• 尾崎和仁
  • NPW

2021年11月29日

経営者から社員まで全員参加の改善で大きな成果を上げよう

 私は、2001年から、日産生産方式(NPW)を社内外で推進する役目となり、これまで200社以上とお付き合いをし、累積指導日数 計2100日にわたりNPWの指導をして参りました。指導先は製造業だけではありません。サービス業や農業、地方自治体などにもNPWをご活用いただき、改善の効果を実感していただいています。
コンサルタントとして組織や人と接してきた中で、私はコンサルタントが導き出せる成果とは、コミットした目標達成に加え、最終的には次の三つに集約されると考えています。それは、「現場の変革」「意識改革」「人財育成」です。まず、それぞれの成果がどういうものかを述べてみたいと思います。そして、その成果を出すためのポイントを考えてみたいと思います。

 コンサルタントが導き出せる成果の一つ目は、「現場の変革」です。「変革」とは、モノづくりの“仕組み”を変えるということです。たとえば、1つの製品・サービスが作られ、お客さまに届くまでには企業独自の様々な仕組みを経由します。このプロセスにおいて仕組みの悪さが何かの問題を引き起こし、Q(品質)、C(コスト)、D(納期)を低下させます。人は対処法として「その問題をなくす」ことを目指すかもしれません。しかし、その場の対処でその問題が取り払われても、似たような問題が場所や時を変えて起きる可能性があります。そこで、「その問題の真の原因をつぶす」ことを目指すことがより重要になります。問題の根本的な原因を突き止め、その原因が起きないような“仕組み”に変えることができたとき、現場は淀みなくモノが流れる状態になり、「現場の変革」という成果が上がったことになります。
成果の二つ目は、「意識改革」です。長く同じ組織で、同じ仕事を続けていると、人は「いまの仕事のやり方が正しい」という固定観念をもつようになります。しかし、世の中は変化し進んでいます。大量生産に適していたモノづくりの方法も、多品種少量生産の時代に通じなくなるのは良い例です。こうした固定概念の脱皮を目指し、目指す姿を明確に示すことも、コンサルタントが導き出せる成果だと思っています。
 そして、成果の三つ目が「人財育成」です。改善の考え方や手法を習得して自ら改善に取り組む。そのようなリーダー役が育つように仕掛けていきます。リーダーとして育つことが期待されている社員にとって、コンサルタントとの接触は新たな手法を学ぶ機会でもあります。次回までの宿題を課すと、どんどん育って向上していくのがわかります。 最終的にコンサルタントの手を離れても自力でPDCAサイクルを回し、どんな問題にもチャレンジし解決できる人財が育つことを目指します。

 三つの成果、つまり「現場の変革」「意識改革」「人財育成」は、コンサルタントの実力次第だと考えています。では、これらの成果を確実に出すためには、どのようなポイントがあるでしょうか。
 私自身のコンサルタントの仕事を通じて感じている重要ポイントがいくつかあります。
 まず、大きな勝負どころは、相手(クライント)の組織との初めの1、2回の接触時です。1回目は挨拶を兼ねて顔合わせをし、現場の状況を見させてもらいます。そして2回目に会うとき、モノづくりの流れを示した「道のり表(作業フロー図)」を用意して、どこに問題点があるのかを示します。この道のり表をベースに、社長、工場長、改善事務局などと問題解決への具体的な対話をしてきます。これにより、相手の方々のハートを掴むのです。
 コンサルティングの仕方は様々です。中には「問題解決は企業側の努力」として、宿題をあたえて後は自分たちで考えさせるコンサルティング企業もあると聞きます。しかし、コンサルティング活動を本格化させる前の初期に、活動の具体的な方向性をコンサルタント側から示すことで、信頼を得る方法の方が効率良く進められると思っています。この勝負がないまま、3回目、4回目と続いていくのとでは、その後の成果の導き方は大きく変わってきます。
 もう一つ、経営者から現場の作業者に至るまで、各層の社員に積極的な改善への意識をもたせるようにすることも重要となります。
 まず、組織のトップである経営者に対して、コンサルタントは想いを引き出し、その気にさせなければなりません。経営者が興味をもたない改善活動は、その雰囲気が組織全体に影響してしまうので、活動を停滞させる要因に繋がるのです。経営者が抱いている課題を聞き、経営者が本気で変わる気持ちを強く持ち続けてもらう。これが、コンサルタントが経営者に対して行う大切なことです。
 経営者の下には、製造、技術、購買、営業、開発などの各部門を率いる役員クラス(幹部)の方々がいます。役員クラスの方々に対しては、ベクトル合わせが重要になります。ときには、部門独自の方針を貫こうとする役員も現れます。その際は、経営者にベクトル合わせの協力を仰ぐこともあります。さらには限定した部門だけでも改善を進めて成果を出し、企業の重点活動として他部門を巻き込んでいくといった進め方をすることもあります。
 役員クラスの下には、管理者たちがいます。活動を理解してもらい、自ら実践してもらうことがコンサルタントの使命です。管理者たちは現場でのリーダー的位置づけになりますので、改善活動を実践する中でノウハウを注ぎ込んでいきます。このとき、役員クラスにつねに状況把握をしておいてもらうことも重要となります。
 そして、社員全体にまで改善活動を浸透させていきます。ここでも、管理者たちが率先垂範することで、部下の社員たちが付いていきますので、管理者たちに社員の意識付けやモチベーション向上をつねに意識してもらいます。

 会社や組織を変えるには、より根源的なところから改善を進めなければ、組織全体には浸透しません。経営者、役員、管理者、社員、そしてコンサルタントが一体となったとき、大きな成果が出るものです。