• 武尾裕司
  • NPW

2023年1月10日

コンサルティング嫌いだった私

コンサルタントという肩書を持って十数年たちました。
今回はコンサルティングについて、つくづく思うことを率直に述べてみたいと思います。
20年以上も前になりますが、コンサルティングを受ける立場で仕事をしていました。
その時思ったことは、コンサルタントは言うだけで何もしてくれない、コンサルタントは嫌いだ、コンサルタントにはならない、等々。

クライアント様にとってコンサルティングの受け方や期待は千差万別です。
早く答えをください、参考事例の資料をください、という推進事務局。
言われた通りやらせますから、具体的な指示をしてください、という現場管理者。
厳しく指導してください、という会社幹部。
等々、気持ちはわかります。

我々日産コンサルティングのコンサルタントは、問題解決を実行するリーダーではなく、ともに考えながら、その場・状況に合った課題設定や解決策を一緒に構築していくスタイルを主流としています。
社内・社外で活用したその場に適した手法(Tool、Method)の提供やその応用、その発展としてのカスタマイズ(クライアント様としての手法構築)をしていきます。加えて、実行面での人間関係、現場人材の発掘などについてもこれまでの実体験を活用して、実現に向けたきめ細かい支援をしていきます。
そしてそのプロセス自体がクライアント様の組織やメンバーの成長に役立つように仕立てていきます。
もちろん、成果目標を立ててそれを達成することが主たる目的ですが、それだけではなく、自立かつ自律できる組織づくりに貢献することを強く念頭に置いています。

このような進め方で一緒にやっていくと、対象の現場の方々や事務局の方に通常必ずと言っていいほど「気付き」が出てきます。そして多くの場合、現場も推進事務局もモチベーションが高まります。これが大事です。一緒にやっていくからこそ出てくるものです。これが活動そのものやその後の自律の原動力になるのです。我々の最終目標は、対象とするテーマにおいて自律して活動していける組織体制づくりであると言っても過言ではありません。
コンサルティングが終了したら、成果が続かなくなった、活動がしぼんでしまった、という例はよく耳にしますが、我々はコンサルティングが成功したかどうかはその終了後に問われると認識しています。
我々には先輩から代々引き継いでいる「指導の心得10か条」というものがあります。その最後にあるのが「コンサルティングの真の成果はコンサルタントがいなくなった後に出る」です。(これはコンサルタントにとって結構重いです)

その典型例がA社でした。A社は大手製薬会社で、工場部門の業務改善に取り組みました。我々の持っている業務を見える化するツールを活用して、現場のスタッフ業務の現状を実務担当者と一緒に分析して、困っているところや問題と思われるところを事務局とともに共有しました。加えて上司・リーダー、上流工程・下流工程とも共有しました。これを実施した実務担当者は、上司や関係する部署に自分の業務の実情をわかってもらえただけでなく、改善につながる提案や協力の約束までもらえて、「初めてこんな体験をしました」と大変喜んでいました。これで改善はスムーズに進みました。
そしてこのことを推進事務局や現場の上司が気付いてくれて、大きな推進力になっていきました。その後の活動がA社自身が自立した活動として広く進んだことは言うまでもありません。
推進事務局は、ツールの使い方だけでなく、その効果的な活用や幹部を巻き込んだ運用方法の確立によって、活動の進め方を身につけ、自前で活動ができるようになりました。そこでコンサルティングは終了しました。
1年後にその後の様子をお伺いしたところ、大いなる成果が出続けているとのことでした。

またB社(樹脂成型品製造)は、コミット型(目標必達型)でコンサルティングして、目標も達成しましたが、それ以上に現場人材が育ちました。報告会後の懇親会で社長が「お前がなあ」と言って大喜びしていました。
コンサルティング終了して1年後にたまたま訪問の機会があったのですが、その現場リーダーが次の活動を引っ張ってくれていたのを見て、コンサルタントとして大変嬉しかったです。
このような例は成功した事例の随所にあります。

さて、コンサルタント嫌いの私がコンサルタントになっているのは、これが喜びだからです。
かつて、コンサルタントは何もしてくれなかったけど、何も解決策を提示してくれなかったけど、今思うと大きな学びがあったのです。何もしてくれなかったのではなく、コンサルティングの受け方がよくわかっていなかったのだとつくづく思っています。
コンサルティングを受ける際は、幹部の方と現場、推進事務局の三者がコンサルタントと一体となったコミュニケーションをとり、必要な軌道修正もしながら進めていくと必ずよい結果が得られると確信しています。