生産システムとは、インプット系である「人・モノ・設備」を、アウトプット系である製品に『変換するしくみ』であると考えており、その変換によって製品には「経営指標(収益力)・QCD(競争力=お客さま満足)」が付与されています。つまり、生産活動における収益力や競争力の現状は、この変換の仕組みの良し悪しが反映された結果であり、言い換えれば、結果系である経営指標やQCDを向上させるためには、この変換の仕組み(生産システム)を改善することが必要であると考えています。そしてこの「変換の仕組み」を材料から完成・お届けまでの、モノの流れに注目してよく見ると、モノの「移動」と「加工」の繰り返しとなっていることが分かります。従って、変換の仕組みは、「移動の仕組み」「加工の仕組み」と、これを運用する「作業手順の仕組み」の3つの要素で構成されていると捉えることができ、NPWではこれらを「生産システム3本柱」と呼んでいます。
「移動の仕組み」とは材料から完成までのモノの流れを計画し統制していくことであり、言い換えれば生産管理ということになります。工場のモノの流れを自工程だけでなく一気通貫で良く見ていくと、停滞や運搬が随所にあることに気づきます。これらの付加価値を生まない停滞や運搬を減らし、お客様や後工程に迷惑をかけることなく、約束の時間を遵守すると同時にお届けまでのリードタイムを最短にすることに取り組む領域となります。生産指示やモノの保管・運搬などが対象範囲となります。
「加工の仕組み」とは工程が進んでいく過程で、要求品質と付加価値をムダなく付加していく仕組みのことであり、言い換えれば生産技術ということになります。品質を基軸におきながら、いかにして付加価値のない工程や作業、動作を発生させない仕組みにしていくか、作業者がいかに自然な姿勢で躊躇なくリズミカルに作業できる条件をつくるか、といったことに取り組む領域となります。レイアウトや設備仕様、治工具などに関することが対象範囲となります。
「作業手順の仕組み」とは移動と加工の仕組みを実行するための手順やルールのことであり、言い換えれば現場管理ということになります。移動や加工の仕組みがレベルアップしても、それを運用する仕組みが伴わないと成果は出ません。移動や加工の仕組みに基づいて、お客さまからの要求に応じてスムーズに生産実行していくためには現場の基盤の強化が改めて必要となります。標準作業やPDCAサイクルのスピードアップなどが対象範囲となります。
収益力・競争力を向上させるためには投入資源を変換するしくみ=生産システムの改善が必要であり、生産システムは移動の仕組み、加工の仕組み、作業手順の仕組みの3本柱で構成されて、それぞれの仕組みの限りないレベルアップを追求することがNPWの基本思想としてあります。次回からはそれぞれの仕組みの実践事例を紹介していきます。