増を前提としておりませんでしたが、日産180ではサプライヤーにとって最も重要な点である100万台の販売台数増を計画しています。

次にNRPでは新型車投入が僅か9つだったのに対し、日産180では28にのぼる市場投入を予定しています。NRPで取り組んだ現行車の部品コスト削減の方が困難だったと言えるでしょう。私自身もかつてサプライヤーの立場にあったので、大幅な台数増とモデルラインアップの刷新が、競争力と収益性の確保にどれだけ貢献するものか、よくわかっています。

次に、購買コスト削減効果における日産3−3−3活動を通しての当社の開発部門の役割を、NRPでの33%から50%へと大幅に拡大させることにしました。

最後に、国内市場向けを中心に商品ラインアップの効率化に取り組んでいます。例えば、NRP開始以降、グレード数を40%、部品種類を25%以上削減しました。今後もグローバルな取組みを続け、特にパワートレインの組み合わせ数の効率化に注力します。

製造・物流分野でも生産性の向上に努めます。生産部門のコミットメントは一台当たりのコストを3年間で12%削減することです。また、日産180終了までにはグローバルな物流コストも12%削減します。

総流通コストについては日米欧の地域別に具体的なコスト削減目標を設定しました。総コストの内、購買コストに次いで2番目に大きな割合を占める総流通コストとは、クルマを工場から出荷した時点からお客様の手元に届くまでに発生するコストの合計額で、マーケティング費用、宣伝広告費、販売費、インセンティブ及びディーラーマージンが含まれます。

我々は、売上高に占めるグローバルの総流通コストの割合を、3年間で、27%から24%に削減する目標を設定しました。これにより、一層スリムで効率的な販売体制を確立します。

間接費、即ち購買や開発、生産、販売といったプロセスに直接関係しない費用は、規模の拡大に伴い増大する性格を持っていますが、日産180の期間中、間接費の増加率は売上高増加率の50%以内に留めます。

研究開発部門に関してはNRPの方針を踏襲します。売上高に占める研究開発費の割合は4%〜4.5%であり、プログラム当たりの開発コストの削減に努めます。

日産180では販売台数増がある一方で、サービス保証費は現行レベルを維持します。また、自動車事業実質有利子負債がなくなる事に伴い、2004年度には財務コストはほぼゼロとなります。

品質とスピードの向上

コストを抑えると同時に収益増を図るためのアクションプランは日産180の達成に不可欠と言えるでしょう。ですが、それだけでは持続的な利益ある成長は実現できません。商品の品質、マネジメントの質、そしてスピードがものをいうのです。

ではお客様に提供する品質についてお話しします。多数の新車投入を控え、当社はお客様にご満足いただける品質を提供する責任があります。私どもは日産であるが故に、お客様の期待値が高いのです。品質は当社にとって最も貴重な資産です。

品質3-3-3活動を新たに導入しました。ここでは品質に関する3つの項目に取り組みます。3つの項目とは商品魅力度、商品の初期品質と信頼性、そして販売・サービスの品質です。日産180の3年間、品質3−3−3活動は全ての地域で各項目について上位3位に入ることを目指します。もし米国のSSI(セールスにおける満足度)のように達成が困難な場合は、日本メーカーの中でトップになることを目指します。

品質は商品やサービスの域に留まりません。マネジメントの品質を向上させ、評価することも重要です。価値と実績を数値化し、それを測定して初めてベストマネジメントプラクティスを見出すことができるのです。会社としての期待及び従業員からの期待にマネジメントが応えているかを測るため、年3回の定期的な従業員意識調査を2002年の9月から実施します。

NRPでは、徐々に日産マネジメントウェイを構築してきました。クロスファンクショナルチーム(CFT)とバリューアッププログラム(V-up Program)は日産マネジメントウェイの基礎にあたります。

CFTは日産180でもNRP期間中と同様、重要な役割を果たします。

バリューアッププログラムは、継続的なプロセスの改善と問題解決のための重要なツールとして、その活動を一層加速させます。2002年度にはこの活動の中心となる400名のVパイロットを教育し、本格的に活動を進めていきます。

ルノーとのアライアンスの最大化

NRP同様、ルノーとのアライアンスによるシナジー効果は、日産単独では果たせない成果を生み出します。これは当社の強力な競争優位性のひとつです。

ルノー、日産両社にとってアライアンスは今後の成長と収益性の鍵です。昨年10月に発表しました通り、この数ヶ月で両社は株式の持ち合いを成立させ、99年のアライアンスの合意内容を実施しました。では状況を簡単にご説明します。

2002年3月初旬にルノーはワラントを行使し、日産に対する資本比率を44.4%に引き上げました。同月末には日産がルノーの株式を13.5%取得し、更に持分法適用となる15%まで引き上げる権利を有しています。本日、当社の財務状況を発表した上で、新たに発行されるルノーの株式を取得し、出資比率を持分法適用となる15%まで引き上げる考えがあることをご報告いたします。取得株価は、新株発行を取り決めるルノーの取締役会実施前の20営業日の平均市場価格を採用します。今回の取り決めは99年3月に締結した両社の合意内容を完結するものであり、今後それ以上のことは予定しておりません。

今回の株式持合いで現在の仕事の仕組みや今後アライアンスを発展させていく方法が変わるわけではありません。アライアンスにおいてはこれまで同様、お互いのパフォーマンスを高めることに注力します。お互いのコーポレートアイデンティティ及びブランドアイデンティティを尊重することをベースに、継続的にシナジーを追求していきます。

ルノーとのアライアンスに関して主に3つの側面で様々な進展が予想されます。まずマーケティング及び販売分野においては、メキシコ、南米、北アフリカといった特定の市場に対して、共通のアプローチで取り組みます。次に効率化の一環として、独立したアイデンティティを維持しながらも、Bプラットフォーム、Cプラットフォーム、共通パワートレイン等、共通化を積極的に進めていきます。3つめは両社のあらゆる事業分野におけるベストプラクティスの積極的な交換です。

このように、日産180の4つの重要な柱とは、売上増加、コスト低減、品質・スピードの向上、そしてルノーとのアライアンスによるシナジー効果の最大化です。以上をもって今後3年間の当社の業績を評価していただくことになります。

IV/ まとめ

A/ 販売予測

では、2002年度の予測についてご説明します。

2002年度のグローバルな販売台数目標は、前年比7.5%増の2,792,000台を見込んでいます。

この販売目標は、日産史上最もダイナミックな新車投入計画に裏打ちされたものです。世界中で12の新型車を投入します。地域毎でみれば、21の新車投入ということになります。この多くが2002年度だけでなく、それ以降の当社の市場プレゼンスと収益性を確保する鍵となります。

日本の全体需要は、軽自動車を除いて前年比微減の390万台を前提にしています。当社の販売目標は6.1%増の757,000台、市場占有率は19.2%を見込んでいます。50,000台にのぼる軽自動車モコの販売台数を加えると、前年比13.1%増の807,000台になります。

米国の全体需要は前年比マイナス8.2%の1560万台を前提に、販売目標は7.3%増の771,000台、市場占有率4.9%を見込んでいます。アルティマが通年で寄与することに加え、Z、ムラーノ、マキシマという3つの重要商品を投入します。

同時に、インフィニティチャネルの復権も重要です。3月中旬に発売したG35を含め、インフィニティチャネルには四半期毎に一台以上の新車投入を計画しています。G35の滑り出しは好調で、値引きをせずに立上がり7週間で5,400台以上を販売しました。高級車ブランドとしてのインフィニティチャネルのさらなる確立に向け、高級車に特化した商品計画も策定済みです。

欧州の全体需要は前年比マイナス4.2%の1,860万台を前提に、当社の販売目標は前年比微増の501,000台、市場占有率は2.7%を見込んでいます。

2002年3月に発売したプリメーラと、ルノーからの供給による小型商用車2車種で販売を支え、今後も収益性の向上と、市場プレゼンスの再構築に努めます。

一般海外市場における販売目標は前年比7.1%増の655,000台で、数多くの国で大規模な商品投入を予定しています。

B/ 2002年度業績予想

今年度のリスクとプラス要因からご説明しましょう。

リスクについては2つのものを見込んでおります。ひとつは、為替における円高ドル安局面が考えられます。もうひとつは、我々の予想以上に競争環境が厳しいものになる可能性も見込んでおかなければならないでしょう。プラス要因については、特に米国における潜在的な全需の好転があげられます。しかし、何よりも大きいものは、日産180の迅速な実行です。

以上の点を鑑みて、2002年度の業績予想は1ドル125円、1ユーロ110円を前提に、本日次の通り東京証券取引所に届出をしています。

連結売上高 :6兆5千億円
連結営業利益:5,530億円 前年比12.9%増 、売上高営業利益率8.5%
連結経常利益:4,880億円
連結当期利益:3,800億円 税額については現状で見込める税率にて算出しました。
設備投資 :3,500億円
連結自動車事業実質有利子負債:2,500億円以下

C/ まとめ

1999年は当社にとって重要で歴史的な年でした。日産は10年に亘る低迷を経験した後、瀕死の状態にありました。そしてルノーとのアライアンスに調印したのです。99年10月18日、日産は再建という課題に着手しました。当時手にしていた唯一の資産は実現するという固い決意だけだったのです。また、社員のモチベーションがただ一つの武器でした。懐疑的な見方が大勢を占める中、私たちはベストを尽くしたのです。全身全霊打ち込みました。何者もその努力を阻むことはできませんでした。犠牲を払うことを厭いませんでした。

NRPは日産を、苦境にあった企業から「グッドカンパニー」、健全な企業に変えたのです。そして日産180では、その「グッドカンパニー」を「グレートカンパニー」、卓越した企業にするのです。日産はお客様、株主、パートナーそして従業員のために、高いパフォーマンスと人々の生活を豊かにすることをお約束します。

我々は日産の明確な将来図を描いています。今はそれを実現するのみです。今後日産が実力を最大限発揮することをお約束します

ご静聴ありがとうございました。


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